ファイルスロットFDDユニットの製作


ファイルスロットバックボードのファイルスロットFDD用接続コネクタ(注1)に接続する44ピンカードエッジオスコネクタを作成し(注2・3),それをVFOを内蔵したFDDに接続したものをファイルスロット内部に取り付けられるようにすることで,ファイルスロットFDDユニットの機能を持つものを製作することができます.もっとも本物のファイルスロットFDDとは異なり,簡単に着脱できるものではありません.
 注1:下はPC-9801FA/U2のファイルスロットバックボードであるG8KZG 1/2 A4・ 上のコネクタ類です.一番上のものがファイルスロットFDD接続用コネクタ(シルク印刷されている文字はP4)です.MATE-Aのファイルスロットバックボード上のそれぞれのコネクタの位置もこれと同じになっています.


 注2:44ピンカードエッジオスコネクタのピンアサインはPC-FD511Fの内部結線 を参照して下さい.またVFOを内蔵したPC-98用のFDDのコネクタのピンアサインは,FD1158Dのものと同じと考えて問題ありません.GNDピンはFDD毎にわずかに異なりますが,これもあまり気にする必要はありません(VFOあり2モードFDDのGNDピン を参照).
 注3:このカードエッジコネクタの端子のピッチ(1つの端子の左端から隣の端子の左端までの長さ)は2.54mm±0.05mmで,またコネクタ(基板)の厚さは1.6mm×0.2mmであり,これらの値は端子が揃っているCバスボードや古めの機種のCバス籠のバックボード(Cバスボードを挿すコネクタのついた基板)のカードエッジのものと同じであるため,これらの基板からカードエッジコネクタ部分を切り出すことができます.またISAバスボードのカードエッジ部分にも利用できるものがあるかもしれません.いずれも多層基板でないものを選ぶ必要があり,またボードによってはパターンカットなどの加工も必要となるでしょう.SCSI籠のカードエッジ基板のピンアサイン の記事も参照して下さい.またaitendoの P-PLG220L-60A という片面30本端子×両面の製品を加工して使用することもできそうです.エッチングによりカードエッジを自作した例もあります(Zilfhumさんの2020年10月4日のツイート を参照).

下の画像は,ヤフーオークションで出品者IDが Desire_98,オークションIDが e77302803 の出品物(2008年2月23日に落札)の説明に使用されていたものを加工(半分に縮小してjpg形式に再変換)して引用したものですが,ここではPC-9801FA2のファイルスロットに,5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるための金具(注1・2)と,FD1138D(VFOを内蔵した3.5インチ2モードFDD)を使用して製作されたFDDユニットが取り付けられています.このFDDユニットは,機能的にはNEC製PC-9801-F04やLogitec製LFD-31Fと同等のものと,またI/F部分の配線はPC-FD511Fのものと同じと推測されます(注3).ネジ等によってカードエッジ部分をPC本体に固定する構造にはなっていないように見えます.カードエッジのピンには電源ピンも含まれるので,このことについては幾分不安がないわけでもありませんが,ファイルスロット内部のスペースの狭さもあって,通常の使用ではカードエッジがメスコネクタからひとりでに外れることもそうはないでしょう(注4・5).


