FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理


FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dはほぼ同じ方法で修理できます.ここでは主としてFD1138Tのケースを例に説明します.なおFD1148Tには,一般的なFD1138T互換の26ピンコネクタのもの(P/N 134-506326-011-0)とFD1231T互換の34ピンコネクタのもの(P/N 134-506326-901-0)とがあります.筆者は後者を所有していませんが,画像を見る限り,ここで紹介する方法,あるいはそれに準じた方法で修理が可能と思われます.

※FD1138Cの互換FDDであるCITIZEN製U1DB(HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 の 98-2-19-26グループ を参照)の修理に関しては,9801x68kさんの2019年8月2日のツイート をご覧下さい[PC-9801TのU1DB-15Aの電解コンデンサは16V-22μFが2個,50V-1μFが1個.ゴムベルトは千石電商のΦ57×0.4T×2.2Wのものに交換.なお,試運転の資料館 --> 電算機部 --> FDD のゴムベルト一覧 では,J3100用外付けFDDまたはPC-9821(初代MULTi)のU1DB-82LまたはU1DB-16Aの交換用平ゴムベルトの規格としては,Φ60×0.4T×1.6W が推奨されています].

FD1138Tにおいて頻発する故障の症状は以下の4つです.これらを併発するケースも少なくないでしょう.
 (a) メディアを挿入するとガガガと異音を発し,メディアの読み書きができない.
 (b) (a)のような異音は出ないものの,メディアにアクセスを繰り返しても読み書きができない.
 (c) フロッピーディスクを挿入していないのにアクセスランプが点滅する,あるいは突然ブブブ…という音がする.
 (d) メディア挿入口の蓋状の部品(フラップまたはシャッター)の軸が折れる.

(a)は多くスピンドルの軸受の潤滑の悪化に起因するもので(どるこむの過去ログ,[27743] FD1138Tの劣化について を参照),(b)はFDDの制御基板上の電解コンデンサの液漏れによるものです.本記事ではこれら2つのタイプの故障への対処方法についてご紹介します.

 ※(c)はメディア検出用のマイクロスイッチの接点の劣化によるものです.修理方法は ここ を参照して下さい.また(d)の修理方法については,FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法 を参照して下さい.
  また,特にFD1138Tに関して見られる "故障" には,他に,FDDからのシステム起動時にメディアの読み込みが途中で止まるというものがあります.この場合,リターンキーを押すと読み込みが再開されます.Ap2などで多く見られる症状ですが,原因はFDD自体にあるのではなく,マザーボード,特にカレンダICとその周辺の故障である可能性があります.筆者の自験例では,この症状を発症しているすべての本体で,MS-DOSのDATE・TIMEでコマンドによる日時修正ができませんでした.筆者はFDDからのブートシーケンスについて何の知識もありませんが,コンデンサの液漏れによりカレンダICおよび水晶振動子付近の基板が損傷したり,カレンダICや水晶振動子自体を損傷するためにこの症状が出るのではないかと想像しています.漏れ出した電解液がこれらを損傷させる可能性は,ワイルドで現金な邪念の掃き溜め の Ap2のカレンダICを暴走させる その2(2011年3月15日の記事) および Xa16/WのカレンダICも暴走させてみる(2011年3月16日の記事)からも十分に考えられます.なお,この症状が出ていてもHDDからのシステム(MS-DOS)起動はできる場合もありますが,カレンダICが正常に動いていないため使い物になりません.


■スピンドルの軸受の潤滑の改善
(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考にFDD内部のメディア格納部上部の金属板を外します.フラップ(シャッター)の長い突起部分は非常に折れやすいので,分解時および分解後には,フラップに上から力や衝撃を加えないよう注意して下さい.FDDを手に持つ場合には絶対にフラップに指をかけないで下さい.

(2) 茶色の円形のターンテーブルが現れますので,2つある穴のうちの一方(図の白丸)から軸に向けて潤滑油をごく少量流し込みます(大量に流し込んでしまわないよう注意して下さい).筆者は自動車用のエンジンオイル(銘柄は不明)を使っています.割り箸から削り出した木っ端の先端にいくつか切れ目を入れたものや爪楊枝などを使って軸の部分にオイルを塗る感じで作業するとよいかもしれません.周囲の領域にオイルをこぼしたり飛び散らせてしまわないよう注意して下さい(不安であれば周囲を紙などでマスクするのもよいでしょう).オイルをこぼしてしまった場合には丁寧に拭き取って下さい.


なお一般用途での潤滑剤として広く利用されている呉工業製のCRC 5-56には,プラスチックを侵す性質があるため,この目的での使用はしないで下さい(呉工業のウェブページにも,CRC 5-56にはゴム・プラスチック・樹脂を劣化・変色させる恐れがあるため,金属以外の対象には使用できないとの注意書きがあります).

ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8を使用して軸受の清掃(古い潤滑油や埃の除去)を行った後に(注),ワコーズ製 FSO フッソオイル105を注入している例もあります(はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照).なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).
 注:筆者はこの修理において,新しいオイルの注油に先立ち古い潤滑油の除去を行ったことはありませんが,20年ほどの間,それが原因と思われるFDDの不具合に遭遇した経験はなく,またそのような報告も今のところ目にしていません.しかしこれはあくまで筆者の経験の範囲内でのことであって,同様の処置を他者にも積極的に奨めようとは思いません.特に中古やジャンクのFDDには,劣悪な環境(必ずしも工場等とは限りません)や埃の多い環境で長期間使用されていたものもあり(インターネットオークションの商品画像などでも,かなり凄まじい外観のFDDを見かけることがあります),そのようなFDDでは軸受部分の潤滑油の変質の度合いと汚れ具合の極端に酷いものもあるでしょうから,古い潤滑油を十分に除去した後でないと新しいオイルを注油すべきではないでしょう(もっとも,FDDを新規に入手する場合には,そもそもそういう品には手を出さないのが一番です).

(3) FDDを再び組み立てた後,しばらく放っておくか,FDDの底面にある円盤を指でゆっくり回しているうちに円盤が軽く回るようになります.


■電解コンデンサの交換
電解コンデンサの交換によって(b)の故障が必ず直るとは限りません.筆者はこれまで多くのケースで修理に成功していますが,漏れ出した電解液による基板の損傷がひどい場合にはうまく直せなかったこともあります.このことをまずお断りしておきます.

FD1138Tに使われている電解コンデンサは四級塩電解コンデンサと呼ばれる曰く付きのものです.これは使用中に内部の電解液が強アルカリ性の腐食性を持つものに変質し,それが封口材のゴムを侵してリード線の根元から外部に漏れ出して基板のパターンを損傷するという致命的な欠陥を抱えており,それが原因で製造中止となったものです.この電解液の変質は,製造後の時間の経過に伴い必ず起きるものであり,従ってFD1138Tにおける電解コンデンサの液漏れも必発です.このため現在(b)の症状が認められない場合であっても,予防的に電解コンデンサの交換を行っておく必要があるといえます.マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換 の記事なども参照して下さい.

(1) FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法を参考にFDDの天板を外します.

(2) 制御基板上の電解コンデンサの交換作業を行うためには,基板を一旦FDDから取り外し,部品が実装された面を表側に向ける必要があります.まずはフィルムケーブルを取り外します.ヘッドの脇に2本のフィルムケーブルがコネクタに刺さっているのがわかります(図の白丸).これを傷つけないようにラジオペンチなどで引き抜きます.どちらのケーブルがどちらのコネクタにはまっているのか控えておくとよいでしょう.


(3) 次にFDDの底面の2つの箇所(図の白丸)の半田付けされているケーブルの先端をハンダゴテで外します.ハンダゴテは十分に加熱してから使用します.作業中ケーブルを浮き上がらせる場合には,精密ドライバなどの金属製の道具を使うと基板を傷つける恐れがありますので,爪楊枝の先端をカッターでくさび状に削ったものなどを使用するとよいでしょう.


図の左側の4本のケーブルは,途中が基板にテープで固定されていますので,予めこのテープを剥がしておきます.この作業も爪楊枝の先端をカッターでくさび状に削ったものなどを使用して行うとよいでしょう.

ケーブルの先端を外す作業の際にパターン剥離が起きる場合があります.その場合,剥離したパターンは基板上のTP…のシルク印刷のある銅色の■の部分と繋がっていますので(下図参照),パターンの修復が難しければ,そこにジャンパ線を配線することで導通を回復できます.


ケーブルを外し終わったら,半田ブリッジなどがないかルーペで確認します.問題がなければ基板の方に予備半田をしておくとよいでしょう.またケーブルの先端が変形していればラジオペンチなどで整形しておきます.最後に基板を固定している2個のネジを外します.

※ケーブルを外すことなく,基板・ヘッド・フライホイール部分からなるユニット全体を取り外して電解コンデンサ交換を行えるようにするやり方が,radioc.dat --> NEC PC-98 基本情報 書庫目録 --> FD1148T PC98用3.5" FDDのコンデンサー交換 に掲載されています(筆者はケーブルを外す方法に慣れてしまったこともあり,この方法でコンデンサ交換を行ったことはありません.一度この方法を途中まで試してみたことがありますが,不器用な筆者には不向きと判断しました.しかし人によってはこちらの方法によった方が作業が簡単になると思います.ただしその場合でも,熱したハンダゴテによる損傷を防ぐために,ヘッド部分に繋がっている2本のフィルムケーブルをコネクタから抜いて作業の邪魔にならないよう適当に処置しておくのがよいかと思います).また 淀川警備保障のインデックスPC98用FDD 1138T 1148T および1158Dのリカバリ完了(2018年10月22日の記事) では,ケーブルを外さず基板も取り出さすにコンデンサ交換作業を行ったとの報告があります.しかしこの方法は,一般にはお奨めできにくいように思います.と言うのは,現在ではほぼ全てのFD1138Tで電解コンデンサの液漏れが起きていると予想されるものの,この方法では漏れ出した電解液の除去と基板の清掃を十分に行うのは,この種の作業に相当熟練していない限りまず不可能と思われるからです.

