SCSI籠を必ずしも使用せずに
PC-9801FA/FS/FXとMATE-Aに
SCSI HDDを内蔵させる方法


SCSI籠を必ずしも使用せずに,PC-9801FA/FS/FXとMATE-AにSCSI HDD(注)を内蔵させる方法はいくつか考えられます.ここではそのうち二つについて述べますが,この種の工作,特に前者のようなものは,その気になりさえすれば何とでもやりようがあるものです
 注:本記事では3.5インチHDDを想定しています.SCSI HDDの代わりに,CF-SCSI変換基板などを介してCFや(micro)SDを使用することもできます(こちらを参照).


■CバスSCSIボードを使用する場合
一つ目は,SC-98IIIP等のCバスSCSIボードの基板上に50ピンフラットケーブル接続用のオスコネクタを増設して(注1)利用する方法です(ここ を参照).この場合には,PC-9821A-E10などの専用SCSI I/Fは必要ありません.フラットケーブルの通し方を工夫すれば,HDDはHDD専用ベイ(注2)やファイルスロット内部(注3・4)に取り付けられます(ファイルスロットFDDユニットの製作NEC製PCカードスロット増設アダプタ も参照).PC-9821An/Ap3では,固定の仕方を工夫すれば(注5)CPUの上のスペースにHDD(これらの例ではIDE HDDですが)を設置できるといいます(A-MATEr's BBS 過去ログ その64その69その70を参照).HDDをケーブルの終端に接続するのであれば(すなわちケーブルの端にHDDを接続するのであれば),HDDのターミネータを有効にしておく必要があります.HDDをケーブルの途中に接続し,別なSCSI機器(HDDよりも動作の遅いCD-ROMドライブやMOドライブ等.あるいは2台目のHDD)をケーブル端に接続する場合,後者の機器のターミネータを有効にします(注6・7).

 注1:CバスSCSIボードの外部コネクタに接続したSCSIケーブルをPC本体に引き入れ,50ピンフラットケーブルに変換することも可能ですが(注1.1),この場合は引き入れる場所を工夫する必要があります.例えばSC-98IIIP等であれば,ブラケット(Cバスボード背面の金属板)にあるセカンドバスボードの外部コネクタ用に用意されている開口部が利用できます.他に,SCSIボードのブラケット自体を取り外し,空いたCバススロット開口部から引き入れる(注1.2),SCSIボードを上から二段目のスロットに装着し,最上段のスロットの開口部から引き入れる,SCSI専用スロット開口部から引き入れる(SCSI専用スロットと電源ユニットの間の金属板を取り外す必要があります)といった方法も可能です.工作の見映えを重視する場合には,各々の開口部に,50ピンフラットケーブルが接続されている(あるいはそれに接続できる50ピンオスコネクタを持つケーブルが接続されている)50ピンSCSIメスコネクタ(注1.3)を取り付け,それとCバスSCSI I/Fの外部コネクタとを外付け用SCSIケーブルで接続するなどすればよいでしょう(注1.4).
   注1.1:最も簡単なのは,両端に50ピンコネクタのついた外付け用SCSIケーブルの一方のコネクタに,外付けSCSI機器などで使用されているケーブル(両端に外部接続用50ピンメスコネクタ,中央に50ピンフラットケーブル接続用メスコネクタを備えたケーブル),あるいはそれの一方の端のコネクタを切除したものを接続して使用することでしょう.