 注1:これにはプラスチック製のものもありますが,ここでは金具と一括して表記します(この種のものはマウンタと呼ばれることもあり,筆者も本ウェブページのいくつかの記事ではこの語を用いています).この金具は,汎用品ではあっても,小笠原陽介 (1998). あなたの愛機はまだまだ使える PC-98パワーアップ道場 ソフトバンク, pp.170-185.(4-6 PC-カードスロットアダプタ編) にもあるように,ファイルスロットに内蔵する場合には,若干製品を選ぶようです.筆者が確認したところでは,金具の側面の高さが28mmのものは,逆さまにして装着すればファイルスロットにぴったりとはまりました.またファイルスロットへの固定の仕方も工夫する必要があります.
 注2:このオークション出品物ではプラスチック製のものが使用されていますが,形状と,この出品者による他の出品物(いくつかの出品物で同じ金具が使用されています)の画像から推して,恐らくLogitec製品で使用されていたもの(5インチベイ用ZIPドライブユニット "LZD-250AK" や,PCI接続のPCカードアダプタ "LPM-CA20FP3" などからドライブやカードスロット部分等を取り外したもの),あるいはその同型品と思われます.筆者も同じものを所有していますが,側面の高さは29.4mmであり,ギリギリでファイルスロットに挿入できません.側面の上側の縁を少し削ってあるか,ロット差(?)により側面の高さが29mmよりわずかに低いものを使用したと思われます.
 注3:1997-1999年の時点で(注3.1),既にファイルスロット用FDDユニットを自作するのに必要な信号の情報がWWW上で公開されていました(此処は島知愛香のページです。 --> PC-9821As2/M2のファイルスロットに安くFDDを実装する。).なおこの記事の "3.5"で1.44MBの場合" の項については,ファイルスロットFDD接続用コネクタのピンアサインファイルスロットバックボードのFDDケーブルコネクタ-ファイルスロットFDDコネクタ間結線 も参照して下さい.
    注3.1:ファイルスロットFDDユニット用コネクタのピンアサイン等の情報自体は,それより前の時期(1992-1993年)に,
・CoralテクニカルシリーズNo.7 PC-9800データブック1 ――メモリカード・拡張カードスロット・ファイルスロット編―― コーラル,1992年
・PC-9800シリーズテクニカルデータブック Hardware編 改訂版 アスキー出版局テクライト(編) アスキー,1993年
        において既に公開されています.
 注4:カードエッジ部分には電源ピンもありますので(3.5インチFDDであれば,消費するのは+5Vだけです),カードエッジコネクタが抜けたことで起きる事故が心配であれば,電源ラインだけを別のところから取ってもよいでしょう.HDD籠の電源コネクタ,内蔵FDDケーブル(3.5インチFDD搭載機種ではケーブルの1・3・5番),Cバスのバックボード裏面[Cバス端子のA49・A50・B49・B50(Cバスの信号を参照)],またFA/FS/FXとMATE-Aの5インチFDDモデルであれば,ファイルスロット/ファイルベイバックボード上のFDD電源ケーブル接続用コネクタの裏面(Ap3/As3であれば+5Vと+12Vのピンが通常とは逆の内蔵機器用電源ケーブルを参照)等から+5Vが供給できます.また電源ユニットと接続されるマザーボードコネクタの裏面から電源を取ることもできるでしょう(PU716/PU726/PU729についてはPC-98/エプソン98互換デスクトップ機の電源ユニットのコネクタのピンアサイン を参照).

 注5:カードエッジ基板も自作することになりますので,カードエッジ以外の部分の形状は必要に応じて決めることができます.その気になりさえすれば,ファイルスロットのフレームにカードエッジ基板固定用のネジ穴を開けたり,カードエッジ基板を5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるための金具に固定できるように作ることも可能です.またファイルスロットの天井部分には穴がいくつか開いていますが,この穴はファイルスロットFDD接続用コネクタの近くにもあります.


左は3.5インチFDDモデルのもので,ファイルスロットFDD接続用コネクタに近い位置に大きな穴(緑矢印の先)が,また少し離れた位置に小さな穴(青矢印の先)があります.後者はFDD後部を覆う透明プラスチックカバーの固定用のツメがはまっています.また右は5インチFDDモデルのもので,こちらには小さな穴はありません.カードエッジ基板の固定の際には,これらを利用することもできるでしょう.カードエッジ基板を固定すると言っても,要はカードエッジコネクタがファイルスロットバックボードのコネクタから勝手に抜けないようにできればよいわけですので,実用上は半固定状態でも問題ないでしょう.例えばネジ等で固定する代わりに,ビニールタイ(ビニタイ)のようなものを使って半固定することもできます.またファイルスロットの天井部分とファイルスロットバックボードの間にはわずかながら隙間がありますので,カードエッジ基板に取り付けた紐状のものをクリップやガチャ玉状のものでファイルスロットの天井部分の縁に取り付けて固定することも可能でしょう(ビニールタイなどを使うこともできます).いずれも固定作業は少し大変でしょうが,こういうことはやろうと思えば何とでもなるものです.

