エプソン98互換機における
HDD容量認識上限


エプソン98互換機でのIDE HDDの認識容量上限の問題(注1)は,エプソン98互換機関係のBBS等で繰り返し話題となってきたものであり,そこでの成果の多くは,EPSON98開発公団の "Oh! EPSON PC" (2000年12月30日発行)の大量投稿/○oo氏の記事(注2),"EPSON PCの拡張小ネタ集(暫定版)" (pp.72-78),およびEPSON98サービス機構・EPSON98互換機同人誌復刻委員会(編)の "E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説 永久保存版" (2004年8月15日発行)の "EPSON PCの拡張小ネタ集" (pp.47-63)に記事としてまとめられています(後者は前者を再構成したものの再録です).本記事は,これらの同人誌の記事の内容を,筆者がこれまでに収集してきたエプソン98互換機関連のBBSのログ等と突き合わせて確認し,自験例を加えて執筆したものです.この問題に関する報告には古いものが多い上,テスト環境が十分明らかでないものも少なくないため,情報が大分錯綜しています.
  注1:内蔵SCSI HDDの認識容量上限の問題については,PC-98/エプソン98互換機のHDD内蔵用金具 を参照して下さい.
  注2:この同人誌には,"Oh! EPSON PC DATABOOK出張版 2000年冬号" というクリーム色のB4版二つ折りの紙が添付されており,そこに正誤表も掲載されています(注2.1・2.2).古書で入手される際にはご注意下さい.なおこの同人誌の記事の一部は,後に "E-Sapa別冊 甦るEPSON PC伝説 永久保存版" に再録されましたが,そこでは正誤表にある誤記が修正されている箇所とされていない箇所があります(筆者が所有している冊子版の場合.PDF版の場合は不明).
   注2.1:正誤表に記載のある事項以外にも誤記があることを確認しています.いくつかのものについては訂正の上本ウェブページの記事で紹介していますが,他のものについては誤記の具体的内容に関する指摘は行いません.筋から言って筆者はその任では全くないからです.
   注2.2:この注は,これらの同人誌を所有あるいはこれから入手される方々への注意として載せています.