(4) 残ったフラットケーブルを傷めないように,厚手の本の上などに基板を裏返しに置きます.電解コンデンサが2個見えます.左が47μFで右が33μFです.


これくらい派手に液漏れしているなら深刻な被害を覚悟すべきと言わざるを得ません.一方,ちょっと見ただけでは液漏れに気が付かない場合もあります.その場合でも,[無水エタノールやイソプロピルアルコール(IPA)などで少し湿らせた]ティッシュペーパーで電解コンデンサの周囲の基板を拭いた時に,ティッシュペーパーにくすんだ緑色の汚れが付着すれば液漏れを起こしていると判断できます.

このように液漏れがひどい状態の電解コンデンサを取り外す場合には,無理にコンデンサを外そうとせず,まずニッパでコンデンサの足を切ってコンデンサの本体を取り除き,乾燥した電解液を丁寧に除去してからハンダゴテを使って残った足を外すなどした方がよいでしょう.経年劣化と電解液の浸潤によってパターンの強度が低下している場合がありますので,コンデンサを乱暴にむしり取ったりするとパターン剥離が起きる危険性があります.電解液が乾燥している場合には,筆者はカッターの刃先で電解液を削り取りますが,これは慣れないと力加減が難しいかもしれません(注).削られた粉を取り除き,その後無水エタノールやイソプロピルアルコールをティッシュペーパー等に含ませたもので繰り返し拭き取ります.電解液が乾燥していない場合には,それらの掬い取りや拭き取りを細部まで丁寧に行います.基板が綺麗になるまで電解液の除去作業を繰り返しますが,これくらい液漏れがひどいと基板にシミができてしまっているのが普通です(電解液が基板内部に深く浸透してしまっていることを示すものですので,非常によくない状態です).電解液が周囲の部品の下にまで流れ込んでいて(液漏れがひどい場合にはこのケースはかなりあります.最近はこのケースがかなり多くなっているのではないかと思います)その部分の基板の清掃が行いにくい場合には,ハンダゴテを使いその部品を一旦外さなければならないこともあります.
 注:岩崎浩文さんの2019年12月2日のツイートによれば,固まった電解液(の大半を効率よく,ということでしょう)を除去するにはフラックスクリーナーと綿棒が便利とのことです.

(5) この作業が終わったらコンデンサを新しいものに付け替えます.なお,一方(多くは33μFの方)が液漏れしていない場合であっても,2個とも交換しておくべきです.交換用の電解コンデンサは低ESRタイプを選択する必要はありませんが,大きさと取り付け位置に注意して下さい.特に47μFの方はサイズによってはスペースがシビアです.大きめのコンデンサを使用する場合にはドライブ番号切り替えジャンパスイッチの脇に寝かせるとよいと思いますが,その場合は基板をネジで再固定する際にネジを締めすぎるとコンデンサの腹を圧迫してしまいますのでご注意下さい.33μFの方は垂直に立てるとよいでしょう.

なお34ピンコネクタのFD1138Dでは,制御基板に取り付けられている2つの電解コンデンサはともに33μFです.近くには発振器などがあって,取り付けスペースはかなり狭く,交換するコンデンサのサイズと取り付け方向を選びます.(2)で挙げられているフィルムケーブルはヘッド部分とともに動くので,これの動きを阻害しないように取り付ける必要があります.ヘッド部分を指で前後に移動させて(その際ヘッドそのものに接触しないよう注意),フィルムケーブルがどう動くかよく確認して下さい.


34ピンコネクタのFD1138Dにはイジェクトボタンそばの基板上にもコンデンサがあります(10μF).これも交換する必要があります.


(6) 元通りに組み立てます.(3)で外したケーブルの先端を再び半田付けしたら,その部分をルーペで拡大して状態をよく確認します.ケーブルを半田付けする場合には,ケーブルの先端を精密ドライバなどを使って基板のパタン上にぴったり合わせてから,ケーブルの先端にコテ先を当てます.割り箸などを使ってケーブルの先端を固定しておいて一気に作業するとよいでしょう.また(2)で外したフラットケーブルをはめ直すのを忘れないようにして下さい.


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