このFDDユニットではフロントベゼルのないFD1138Dが使用されていますが,フロントベゼルのあるFD1137Dなどを使用することも勿論可能です(注).またVFO回路を付加すれば,FD1138TやFD1231Tなどの3モードFDDを使用することもできるでしょう(直上の注3も参照).
 注:FD1137Dの使用報告もあります.但しファイルスロットへの固定方法については明らかではありませんPC-9821/9801スレッド Part85の682・683番の投稿を参照.なお画像はこちらを参照).

なおファイルベイ用増設用のNEC製5インチFDDユニットであるPC-FD511Dは,PC-FD511Fに内蔵されているものと同じ薄型FDDであるFD1158Dにフロントベゼル(ファイルベイ開口部に合わせて作られているため,ファイルスロット開口部より幾分大きくなっています)を取り付けたものですが,これはファイルスロットに増設できません.ファイルスロットに入れること自体はできますが,フロントベゼルが2台目の内蔵FDDと一部干渉し,また本体のフロントパネルとも干渉するため,フロントパネルを取り付けることができません.またフロントベゼルのない通常のFD1158Dをファイルスロットに入れた場合にも,本体のフロントパネルをきちんと装着することができません(注1・2).外付けFDDユニット(アクセル製Powerdisk MODEL FDC511Aや加賀電子製TF502A等)で使用されているFD1158Cのフロントベゼルを取り付けたFD1158Dでも同様です.
 注1:PC-9801FA2に内蔵されている通常のFD1158Dには,フロントベゼル固定用のネジ穴のついた板状突起が前面にあります(黄丸).これが本体のフロントパネルと干渉します.この板状突起はファイルスロットFDDユニットであるPC-FD511Fに内蔵されているFD1158Dにはありません(緑丸).


