640KB-1.2MBハードウェア切換ボードについて


1MB FDD I/Fに接続された外付けFDDでは,通常2HD(1.2MB)メディアの読み書き(システムの起動を含む)しかできず,2DD(640KB,720KB)メディアの読み書きを行うためには,

 (1) 製品に添付されていた専用のデバイスドライバを使用する(この方法に対応している外付けFDDには,データ読み書き時に2HD/2DDを自動判別して動作するタイプと,2HD/2DD切換スイッチを手動で操作する必要のあるタイプとがあります)
 (2) フリーのデバイスドライバを使用する(外付け3.5インチFDDユニット ― フリー720KB/1.44MBドライバ動作試験結果を参照)
 (3) 外付けFDDにDensity信号ラインを結線する(5インチFDD内部増設用ケーブルVFOありFDDの外付け化1MB FDD I/Fの製作を参照.また下の "※5" も参照)

といった方法がありますが,さらに(4)として,

 (4) 本体の拡張スロットに640KB-1.2MBハードウェア切換ボード(注1・2)を増設し,外付けFDDのケース背面のミニジャックを,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードのミニジャックと接続する

という方法もあります.

 注1:HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_26 640KB-1.2MBハードウェア切換ボード を参照.本ボードは同記事では "640KB-1.2MB自動検出ボード" とも呼ばれています.また本ボードは一般には,2HD/2DD切替ボード,2HD/2DD自動認識ボード,2HD/2DD自動認識切替ボード,2HD/2DD判別用ボード,2DD自動検出ボード,2DD読み書き用ボードなど様々な名前で呼ばれています.なおコンピュータリサーチ(CRC)は,自社製の640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを "コントロールボード" と呼称していました.
 注2:640KB-1.2MBハードウェア切換ボードが添付されていた外付けFDDでは,ケース背面にミニジャックが用意されており(これは中身のドライブのDensity信号ピンと結線されています),これと640KB-1.2MBハードウェア切換ボードのミニジャックとを,両端にモノラルミニプラグのついたケーブル(注2.1)で接続します.これは640KB-1.2MBハードウェア切換ボード上のミニジャックに,このボードにより生成された内蔵FDDのものと等価なDensity信号が出ているためなのでしょう.
  注2.1:信号をプラグの先端部分で受けるようになっていますので,両端にステレオミニプラグのついたケーブルでも構いません.これは100円ショップなどでも売られています.なおコンピュータリサーチは,両端にモノラルミニプラグのついたケーブルを "コントロールケーブル" と呼称していました.

(4) の方法ではCバススロットが一基占有されてしまいますが,古い機種では,(1)−(3)の方法にはない,外付けFDDにセットされた2DDメディアからシステムを起動させられるという利点があります.なお,外付けFDDのDensity端子を,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードのミニジャックでなく,内蔵FDDのDensity端子と接続した場合にも2DDメディアからのシステム起動は可能です(すなわち,外付けFDDにセットされた2DDメディアからのシステム起動は,このボードが装着されているだけでは不十分で,このボードのミニジャックからの出力,あるいは内蔵FDDから分岐されたDensity信号が外付けFDDのDensity端子に供給されている必要があります).
 PC-9801US/FAとPC-9821Ap2の一部では,システムセットアップメニューのFDDの設定[640K,1M,自動(640K),自動(1M)]の如何にかかわりなく,またPC-9821ApとPC-9821Ap2の一部では640Kと自動(640K)の設定で2DDメディアからのシステム起動が可能でした.しかしPC-9801BX3/BX4,PC-9821As3/Xsでは,設定内容により挙動は異なるものの,どの設定でも2DDメディアからの起動はできませんでした(システム起動後のデータの読み書きは640K以外の設定で可能でした.なお640Kの設定では外付けFDD自体が認識されません).
 またPCIスロットを持つ機種では起動は不可能です.これは流星V200とXv13/W16で実際に確認しました.

 ※1.筆者はメーカー不明なAC002とACCEL製のAPC-035では2DDメディアからのシステム起動が可能であることを確認していますが,どの640KB-1.2MBハードウェア切換ボードてもそうなのかは不明です(恐らくそうなのだろうとは思います).なおこれらのボードでは,ボード上にある白いコネクタを外すと2DDメディアからのシステム起動ができなくなります(この場合でも内蔵ドライブからシステムを起動した後での2DDメディアの読み書きはできます.ただしシステムセットアップメニューのFDDの設定が640Kの場合は外付けFDD事態が認識されなくなります).