(1) ノートPC/BOOK/PC-486M族以前のデスクトップPC
 本体のBIOSによる制限[40MB(PC-386BOOK L,PC-386NOTE A/W),80MB(PC-386NOTE WR,AE),540MB(PC-386NOTE AR,PC-486NOTE AS)]はあるものの,サードパーティ製フォーマッタによってその制限を解除できる場合や,BIOS制限のない機種でフォーマット・領域確保済みのドライブであればその制限を越えて使用できる場合があります.筆者自身は,NEC製のMS-DOS6.2を使用し,PC-386NOTE Wでは1GB(注1),またPC-386NOTE AR(注2),PC-486NOTE AS(注3),PC-486SE/SRでは2GBまでのHDDが使用できることを確認しています(注4・5・6).PC-486HA/HX/HGのHDD認識上限については不明です.筆者はPC-486HX/HGで2GBのHDDが使用できることを確認していますが,それ以上の容量のHDDではテストできていません.なおPC-486FRで3GBのドライブが使用できたとの報告があり(全容量が使用可能かは不明),またPC-486NOTE AU/AV/ATおよび PC-586NOTE AVで使用可能なHDDの上限は4GB(4.3GBではない?)といいます(注7)(例えばどるこむの過去ログ,486NAUに4.1GB搭載完了! などを参照).また2GB以上の日立製のドライブは使用できないとの報告が散見されます(一方で使用できたとの報告も少数ながらあります).なおPC-486PORTABLE(PC-486PT1)(注8)用の純正HDDカードの最大容量は40MBですが,260MBのHDDカードの動作報告があります(いずれもIntegral社のOEM品).
  注1:2GBまで認識可能との報告があります(MOMO's Web Page --> PC9801 --> PC-386NoteW --> 改造情報 を参照).
  注2:CPUモジュールを486のものに交換したPC-386NOTE ARでもHDD(CF)認識上限は2GBといいます(applesorceさんの2021年6月1日のツイート を参照).
  注3:NiftyServeのフォーラム内でのみ提供されていたらしいCHKBIOSというソフトウェアにより,PC-486NOTE ASでは2.1GBのHDDまでは使用できる(ただし先頭から544MB以内の領域からシステムを起動させる必要がある)ことが明らかにされているといいます.なおPC-486NOTE AUでは,HDDの先頭から544MB以内の領域からシステムを起動させる必要があるとの説と,その必要はないとする説の両方があります.
  注4:PC-486SR等では,先頭から500MB(544MB?)以内の領域からシステムを起動させる必要があるといいます.
  注5:4.3GB以下のHDDがPC-486SRで使用できているとの報告もありますが,使用可能な領域はやはり2GB程度のようです(どるこむの過去ログ,[2753] PC-486SE内臓HDD[2947] PC-486SR内蔵HDDについて を参照).
  注6:PC-386NOTE Aでは,340MBのHDD(他機種でフォーマットとシステム転送を行ったものでしょうか)からシステムが起動でき,かつ先頭から300MBを越えた位置に置かれたファイルを扱っても問題なかったとの報告があります(なおさんの2021年10月30日31日のツイートを参照).PC-386NOTE Aでも540MB程度のHDDが使用できるのかもしれません(なおさんの2021年10月30日のツイート も参照)(注6.1).但しこの機種に内蔵可能なHDDパックは長さが11cmのものであり,通常のサイズの2.5インチHDDを内蔵させることはできません(98ノート/エプソン98互換ノート用2.5インチHDDパックを参照).
      注6.1:ICM製の長さ11cmのHDDパックにはPack-A40(40MB)/A80(80MB)/A120(120MB)があったようです.Pack-A120には専用のフォーマッタが添付されていたのでしょうか.
  注7:一部の2.5インチHDDには,固定用のネジ穴がHDDパックのものと異なるものがあります.容量の大きなものに多いようです.
  注8:PC-486PORTABLEの解析資料が,Vectorにある486PORTABLEの福袋として公開されています.本機種のシステムに関して他に全く類のない資料ですので,HDDの容量上限の問題とは直接の関係はありませんが,ここで紹介します.