このため通常のFD1158Dをファイルスロットに内蔵する場合には,この板状突起を折り曲げるか切除する必要があります.またFD1158Dをネジなどでファイルスロットのフレームに固定することは,フレームにネジ穴を開けてしまわない限りまず無理と思います(注1.1).本体のフロントパネルとの干渉の問題があるため,FD1158Dにフロントベゼルを取り付けることも容易ではありません.何らかの形でフロントベゼルを取り付けたFD1158Dをファイルスロット内に固定して使用したいのであれば,ケース(フレーム)部分も含めてPC-FD511Fと同様のものを作ってしまう以外ないのではないかと思います.
   注1.1:但し,本体のフロントパネルのファイルスロット部分の開口部は,ファイルスロット自体の開口部より少し狭くなっているため,本体のフロントパネルを装着した状態でファイルスロットに入れた(前面の板状突起が処理された)FD1158Dは,固定されていなくてもファイルスロット内から外に出ることはありません.
 注2:FD1155Dなどの通常の厚さの5インチFDDは,そのままではファイルスロットに取り付けることができません.ファイルスロットの開口部と内壁の板状突起を根元から削り取るなどすれば,ファイルスロットに差し込むことはできますが(妖しい 南武線快速復活計画 のホームページ --> ラ○ド工房川崎支部たより などを参照),カードエッジ部分がファイルスロットSCSIコネクタと干渉するため,奥まで入れることができません.ファイルスロットSCSIコネクタをファイルスロットバックボードから取り外したとしても,PC本体のフロントパネルのファイルスロット開口部はFD1155Dのフロントベゼルより一回り小さいため,この開口部の縁を削る必要があります.加工の手間は大変なものですが,実際にこの大変な工作を敢行して,PC-921AeのファイルスロットにFD1155Dを内蔵させた人もいます[Zilfhumさんの2020年10月4日(123)・12月28日のツイートを参照](注2.1・2.2・2.3).
   注2.1:CD-ROMドライブを取り付けた例もあります(わくわくWANILAND --> PC-98改造記録 --> PC-9821Ae改造,PC-9821As2改造,"ワイルドで現金な邪念の掃き溜め" の Anのファイルベイ化 その1その2その3その4 を参照).
   注2.2:どるこむの過去ログ,[17896] ファイルスロットにCDD によれば,Ap/As/Ae/As2/Ap2/An/Ap3/As3(Ap3/As3はFDDモデル)では,3.5インチFDDモデル・5インチFDDモデルともに,FDD-ファイルスロット-HDD専用ベイ部分のフレームが相互に交換可能といいます(但し形状は完全に一緒というわけでもなかった筈です:).Afでもそうではないかとの見解もあります(A-MATEr's BBS 過去ログ その0を参照).従ってこの加工を行ったフレーム部分を他の機種に移し替えることもできるでしょう((わくわくWANILAND --> PC-98改造記録 --> PC-9821As改造 を参照).
   注2.3:FDDをファイルスロットの外に設置して構わないのであれば,ファイルスロットの加工なしでFD1155Dなども動作させることは可能です.44ピンカードエッジオスコネクタ からの信号と電源ラインを延長してFDDに接続するだけです.外付けFDDが1ドライブのもので十分(かつAp2/As2/An/Ap3/As3では1MB FDD I/FにCバススロットを1基占有させたくない)ということなら,見映えの問題を別にすれば,このような選択肢もありうるでしょう.また引き出した信号ラインにドライブが1基の外付けFDDを接続することもできるかもしれません(VFOありFDDの外付け化 を参照).