        また一方の端に外部接続用50ピンメスコネクタ,他方の端に50ピンフラットケーブル接続用メスコネクタを備えたケーブルやコネクタが入手できれば,それを利用してもよいでしょう(注1.1.1).
         注1.1.1:この種の製品には現行品もあるのかもしれません(E90さんの2021年9月18日のツイート を参照).
        後者の同等品を作成することもできます.50ピンフラットケーブル接続用メスコネクタのピンアサインは,伊藤のホームページ ~まりもの研究室~ --> Macintosh関係 --> ★Portableの部屋★ こちらを御覧下さい. --> デスクトップ用3.5インチSCSIハードディスクのピンアサイン のものを左右反転したものになります.但しこの資料ではI/OピンとC/Dピンは位置が逆に誤記されていると思われます.またこの資料でいう42ピンの信号はMSGとGNDとされていますが,後者は誤記でしょう.
        また外部接続用50ピンメスコネクタの一般的なピンアサインは,REX-CB32P For PowerBook ユーザーズマニュアルGIMONS DEVELOPER WORKS --> RaSCSI(Rasperry pi As a SCSI target device emulator for X68000) などで公開されていますが,ここではIFC-NNユーザーズマニュアル(DM96041-3-43)とHA-FA02W SCSIインターフェースボードユーザーズマニュアル(TTFM28405 B150294)に基づいたピンアサインも示しておきます.ピン番号の振り方は,コネクタの種類とピン番号のアンフェノールフルピッチ50ピンメスコネクタのものと同じです.オープンとはNCの意です.これを見ると,コネクタののオスメスの違いを別にすれば,外部接続用50ピンコネクタはNarrow SCSI HDDの信号コネクタや内蔵50ピンフラットケーブルのコネクタとピンアサインが同じであることがわかります.


   注1.2:ブラケットを外さずにCバススロット開口部との隙間からフラットケーブルを内部に引き入れている例もあります.外部接続用コネクタがアンフェノールフルピッチコネクタのI/Fを使用した工作ならではでしょう(注1.2.1).HDD用の電源ケーブルは内蔵FDDケーブルから分岐させています.出品者IDがmarito616,オークションIDが n1028153076 のヤフーオークションの出品物(2022年1月1日に落札)の商品説明画像から切り出して1/3(左)と1/4(中央と右)に縮小したものを併置しjpg形式に再変換した画像を引用します.本体はPC-9801FAです.HDD専用ベイに黒い紙か布のようなものが貼られていますが,HDD固定用のマジックテープなどではないようですので,HDDの制御基板をHDD専用ベイの金属フレームから絶縁するためのものかもしれません.HDDの固定方法は不明です(硬めのウレタンスポンジで押さえ付けるなど,いくつかの方法は想像できます).
       注1.2.1:基板上のディップスイッチのタイプ,SCSIコントローラ(WD33C93?)と思われるチップ,基板上のSCSI55N(?)の文字列などから,SASI I/FではなくコンピュータリサーチあたりのSCSI I/Fではないかと予想します.


   注1.3:メーカーや型番は確認していませんが,こういった製品も市販されていました(50ピンSCSIコネクタがメスでなくオスのものもあり,注意が必要です).この種の製品は注1.1のような工作でも使用できます.
   注1.4:Cバスの蓋(スロットカバー)にアンフェノールハーフピッチ50ピンコネクタを2個横並びに取り付けている例もあります(katmaiさんの2021年3月14日のツイート を参照).この場合,一方のコネクタにはターミネータか外付けSCSI機器を接続するはずですので,内蔵SCSI機器のターミネータは無効にします.
      追記:上記のツイートが非公開となり,参照できない状態となりましたので,手元に保存してあったこのツイートの画像から切り出したものを1/3に縮小し90゜回転した後ガンマ補正値を上げてjpg形式に変換した画像を下に引用します(追々記:後日当該ツイートが再度公開となり,画像も閲覧できるようになりましたが,画像の引用は継続します).


