SCSI籠のカードエッジ基板のピンアサイン


PC-9801FA/FS/FXやMATE-AのHDD専用ベイやファイルスロットにSCSI HDDを内蔵させるにはいわゆるSCSI籠が用いられます.下はPC-9801FA-37のケースの内部の様子です.ここではアクセスLED用ケーブル(基板最下部の2ピンコネクタと,SCSI HDDのアクセスLED用ケーブル接続用コネクタを接続.なお2ピンコネクタは下側がカソード)は欠けています.


このSCSI籠の基板はカードエッジを持つ単なる配線板です.下はPC-9801FA-37のカードエッジ基板G8LDB(G8LDB 02・,P/N 134-857856-0)です.


筆者がテスターで調べたG8LDBのカードエッジコネクタのピンアサインです.カードエッジコネクタのピン番号は,正立方向のSCSI籠において内蔵HDDを左,基板を右に見た場合,上から順に1,3,5……55,57,59,また逆に見た場合,上から2,4,6……56,58,60と定義します.カードエッジ基板の寸法については各社製SCSI籠・IDE籠のカードエッジ基板の形状と寸法を参照して下さい.また嵌合面から見た場合のフラットケーブルSCSIコネクタ(50ピンフラットケーブルメスコネクタ)のピン番号は下の通りとします.



これらの結線は, 小高輝真 (1993). PC-9801FAに富士通M2624FA 520MバイトHDDを内蔵する 98パワーアップ改造名人 技術評論社 pp.169-175. に掲載されている資料のものと等しくなっています.また小高 (1993) によれば,49番ピンの信号名はFILINO(注)といい,これが(本体側で)GNDに接続されているとPC-9801FAの空冷ファンの風量が増加するといいます.
 注:CoralテクニカルシリーズNo.7 PC-9800データブック1 ――メモリカード・拡張カードスロット・ファイルスロット編―― コーラル(1992年刊) と アスキーテクライト(編) 改訂版 PC-9800シリーズ テクニカルデータブック HARDWARE編 アスキー(1993年刊) では,ともにFILEINOという表記になっています(ファイルスロットSCSIコネクタのピンアサイン を参照).

50ピンSCSI HDDのコネクタのピンアサインは,伊藤のホームページ ~まりもの研究室~ --> Macintosh関係 --> ★Portableの部屋★ こちらを御覧下さい. --> デスクトップ用3.5インチSCSIハードディスクのピンアサイン などを参照して下さい.但しGNDピンについてはすべてのSCSI HDDがこの通りではないようで,例えば上記の書籍の記事によれば,富士通M2624FAのSCSIコネクタでは23,24,25,27,28がNC,1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,20,21,22,29,30,31,33,34,35,37,39,41,43,45,47,49がGNDとなっています.

49番ピンまでのSCSIコネクタの奇数番ピンは,NCである23番ピンを除き,すべてカードエッジコネクタのGNDに接続されています.一方,サードパーティ製品ではGNDピンの少ないものがあります.例えばLogitec製LHD-S120HPでは23と49がNCとなっており,日本TEXA製TR-FA240では20,22,24,28,30,34が,またICM製INTER-120FEでは,19,20,21,22,23,24,27,28,29,30ピンがGNDとなっています.但し後二者における49番ピンまでのSCSIコネクタの奇数番ピンのうちには,HDDのGNDピンと接続されるものもあります.

