FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理


FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dはほぼ同じ方法で修理できます.ここでは主としてFD1138Tのケースを例に説明します.なおFD1148TにはFD1231T互換の34ピンコネクタのものもあります.筆者は実物を所有していませんが,画像を見る限りここで紹介するのと同様の方法で修理が可能と思われます.

FD1138Tにおいて頻発する故障の症状は以下の2つです.両者を併発するケースも少なくないでしょう.なおフラップ(シャッター)の突起部の破損の修理方法については,FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参照して下さい.
(a) メディアを挿入するとガガガと異音を発し,メディアの読み書きができない.
(b) (a)のような異音は出ないものの,メディアにアクセスを繰り返しても読み書き不可.

(a)は多くスピンドルの軸受の潤滑の悪化に起因するもので(どるこむの過去ログ [27743] FD1138Tの劣化について を参照),(b)はFDDの制御基板上の電解コンデンサの液漏れによるものです.ここではそれぞれのタイプの故障に対する対処方法についてご紹介します.ただし,これらの方法によって故障が必ず直るとは限りません.私はこれまでかなりの確率で修理に成功していますが,特に(b)のタイプの故障では,漏れ出した電解液による基板の損傷がひどい場合にはうまく直らなかったこともあります.


■スピンドルの軸受の潤滑の改善
(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考にFDD内部のメディア格納部上部の金属板を外します.

(2) 茶色の円形のターンテーブルが現れますので,2つある穴のうちの一方(図の白丸)から軸に向けて潤滑油をごく少量流し込みます.私は自動車用のエンジンオイルを使っています.割り箸から削り出した木っ端の先端にいくつか切れ目を入れたものや爪楊枝などを使って軸の部分にオイルを塗る感じで作業するとよいかもしれません.周囲の領域にオイルを垂らしたり飛び散らせてしまうことのないよう注意して下さい.


なおCRC 5-56にはプラスチックを侵す性質があるため,この目的での使用はしないで下さい(呉工業のウェブページにも,CRC 5-56にはゴム・プラスチック・樹脂を劣化・変色させる恐れがあるため,金属以外の対象には使用できないとの注意書きがあります).
※ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8を使用して軸受の清掃(古いオイルや埃の除去)を行った後に,ワコーズ製 FSO フッソオイル105を注入している例もあります(はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照).なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).

(3) FDDを再び組み立てた後,しばらく放っておくか,FDDの底面にある円盤を指でゆっくり回しているうちに円盤が軽く回るようになります.


■電解コンデンサの交換
FD1138Tに使われている電解コンデンサは四級塩電解コンデンサと呼ばれる曰く付きのものです.これは使用中に内部の電解液が強アルカリ性の腐食性を持つものに変質し,それが封口材のゴムを侵してリード線の根元から外部に漏れ出して基板のパターンを損傷するという致命的な欠陥を抱えており,それが原因で製造中止となったものです.この電解液の変質は必ず起きるものであり,従ってFD1138Tにおける電解コンデンサの液漏れも必発です.従って現在(b)の症状が認められない場合であっても,予防的に電解コンデンサの交換を行っておく必要があるといえます.

(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考にFDDの天板を外します.

(2) 制御基板上の電解コンデンサの交換作業を行うためには,基板を一旦FDDから取り外して実装面を表側に向ける必要があります.まずはフィルムケーブルを取り外します.ヘッドの脇に2本のフィルムケーブルがコネクタに刺さっているのがわかります(図の白丸).これを傷つけないようにラジオペンチなどで引き抜きます.どちらのケーブルがどちらのコネクタにはまっているのか控えておくとよいでしょう.


(3) 次にFDDの底面の2つの箇所(図の白丸)の半田付けされているコードの先端をハンダゴテで外します.ハンダゴテは先端の細いものを十分加熱して使用します.作業中コードを浮き上がらせる場合には,精密ドライバなどの金属製の道具を使うと基板を傷つける恐れがありますので,爪楊枝の先端をカッターでくさび状に削ったものなどを使用するとよいでしょう.


図の左側の4本のコードは,途中が基板にテープで固定されていますので,予めこのテープを剥がしておきます.