5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるための金具(以後5インチベイ用金具)を使って,ファイルスロットに3.5インチFDDを取り付けてみました(注1・2・3・4).この目的で流用できる5インチベイ用金具は,側面の高さが28-29mmまでのものに限られます.また5インチベイ用金具は上下を逆にしなければファイルスロットに入れることができません.ここら辺りの事情については,NEC製PCカードスロット増設アダプタ を参照して下さい.今回は5インチベイ用金具として,メーカー不明の "3.5-5KIT PA-008" という製品を使用しました.側面の高さが28mmのものです.これは金属製のフレームを使用しているため,穿孔等の作業が面倒なのですが,手持ちの5インチベイ用金具で今回の工作に回せるものがこれしかなかったため,やむを得ず使用しました.プラスチック製のフレームの製品は,安価に入手できる上,穿孔や切断等の加工も容易ですので,3.5インチ機器を固定する部分の形状が工作に向いているものが入手できるのであれば,そちらを使用する方がよいでしょう.
 注1:この工作は,FDDを1台しか内蔵していないMATE-A[いわゆるHDDモデル(注1.1)]で,VFOなし異種FDD内蔵用ケーブル の "(3) FD1138T内蔵機種にFD1138TとFD1231Tとを内蔵させるためのケーブル" を使用して,フロントベゼルの付いた(あるいはPC/AT互換機用のFD1231Tから外したフロントベゼルとイジェクトボタンを取り付けた)FD1231Tを2台目の内蔵3.5インチFDDとしてファイルスロットに取り付ける場合にも応用できます.またフロントベゼルの問題はありますが,FD1138T 2台内蔵用ケーブルを使用して,2台目のFD1138Tをファイルスロットに取り付ける場合にも応用できます.
   注1.1:Afでは内蔵FDDケーブルに接続された2台目のFDDは認識されず(大熊猫のぺぇじ --> HDDモデルなA-MATE数機種の2FDD化 を参照](注1.1.1・1.1.2),またAp3/As3のHDDモデルはファイルスロットでなくファイルベイを備えているため,これらの機種は除きます.ファイルベイに3.5インチFDDを内蔵させる方法については内蔵3.5インチFDD(2台目)増設用キット の "PC-FD321DH" のところを参照して下さい.
       注1.1.1:PC-9821/9801スレッド Part86の649・650番の投稿 によれば,2台目のFDDの認識自体はするが,正常動作はしないといいますので,AfでもDS1信号自体は出力ないし生成されている可能性があります.なお公開されずに終わったようですが,零工房ホームページへようこそ! --> 旧ホームページ(初代)はこちらから --> 工作室 に "内蔵FDDの2台化(工事中)" の見出しがあり,Afに2台のFDDを内蔵させる工作に成功した例があったものと思われます.[追記:First Point(ここはNECと何らかの関連を持つショップと聞いていました)で,Afに2台のFDDを内蔵させるサービス(受付のみか実際の作業も含むかは不明)が行われていたとのことです(A-MATEr's BBS 過去ログ その9を参照)].
       注1.1.2:Afに2台のFDDを内蔵させることに成功したとの報告が現れました[おふがおさんの2022年4月23日のツイート(12)を参照].
 注2:同様の方法でSCSI接続のMOドライブやHDDもファイルスロットに取り付けることが可能です.後者の場合には,5インチベイ用金具のフロントベゼルの開口部を塞ぐか,開口部に通気用の部品を取り付けるか,フロントベゼルを取り外すか切除するかすればよいでしょう(注2.1).5インチベイ用金具のフロントベゼルを取り外すか切除してしまえば,5インチベイ用金具を上下逆に取り付ける必要もなく,従って下で述べるような固定具を作成する手間も要りません(ファイルスロットの開口部には,元々の蓋をはめればよいでしょう).詳しくはNEC製PCカードスロット増設アダプタ を参照して下さい.信号コネクタについてはSCSI籠のカードエッジ基板のピンアサイン を参照して下さい.なおファイルスロットバックパネルのSCSIコネクタは,本記事の一番上の画像の上から二番目のコネクタ(シルク印刷されている文字はP2)です.
   注2.1:フロントベゼルが必要ないのであれば,アルミ板,アルミアングル,プラスチック板,プラスチックアングルなど適当な材料を使って固定用の部品をを自作することもできます.この場合,3.5インチ機器をファイルスロット内部に何らかの形で固定できさえすればよいので,製作の自由度は非常に高くなります[例えば,3.5インチ機器はファイルスロットの中央に設置させなければならないという固定観念を捨てれば,左右どちらかに寄った位置でファイルスロット内部に固定しても動作上全く差し支えないということに気が付くでしょう(ファイルスロットの蓋に隠れて外部からは見えないわけですので,"見映え" といった点でも問題ないでしょう)].
 注3:ちゃんご56さんの2022年2月1日(12)・3日(123)のツイートに,ファイルスロットに3.5インチ機器と薄型光学ドライブを取り付けられる金具の作成報告があります.
 注4:ファイルスロットに3.5インチ機器(MOドライブ)を取り付けるためのマウンタを3Dプリンタで作成した例もあります(98好きさんの2023年11月5日17日のツイートを参照).

取り付けるFDDは,フロントベゼルを備え,かつVFOを内蔵したFDDであるFD1137Dを想定しましたが,筆者の所有するFD1137Dは,磁気研究所製(?)の外付けFDDユニットである "PC Line Max II 3.5 INCH 2DD/HD FDD" に内蔵されている1台だけであり,作業中に万が一破損でもすると今後必要となった際に困るため,今回の工作ではフロントベゼルの位置を揃えた際に側面のネジ穴の位置がFD1137Dのものと等しくなる(大抵の3.5インチFDDはそうなっていると思いますが)Panasonic製JU-257A606PCをFD1137Dに見立てて使用しました.上がFD1137Dで,下がJU-257A606PCです.


FDDは上下逆に5インチベイ用金具に取り付けることになります.すなわち,3.5インチ機器の底面をネジ留めするための突起部分(矢印の先)にFDDの天板を載せます.