この基板のカードエッジは,Cバスボードなどのものより端子の長さは短く幅が広くなっています(但しLHD-S120HPでは,Cバスボードのものと同じ幅となっています).しかしピンの間隔はCバスボードのものと同じですので(注),不要なCバスボードからカードエッジ部分を切り出して加工すればこの基板と機能的に同等のものが作れるはずと考え,実際に試作してみました.試作品ですので基板のネジ留めは考慮しておらず,また半田づけした部分もむき出しのままとなっています.またPC-9801FA-37では電源ケーブルはカードエッジ基板の上側寄りに設置されていますが,この試作品では下寄りに設置しました.アクセスLED用のケーブルも取り付けておりません.結論ですが,このような乱暴な工作品でもPC-9821Ap2+PC-9821A-E10+IBM DPES-31080できちんと動作します.なお画像中のオレンジ色のものは単なるケーブルです.
 注:アスキーテクライト(編) (1993). 改訂版 PC-9800シリーズ テクニカルデータブック HARDWARE編 アスキー によれば,Cバスボードでは,1つの端子の左端から隣の端子の左端まで(端子のピッチ)が2.54mm±0.05mmで,端子自体の幅(短辺)は1.75mm±0.05mm,端子自体の長さ(長辺)は7.62mm±0.2mmです.なお基板の厚さは1.6mm×0.2mmです.またCoralテクニカルシリーズNo.7 PC-9800データブック1 ――メモリカード・拡張カードスロット・ファイルスロット編―― コーラル(1992年刊) によれば,ファイルスロットSCSIコネクタ接続用のカードエッジ基板の端子のピッチ(SCSI籠のカードエッジ基板のものと同じ)は,やはり2.54mmとなっています.


Cバスボードのカードエッジ部にはデザインが何種類かありますので,基板上のパターンを利用できるものを選ぶと作業が楽です.下の画像の上二つのカードエッジでは,エッジのパターンから信号が基板上に引き出されているためケーブルの半田付けが容易です.一番下のようなカードエッジは,この種の工作用にはあまり向きません(使用できないわけではありません).



Cバスボードを使って自作する際には,基板上のパターンカットや追加配線が必要となります.また電源やGNDはカードエッジの端から直接引いてくるとよいと思います.カードエッジ基板の寸法については各社製SCSI籠・IDE籠のカードエッジ基板の形状と寸法を参照して下さい.なおCバスボードには多層基板のものがあるようですのでご注意下さい[主人公と仲間たち --> SCSI籠の基板を自作してみた(2011年4月3日の記事)自家製SCSI籠が完成した(2011年4月9日の記事) を参照].(注1・2・3)
 注1:古めの機種のCバス籠のバックボード(Cバスボードを挿すコネクタのついた基板)のエッジ部分も,カードエッジコネクタのパタンが全部揃っており,スルーホールもついています.また古いPC/AT互換機用のISAバスボードの端子は,片面31本×両面のブロックと,片面18本×両面のブロックとに分かれていますが,端子の間隔はCバスボードのものと同じですので,前者のブロックを切り出したものも,このカードエッジ基板を自作する際の材料にできる可能性があります,これは恐らくISAバスボードでも同じでしょう).但し端子が全部揃っているISAバスボードは種類が少ないと聞きます.またパターンカットも必須でしょうし,端子の根元にスルーホールが付いていない場合には,端子の端にコードをハンダづけするなどして信号を引き出す必要があります.なおISAバスボードにも多層基板のものがあるかもしれません.
 注2:ファミコンのカセット(カートリッジ)のカードエッジ部分も片面30本(両端の端子には加工が必要な場合があるかもしれません)×両面の端子を備えており,端子のピッチもCバスのものと同じ2.54mmですが,基板の厚さは1.2mmといいます[GAMERnium --> ファミコン カートリッジコネクタ仕様(2016年9月24日改訂) を参照].ボール紙を3枚重ねたもの(厚さ1.1mm)がファイルスロットFDDユニットのカードエッジが刺さる44ピンカードエッジメスコネクタ(端子が板バネ状になっています)に刺さりましたので,ファミコンのカセットのカードエッジ部分もここに装着できると思います.しかしファミコンのカセットは接触不良の多さで知られているそうで(これはカセットを頻繁に抜き差しするためなのか,元々の構造にも問題があるためなのか,筆者には分かりません),カードエッジ部分の流用は奨められないとのコメントをかかっくんさんよりいただいています.
 注3:カードエッジ部分だけなら,aitendoの P-PLG220L-60A という片面30本端子×両面の製品を加工して使用することもできそうです(籠への固定には工夫が要ります).

