FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理


FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dはほぼ同じ方法で修理できます.ここでは主としてFD1138Tのケースを例に説明します.なおFD1148Tには,一般的なFD1138T互換の26ピンコネクタのもの(P/N 134-506326-011-0)とFD1231T互換の34ピンコネクタのもの(P/N 134-506326-901-0)とがあります.筆者は後者を所有していませんが,構造を見る限り[noconaさんの2021年2月13日のツイート(123)を参照],ここで紹介する方法,あるいはそれに準じた方法で修理が可能と思われます.


FD1138Tにおいて頻発する故障の症状は以下の5つです.これらを併発するケースも少なくありません.
  (a) メディアを挿入するとガガガと異音を発し,メディアの読み書きができない.
  (b) (a)のような異音は出ないものの,メディアにアクセスを繰り返しても読み書きができない.
  (c) メディアを挿入していないのにアクセスランプが点滅する,あるいは突然ブブブ…という音がする.この症状を持つFDDを内蔵しているPC本体では,HDDから起動しようとした場合に,最初にメディアが挿入されていないFDDのアクセスランプが何度か点滅し,その後ようやくHDDにアクセスが移ることが時々起きる.
  (d) メディア挿入口の蓋状の部品(フラップまたはシャッター)の軸が折れる.
  (e) メディアが挿入されている状態でイジェクトボタンを押してもメディアが排出されにくい,あるいは排出されない.

(a)は多くスピンドルの軸受の潤滑の悪化に起因するもので(どるこむの過去ログ,[27743] FD1138Tの劣化について を参照),(b)はFDDの制御基板上の電解コンデンサの液漏れによるものです.本記事ではこれら2つのタイプの故障への対処方法について記載します.

 ※(c)はメディア検出用のマイクロスイッチの接点の劣化によるものです.修理方法は ここ を参照して下さい.また(d)・(e)の修理方法については,FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法 を参照して下さい.
  特にFD1138Tに関して見られる "故障" には,他に,FDDからのシステム起動時にメディアの読み込みが途中で止まるというものがあります.この場合,リターンキーを押すと読み込みが再開されます.Ap2などで多く見られる症状ですが,原因はFDD自体にあるのではなく,マザーボード,特にカレンダICとその周辺の故障である可能性があります.筆者の自験例では,この症状を発症しているすべての本体で,MS-DOSのDATE・TIMEでコマンドによる日時修正ができませんでした.筆者はFDDからのブートシーケンスについて何の知識もありませんが,コンデンサの液漏れによりカレンダICおよび水晶振動子付近の基板が損傷したり,カレンダICや水晶振動子自体を損傷するためにこの症状が出るのではないかと想像しています.漏れ出した電解液がこれらを損傷させる可能性は,ワイルドで現金な邪念の掃き溜め の Ap2のカレンダICを暴走させる その2(2011年3月15日の記事) および Xa16/WのカレンダICも暴走させてみる(2011年3月16日の記事)からも十分に考えられます.なお,この症状が出ていてもHDDからのシステム(MS-DOS)起動はできる場合もありますが,カレンダICが正常に動いていないため使い物になりません.
  また,ヘッドを囲んでいるプラスチック部分が(割れたために?)失われてコイルが剥き出しになっている個体も報告されています[じゅんさまーさんの2022年5月12日のツイート(12)を参照].この "故障" によりどのような不具合が発生するかはコメントがありませんが,周囲のノイズの影響を受けやすくなる可能性は考えられます.なおこの故障の原因は不明です.ヘッドズレの状況から,単なる経年劣化によるものではなく,修理を試みた際に衝撃が加わるなどしたために起きたものとも考えられます.


■スピンドルの軸受の潤滑の改善
(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考に,FDD内部のメディア格納部(カセットホルダー)上部の金属板を外します.フラップ(シャッター)の長い突起部分は非常に折れやすいので,分解時および分解後には,フラップに上から力や衝撃を加えないよう十分注意して下さい.FDDを手に持つ場合には,絶対にフラップに指をかけないで下さい.

