SCSIインターフェーススロットのA30ピン


PC-9801FA/FS/FXやMATE-Aの本体背面左のSCSIインターフェーススロットのアンフェノールハーフピッチ120ピンコネクタのA30ピンは,このスロットにSCSI I/Fが装着されたことを検出するためのピンです.このピンがGNDに接続されていると,PC本体はこのスロットにSCSI I/Fが装着されていると判断します(まあぼの部屋 --> PC-98 Crafts --> 共通:SCSIスルーボード化! を参照).

筆者が確認した限り,このスロットに装着されるSCSI I/Fには,基板上のA30ピンの接続先に関していくつかの種類が区別されます.

■A30=GND固定
 ・PC-9801FA-02
   SW2-8のON(ROM有効)・OFFに無関係
 ・IF-2560(MATE対応版・非対応版)
   いずれもSW2-8のON(ROM有効)・OFFに無関係
 ・HA-FA02
   A30に繋がるジャンパ(パターン)なし
 ・LHA-15FA
   3本ジャンパパターンJP1の1と2(=中央)がA30とGNDの両方に接続,3はuPC1555なる8ピンICの8ピンに接続,1・2からいくつかのラインが延びているが,いずれも接続先はGND
 ・CPC-FISA
   A30に繋がるジャンパ(パターン)なし
■実装/未実装(=パターンのみ)ジャンパスイッチによるA30=/≠GND切り替え
 ・MDC-FA552
   2本ジャンパスイッチJP3の一方がA30,他方がGNDに接続.ショート時A30=GND
 ・EIF-98FB
   2本ジャンパパターンJP1の一方がA30,他方がGNDに接続
 ・B55-BMN
   2本ジャンパパターンJP1の一方がA30,他方がGNDに接続
■ディップスイッチによるA30=/≠GND切り替え
 ・PC-9821A-E10(SAGAT 777,G8NVD)
  SW2-8がONでA30=GND,OFFでA30≠GND
 ・PC-9821A-E10(FIFO,G8NVDA B2A/G8NVDA B3・,NVD0101/NVD01 00)
   SW2-8がONでもOFFでもA30≠GNDだが,何らかのチップの出力がA30のロジックを決めている可能性があり,またSCSI BIOSがRAM化が可能なことから,ON時には実質的にA30=GNDと思われる
■不明
 ・HA-FA02W
   JP3(ROM有効無効)ショートでもオープンでもA30≠GND
 2本ジャンパJP3の一方はA30に接続,他方はテクサ製のいくつかのSCSI I/Fにみられる赤丸スイッチとNEC D65654GD132という大きなQFPチップの3ピンからの出力を合わせたものを反転したものに接続(手配線).D65654GD132(?)の出力がA30のロジックを決めている可能性がある

なお,SCSIスルーボードである二種盛り合わせ(PK98-2SYUMORI)のA30ピンはGNDに接続されていません.


ところで,このSCSIインターフェーススロットのA30ピンがGNDに接続されていると,本来無関係なはずのCバスSCSI I/Fの転送速度が向上するという現象(注1)があります(リサイクル掲示板2020年9月過去ログ の 汎用スレッド2020年9月 パート1・汎用スレッド2020年9月 パート2 両スレッドを参照).この現象は,主にPC-9801-55U,PC-9801-92,PC-9801-100などの古いI/Fでみられます(注2).上記のように,SCSIインターフェーススロットに装着するSCSI I/Fには,A30ピンが基板上でGNDに接続されていないものがありますが,そのようなI/Fでは,A30ピンをGNDに結線すれば,データ転送速度が向上する可能性があります.
 注1:既に 小高輝真 (1993). PC-9801FAに富士通M2624FA 520MバイトHDDを内蔵する 98パワーアップ改造名人 技術評論社 pp.169-175. に示唆があります.
 注2:バスマスタ転送やSMIT転送モードで動作するサードパーティー製の新しいI/Fでは,BIOS ROMの裏裏バンクが出せなくなるため,殆どのものでこの転送速度向上現象はみられなくなります(リサイクル掲示板2022年11月過去ログの "買い物ヤフオクツイッターウォッチ2023年4月-1" スレッド を参照).
 またこの場合,SCSIインターフェーススロットにSCSI I/Fが取り付けられている必要は必ずしもなく,SCSIインターフェーススロットのコネクタのA30ピンをGNDに接続しても同じ効果が得られます.下図右はSCSIインターフェーススロットのコネクタの表側(嵌合面)で,左はその裏面です.工作を行う場合には,コネクタ裏面でA30ピンをGNDに結線(ケーブルをハンダづけ)するのが簡単でしょう.


ハンダづけ作業が躊躇われる場合には,コネクタの表側でA30ピンをGNDに結線してもよいでしょう.都合良くハウジング(コネクタのピンを囲うプラスチック製の部品)が半分に割れてピンが露出したIF-2560がありましたので,コネクタのピンの間隔(ピッチ)を調べてみましたが,PCIボード(メルコ製IFC-USP)のコネクタと同じでした.うまく撮影できませんでしたが,実物ではコネクタのピン間隔が両者で一致します.


ただし基板の厚さは大きく異なり,前者は後者の三倍ほど厚くなっています.PCIボードのコネクタの裏に厚紙を挟むなどすれば,SCSIインターフェーススロットのコネクタとコンタクトするのではないかと思います.PCIボードのコネクタ部分を利用してA30ピンをGNDに結線する場合には,互いに結線したA30ピンとGND ピンだけを残し,他の端子は削り取ってしまってもよいでしょう.


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