CanBe等の反転IDEケーブル


通常のIDEケーブルでは,両端のコネクタ(コネクタが3つある場合もありますが,ここでは両端の2つのコネクタだけを考えます)が同じ向きに取り付けられています(下図左).しかしPC-98の一部の機種のIDEケーブルでは,両端のコネクタが互いに表裏逆になるように取り付けられています(下図右,注1・2).本記事では,HAMLINさんがPC-98の内蔵FDDケーブルの特徴を解説するために導入された用語に倣い,前者をストレートIDEケーブル,後者を反転IDEケーブルと呼称します(HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_18 ストレートケーブルと反転ケーブル を参照).
 注1:反転IDEケーブルでは,IDE機器接続用のコネクタのピン番号の振り方は,通常のIDEケーブルのコネクタのものと同じです.反転しているのは,マザーボード接続用コネクタの方です.これは,反転IDEケーブルが使用されている機種では,マザーボードのIDEオスコネクタのピン番号の振り方が,通常のIDEオスコネクタのものを反転した形になっている(従ってピンアサインもそうなっている)ためです.
 注2:反転IDEケーブルでは,IDE機器接続用コネクタに突起のないタイプが使用されている場合があります.通常のストレートIDEケーブルのマザーボード接続用コネクタの突起を切り落とせば,相当品が作成できます(ケーブルのメスコネクタの突起の有無や,その突起がマザーボードや機器のオスコネクタの切り欠き部分にはまっているか否かといった事柄は,ケーブル内での信号の伝達には影響しません).

反転IDEケーブルが使用されている機種で通常のストレートIDEケーブルを使用すると,マザーボードの信号コネクタのGNDピンがIDE機器の信号コネクタのGNDピンに正しく接続されない状態となるため(注),IDE機器を破壊する危険性があります.実際にCFやSSDの破損事例が報告されています.
 注:AZUSA Studio Home Page --> パソコン関連コネクターのいろいろ --> IDE 40/44 pin HDD Connector などを参照.


PC-98で使用されているIDEケーブルは殆どがストレートIDEケーブルですが(注1),一部の機種では反転IDEケーブルが使用されています.これまでに反転IDEケーブルが使用されていることが確認されている機種は,MULTi/CanBeのPC-9821Ce2/Cs2/Cx/Cf/Cx2/Cx3/Cx13/Cb2/Cb10/C200/C233であり(注2),他にMATE-A用のNEC製IDE籠でも反転IDEケーブルが使用されていることが明らかになっています.
 注1:Fellow,MATE-B,MATE-X,MATE-R,Valuestar,またCanBeでもPC-9821Cr13/Ct13/Ct20ではストレートIDEケーブルが使用されています.またファイルベイモデルないしファイルベイアダプタを取り付けたPC-9821Ap3/As3のファイルベイバックボードに接続するケーブルもストレートIDEケーブルです.
 注2:発売時期などからCbやCb3でも反転IDEケーブルが使用されているものと見ています.また他のCanBeやCEREBのC166などでも反転IDEケーブルが使用されている可能性がありますが,今のところ確認できていません.

下は左から順に,Ce2/Cs2のHDDユニット(PC-HD170C)のケーブル,Cx/S3に元々内蔵されていたHDDユニット(容量540MB)のケーブル,NEC製のMATE-A用IDE籠(HD540A)のケーブルの画像です.HD540Aのケーブルは突起のない下側のコネクタがHDD接続用です.このケーブルは非常に短く,ケーブルを途中で捻ることができませんので,コネクタに突起がなくても逆差しの危険はありません.出品者IDが angel_symphony,オークションIDが q324178204 のヤフーオークションの出品物(2021年6月9日落札)の商品説明画像から切り出して半分に縮小後jpg形式に再変換した画像(左)と,出品者IDが hamayokotobe,オークションIDが s648511425 のヤフーオークションの出品物(2020年3月24日落札)の商品説明画像から切り出してjpg形式に再変換した画像(中央)をそれぞれ引用します.右の画像は筆者の撮影したものです.


IDEケーブルがCe2のマザーボード上のコネクタに接続された状態の画像が,PC-9800シリーズは電気林檎の夢を見るか --> 所有マシン・周辺機器類 --> PC-9821Ce2 ,ぱんだネコさんの2023年3月13日のツイート,九太郎さんの202年7月28日のツイート に,Cs2のマザーボード上のコネクタに接続された状態の画像が,Zwei's HP --> 98MULTI と asayanさんの202年4月21日のツイート に,またCxのマザーボード上のコネクタに接続された状態の画像が,CBRで風になる~♪ --> PC-9821cx改 のレビュー(2017年9月6日の記事)にそれぞれ掲載されています.最後の記事の画像では,HDDという文字がコネクタ部分に重なってしまっていますが,注意深く見ると,真ん中の "D" の文字の内側の穴の部分を通して,マザーボード上のメスコネクタの切り欠き(フロント側にあり)にIDEケーブルのコネクタの突起がはまっている様子がわかるでしょう.また,ナイコンさんいらっしゃい --> PC-9821Cx3+SC-55Kを落札しました。 では,Cx3のマザーボード上のIDEケーブル接続用スコネクタの切り欠きがCe2やCxと同じくフロント側にあることがわかります.これらの機種では,マザーボード上のIDEケーブル接続用コネクタの上側の空間にHDDが基板面を下にして取り付けられていることと,HDDにはコネクタの突起が上向き(基板面と反対の向き)になるようにIDEケーブルを接続することを考えると,これらの機種のIDEケーブルは,両端のコネクタの突起が反対の向きである,すなわち反転IDEケーブルであることが理解されると思います.

なお,上に画像を示した反転IDEケーブルはいずれも短いものですが,短いということが反転IDEケーブルの特徴というわけではありません.Cx2/Cx3/Cx13などのIDEケーブルは長さがあります.

ジャンク屋の店頭やインターネットオークションなどでは,一つの製品が部品ごとにバラされて売られていることがありますが,そのような状態のMULTi/CanBe本体やHDDまわりの品,あるいはNEC製IDE籠などを入手する場合には,IDEケーブルにも注意が必要でしょう.


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