SCSI籠のカードエッジ基板はIDE籠のものと交換しても使えることが知られています(各社製SCSI籠・IDE籠のカードエッジ基板の形状と寸法 を参照).PC-9801FA-35/37などでは,内蔵されているドライブのネジ穴が現行の規格のものと異なるため,ドライブの換装にあたっては,カードエッジ基板をIDE籠に移すことも行われていました.もっともPC-9801FA-35/37でも,二箇所(フロント側の両脇)だけならネジ穴が現行規格のドライブをネジ留めできます.筆者はこのやり方でPC-9801FA-35のケースにSeagate ST32430Nを固定しています.参考までに,下にPC-9801FA-37(左:横ネジで固定)とICM製のINTER-120FE(右:底ネジで固定,ネジ穴の位置は現行規格)の画像を示します.



SCSI HDDの代わりに,CF-SCSI変換基板などを介してCFや(micro)SDを取り付けることもできます(IDE籠では,CF-IDE変換基板を使用してHDDをCFで置き換える工作の例が多数報告されています).Microdriveの使用報告もあります(四谷@VM4さんの2022年4月8日のツイート を参照).変換基板は軽く,またCFや(micro)SDはHDDと異なり可動部分を持たないため,周囲との絶縁をきちんと行えば,ケース部分に一箇所か二箇所ネジ留めするなどの半固定状態であっても,固定の仕方としては十分でしょう.cyber garage --> Blog --> NEC PC-9801FA + Henkan Bancho(2015年5月7日の記事) や,めーちゃんさんの2018年5月13日のツイートに実際の工作例があります.このケースでは,CF-SCSI変換基板として,変換番長PROが使用されています.SCSI2SD[いくつかのメーカーの現行製品あり.メーカー直販やAliExpress経由なら\8,000-\10,000程度で購入可能といいます(注2)]やI・Oデータやメルコの一部の外付けHDDで使用されていたIDE-SCSI変換基板とCF-IDE変換基板を組み合わせることもできるかもしれませんが(注1),この種のものには "相性" の問題(注3・4・5・6・7・8・9)があることがで指摘されています[MCtekさんの2020年11月3日のツイート(12345),地球クライ シスかな処は無い。(FX-8800P/WSL) ~人生は 恥の上塗り 曼珠沙華~ --> PC-486GRにLHA-301を載せてみた。(2010年3月21日の記事)などを参照.またTakeruさんの2022年5月11日のツイート(12)なども参照].
 注1:IDE-SCSI変換基板を使用して,ファイルスロット籠にSSDを取り付けた例もあります(ex709さんの2021年8月12日のツイート を参照).
 注2:PC-9821/9801スレッド Part89の938番の投稿によれば,Inertial CcomputingはSCSI2SDの日本への発送も行っているといいます.
 注3:RaSCSIとRaspberry Pi Zero WH等や[いぐろまさよしさんの2021年7月10日のツイート(12345) や 焦がしエクレアさんの2021年12月2日4日のツイートを参照],ArdSCSino-stm32(BlueSCSI)とSTM32F103C8(STM32F103C8T6? BluePill)などを取り付けることもできると思われますが[いぐろまさよしさんの2021年9月20日(12)・28日(1234567)・10月1日 のツイートなどを参照],筆者にはこの種の製品に関する知識が全くありません.
 注4:この種の "相性" 問題は,機器を実際に取り付けて動作テストを行った時に初めて明らかになるケースが少なくないようです."相性" というのは随分曖昧な表現であり,不具合には必ず特定の物理的・電気的な原因が存在するはずなのですが,ユーザーの手によってはそれの特定が困難ないし不可能と判断された場合に,便宜的にこの表現が使用されます.なおストレージ機器の "相性" 問題は,PC-98やエプソン98互換機に限った話ではなく,X68000その他のPCでも発生します.
 注5:"相性" の問題,多段変換,すなわち複数の変換基板を繋ぎ合わせて使用する際に特に顕著となるともいわれます.
 注6:バッファロー製CFであるRCF-Xは,I・Oデータやメルコ製の一部の外付けSCSI HDDユニットで使用されているIDE-SCSI変換基板でSCSI変換した場合,容量パラメータの異常が生じやすく,実質的に使用できません(リサイクル掲示板の2021年4月過去ログの CF-IDE-SCSI変換時代のSCSI I/F スレッド を参照).なおI・Oデータ製HDVS-UMIのDE-SCSI変換基板では,そもそもCFが使用できないとの報告もあります[第三研究所 --> 広報課 --> 電算機研究棟ゲストブック の Re^2: SCSI-IDE IDE-CF SSD化(2021年4月4日の投稿) を参照].
 注7:SV-H98でSSDを使用する場合,IDE-SCSI変換基板がCAIS-3チップ(?)を使用したメルコのDSCUX2-AA基板では不具合が発生したが,HIMAWARIチップを使用したI・OデータのSCSI-IDE-8C基板では問題なかったとの報告があります(ex709さんの2021年8月12日のツイート を参照).動作マージンの関係なのか,メルコの製品の基板類には他に流用しにくいとの印象もあるといいます(片瀬水さんの2021年8月12日のツイート,げしょさんレトロ垢さんの2021年8月12日のツイート を参照).
 注8:本記事にまだ組み込んでいない情報も大量に含んでいますので,PC-98 tips集 の "ハードディスク・IDE HDDの代替としてのCF・システム起動可能なRAMドライブ等関連" の項も参照して下さい.
 注9:この種の変換基板はディジタルノイズ源ともなり,内蔵音源の音質などに悪影響を及ぼしうるとの指摘もあります(PC-9821/9801スレッド Part86の178番の投稿を参照).

