MATE-A等専用SCSI I/Fのコネクタピンアサインと
スルーボード化工作


PC-9801FA/FS/FXやMATE-Aの本体背面左のSCSIインターフェーススロットに装着するSCSI I/F(注1)のアンフェノールハーフピッチ120ピンコネクタ(注2)のピンアサインの情報は, まあぼの部屋 --> PC-98 Crafts --> 共通:SCSIスルーボード化! にあります(注3・4・5).またここには,ICM製IF-2560とCRC製CPC-FISAの完全スルーボード化(リソースを消費せずI/F存在信号もない)工作の記事もあります[Internet Archiveに保存された記事のため,一部の画像が失われてしまっていますが,内容を理解することは十分可能です(注6)].これらの情報を元に自分でSCSIスルーボードを作成することも可能でしょう.実際に作成した例もあります[Yahoo!ブログ,"ワイルドで現金な邪念の掃き溜め" の 自作スルーボード(その1)(その2)(その3) の記事を参照](注7).またSMIT転送ボードの試作例もあります[Chibilly Page --> マイコンピュータ --> PC-9821Ap2 --> "SCSI専用スロットを活用しよう" の "詳しく見たい!"(筆者の環境では "詳し" しか表示されません) --> SCSI専用スロットにSMITを を参照.ただしInternet Archiveに保存された記事のため,画像が一部失われてしまっています].
 注1:これらのI/Fの外観はMATE-A等専用SCSI I/F一覧 を参照して下さい.
 注2:このコネクタには形状の異なるものがいくつかありますが,PC-9801FAのファイルスロットバックパネルで使用されているコネクタと基本的には同じものです(ちま??ちまさんの2022年4月29日のツイート を参照).また鴨川ネギさんの2020年2月28日3月2日のツイートで,エプソン98互換ノート/ラップトップ機の80ピン拡張バスコネクタ(アンフェノールハープピッチ80ピンメス)に接続するオスコネクタをカードエッジコネクタとして作成している同人ハードウェアが紹介されていますが,SCSIインターフェーススロットに装着するI/Fを自作する場合,そのオスコネクタも同様にカードエッジコネクタ(新たに作成するか,既存のものを加工するかは別にしても)で代用できるかもしれません.ついでに言えば,110ピン拡張バスに接続するオスコネクタについても同じことが考えられます.
 注3:"スルーボード" とは,Cバススロットに増設したSCSI I/F[転送モードはDMA,CPU(IO,FIFO,W-FIFO,GT,W-GT),バスマスタ(バススチール),SMITのいずれでも可]の外部コネクタからの信号ラインをSCSIインターフェーススロットに引き入れ,本体内部のSCSI機器に接続した後,デイジーチェイン用あるいはターミネータ接続用に,信号ラインをSCSIインターフェーススロット外部に引き出すためのI/F(実質的には単なる配線板)を指します.製品として市販されているものとしては,緑電子のMDC-FA001(注3.1),キャラベルのSK-M33,玄人志向の二種盛り合わせ(PK98-2SYUMORI:10-BASE TのLANボードとの複合I/F)を確認しています.
    注3.1:MDC-FA001の基板両面の大きな画像がaucfanに保存されています().基板上に実装されている部品は1kΩ抵抗2個と(多分一般的な)ダイオード1個のみで,いずれもリード線の一方が裏面の広いパターンと繋がっているように見えます.リード線のもう一方がどの信号ラインに接しているかは,120ピンコネクタとの位置関係から割り出すことができるでしょう.
 注4:スルーボードを使用せずにCバスSCSI I/FによりPC本体内部に増設したSCSI機器を動作させる方法としては,CバスSCSI I/F上に50ピンフラットケーブル接続用オスコネクタを増設するという方法や(しーど君の工作記 --> MENU --> 今宵銀河を廃にして --> SC-98IIIに内蔵コネクター取り付け などを参照),SCSI専用スロットの蓋を外して,そこからPC本体内部に引き込んだケーブルをSCSI機器に直接接続する方法などもあります(わくわくWANILAND --> PC-98改造記録 --> PC-9821Ae改造 などを参照).SCSI籠を必ずしも使用せずにPC-9801FA/FS/FXとMATE-AにSCSI HDDを内蔵させる方法 も参照して下さい.