 注2:この工作には,どるこむの過去ログ,[799] Ap2内蔵用HDDについて など,多数の先例があります.
 注3:3.5インチFDDモデル・5インチFDDモデルとも,ファイルスロットの天井とファイルスロットバックボード上部との間の隙間から,50ピンフラットケーブルをファイルスロット内部に通すことが可能です(Afについては不明).但しPC本体を分解し,ファイルスロットのあるフレームからファイルスロットバックパネルを一旦取り外す必要がある場合があります.
 注4:PC-9801FAで,CPUの上の空間に SATA-SCSI変換アダプタ(AztecMonster II)+2.5インチSATA HDD を,5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるための金具を加工して取り付けている例もあります(Naopy Hobby Land --> enter --> PC --> 我が青春の九拾八式 を参照).
 注5:Ap3ではPC-9821Xa10やデスクトップ型バリュースターなどの2台目HDD増設用金具[HAMLIN's PAGE --> 筐体関係 --> CASE_4 専用金具 の No.11(PC-9821Xa10などの2台目HDD増設用金具),Xa10,デスクトップ型V13/V200等のHDD内蔵用金具の寸法を参照]が流用できるといいます[スピたま掲示板過去ログNo.17(log017.html)を参照.但しこのログはInternet Archiveにも残されていません].
 注6:50ピンフラットケーブルの先端のコネクタに取り付けるタイプのターミネータを使用してもよいのですが,現在は入手しにくく,入手できたとしても,多くの場合かなり価格の高いものになるだろうと思います.抵抗を並べたもので代用することもできると思いますが,筆者は代用品を作成したことはありません.
 注7:わくわくWANILAND --> PC-98改造記録 --> PC-9821Ae改造 で,ファイルスロットを加工してSCSI CD-ROMドライブを内蔵する工作が報告されていますが,HDD専用ベイに内蔵されているHDDはIDE接続のものであり,CバスSCSI I/Fに接続されているSCSI機器はCD-ROMドライブだけです.

この方法でHDD専用ベイにSCSI HDDを取り付けてみました.HDDの固定用金具としては,SCSI籠やIDE籠のシャーシを利用するのが簡単です.今回はSCSI籠であるPC-9801FA-37を使いました.この場合,HDD用の電源をカードエッジ基板以外,例えばCバスバックボードの裏(注1)などから取れば,カードエッジ基板は不要です(注2).
 注1:Cバス端子のB21・B22が+12V,A49・A50・B49・B50が+5V,A1・A11・A21・A31・A41・B1・B11・B21・B31・B41がGNDです.またPC-9821Ap3/As3のファイルベイモデル,またファイルベイアダプタを装着したAp3/As3などでは,5インチFDD電源ケーブル接続用コネクタからHDD用の電源が取れます(を参照).
 注2:電源供給用にカードエッジ基板を新たに作成してもよいでしょう.この場合,端子が60本揃っている必要はなく,電源端子とGND端子(FILEINO端子もあったほうがよいでしょう)があれば十分ですが,LEDカソード端子(アクセスランプ用の端子.HDDのLED接続用コネクタと結線する必要あり)もあった方がよいでしょう.GND端子は1個だけでなく,複数個にして下さい.何らかの基板から切り出す場合には,不必要な端子はパターンカットするか,端子自体を削り取るとよいでしょう.

今回はカードエッジ基板からHDDの電源を取ることにしたため,カードエッジ基板がついたままのSCSI籠を使いました.カードエッジ基板のSCSIケーブルは使用せず,HDDには別に用意した50ピンフラットSCSIケーブル(特性不明の50ピンフラットケーブルでなく,きちんとしたSCSIケーブル)を接続します.SCSI籠は蓋の部分を取り外します.フラットケーブルを取り付けた状態です.なお今回はフラットケーブルをHDD専用ベイの天井の比較的小さな開口部から外に出しましたが,HDD専用ベイ側面の大きな開口部から外に出すことも可能です(こちらの方が楽でしょう).


CバスSCSI I/FにはSC-98IIIPを使用しました.SCSI I/Fにフラットケーブルを接続し,PC本体に組み込んだ様子です.