この場合,金具によっては3.5インチ機器の側面をネジ留めするための突起部分がなかったり,あってもネジ穴の位置が合わないため,このままではFDDを5インチベイ用金具に固定することができません.そこで固定具を作成します.5インチベイ用金具にも様々な形状のものがありますが,概ね下のようなものを作成すればよいのではないかと思います.これを左右一対分作成し(折り曲げる方向は左右で逆),FDDの側面と5インチベイ用金具の底面にネジ留めします.5インチベイ用金具の底面にネジ留めする部分(赤の部分)の寸法は金具に合わせて決めます.金具によっては底面に梁のような線状の凸部分のあるものがありますが(上の画像を参照),その場合にはその凸部分との干渉を避けるための加工も必要になります.


固定具の材料はアルミ板などの金属製のものでもよいですが,プラスチック製のものの方が加工が楽です.その際,最初から断面がL字型になっているもの(プラスチックアングルなど)を選ぶとよいでしょう.箱状のものから切り出すこともできます(わんくんさんの2023年5月7日のツイート を参照).筆者はあり合わせの材料を使いました.左は故障して廃棄された置き時計の一部で,右はVHSビデオテープの一部です.後者には90゜に曲がった部分があります.これらの材料から切り出した部品をネジで繋げて(注)固定具を作成することにしました.
 注:これはあり合わせの材料を使用したために小さなパーツしか切り出せなかったからであって,十分なサイズのプラスチックアングルなどを材料にすれば,パーツをネジで繋げるなどといった手間は勿論不要です.


使用した工具類です.左はアクリルカッターで,プラスチック板やアクリル板を切断するのに便利です.ホームセンター等で数百円で入手できます(100円ショップの商品もあるかもしれません).この目的では勿論金鋸なども使用できます.これもホームセンターで数百円程度で買うことができます.中央はごく一般的なカッターで,100円ショップの商品です.右は刃の直径が2mmのハンドドリルで,これも100円ショップの商品です.穴開けには一般的な錐を使うこともできます.穴の周囲のバリはヤスリで削ることも,カッターで削り取ることも,爪切りで切ることもできます.


5インチベイ用金具によっては,3.5インチ機器を側面でネジ留めするための板状突起が付いています(画像上段,矢印の先).今回使用した3.5-5KIT PA-008にもこれが付いています.


FDDの側面に固定具を取り付け,それを5インチベイ用金具の底面にネジ留めする場合,この板状突起自体の厚さと,FDD側面と板状突起との間の隙間(遊び)の分だけ,固定具とFDD側面との間に隙間が生じます.この隙間を,今回使用した5インチベイ用金具の場合には左右とも1.5mm程度と見積もり,シチューの素の外箱から切り出したボール紙を2枚重ねたものをFDDと固定具の間に挟むことにしました.なおこの板状突起のない5インチベイ用金具には,3.5インチ機器の底面をネジ留めするための突起部分がかなり大きなものがあります(画像下段).この場合,固定具を取り付けるためにはこの突起部分の一部をを切除する必要があります.あるいはこれと同じ高さでFDDを載せられるもの(仮に "台" と呼びます)を5インチベイ金具の内側に設置できるのであれば,これを全部切除してしまっても構いません."台" はFDDの高さを一定に保つことで,固定具の細かな形状やネジ穴の位置を決定し,また仮取り付け時に微調整を行う際には必要なものですが,一旦固定具が完成し,それを5インチベイ用金具に取り付けた後には必要なくなるため,後から撤去してしまっても構いません.

材料から切り出した固定具の部品です.左の一対はボール紙です.切り欠きは,5インチベイ用金具底面の凸部分やネジとの干渉を避けるためのものです.


