FD1137Dの分解と修理


FD1137Dの分解方法については,暇つぶし工作 の ジャンク品、NEC、PC-9801UXを買ってみました,その2。(2016年3月6日の記事) に画像入りのわかりやすい記事が掲載されています(この記事は試運転さんに教えていただきました).

しかしこの記事では制御基板の取り外し方については扱われておりませんので,本ウェブページではこの事項を含めたFD1137Dの分解の手順と簡単な修理の仕方について説明します.

■シャーシのネジを外す
天板(シャーシの上蓋)のネジと本体フレーム固定用金具のネジを外します(白丸の部分).FDDを正面から見た場合右側に位置する固定用金具にはMR,左側に位置する固定用金具にはMLの刻印があります.天板およびシャーシ下部とフロントベゼルの噛み合わせがどうなっているかよく確認しておいて下さい(緑四角の部分).


FD1137D,FD1138T,FD1139Cなどのアルミニウム薄板製シャーシのFDDの分解作業では,金属製の工具を用いると多かれ少なかれシャーシに傷を付けてしまい,また特にこの種の作業に不慣れな場合にはシャーシの一部を変形させてしまいがちです.これについては仕方のないことと割り切ってしまうのがよいでしょう.金属製のドライバー等の代わりに割り箸等を加工したものを使うなどして作業をすれば,シャーシに傷が付くのを減らすことができるかもしれませんが,筆者はユーザー自身が自分のFDDをメンテナンスする際にはそういった事柄にまで神経を尖らせる必要もなかろうと考えます.むしろ使いやすい工具を使用して作業を容易にし,不具合を確実に解消する方向を目指す方が生産的でしょう.

■シャーシを上下に分離する
天板側面後部の隙間にマイナスの精密ドライバを差し入れるなどして天板後部を上側に少しずらします.


それが終わったらFDDの背面と反対側の側面でも同様の作業を行って天板を後ろ側から浮かせていき,最後にフロントベゼル上部の噛み合わせ部分から天板を慎重に引き抜き,天板とシャーシ下部とを分離します.FDDの背面では天板の電源コネクタの穴の下にツメ状の突起があることに注意して下さい(画像の矢印の先).


シャーシが上下に分離された様子です.シャーシ下部の上縁に天板の下縁が乗っている状態になりますが,この時天板を上に持ち上げて外そうとしないで下さい.


天板の下縁がFDDの内側に向けて直角に曲げられた造りになっているため,天板を上に持ち上げるとFDD内部の制御基板も一緒に持ち上がってしまい,フライホイールの取り付けられている基板と制御基板とを繋いでいるフレキシブルケーブルを傷めてしまう恐れがあります.


天板はFDDの背面方向にスライドさせれば安全に外すことができます.



■フロントベゼルとイジェクトボタンを外す
フロントベゼル(FDDの前面パネル)の上部を背面方向に倒すなどして慎重に取り外します.これは開口部の下にある二つの四角い穴にフライホイールの取り付けられている基板の黒いツメがはまることで固定されています.経年劣化によりプラスチックが劣化して折れやすくなっていることも多いので,作業は慎重に行って下さい.


イジェクトボタンは後部のスリットにシャーシ下部の突起がはまることで固定されています.



■制御基板を外す
制御基板を取り外すには,左側面にある四本のケーブルを抜く必要があります.
まず一番後ろの@の4ピンケーブルを抜きます.このケーブルは上下のコネクタの間にマイナスの精密ドライバーの先を差し入れるなどすれば簡単に抜くことができます.次に@・A・Bのケーブルを固定している白いプラスチック部品を外します(下の画像はここまでの作業を行った状態のもの).この時,白いプラスチック部品から@の黒いコネクタを取り外す必要はありません.


次に制御基板を下にしてAとBのフレキシブルケーブルをラジオペンチなどを使って引き抜きます.最後にCのケーブルを抜きます.ケーブルを指の腹でFDD内部の金属板に押しつけながら,制御基板の黒いコネクタを左右から少しずつ押し上げてゆっくり引き抜くとよいでしょう.ケーブルを破損しないよう十分に注意して作業して下さい.

下の画像は,ケーブルを四本とも抜き,制御基板を取り外した状態のものです.



■使用されている電解コンデンサについて
下の画像はP/Nが134-500534-207-0(制御基板はG8BEN,紙のシールには134-836304 890111P 25・0188,シルク印刷では134-836158-9-10とそれぞれ表記)のFD1137Dの制御基板,およびフライホイールの取り付けられている基板(633101D LS-37 KU-0494V-0 の三つの文字列があるが,どれが基板番号なのか不明)のもので,取り付けられている電解コンデンサは,16V-47μF(直径6mm,高さ6mm)の基板貫通型(C1)が1個,6.3V-22μF(直径4mm,高さ6mm)の基板貫通型(C2)が1個,10V-10μF(直径3mm,長さ5mm)面実装型(C60)が1個,16V-10μF(直径4mm,長さ6mm)の面実装型(C11)が1個の計4個でした.