(2) 茶色の円形のターンテーブルが現れますので,2つある穴のうちの一方(図の白丸)から軸に向けて潤滑油をごく少量流し込みます(大量に流し込んでしまわないよう注意して下さい).筆者は自動車用のエンジンオイル(知人より分けて貰ったものなため,銘柄は不明)を使っています(注1・2).割り箸から削り出した木っ端の先端にいくつか切れ目を入れたものや爪楊枝などを使って軸の部分にオイルを塗る感じで作業するとよいかもしれません.周囲の領域にオイルをこぼしたり飛び散らせてしまわないよう注意して下さい(不安であれば周囲を紙などでマスクするのもよいでしょう).オイルをこぼしてしまった場合には丁寧に拭き取って下さい.
 注1:スピンドル油ではミシンオイルも入手性がよいと思います.使用報告も多くあります(wildcatさんの2021年11月24日のツイート などを参照).
 注2:潤滑油は粘度の低いものでなく,粘度が適度にあるものを選択すべきとの見解があります(PC-9821/9801スレッド Part86の795番の投稿 を参照).


なお一般用途での潤滑剤として広く利用されている呉工業製のCRC 5-56には,プラスチックを侵す性質があるため,この目的での使用はしないで下さい(呉工業のウェブページにも,CRC 5-56にはゴム・プラスチック・樹脂を劣化・変色させる恐れがあるため,金属以外の対象には使用できないとの注意書きがあります).またこの種のものは成分の揮発性が高いため,潤滑の良好な状態を長く保てないという問題もあり,この種の用途にはお薦めできません.

ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8を使用して軸受の清掃(古い潤滑油や埃の除去)を行った後に(注),ワコーズ製 FSO フッソオイル105を注入している例もあります(はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照.パーツクリーナーの使用報告は,いぐろまさよしさんの2022年5月19日のツイート にもあります).なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).
 注:筆者はこの修理において,新しいオイルの注油に先立ち古い潤滑油の除去を行ったことはありませんが,20年ほどの間,それが原因と思われるFDDの不具合に遭遇した経験はなく,またそのような報告も今のところ目にしていません.しかしこれはあくまで筆者の経験の範囲内でのことであって,同様の処置を他者にも積極的に奨めようとは思いません.特に中古やジャンクのFDDには,劣悪な環境(必ずしも工場等とは限りません)や埃の多い環境で長期間使用されていたものもあり(インターネットオークションの商品画像などでも,かなり凄まじい外観のFDDを見かけることがあります),そのようなFDDでは,軸受部分の潤滑油の変質の度合いと汚れ具合の極端に酷いものもあるでしょうから,古い潤滑油を十分に除去した後でないと新しいオイルを注油すべきではないでしょう(もっとも,FDDを新規に入手する場合には,そもそもそういう品には手を出さないのが一番です).

(3) FDDを再び組み立てた後,しばらく放っておくか,FDDの底面にある円盤を指でゆっくり回しているうちに,円盤がごく軽く回るようになります.円盤を指で軽く弾いた場合に,円盤が軽やかに回るようであれば問題ないでしょう.円盤の回転がまだ悪いようでしたら,注油が足りていないかもしれません.

※スピンドルの軸受が緩くなった個体があるといいます[noconaさんの2021年8月3日のツイート(12)を参照].この問題は軸のブレに繋がる可能性があります.


■電解コンデンサの交換
電解コンデンサの交換によって(b)の故障が必ず直るとは限りません.筆者はこれまで多くのケースで修理に成功していますが,漏れ出した電解液による基板の損傷がひどい場合にはうまく直せなかったこともあります.このことをまずお断りしておきます.

FD1138Tに使われている電解コンデンサは四級塩電解コンデンサと呼ばれる曰く付きのものです.これは使用中に内部の電解液が強アルカリ性の腐食性を持つものに変質し,それが封口材のゴムを侵してリード線の根元から外部に漏れ出して基板のパターンを損傷するという致命的な欠陥を抱えており,それが原因で製造中止となったものです.この電解液の変質は,製造後の時間の経過に伴い必ず起きるものであり,従ってFD1138Tにおける電解コンデンサの液漏れも必発です.このため現在(b)の症状が認められない場合であっても,予防的に電解コンデンサの交換を行っておく必要があるといえます.マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換 の記事なども参照して下さい.

(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考にFDDの天板を外します(注).
 注:ヘッドの直上に当たる天板の部分が凹んでいる場合,その度合いにもよりますが,ヘッド自体が破壊されてしまっていることがあります.PC-9801NS/Eには,液晶パネルの開閉に伴い内蔵FDDであるFD1138Cの天板に上から力が加わり,最終的にはヘッド部分が破壊されるという構造的欠陥がありました(何例か見てきましたが,ヘッド部分がバラバラになるほどの壊れ方をしているものもありました.この不具合は,後継機種であるNS/Tでは,FDDの上に鉄板を設置することで解消されました).灰色のフロントベゼルを持つFD1138Cを入手する際には注意して下さい(FD1138CをFD1138Tで代替 を参照).