今回は5インチベイ用金具に厚い金属製フレームのものを使用したため,5インチベイ用金具への穿孔はハンドドリルの類には荷が重すぎますので,穿孔には卓上ボール盤を使用しました.下は5インチベイ用金具に開けたネジ穴の加工に使用した工具類です.左はテーパーリーマといって,内壁を削って穴を拡げる工具です.中央は金工用の丸ヤスリです.また右は面取りリーマといい,穴の縁のバリを削り取る工具です.いずれも鋼鉄の塊ですので,値段はそれなりに(とは言ってもそれほど高価なものではありませんが)します.プラスチック材料への穿孔ではこれほど大袈裟な工具は必要ありません.


FDDと固定具を5インチベイ用金具に取り付けた様子です.FDDは上下逆に取り付けられていますので,底面が見えています.オレンジ色のものはボール紙の裏面です.固定具を5インチベイ用金具の底面にネジ留めする際には,ネジの頭が5インチベイ用金具の底面から外に出るようにします(一つ下の画像を参照).ネジの長さにもよりますが,ナット側を露出させると,ファイルスロットの天井と干渉して5インチベイ用金具がファイルスロットに入らなくなります.側面の高さが28mmの5インチベイ用金具の場合,金具の底面とファイルスロットの天井との間の隙間は4mm程度です.


5インチベイ用金具をファイルスロットに挿入しているところです.固定具を留めている4個のネジの頭が見えます.


今回の工作で使用した5インチベイ用金具は,ファイルスロットにPCカードスロットアダプタを取り付ける工作で使用したものだったため,ファイルスロットのフレームに固定するためのネジ穴が既に開けてあります.これについてはNEC製PCカードスロット増設アダプタ を参照して下さい.ここでは固定用のネジ穴と固定した状態の画像だけを再掲しておきます.なお別な固定の仕方(固定の強度の点であまり良い方法とは言えません)についてもNEC製PCカードスロット増設アダプタ を参照して下さい.


Ap2/M2に取り付けた様子です.



追記1:5インチベイ用金具の板状突起(3.5インチ機器を側面で固定するためのもの)にはネジ留め用の穴が開いていますので,これとFDDの側面のネジ穴とを繋ぐ固定具を作成することも可能です.


まず幅25mm,長さ110mmのボール紙を,5インチベイ用金具に上下逆にセットしたFDDの両側面にあてがい(一方の側面だけでも十分でしょう),FDDの側面のネジ穴の位置に合わせてボール紙に錐で穴を開け,また5インチベイ用金具の板状突起のネジ穴の縁を鉛筆でなぞってボール紙に印を付け,それに従ってカッターで穴を開けました(画像左).


これを型紙として固定具を作成することになりますが,今回材料とした缶詰の蓋(軟鉄板)は直径が78mmしかなく,FDDの側面に固定するネジ穴は2個しか開けられませんでした(画像右).穿孔は細い釘と金槌で行い,穴の拡張は,失われた柄の代わりにビニールテープが巻かれ,使い潰されて目がボロボロになった上赤く錆びた丸ヤスリ(この工作のために古道具屋で5円で購入)で行ったため,工作が雑です(手元にあるのがこのような酷い工具類でも,その気になりさえすればこの程度の工作はできるということで,今回は敢えてこれらを使ってみました).切断は大きめの普通のハサミで行いました[内蔵3.5インチFDD(2台目)増設用キット を参照].なお缶詰の蓋がもう一枚あれば,それを使って同じようにネジ穴が2個の固定具をもう一対作成し,1個のネジ穴が重なるように2枚の固定具を組み合わせれば,ネジ穴が3つある固定具が得られます.もっともネジ穴が2個あれば,固定の強度に実用上の問題はありませんでした.