 注5:CバスSCSI I/Fの種類によっては,SCSIインターフェーススロットのA30ピンをGNDに接続すると,データ転送速度が向上します(SCSIインターフェーススロットのA30ピン を参照).
 注6:筆者はこれらの記事がWWW上で公開されていた当時に記事を印刷したものを持ってはいますが,スキャンするなどした画像を本記事内で引用することは少し躊躇われます.
 注7:PC-9821A-E10を元に作成した例もあります.切断した入力信号ラインのプルアップは行わなくても問題は出ていないといいます(A-MATEr's BBS 過去ログ その63その64 を参照).


またPC-9821A-E10をリソースを消費する "疑似スルーボード" 化する方法については,琵琶湖スライムの寝床(Internet Archive内) --> 琵琶湖スライム電脳工房 --> PC98x1 ALL機種編, および, move-α --> 電脳 --> A-MATE --> A-E10 と 内蔵SCSI で SMIT! (SCSI スルー)  の記事(注1)がよくまとまっています(注2).PC-9821A-E10(他のMATE-A等専用SCSI I/Fでも同じ筈です)で内蔵機器側の信号のターミネーションがPC-9821A-E10上の集合抵抗により行われていることは,A-MATEr's BBS 過去ログ その38 で明らかにされています(注3).なお緑電子のMDC-FA001では,上記の通り,内蔵機器側の信号のターミネーションを,ブラケットに取り付けられている2つの外部SCSIコネクタの一方にターミネータを接続することで行います(文字通りの信号スルーボード).
 注1:画像も保存されているとの理由から,Internet Archive内のこの保存日の記事にリンクしていましたが,現在は画像が失われてしまっています.Internet Archiveに保存されている記事では時々こういうことが起こります.
 注2:PC-9801FA-02を疑似スルーボード化する手順が,小高輝真 (1993). PC-9801FAに富士通M2624FA 520MバイトHDDを内蔵する 98パワーアップ改造名人 技術評論社 pp.169-175. に記載されています.PC-9821A-E10の場合と同じですが(注2.1),PC-9821A-E10の疑似スルーボード化の方法は,この記事などを元にしているのかもしれません.
    注2.1:PC-9801FA-02側のROMアドレスの変更が反映されないようで,CバスSCSI I/Fの方のROMアドレスを変更する必要があるとの報告があります(A-MATEr's BBS 過去ログ その3を参照).またPC-9801FA-02側のIDを7に設定する必要があるといいます(A-MATEr's BBS 過去ログ その37を参照).
 注3:SCSI信号は,PC本体内部で ①MATE-A等専用SCSI I/F --> ②HDDスロットに装着されたSCSI HDD --> ③ファイルスロットに装着されたSCSI機器 --> ④MATE-A等専用SCSI I/F(上のターミネータ) の順に流れます.つまり専用SCSI I/Fから出た信号がPC本体内部で折り返されて専用SCSI I/Fへと戻ってくる構造になっています(えーめいたーず掲示板過去ログその38 を参照).PC内部でのSCSIケーブルの実質的なケーブル長は機種によらず40cmで,この値はSCSI籠とファイルスロットSCSI機器の増設の状態に無関係です.MATE-A本体ガイドブックの記述では,NEC製の内蔵用SCSI機器内部のケーブル長は,機器によらず0mとされています(注3.1・3.2).なお本体ガイドブックの記述では,外付けのSCSI機器を接続する場合も含め,各SCSI機器内部+SCSI機器間のケーブル長の上限は6mとなっていますが,これは.SCSI-1(最大転送速度5MB/s)の場合であり,SCSI-2(最大転送速度10MB/s)では,ケーブル全長の上限は3mです.転送速度の高いSCSI I/Fを(疑似)スルーボードと併用したり,SCS-1ではありながら転送速度の高いPC-9821A-E10(注3.3)を使用する場合には,ケーブル全体が3m以下になるように機器を接続すべきでしょう.ケーブル長の問題はあまり甘く考えるべきではありません.またSCSI-2の場合には,ケーブルもSCSI-2に対応しているものを選ぶ必要があります.