 ※2.PC-9821ApとPC-9821Ap2では,システムセットアップメニューのFDDの項を上記のものと同じに設定すれば,ファイルスロットFDDでも,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードをCバススロットに装着するだけで2DDメディアからのシステム起動が可能でした(勿論システム起動後の2DDメディアの読み書きも可能でした).またPC-9801FA/FS/FXの時代に発売されたと思われるファイルスロットFDDであるα DATA製AD-F35FA(内蔵されているFDDはFD1138C)では,ファイルスロットFDD用44ピンコネクタに接続するカードエッジコネクタ(ファイルスロットFDD接続用コネクタのピンアサインPC-FD511Fの内部結線ファイルスロットバックボードのFDDケーブルコネクタ−ファイルスロットFDDコネクタ間結線 を参照)に加え,同じファイルスロットバックボード上の100ピンコネクタ(ここには外部バスマスタ用信号を除きCバスの信号と同じものが来ています.ファイルスロットのフロント拡張用コネクタのピンアサイン を参照)に接続する小基板(RD-0087:これには640KB-1.2MBハードウェア切換ボードに載っているPALと同等あるいは類似の機能を持つと思われるGALが載っています)を備えており,やはり2DDメディアからのシステム起動が可能となっています.下はこの小基板の画像です(筆者所有のものは現在行方不明なため,APさんよりいただいたものを加工しました).


AD-F35FAには別なロットのものも存在し,そちらでは,100ピンコネクタは小基板ではなく大きな基板に取り付けられています.ヤフーオークションで出品者IDが kamakura_tukurou_1192,オークションIDが u328525899(2020年1月23日に落札)の出品物の説明に使用されていた画像を加工[元画像から切り出して2/3に縮小しjpg形式に再変換]した画像を引用します.


このAD-F35FAと上に挙げたRD-0087を持つAD-F35FAは,全体の形状も異なっています.RD-0087を持つAD-F35FAは,NEC製のファイルスロットFDDユニットなどと同様に,側面に板バネ付きの黒いプラスチック部品が取り付けられており,これがファイルスロット内部のガイドレール部分にはまるようになっており,またフロントパネルは縁にファイルスロット開口部との隙間を埋めるためのスポンジ(画像のものはボロボロになっています)が貼り付けられ,側面でケースにネジ留めされています(左:筆者所有のものはスポンジが除去されているため,APさんよりいただいた画像を加工して掲載します).一方,RD-0087のないAD-F35FAでは,このプラスチック部品はなく,またフロントパネルは上側でケースにネジ留めされています[右:ヤフーオークションで出品者IDが hiro_sura_1119,オークションIDが u67524462(2014年7月30日に落札)の出品物の説明に使用されていた画像を加工(元画像から切り出して2/3に縮小しjpg形式に再変換)した画像を引用します].


またα DATA製の5インチファイルスロットFDDであるAD-F50FA(内蔵されているFDDはFD155GF)の一部も,RD-0087あるいは同等品と思われる小基板を備えています.該当するAD-F50FAは,PC-9801FA/FS/FXの時代に出荷された初期のロットと思われます.上で述べたように,MATE-Aでは640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを装着しても,初期の機種(のさらに一部?)でしか2DDメディアからのシステム起動ができないからです.筆者所有のAD-F50FAには100ピンコネクタはなく,またフレームにも100ピンコネクタ用の切り欠きはありません.筆者所有のものはMATE-A時代に出荷された後期ロットなのでしょう.

 ※3.640KB-1.2MBハードウェア切換ボード使用時に外付けFDDにセットされた2DDメディアからのシステム起動が可能な機種では,ファイルスロットFDD用のfslot2ddなどを組み込むことなしに2DDメディアをフォーマットすることが可能です.