SCSI籠(IDE籠も同じ)は前面下の突起部を本体のフレームにネジ留めすることで本体に固定されます.籠の部分がHDD専用ベイにぴったりと収まるように作られているため(そのため引き抜き用の針金状の取っ手がついています),この一箇所をネジ留めするだけで完全に固定できるようになっています(注).
 注:筆者所有のPC-9801FA-37の一つは,籠の半分(蓋に相当する部分)を欠いていますが,PC本体を横置きにしていることもあり,この突起部をネジ留めするだけで実用上問題なく固定できています.


CF-SCSI変換基板,あるいはそれのマウンタ状のものに,この突起部分に相当するネジ留め用の金具(プラスチック製でもよいでしょう)を作成して取り付けることができれば,"籠" すなわちケースの部分は必ずしも必要ではないでしょう.この場合,通常の使用では,本体に取り付けられたカードエッジ基板がひとりでに抜けてしまうこともそうはないでしょうから,カードエッジ基板の固定については(電源ピンを含むので不安がないわけではありませんが)特に考えなくてもよいかもしれません.カードエッジ基板の固定に不安があるならば,CF-SCSI変換基板とカードエッジ基板を,上記のネジ留め用の金具を一方の端に取り付けた板状のものに固定するという方法もあるかと思います.サイズの細かいところは,実機に合わせながら調整すればよいでしょう.調整時・取り付け時には,本体のルーフカバーを開け,HDD専用ベイ側壁の開口部から中の様子を見ながら作業すればよいかと思います.参考までに,PC-9801FA-37を正立時に後ろ(カードエッジ側)から見た際の寸法を示します.左側がルーフカバー(PC本体の蓋)側です.水色の数値(18.2mm)はカードエッジ基板の厚さの分を含んでいます.またPC-9801FA-37の前面下部のネジ穴(上の図を参照)からカードエッジの端までの長さは190mmであり(ネジ穴は籠の前面から1mm程度後ろ側に位置します),"籠" の幅は48.5mmです.


追記:カードエッジ基板取り付け部分を欠く金具を "固定ディスク専用スロット用3.5インチ機器取り付け用金具" として自作した例があります[ちゃんご56さんの2022年4月12日のツイート(12)を参照].この金具では前面に開口部が設けられており,メディアの交換を行う必要のある機器(MOやFDD)も取り付けることが可能となっています.

5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるためのマウンタ(側面の高さが28mm以下,あるいは加工してその高さにできるもの)に若干手を加えれば,同じようにしてファイルスロットにCF-SCSI変換基板を内蔵することも可能です(勿論HDDを内蔵することも可能です).これについてはファイルスロットFDDユニットの製作 を参照して下さい.モーターなどの可動部を持たず,サイズも重量も大したことのない一枚物の基板を本体内部に取り付けることは,内部の空きスペースが広く,フレームの縁か多く露出しているPC-98では,その気になれば何とでも出来るものです.


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