コードの先端を外す作業の際にパターン剥離が起きる場合があります.その場合,剥離したパターンは基板上のTP…のシルク印刷のある銅色の■の部分と繋がっていますので(下図参照),そこにジャンパ線を配線することで導通を回復できます.


コードを外し終わったら,半田ブリッジなどがないかルーペで確認します.問題がなければ基板の方に予備半田をしておくとよいでしょう.またコードの先端が変形していればラジオペンチなどで整形しておきます.最後に基板を固定している2個のネジを外します.

※コードを外すことなく電解コンデンサ交換が行えるやり方が,CELLA.DAT --> NEC PC-98 基本情報 書庫目録 --> FD1148T PC98用3.5" FDDのコンデンサー交換 に掲載されています(私自身はこの方法の存在を知る前に手元のすべてのFD1138Tの電解コンデンサの交換を終えてしまっていたので,この方法を試したことはありません).

(4) 残ったフラットケーブルを傷めないように,厚手の本の上などに基板を裏返しに置きます.電解コンデンサが2個見えます.左が47μFで右が33μFです.


これくらい派手に液漏れしているなら被害は深刻といわざるを得ません.また一方ではちょっと見ただけでは液漏れに気が付かない場合もあります.その場合でも,無水エタノールなどで少し湿らせたティッシュペーパーで電解コンデンサの周囲の基板を拭いた時に,ティッシュペーパーにくすんだ緑色の汚れが付着すれば液漏れを起こしていると判断できます.

このように液漏れがひどい状態の電解コンデンサを取り外す場合には,無理にコンデンサを外そうとせず,まずニッパでコンデンサの足を切ってコンデンサの本体を取り除き,乾燥した電解液を丁寧に除去してからハンダゴテを使って残った足を外すなどした方がよいでしょう.経年劣化と電解液の浸潤によってパターンの強度が低下している場合がありますので,コンデンサを乱暴にむしり取ったりするとパターン剥離が起きる危険性があります.私はカッターの刃先で電解液を削り取りますが,これは慣れないと力加減が難しいかもしれません.削られた粉を取り除き,その後無水アルコールをティッシュペーパーに含ませたもので繰り返し拭き取ります.基板が綺麗になるまで電解液の除去作業を繰り返しますが,これくらい液漏れがひどいと基板にシミができているのが普通です.電解液が周囲のパーツの下にまで流れ込んでいてその部分の基板の清掃が行いにくい場合には,ハンダゴテを使いそのパーツを一旦外さなければならないこともあります.

(5) この作業が終わったらコンデンサを新しいものに付け替えます.なお,一方(多くは33μFの方)が液漏れしていない場合であっても,2個とも交換しておくべきです.交換用の電解コンデンサは低ESRタイプを選択する必要はありませんが,大きさと取り付け位置に注意して下さい.特に47μFの方はサイズによってはスペースがシビアです.大きめのコンデンサを使用する場合にはドライブ番号切り替えジャンパスイッチの脇に寝かせるとよいと思いますが,その場合は基板をネジで再固定する際にネジを締めすぎるとコンデンサの腹を圧迫してしまいますのでご注意下さい.33μFの方は垂直に立てるとよいでしょう.

なお34ピンコネクタのFD1138Dでは,制御基板に取り付けられている2つの電解コンデンサはともに33μFです.近くには発信器などがあって,取り付けスペースはかなり狭く,交換するコンデンサのサイズと取り付け方向を選びます.(2)で挙げられているフィルムケーブルはヘッド部分とともに動くので,これの動きを阻害しないように取り付ける必要があります.ヘッド部分を指で前後に移動させて(その際ヘッドそのものに接触しないよう注意),フィルムケーブルがどう動くかよく確認して下さい.


34ピンコネクタのFD1138Dにはイジェクトボタンそばの基板上にもコンデンサがあります(10μF).これも交換する必要があります.


(6) 元通りに組み立てます.(3)で外したコードの先端を再び半田付けしたら,その部分をルーペで拡大して状態をよく確認します.コードを半田付けする場合には,ケーブルの先端を精密ドライバなどを使って基板のパタン上にぴったり合わせてから,ケーブルの先端にコテ先を当てます.割り箸などを使ってケーブルの先端を固定しておいて一気に作業するとよいでしょう.また(2)で外したフラットケーブルをはめ直すのを忘れないようにして下さい.