(2) PC-486M族以降のデスクトップPC
 内蔵IDEインタフェースにE-IDE(注1)が採用されたデスクトップ機はPC-486M族以降の機種ですが,これらの機種ではどういうわけか4.3GB近辺の容量のHDDは認識されないことがあり(注2),4.0GB程度に抑えるのが無難とされています.またHDDの換装にはWestern Digital・IBM両メーカーのドライブを用いるのが安全といいます.日立,富士通,Maxtorなどのドライブでは,容量が少ない場合でも認識されない事例があります(注3).なおエプソン製フォーマッタ "FORMATHD" は3.5GB以上の内蔵IDEドライブはフォーマットできない仕様となっているため(4GB程度のHDDのフォーマット時に容量を16MBなどと誤認識するとの報告もあります)(注4),それを超える容量の内蔵IDE HDDのフォーマットには,NEC製のMS-DOSやICM,緑電子,Logitec等から提供されていたフォーマッタ,Windows98の起動ディスク等を使用する必要があります.2.5インチ-3.5インチIDE変換ケーブル等を使用し,4.3GBまで(あるいはそれ以上)のIDE HDDを認識できるPC-9821デスクトップ機で,あるいはPC-9821ノート用のHDDパックに入れてPC-9821ノートでフォーマットしたHDDも使用できます(注5).
  注1:実際には真のE-IDEではないようで,特にMS-DOSで認識させる場合,HDD接続用ケーブル(プライマリ)・CD-ROM(注1.1)接続用ケーブル(セカンダリ:電源ユニット寄りのコネクタに接続)のそれぞれに1台ずつしか機器を接続できません.HDD・CD-ROMともシングル設定で使用します.マスタ設定では動作に不具合が出るとの報告もあります.ただしWestern Digital製のHDDでは,ケーブルセレクト設定でなければ使用できないものがあります.なおWindows95では,HDDをプライマリマスタ・CD-ROMをプライマリスレーブ(,2台目のHDDをセカンダリマスタ)で使用できます.またHDDは本体側でSASI HDDとしてエミュレートされています(エコロジーなどではドライブ情報がSASIと表示されるといいます)が,Windows95などでは勿論IDE HDDとして扱われます.
      注1.1:PCHDPA2を介してノートPC用のHDDパックも接続可能(98ノート/エプソン98互換ノート用2.5インチHDDパックを参照).3.5インチIDEも接続可能な筈です.
  注2:Western DigitalやIBM製のドライブでも4.3GBのものは認識できないとの報告がいくつかあります(一方で,認識して使用できたとの報告もいくつかあります).そのようなケースでは,認識はできても,フォーマッタが,容量を極端に少なく認識したり,領域確保できない部分があるなどの異常な挙動を示したといいます.ただしフォーマッタの種類等,テスト時の状況が十分明らかでない報告が少なくありません.
  注3:認識できなかったとする報告には,テスト条件の詳細が十分明らかでないものも含まれます.なお本記事ではCFやCF-IDE変換アダプタとの "相性問題" に関する話題は扱いません.筆者はこの問題に関する事例も相当数収集しましたが,現在は廃版となった製品に関する報告も少なくないこと(今から極端に古いCFや変換アダプタを使い始めるということもそうはないでしょう),CFはTrueIDEモードを持っているものであれば殆ど問題がないらしいこと,CF-IDE変換アダプタ等も安価かつ容易に入手できるようになったこと,またこの問題は以前ほど重大なものではなくなったことなどから,筆者がこの問題について資料を公開する必要もなかろうと考えました.調査にご協力いただいた皆様には,情報をいただいてすぐに記事の形で資料を公開しなかった怠慢を深くお詫びいたします.
  注4:これはエプソン版MS-DOS6.2でも直っていません."FORMATHD" では整数値表示が符号付きで,容量やシリンダ数の表示が32767を超えると負の値になってしまいます.またシリンダが負の値となるC/H/Sだと,2番目以降の領域の確保自体ができないといいます.なお3.5GB以上の内蔵IDEドライブのフォーマットは,エプソン版Windows95上でもうまくいかないといいます.
  注5:認識容量の問題を別にすれば,PC-98でフォーマットしたIDE HDDはエプソン98互換機で使用でき,また逆も可能です.エプソン98互換機では,注1に書いたようにIDE HDDをSASI HDDとエミュレートしていますが,これはHDD自体にSASIと見せかけるような細工を施しているためではなく,PC本体BIOSが通常のIDE HDDをSASI HDDとして扱うようになっているという意味です.つまりBIOS経由でHDDにアクセスする場合(MS-DOS等)にはSASIとして扱われますが,ハードウェアに直接アクセスする場合(Windows95やOS/2 ver.1.21等)にはIDEとして扱われます.疑似SASIですのでDMA転送ではなく(CPU転送),DMAチャネルは消費しません.なおSASIエミュレーションによるHDDは,PC-286BOOK-H20内蔵HDDパック,PCNTHD系HDDパック,PCMCIA HDD/フラッシュメモリ,PC-386NOTE W1A・1B/PC-386NOTE WR1B・1D内蔵HDD,PCHDPA,PCPHD40,PCPHDPA,PCHDPA2,PC-486M族・PC-486RS・PC-586R族・PC-586MV内蔵HDDが該当します[この注の後半も,主としてEPSON98サービス機構・EPSON98互換機同人誌復刻委員会(編)の "E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説 永久保存版" (2004年8月15日発行)の "EPSON PCの拡張小ネタ集" (pp.47-63)の記述に基づいています].


なお,2.5インチ,3.5インチともに,エプソンの純正IDE HDDの最大容量は2GBです.最近,4GB程度までのHDDを認識できるとされてきた機種でも,本当に全容量が問題なく使用できるのだろうか(HDDの後ろの領域にアクセスした場合に不具合は本当に出ないのだろうか)との疑問が一部で提出されています.検証はまだ十分ではないようですが,エプソンの純正IDE HDDの最大容量が2GBという事実から,これらの機種でも2GBまでのHDDの使用にとどめた方が安全なのかもしれません.


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