    注3.1:PC-9821Ap/As/Ae,PC-9821Ap2/As2,PC-9821Ap3/As3各ガイドブックの記述をまとめると,NEC製のSCSI籠・ファイルスロット用増設SCSI機器であるPC-9801FA-35・ー37・ー39,PC-9801-F01・-F02・-F03・-F04・-F05・-F06,PC-HD100F・170F・300F,PC-CD160F・60F,PC-OD301Fの内部のケーブル長は,すべて0cmです.
    注3.2:同様に,NEC製の外付け用SCSI機器内部のケーブル長は,PC-IN503G・506・500/4Cが10cm,PC-CD50が13cm,PC-CD103が20cm,PC-CD160が24cm,PC-HD040/L/U/R/R2・HD100/R/R2・
HD130/U・HD170R/R2/R3/E・HD240E・HD300/U//R/R2/R3・HD340E・HD400R/R2・HD540E・HD1000E/E2・HF103/R・HF303/R・PC-OD102・OD301R/R2・OD501・502・PC-CD10が30cm,PC-OD301/Rが40cm,PC-OD101が50cmです.
    注3.3:PC-9821Ap2/As2ガイドブックには,PC-9821A-E10でもケーブル全体の長さが6m以下になるように機器を接続するよう指示されていますが,これはNEC製の,しかもこの時代のものですので動作の遅い機器の接続を想定した上での指示であると理解した方がよいでしょう.

またどるこむの過去ログ,[30889] FA-02のスルー化 には,PC-9801FA-02のスルーボード化工作に関する情報があります(注1).ただしこの工作を行ったPC-9801FA-02,および上記の "疑似スルーボード" 化したPC-9821A-E10では,上記の通りSCSI信号のターミネーションはPC-9801FA-02/PC-9821A-E10上のターミネータ(集合抵抗)により行われます(注2).SCSIインターフェーススロットから外部に信号ラインを引き出すことはできません.集合抵抗を撤去してケーブルを引き出せば可能なのかもしれませんが,工作の例は聞いたことがありません.
 注1:これとは別な工作を行ったもののようですが,スルーボード化したPC-9801FA-02の画像(小さなものですが)が,紫煙崇拝主義 壱源亭 --> Digital --> PC98改造で出会した苦労話 --> ⑪PC9821AnにてPK98-2SYUMORIを使ってみた。 に掲載されています.またスルーボード化改造が施されたPC-9801FA-02がヤフーオークションに出品されたこともあります(注1.1).出品者IDが dragon_horse_wot,オークションIDが r396968846 のヤフーオークションの出品物(2020年5月1日に落札)の商品説明画像から切り出したものと,切り出して半分に縮小したものを併置しガンマ補正値を上げた後jpg形式に再変換した画像を引用します.本体接続用コネクタの一部のピンを切断しているようですが,A-MATEr's BBS 過去ログ その63その64で報告されているPC-9821A-E10のスルーボード化と同様の工作を行ったものなのかもしれません.


    注1.1:ヤフーオークションには,同じ出品者によりスルーボード化されたMDC-FA552が出品されたこともあります.こちらの出品物では,改造箇所の見当がつけられるような商品説明画像はありませんでしたが,このI/Fにもスルーボード化改造の実績があることになります.スルーボード化改造の基本的な方法については,本記事冒頭にある まあぼの部屋 へのリンク先を参照.
 注2:基板上のターミネータの関係で,(疑似)スルーボード化されたPC-9801FA-02を転送速度の高いCバスSCSI I/F(注2.1)と接続して使用することは,データ化けが発生する可能性があるため危険との見解があります(えーめいたーず掲示板過去ログその6 を参照).確かにPC-9801FA-02には220Ωと330ΩΩがペアになった集合抵抗(331/221の表記のある "BI NS11-5-331/221J 228" という11本足の集合抵抗一対)が使用されており,信号ラインとの接続の仕方は確認していませんが,ターミネータはパッシブであると思われます.