(2) 制御基板上の電解コンデンサの交換作業を行うためには,基板を一旦FDDから取り外し,部品が実装された面を表側に向ける必要があります.まずはフィルムケーブルを取り外します.ヘッドの脇に2本のフィルムケーブルがコネクタに刺さっているのがわかります(図の白丸).これを傷つけないようにラジオペンチなどで引き抜きます.どちらのケーブルがどちらのコネクタにはまっているのか控えておくとよいでしょう.


(3) 次にFDDの底面の2つの箇所(図の白丸)の半田付けされているケーブルの先端をハンダゴテで外します.ハンダゴテは十分に加熱してから使用します.作業中ケーブルを浮き上がらせる場合には,精密ドライバなどの金属製の道具を使うと基板を傷つける恐れがありますので,爪楊枝の先端をカッターでくさび状に削ったものなどを使用するとよいでしょう.


図の左側の4本のケーブルは,途中が基板にテープで固定されていますので,予めこのテープを剥がしておきます.この作業も爪楊枝の先端をカッターでくさび状に削ったものなどを使用して行うとよいでしょう.

ケーブルの先端を外す作業の際にパターン剥離が起きる場合があります.その場合,剥離したパターンは基板上のTP…のシルク印刷のある銅色の■の部分と繋がっていますので(下図参照),パターンの修復が難しければ,そこにジャンパ線を配線することで導通を回復できます([もっともこれらの■は,TPの文字が示すように本来は(メーカー側の)テスト用のパターンと考えられ,そこに繋がる基板上のパターンも細く,流せる電流量にも不安があるため,ここに配線するのは最後の手段と考えた方がよいでしょう].


ケーブルを外し終わったら,半田ブリッジなどがないかルーペで確認します.問題がなければ基板の方に予備半田をしておくとよいでしょう.またケーブルの先端が変形していればラジオペンチなどで整形しておきます.最後に基板を固定している2個のネジを外します.

※ケーブルを外すことなく,基板・ヘッド・フライホイール部分からなるユニット全体を取り外して電解コンデンサ交換を行えるようにするやり方が,radioc.dat --> NEC PC-98 基本情報 書庫目録 --> FD1148T PC98用3.5" FDDのコンデンサー交換 の記事,および レジンスキーさんの2021年5月14日のツイート に掲載されています[前者はFD1148T,後者はFD1138Dの場合(注)].また 淀川警備保障のインデックスPC98用FDD 1138T 1148T および1158Dのリカバリ完了(2018年10月22日の記事) では,ケーブルを外さず基板も取り出さすにコンデンサ交換作業を行ったとの報告があります.しかしこの方法は,一般にはお奨めできにくいように思います.と言うのは,現在ではほぼ全てのFD1138Tで電解コンデンサの液漏れが起きていると予想されるものの,この方法では漏れ出した電解液の除去と基板の清掃を十分に行うのは,この種の作業に相当熟練していない限りまず不可能と思われるからです.
 注:筆者はケーブルを外す方法に慣れてしまったこともあり,この方法でコンデンサ交換を行ったことはありません.一度この方法を途中まで試してみたことがありますが,不器用な筆者には不向きと判断しました.しかし人によってはこちらの方法によった方が作業が簡単かもしれません(9801x68kさんの2019年12月24日のツイートを参照).ただしその場合でも,熱したハンダゴテによる損傷を防ぐために,ヘッド部分に繋がっている2本のフィルムケーブルをコネクタから抜いて作業の邪魔にならないよう適当に処置しておくのがよいと思います.

(4) 残ったフラットケーブルを傷めないように,厚手の本の上などに基板を裏返しに置きます.電解コンデンサが2個見えます.手前側が6.3V-47μFで奥側が6.3V-33μFです(注1・2).
 注1:34ピンコネクタのFD1148Tの制御基板の電解コンデンサもこの2個ですが,基板の種類が異なるため,取り付け位置は異なります(noconaさんの2021年2月13日のツイート を参照).
 注2:FD1138Cの制御基板の電解コンデンサは,6.3V-10uF,6.3V-33uF,6.3V-47uF の3個です(じゅんさまーさんの2021年9月5日2022年5月21日 のツイートを参照.筆者のメモとも一致します).