 ※4.640KB-1.2MBハードウェア切換ボードには,上のHAMLIN's PAGEに掲載されているものの他に,丸興工業のロゴのある製品(型番は失念)が存在しました.
    追記1:RD-0076というボードを確認しました.このボードに実装されているICは,GALが1個の他,74AC240Pと74LS38Pが各1個です.下にヤフーオークションで出品者IDが trgetter,オークションIDが o329284433(2019年11月7日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを加工(元画像を回転したものから切り出して1/3に縮小したものと,半分に縮小したものとを併置しjpg形式に再変換)した画像を引用します.


    このRD-0076はどの外付けFDDユニットに付属していたものかは不明です(RDの文字列から推すとR&Dの製品かα DATAの製品かもしれません)が,筆者が以前使用していた丸興工業のロゴのある640KB-1.2MBハードウェア切換ボードの場合,セットになっていた外付けFDDユニット内部のVFO基板にもやはり丸興工業のロゴがありました.

    追記2:AINEX製のAIN-002とメーカー不明(ロゴはありませんが,基板上の文字列から丸興工業製の可能性があります)のMRK-0076も,HAMLIN's PAGEの640KB-1.2MBハードウェア切換ボード(注)の記事には掲載されていません.後者はα DATA製外付けFDDユニットに付属していたとの情報があります.両者の画像を下に引用します.AIN-002の画像は,ヤフーオークションで出品者IDが timspenrod,オークションIDが e121234336(2012年4月22日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを加工(元画像を回転したものから切り出して半分に縮小しガンマ補正値を上げたものと,元画像を切り出したものとを併置しjpg形式に再変換)したもので,MRK-0076の画像は,ヤフーオークションで出品者IDが hamayokotobe,オークションIDが j413386395(2016年11月23日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを加工(元画像を回転したものから切り出して半分に縮小しガンマ補正値を上げたものと,Kaz-98のブログ --> 2HD/2DD判別用ボード(MRK-0076)(2016年5月22日の記事) の画像を回転したものから切り出したものとを併置しjpg形式に再変換)したものです.


    注:メーカー不明のAPC-078Bと型番と基板上の構成が酷似しているAPC-078は,GNDラインが貧弱なためCPC-FDCCなどと比べるとノイズが多いとの報告があります(偽なすかさんの2018年11月5日のツイートを参照).

    追記3:HAMLIN's PAGEに掲載されている640KB-1.2MBハードウェア切換ボードのうち,コンピュータリサーチ製のCPC-FDCCとCPC-FDW REV.Aの2枚は画像がありません.両者の画像を下に示します.CPC-FDCC(画像左)ではヤフーオークションで出品者IDが trgetter,オークションIDが b409461282(2019年8月27日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを,またCPC-FDW(画像右)ではヤフーオークションで出品者IDが mn3452000,オークションIDが v552172251(2018年5月12日に落札)の出品物の説明に使用されていたものをそれぞれ加工(元画像を回転したものから切り出して半分に縮小したものを併置しガンマ補正値を上げてjpg形式に再変換)した画像を引用します.CPC-FDCCに実装されているICは,GAL,74ACT540P,74LS38が各1個です.CPC-FDWに実装されているICは,GALが1個で,それ以外のICが2個(それぞれ14ピンと20ピンのもの.前者はTTL IC)なのはかろうじて確認できますが,元画像が不鮮明であり,またWWW上の本ボードの他の画像からも型番が読み取れないため,それ以上のことは不明です.


 ※5.2HD/2DDモード間でI/Oポートの切り替えを行い,Density信号を生成する回路(2DDメディアからのシステム起動も可能にする回路ではありません)は,わぴこのほーむぺーじの日記 --> 鼻血(2008年9月29日の記事・回路図の拡大画像はこちら) で公開されています.

 ※6.640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを使用せずに,2モード切替の外付け(扱いの)FDDにセットされた2DDメディアからのシステム起動を可能にするフリーソフトウェアが公開されました[PC-9821およびDOS/VソフトウェアのページEXT2DDBT (IPLware)].対応機種は,PCIバスのない機種ではAp/As/Ae/An/Ap3/As3/BX3/BA3(およびこれらに相当するアーキテクチャの機種)およびPCIバス搭載のintel chipset機(初代Xa/Xt/Xf/St15/St20を除く),WaildCat(VLSI)chipset機種(Xa7/C−Xa16/K/Xt13−Xt16,一部のXa7e),RCC/Server Works chipset機(RvII26/RsII26)とのことです.