ただし電解コンデンサの種類と個数は同じFD1137DでもそのP/Nにより異なります.例えばP/Nが134-500534-218-0のFD1137D(制御基板はG8BEN,紙のシールには134-836304 910731 P 39・0436,シルク印刷では134-856659-4-5とそれぞれ表記)では,6.3V-47μF(高さ6mm)の基板貫通型(C1)が1個,6.3V-22μF(高さ6mm)の基板貫通型(C2)が1個,10V-10μF(直径3mm)の面実装型(C3,C10)が2個,16V-10μF(直径4mm)の面実装型(C11)が1個の計5個が取り付けられています(このデータと下の画像は試運転さんよりいただきました).
※上に挙げたP/Nが134-500534-207-0のFD1137Dの制御基板にはC3とC10のパターンがありません.


電解コンデンサを交換する場合にはコンデンサのサイズに気を付けて下さい.元々取り付けられていたものと同じか,できるだけ近いサイズのものでないと,FDDの金属部分と干渉してしまいます.

なおFD1137DにはPC-98GSのみで採用されていたものがあり,これは34ピン信号コネクタに電源ピンがに含まれ(従って電源コネクタが独立していません),また制御基板も専用品とのことです(この情報はtshさんよりいただきました).

■フロッピーディスクが奥まで入らない・入りにくい場合の対処
フロッピーディスクを挿入しても中まで(あるいは最後まで)押し込めない,または抵抗が強く押し込みづらい場合には,フロッピーディスクを格納する部分の金具のスライド部分(画像の白丸)のグリスが劣化して粘性が高くなっていることが考えられます(ジャンクオーディオ研究室 --> 旧型 PC --> PC9801DS/U2 を参照).この場合,劣化したグリスを丁寧に除去し,良質のグリスを新しく塗ることで症状を改善させることができます.古いグリスを徹底的に除去するにはブレーキクリーナー[ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8 など]を使用するとよいかもしれません(はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照).またグリスの塗り過ぎと飛び散りに注意して下さい.なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).



■フロッピーディスクが排出されにくい場合の対処
イジェクトボタンを押してもフロッピーディスクが排出されにくい,フロッピーディスクが途中までしか出てこないといった症状が出ている場合には,フロッピーディスクを押し出す機構のグリスが劣化して粘性が高くなっていることが考えられます.上と同様に対処します.


左側の画像の白丸の下側に凹んでいる部分は,フロッピーディスク挿入時と排出時に下の金属板の上をスライドするようになっており,また右側の画像の白丸の軸も,フロッピーディスク挿入時と排出時に,右側で接触している金属板の側面に沿ってスライドするようになっています.この二箇所を中心に処置を行うとよいでしょう.グリスの塗り過ぎと飛び散りに注意して下さい.

FD1137Dにおける不具合としては,フロッピーディスク検出マイクロスイッチの接点の劣化が以前からよく知られています(フロッピーディスクを入れても認識されない,フロッピーディスクを挿入していないのに突然ブブブ…という音がする等の症状が出ます)が,これに対する対処は簡単ではありません.なおこれらの症状はFD1138TやFD1139Cなど他のFDDでも多発します.
 接点復活剤を注入する,外部スイッチに交換する(有限会社フェイスライブス --> Tips --> ★ 未整理 ★ 3.5"FDD改造修理 を参照)などが試されていますが,いずれも根本的な解決法ではありません.フロッピーディスク検出スイッチ自体を修理するという方法もありますが(PC-98 tips集 の フロッピーディスクドライブ関連 の項を参照),かなり難度の高い作業となります.マイクロスイッチを新品に交換してしまうのが最善ですが,筆者は今のところこのスイッチの代用となるスイッチの型番を明らかにできていません.
 なおフロッピーディスクを入れても認識されないという症状は,フロッピーディスク検出マイクロスイッチのプラスチック製の棒状の押下部分がフロッピーディスクの抜き差しによって摩耗して,フロッピーディスク挿入時のスイッチ押下が不十分となり接点間が接触しなくなることによっても起こり得ます(どるこむの過去ログ,[14738] 98UV を参照).

■再び組み立てる
分解時と逆の手順で丁寧に組み立て,動作を確認します.フロントベゼル等のプラスチック部分やフレキシブルケーブルの破損に注意し,また天板とシャーシ下部がフロントベゼルと元通りに噛み合っているか,電源コネクタの穴の下のツメ状の突起が元通りにはまっているかなどにも注意して下さい.

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※FD1137Dには,コネクタの突起が下向き(FD1137Dのラベルから見て反対の向き)の状態でFDDケーブルを接続するようになっています(従ってこのケーブルのコネクタは "反転コネクタ").FD1137Dの信号コネクタは,FD1158Dなどと同じくラベルから遠い方のピンの列が奇数ピンですので(コネクタの種類とピン番号 を参照),"FDDケーブルは突起が上向きになるように接続する" というPC-98のFDDに関する "大原則" から外れていますが,これはFD1137Dのシャーシの信号コネクタ用の開口部では,ケーブルの突起の分のスペースがコネクタの偶数ピン側ではなく奇数ピン側にあるためです.なおFD1137Dでは,電源コネクタの向きも通常の3.5インチFDDとは上下逆になっています(単に上下をひっくり返しただけ.従ってコネクタ内部での+5V端子と+12V端子の位置は通常のコネクタと同じ).これらはFD1137Cでも同じです(かかっくん さんより情報をいただきました).