これくらい派手に液漏れしているなら深刻な被害を覚悟すべきと言わざるを得ません.一方,ちょっと見ただけでは液漏れに気が付かない場合もあります.その場合でも,[無水エタノールやイソプロピルアルコール(IPA)などで少し湿らせた]ティッシュペーパーで電解コンデンサの周囲の基板を拭いた時に,ティッシュペーパーにくすんだ緑色の汚れが付着すれば液漏れを起こしていると判断できます.

このように液漏れがひどい状態の電解コンデンサを取り外す場合には,無理にコンデンサを外そうとせず,まずニッパでコンデンサの足を切って(この時コンデンサの足に無理な力を加えないように気を付けて下さい)コンデンサの本体を取り除き,乾燥した電解液を丁寧に除去してからハンダゴテを使って残った足を外すなどした方がよいでしょう.電解液がこびりついたままのハンダは溶けにくいからです.経年劣化と電解液の浸潤によってパターンの強度が低下している場合がありますので,コンデンサを乱暴にむしり取ったりすると,パターン剥離が起きる危険性があります.この種の作業は雑にやると大抵碌な結果になりません.電解液が乾燥している場合には,筆者はカッターの刃先で電解液を削り取りますが,これは慣れないと力加減が難しいかもしれません(注1・2).削られて出た粉を取り除き,その後無水エタノールやイソプロピルアルコールをティッシュペーパー等に含ませたもので残った電解液を繰り返し拭き取ります.電解液が乾燥していない場合には,それらの掬い取りや拭き取りを細かいところまで丁寧に行います.基板が綺麗になるまで電解液の除去作業を繰り返しますが,これくらい液漏れがひどいと基板にシミができてしまっているのが普通です(電解液が基板内部に深く浸透してしまっていることを示すものですので,非常によくない状態です).電解液が周囲の部品の下にまで流れ込んでいて(液漏れがひどい場合にはこのケースはかなりあります.最近はこのケースが増えているのではないかと思います)その部分の基板の清掃が行いにくい場合には,ハンダゴテを使いその部品を一旦外さなければならないこともあります(注3).
 注1:Hirofumi Iwasaki / 岩崎浩文さんの2019年12月2日のツイートによれば,固まった電解液(の大半を効率よく,ということでしょう)を除去するにはフラックスクリーナーと綿棒が便利とのことです.
 注2:グラスファイバーヤスリの使用報告もあります(PocketGriffonさんの2021年8月4日のツイート を参照).
 注3:漏れ出した電解液によりビア(via,基板に開けられた小さな穴)の内部が腐蝕して動作不良となったFD1138Tは,WIDENETさんの2021年4月20日のツイートにあるようなジャンパ線を配線することで修理できる場合があるといいます.

(5) この作業が終わったらコンデンサを新しいものに付け替えます.なお,一方(多くは33μFの方)が液漏れしていない場合であっても,2個とも交換しておくべきです(注1).このコンデンサはバイパスコンデンサ(パスコン)の一種と思われます(注2).交換用の電解コンデンサには,本来であれば低ESRタイプを選択することが望ましいのでしょうが(マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換 を参照),経験上,本FDDでは交換用コンデンサの特性をそこまで気にする必要もないと考えます(注3).但し大きさと取り付け位置には注意して下さい(注4・5).特に47μFの方はサイズによってはスペースがシビアです(注6).大きめのコンデンサを使用する場合にはドライブ番号切り替えジャンパスイッチの脇に寝かせるとよいと思いますが,その場合は,基板をネジで再固定する際にネジを締めすぎるとコンデンサの腹を圧迫してしまいますのでご注意下さい.33μFの方は垂直に立てるとよいでしょう.
 注1:47μFの方の電解コンデンサには東信工業製のものとRubycon製のものとがあり,前者は液漏れするものの,後者は液漏れしないとの報告があります(noconaさんの2019年1月3日2020年1月3日のツイート を参照).
 注2:バイパスコンデンサの機能については,ノイズ対策.comコンデンサの機能とノイズ対策 などを参照して下さい.
 注3:筆者は特性を全く考慮せずにその時々にたまたま手元にあったコンデンサを取り付けてきましたが,20年ほど前にコンデンサ交換を行った個体(FD1138T)をはじめとして,いい加減なコンデンサに交換したことに起因すると思われる読み書き時の不具合に気付いたことはありません.もっとも,これはあくまでも筆者個人の経験に過ぎません.
 注4:直径6.3mm・高さ7mm以下のものが理想的です.日本ケミコン製SREシリーズやSRMシリーズなどが入手しやすいようです(PC-9821/9801スレッド Part86の792番と800番の投稿 を参照).
 注5:耐圧にも注意して下さい.PC-9821/9801スレッド Part85の72番の投稿 で指摘されていますが,耐圧が10V以上のコンデンサに交換する必要があります.これは本記事にも当然盛り込まれているべき基本的な事柄ですが,2020年9月にこの投稿を目にするまで,この重要事項を書いていなかったことに全く気付いていませんでした.実に迂闊でした.
 注6:このため,交換用のコンデンサとして積層セラミックコンデンサ(注6.1)やチップコンデンサを選択する試みもあります(9801x68kさんの2019年12月24日のツイート や おふがおさんの2020年11月20日・29日(1234)のツイートを参照.また,PC-9821/9801スレッド Part86の792・804・806番の投稿も参照).なおFD1139C/Tでも,主として垂直方向の空間的制約のため,交換用コンデンサに積層セラミックチップコンデンサを選択したとの報告がいくつかあります.
     注6.1:アルミ電解コンデンサ積層セラミックコンデンサ(MLCC)のERS周波数特性については,村田製作所の技術記事,コンデンサのインピーダンス ESRの周波数特性とは?(2012年11月28日の記事)などを参照.積層セラミックコンデンサには印加電圧による容量低下(DCバイアス特性)という問題もありますが,元々取り付けられていた電解コンデンサにも容量の精度や経年変化の問題があることなども考えると,今のケースで大きな問題になるようなものかは筆者には判断できません.おふがおさんの2022年1月21日のツイート も参照して下さい.