 ※7.640KB-1.2MBハードウェア切換ボードは,以前は中古市場でよく見かけ,正体不明のボード,あるいは見るからに商品価値の乏しそうなボードとして,ジャンク屋の店頭などでは時に無料あるいはタダ同然の価格で入手できたものですが,最近は滅多に見かけなくなり(インターネットオークションなどでもこれ単体,あるいはこれが装着されたままの本体を見かけることが随分稀になりました.筆者自身は2010年前後に,出張の際に寄ったドスパラ仙台店の旧店舗で2枚目のAC002を100円で買ったのが最後になります),またPC-98関連商品の払底のためか,このボードの正体が広く知られるようになったためなのか明らかではありませんが,インターネットオークションなどで販売されている場合にも,数千円程度と結構な価格がつけられていることが多いようです(ツイッターでは2018−2019年の時点で100−300円程度で購入したとの報告がいくつかありますが,相当運の良いケースでしょう).

 ※8.本ボードは一部のユーザー間でふざけて "のっぺらボード" と呼ばれており,筆者もリサイクル掲示板上で盛んに連呼してきましたが,この呼び名の由来を少し調べたところ,命名者は恥ずかしながらどうも筆者であった可能性が出てきました.どるこむのPC-98掲示板・98マニアックス掲示板・エプソン98掲示板の全過去ログ(筆者はパソコンゲーム掲示板とDreamcast掲示板のもの以外,weblabo.griffonworks.netで公開されているどるこむの全過去ログをダウンロードして手元に置いています)を "のっぺらボード" の文字列を対象にサーチしても,[2077] スルーボードしたい のようなものを除いて一件もヒットしませんでした.このことから,どるこむが運営されていた頃には,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードをこう呼ぶことは,一般のPC-98ユーザーの間では全く行われていなかったことが強く示唆されます.一方,リサイクル掲示板の過去ログを同様にサーチしたところ,同掲示板におけるこの語の初出は,2002年4月28日のHAMLINさんの投稿であり,次が一ヶ月後の2002年5月22日の筆者の投稿でした.そして実は,リサイクル掲示板上で "のっぺらボード" の語が640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを指すものとして初めて使用されたのは後者においてでした.HAMLINさんは,MGA-1064SGを搭載したPC-9821用の専用グラフィックボードであるG8XZTやG8YWBを指してこの語を使用されていました.しかしその際,"通称「のっぺらボード」" という言い方をされています.つまり,2002年4月の時点で,ブラケットに外部コネクタ等のない,従って本体に装着された状態のものを外部から見るとブラケットが "のっぺらぼう状態" のボード,あるいは類似のボードをこのように呼ぶことは広く行われていたのでしょう.口の悪い筆者は,以前は640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを,基板上の部品が極端に少なく,ブラケットにも中央にミニジャックが一つ取り付けられているだけという何とも言いようのない造りであるところから,"脱力ボード" などと呼んでいましたが,HAMLINさんの投稿にあったこの語が,ブラケットと基板上の大半を何もない空間が占めるこのボードの異様な雰囲気にマッチしているように思われたため,こういった下らないことにはすこぶる手の早い筆者は早速その呼び名を拝借したものとみえます(注).このあたりのことは全く記憶にありませんが,いかにも筆者のやりそうなことではあります.その後リサイクル掲示板などでは,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを指すものとしてのっぺらボードの語が当たり前のように使われるようになりました.それが掲示版外にも広まったのかもしれません.
    注:ウェブ検索したところ,執筆時期は明らかではありませんが,PC-9801FA/FS/FXやMATE-AのSCSI I/F専用スロットに装着するSCSI信号スルーボードである緑電子製MDC-FA001を "ノッペラボード" と呼称している記事がありました(紫煙崇拝主義 壱源亭 --> Digital --> PC98改造で出会した苦労話 --> JPC9821AnにてPK98-2SYUMORIを使ってみた。).


なおFD1155Dを内蔵(外部1MB FDD接続用コネクタ部分から信号を引き出しており,電気的には外付けFDDにDensity信号ラインを接続したものと等価)した筆者のPC-586RXでは,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを使用しなくても2DDメディアからのシステム起動が可能ですが,理由は調べていません(PC-586RXに5インチFDDを内蔵を参照).


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