固定具を板状突起にネジ留めするには,5インチベイ用金具が金属製のものなら,板状突起を外側に開くように根元から少し曲げる必要がありますが(注),あまり大きく曲げるのも不適当ですので,ネジ留めには頭の部分の薄いネジを使用することになります.今回は頭の部分を薄く削ったネジを使用しました.この場合,ドライバでネジを回すことができなくなりますので,ネジによる固定はラジオペンチなどでナットを締め付けることにより行います.
 注:本来であれば,この状態での取り付けを行うように固定具を設計すべきですが,今回は取り付けの際に必要に応じてネジ穴を拡げればよいと簡単に考えました.なお5インチベイ用金具がプラスチック製のものの場合には,板状突起を曲げることができません.隙間の幅にもよるでしょうが,固定具を無理に取り付けると板状突起が破損するかもしれません(筆者は試していません).


FDDと固定具を5インチベイ用金具に取り付けた様子です.固定具は外側に向けて幾分 "(" 状に撓んだ状態になっていると思いますが,固定の強度に問題はありません.なお今回はナット側にワッシャを挟みませんでしたが,これは挟んだ方がよいでしょう.



追記2:薄い金属製の固定具によって,5インチベイ用金具の別な板状突起(3.5インチ機器を底面で固定するためのもの)にFDDを固定する方法も考えてみました.この板状突起にもネジ穴が開いており,このネジ穴にネジを通した場合,ネジの頭を薄く削ったとしても,FDDがわずかに持ち上がるため,FDDのフロントベゼルが5インチベイ用金具の開口部と少しずれ,両者間に隙間ができてしまいます(5インチベイ用金具の開口部の縁を少し削れば対処はできますが,隙間が気になる人もいるでしょう).そこでこの板状突起を薄い金属板で挟んで(くるんで)固定することを考えました.固定具は缶詰の缶の側面(軟鉄板)から作成しました.この固定具の一部を折り曲げ,板状突起を左右から挟むことで,FDDを5インチベイ用金具に固定します.


整形もヤスリがけも行っていない雑な工作ですが,意外にきっちりと固定されます.板状突起を挟んでいる部分の上からガチャ玉等(若干加工する必要があります)で補強してもよいでしょう.しかし微調整がしにくいこと,何度も折り曲げると金属疲労で固定具が折れてしまう等の理由で,この方法によるFDDの固定はおすすめできません.


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ファイルスロットFDDユニットを作成して増設しているのではなく,VFOなし異種FDD内蔵用ケーブル の "(3) FD1138T内蔵機種にFD1138TとFD1231Tとを内蔵させるためのケーブル" と同様のケーブルを用いてFDDを増設しているのかもしれませんが,ファイルスロット部分にFDDを増設した例の一つということでここに載せておきます.ヤフーオークションで,出品者IDが realamo6,オークションIDが b90691539 の出品物(2008年8月14日に落札)の説明に使用されていたものを加工(半分に縮小して切り出した後jpg形式に再変換)して引用します.


機種はPC-9821Ap2/U8Wで,ファイルスロット部分に増設された3.5インチFDDはFD1231Tではないかと思われます.FD1231Tを内蔵した機種のFDDパネル部分を切り抜いたものをファイルスロット開口部のパネルとし,何らかの方法(注)でこのパネルとFDDを固定しています.なおAp2のFDDパネル部分の下半分の長方形に切り抜かれたところにはMOドライブが増設されています.
 注:このパネル部分の四つの丸いものはネジの頭のようにも見えますので,5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるための金具を利用する,ないし簡単な金具を作るなどして,パネルとFDDをネジで固定しているのかもしれません.あるいはファイルスロットのフレーム部分に大幅に手を入れて "ファイルベイ化" しているのかもしれません.これは大変な作業になります.またMOドライブが取り付けられている部分のフレーム[2台目のFD1138T(MOドライブより厚みがありません)増設用の部分フレーム]も,そのままではMOドライブを取り付けることはできませんので,この部分にも加工が施されているものと思われます.この加工も相当な労力を必要とします.なおこの時期のヤフーオークションでは,ファイルサイズの制限が厳しかったのでしょうか,商品説明画像は一般に画像サイズが小さく,JPGノイズも目立ち,あまり鮮明ではありません.上で引用した画像の元画像も例外ではなく,残念ながら工作の細かな部分を知ることはできません.


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