なお34ピンコネクタのFD1138D(注1・2)では,制御基板に取り付けられている2つの電解コンデンサはともに6.3V-33μFです.近くには発振器(注3)などがあって,取り付けスペースはかなり狭く,交換するコンデンサのサイズと取り付け方向を選びます(直上の注4も参照).元々取り付けられていたコンデンサと同じような背の低いコンデンサを寝かせて取り付ければ問題はないのですが(注4),(2)で挙げられているフィルムケーブルはヘッド部分とともに動くので,背の高いコンデンサに交換する場合には,これの動きを阻害しないように取り付ける必要があります.ヘッド部分を指で前後に移動させて(その際ヘッドそのものに接触しないよう注意),フィルムケーブルがどう動くかよく確認して下さい.画像は背の高いコンデンサに交換した後のものです(注5・6).


34ピンコネクタのFD1138Dにはイジェクトボタンそばの基板上にもコンデンサがあります(6.3V-10μF).これも交換する必要があります(注7).画像はコンデンサ交換後のものです.


 注1:FD1138Dには26ピンコネクタのものもあります[26ピンFD1138D(PC-9801NL/R内蔵FDD)とFD1138Tの信号の比較 を参照].
 注2:これはPC-9801FA/U2のFD1138D(P/N 134-505195-008-0,制御基板 G8KSH)とLogitec製のファイルスロットFDDユニットであるLFD-31FのFD1138D(P/N 134-505195-108-0,制御基板名不明)の場合ですが,FC-9801S用の内部増設用FDDユニット(2ドライブ)であるFC-9801-FD3のFD1138D[P/N 134-505195-006-0,制御基板 G8DLS,134-836765,PC-9801UR/UF(注2.1)の内蔵FDDと同じP/N]の制御基板で使用されているコンデンサは,6.3V-33μFのものが2個と6.3V-22μFのものが1個です.またPC-9801FA/U2のFD1138Dと同じく,イジェクトボタンそばの基板上にも6.3V-10μFの電解コンデンサがあります[レジンスキーさんの2020年3月24日のツイート(1234)および おふがおさんの2020年11月20日のツイート を参照].なお P/N 134-505195-008-0 と P/N 134-505195-006-0 のFD1138Dには互換性があることが確認されています[レジンスキーさんの2021年53月14日のツイート(12)を参照].
   注2.1:PC-9801UFのFD1138Dの制御基板の部品面にシルク印刷されている型番は G8DLS(134-836765)ですが,配線面に貼られている紙シールには G8DMK 134-836782 とあることを確認しています.
 注3:制御基板がG8KSHのFD1138Dの発信器の取り外し方が,WIDENETさんの2022年5月3日のツイート で説明されています.
 注4:nichicon製MV(UMV~)に交換した例があります(レジンスキーさんの2021年5月14日のツイート を参照).
 注5:ヘッドが移動するたびにフィルムケーブルがコンデンサの腹をこすることになるため,実際にはこのような取り付け方はあまり望ましくないでしょう.長期間にわたる頻繁な使用では,フィルムケーブルの表面の損耗が問題となると思われるからです.
 注6:電解コンデンサが取り付けられている箇所のパターンについては,おふがおさんの2022年1月22日2月16日のツイートと きょろサンチームさんの2022年2月16日のツイート を参照.
 注7:PC-9801UR/UFのFD1138Dでは(注7.1),このコンデンサのすぐ後ろにあるチップコンデンサの端子部分は,このコンデンサのものと+とGNDが左右逆になっているといいます(おふがおさんの2020年11月26日のツイートを参照).コンデンサ交換時のリード線やハンダブリッジによる短絡や,パターン剥離を起こした際のジャンパ先の選定では注意が必要でしょう.なおこの電解コンデンサは,(修理交換用保守部品として製造された?)製造時期の新しいPC-9801UR/UF用FD1138D(P/Nと制御基板名は同じですが,基板の構成が異なっています)では,チップコンデンサに置き換わっています.
   注7.1:PC-9801FA/U2のFD1138Dについては未確認です.