画像左はAp/U2の場合です.この機種(AsとAeでも同じでしょう)では,フラットケーブルをCバスボックスの天井とCバスバックボード上部との隙間からしかCバスボックスの外に出すことができません.また画像中央はAs3/C8Wの場合であり,PC-9821A2-E02用に用意されているCバスボックス天井の小さな開口部からしか,フラットケーブルをCバスボックスの外に引き出せません(Ap2/As2/An/Ap3でも同じ).またいずれの場合もSCSI I/FはCバス最上段のスロットに装着しなければ,フラットケーブルをCバスボックスの外に引き出すことができません.またAs2等では垂直方向のスペースの関係で,SCSI I/Fに増設する50ピンオスコネクタには,ピンが上向きでなく横向きとなったL字型のコネクタを選択しなければ,ケーブルとI/Fの取り付けに非常に難渋することになってしまいます.また画像右はFA/U2ですが,この機種(FSとFXでも同じでしょう)では,MATE-Aに比べてCバスボックスからのフラットケーブルの引き出しが行いやすい構造をしています.なお今回は,継続して使用するつもりもなかったため,フラットケーブルとしてメルコ製のPCI SCSI I/FであるIFC-USLPに同梱されていた90cmのものを使いましたが,この工作を行う上では明らかに長すぎます.フラットケーブルを新規に入手する場合には,もっと短いもので十分です.なお今回はフラットケーブルの一部を折り重ねましたが,このようにするとノイズの影響が大きくなるとも言います(PC-9821/9801スレッド Part80の801-806番の投稿を参照).

SCSIフラットケーブルは50本ものケーブルが横並びに融着されているため,しなやかに曲げたり丸めたりすることが難しく,あまり扱いやすいものではありません.取り付けの際にはこの点に注意して下さい.またPC本体のフレームは切断面の縁が処理されておらず,鋭いままであり,ケーブルの被覆を傷つけやすいため,これを防ぐための養生が必要です.また作業時にはこの縁で手を切ったりしないように(割に深く切れることがあります)十分気を付けて下さい.フラットケーブルの代わりに,個々のケーブルを束ねて被覆で覆ったタイプのSCSIケーブル使えるならば,ケーブルの取り回しも遥かに楽ですし,また出来栄えもよりすっきりしたものになります(Naopy Hobby Land --> enter --> PC --> 我が青春の九拾八式 を参照).


■Ap3/As3のファイルベイモデルの場合
二つ目は,PC-9821Ap3/As3のファイルベイモデル,およびこれらの機種のファイルスロットモデルでPC-9821A3-E01(ファイルベイアダプタ)を装着したもの限定となりますが,ファイルベイに装備されているのSCSIコネクタを利用するというものです.この場合は基本的にPC-9821A-E10などが必要となります.

下はPC-9821As3/C8Wのファイルベイバックボード(G8SPV A3・)で,これは5インチFDD電源ケーブル接続用コネクタがパターンのみである点を除けば,PC-9821A3-E01(ファイルベイアダプタ)と同等です.


 A = ファルベイ機器用電源ケーブル用コネクタ
 B = 5インチFDD用電源ケーブル用コネクタ(パターンのみ)
 C = ファルベイ機器用IDEケーブル用コネクタ
 D = 内蔵FDD用ケーブル接続用コネクタ
 E = ファルベイ機器用SCSIケーブル用コネクタ
 F = オーディオケーブル用コネクタ
※AとBは+5V/+12V出力ピンが通常のコネクタと逆になっています(+5Vと+12Vのピンが通常とは逆の内蔵機器用電源ケーブルを参照).
※※Fは01側(画像では右側)のピンがR,03側(画像では左側)のピンがLで,中央のピンがGNDです.PC-9821As3/C8Wなどに内蔵されている純正CD-ROMドライブ(PC-CD60D)では,オーディオケーブル接続用コネクタのピンが左からLGRの順ですので,オーディオケーブルが180゜捻られた状態で(LとRのピンの位置がファイルベイバックボードとPC-CD60Dで左右逆)接続されています.このオーディオケーブルの画像がLynfieldさんの2022年11月19日のツイート にあります.


なおIDE籠のカードエッジ基板はバッファIC,集合抵抗,チップコンデンサが載った配線板であり,実際に結線の状態も調べてありますが,カードエッジ部分の作成が容易でないため資料は公開していません.IDE籠のカードエッジの端には他の箇所よりピンの間隔が狭くなっているところがあり(SCSI籠とIDE籠のカードエッジ基板の違い の画像ではカードエッジの右端の4本のピン),このためCバスボードのカードエッジ部分を単に削るなどしただけでは相当品を作成することはできません.

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