    注2.1:具体的にはバスマスタモードやSMITモードで動作するものが該当します.そして恐らく(W-)FIFOモードやPIO転送モードで動作するもの(特に転送速度の高さを謳っているもの)にも注意が必要でしょう.逆にパッシブターミネーションでも信号の反射を消し切れるほどデータ転送の遅いDMA転送モードに設定されているI/Fと接続するのであれば,PC-9801FA-02をスルーボード化しても安全ということになるでしょうが,実際問題としてそれではスルーボード化のメリットがあまりありません(注2.1.1).筆者の所有する他のMATE-A等専用SCSI I/Fでは,LHA-15FA(注2.1.2)でBI M11-5-221/331J 214,EIF-98FBとB55F-BMNでS 221-331-18Z IAMと書かれた11本足の集合抵抗ががそれぞれ一対,HA-FA02でRMLS9 331JとRMLS9 221Jと書かれた10本足の集合抵抗が1個ずつ使用されており,いずれもパッシブターミネータと思われます.またヤフーオークションのIF-55TF(注2.1.3)の出品物画像とBeijingDuckさんの2023年5月7日のツイート のB55FWの画像でも基板上に11本足の集合抵抗(パッケージの文字列は不明)が一対ありますが,これらのI/Fのターミネータもパッシブと思われます.また,IF-2560(MATE対応版)(注2.1.4)でBI M10-1-111G 239,IF-2560(MATE非対応版)ではBI M10-1-111G 216(または末尾221),HA-FA02WでBI M10-1-111J 430 と書かれた10本足の集合抵抗がそれぞれ一対使用されていますが,これらはアクティブターミネータの可能性があります(かかっくんさんよりご教示をいただきました).CPC-FISA(注2.1.4)は基板上に集合抵抗が見当たりません.恐らく自社製のカスタムチップ(CRC SC91001-096)がターミネータを内蔵しているのでしょう.PC-9801FA/FS/FX時代の製品と考えられ,また転送速度が著しく低いことからもターミネータはパッッシブである可能性が高いように思います.なおPC-9821A-E10ではアクティブターミネータが使用されていることが確認されています(えーめいたーず掲示板過去ログその37 を参照).(疑似)スルーボードを使用する場合,データ化けの発生を防ぐために,ケーブル全長の問題とともにターミネーションの問題にも十分に注意する必要があるでしょう(A-MATEr's BBS 過去ログ その16に,データ化けの有無を検出する方法の記載があります).
         注2.1.1:SCSIエミュレータの中にはパッシブターミネーションが適切なものがあるそうですので(おふがおさんの2023年4月28日のツイート を参照),そういった機器を接続する場合には,PC-9801FA-02を(疑似)スルーボード化させるのが良いのかもしれません.
         注2.1.2:LHA-15FAは疑似スルーボード化できないとの報告がありますが(えーめいたーず掲示板過去ログその37 を参照),できるとの報告もありますえーめいたーず掲示板過去ログその60その62 を参照).コンデンサや集合抵抗等以外のボード上の部品を取り外してのスルーボード化は可能との報告もあります(おふがおさんの2023年4月6日のツイート を参照).またメーカー不明のPN040331H1(MATE-A等専用SCSI I/F一覧 を参照)はスルーボード化できないようです[おふがおさんの2023年2月28日のツイート(12)を参照].
         注2.1.3:IF-55TFのスルーボード化改造情報が,おふがおさんの2023年4月17日(123)・24日のツイートにあります.
         注2.1.4:IF-2560とCPC-FISAのスルーボード化改造については,まあぼの部屋 --> PC-98 Crafts --> 共通:SCSIスルーボード化! を参照.


なおPC-9821/Ceの本体背面にアンフェノールハーフピッチSCSIコネクタ(本来は外付けSCSI機器接続用)とCバスSCSIボードをケーブルで接続し,CバスSCSIボードで内蔵CD-ROMドライブを動作させることができます(どるこむの過去ログ,[7135] Ce内蔵CDROMドライブを、Cバスに挿したSCSIで使うのは安全か?evu's room --- べんちまぁくのevuだよ!! --- --> ねぇねぇ、おしえてっ!! --> 4> Q88 LogitecのハードディスクLHD-B240をお古のPC9821Ce model S2に繋げたい などを参照).これは一種のSCSIスルー動作と言えないこともありませんので,本記事の内容と直接の関係はありませんが,ここに書いておきます.


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