(6) 元通りに組み立てます.(3)で外したケーブルの先端を再び半田付けしたら,その部分をルーペで拡大して状態をよく確認します.ケーブルを半田付けする場合には,ケーブルの先端を精密ドライバなどを使って基板のパタン上にぴったり合わせてから,ケーブルの先端にコテ先を当てます.割り箸などを使ってケーブルの先端を固定しておいて一気に作業するとよいでしょう.また(2)で外したフラットケーブルをはめ直すのを忘れないようにして下さい.

(7) 動作確認を行います.FDDケーブルのコネクタには突起が,また通常はFDDのコネクタの上のフレームの部分には切り欠きがあるため,コネクタを逆刺し(上下逆に接続)するおそれは少ないと思いますが(FDDケーブルのコネクタに突起がある場合,FD1138*/FD1148Tでは,ケーブルを無理矢理逆刺しするのは困難です),α DATA製のファイルスロットFDDユニットであるAD-F35FAのように,FDDケーブルのコネクタに突起のないものが使用されている機器では注意が必要です.修理やメンテナンスのためにFDDを取り外す際には,事前にFDDケーブルのコネクタの向きを確認しておく必要があります.FD1138*/FD1148TのFDDケーブルには電源ラインも含まれていますので,ケーブルを逆刺しした状態で通電してしまうと,FDDが破壊されます(煙が上がります).またFDDケーブルのコネクタに突起のないものが使用されている機器では,FDD側のコネクタとピンの位置が横方向にズレた状態でケーブルを接続してしまうことがありますので注意して下さい.

動作確認の際は,FDDの底面を導体(電気を通す物)を接触させないように注意して下さい.制御基板上のケーブル類[(3)で外して(6)で取り付け直したもの]の端子が剥き出しになっており,これらがショートする危険性があります(注1).底板を備えているFD1231Tなどでは別として,筆者は裸のFDDを単体で動作確認する場合には,フライホイールと干渉しないように,同じくらいの厚さの本を左右に置き,その上にFDD両脇のフレーム部分を載せてFDDの底面を浮かせるようにしています.なお修理作業中は勿論ですが,動作確認の際にも,フラップ(シャッター)の軸の破損に十分気を付けて下さい.FD1138*/FD1148Tを本体のフレームに取り付けていない裸の状態で扱うことになるため,FDDを持ち上げたり,ケーブルを接続したり,メディアの出し入れを行う際に,上方や前方からメディア挿入口付近にぶつかったり,不用意に力を加えてしまったりしがちです(注2).特に床に近い位置など,低いところにFDDを置いて作業する場合にはこの事故が起きやすくなるように思います.
 注1:PC-9821Ceでは,FDD(FD1138T)をはめ込む箱状の金具の底面とFDDの底面との間隔が非常に狭く,この金具の底面が内側に凹むとショートの原因となるといいます(本来は絶縁用のプラスチックシートなどが挟まれているのかもしれませんが).この金具は機能的には不可欠なものではないようで,なくても大して支障はないようです[おふがおさんの2020年10月27日 と 12月1日(12)のツイートを参照].
 注2:メディアの読み書きを行っていない時にもメディアを半差しの状態にしておくと,事故がかなり防げるでしょう(おふがおさんの2021年5月5日のツイート を参照).


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