初期型PC-9801ノートの一部[と恐らくPC-9801US(注1)]が備えている拡張カードスロット(注2)の信号です.本記事の内容は下記の資料の記述に基づいています(この資料はまりもさんよりご恵贈いただきました). 注1:PC-98DO+,PC-9801UF, URの備えているカードスロットは,I/Oカード機能を持たない増設RAMカードスロット(下を参照)と思われます. 注2:PCカードスロット[16ビットのPCMCIA(カード)スロット]とは異なります.PCカードスロットのコネクタのピンアサインは,Pinoutguide.com --> PC INTERFACES --> Buses and Slots Pinouts --> PCMCIA (PC Card) bus[記事名:The PCMCIA (Personal Computer Memory Card International Association) 16 bit bus]などを参照. |
CoralテクニカルシリーズNo.7 PC-9800データブック1 ――メモリカード・拡張カードスロット・ファイルスロット編―― (1992). コーラル ※奥付では副題が メモリカードスロット,拡張カードスロット,ファイルスロット編 となっています. |
拡張カードスロットのタイミングチャート,レジューム処理,拡張カード側の情報[アクセス手段,カード属性情報(注)とカードスイッチレジスタ(カード内に設けられ,セットアッププログラムにより設定できる8ビットのスイッチレジスタ)等]は,理由があって本記事には記載していません. 注:カード属性情報のうち,カードIDはNECのある部署のID登録係に連絡して割り当ててもらう必要があります.なぜこれの登録が必要なのか元資料だけからはわかりませんが,元資料の記述からは,これがカード開発者(ユーザという表現がされていますが,メーカーを指すものであることは明らかです)に義務づけられていると読めます. 拡張カードスロットは,PC-9801N,NV,NS,NS/E,NCの増設RAMカードスロットとの上位互換性を持つスロットにI/Oカード機能を追加したスロットです.I/Oカード機能はPC-9801NS/T,NL,NS/Lのスロットで追加されています(元資料が発行された1992年10月1日時点).レジューム対応のI/OカードはPC-9801NS/Lでのみ使用が可能です. コネクタの型番は以下の通りです(1992年10月1日時点.拡張スロット/拡張カード の順).コンタクトピンの番号・記号は,下のコネクタのピンアサインの項を参照. ・PC-9801N,NS(有効コンタクトピンは1-60) 日本航空電子 JC20EA-E60P-LT1-A4/JC20-E60S-F1-A4(注) 注:拡張カード側コネクタは61ピンで,11ピンがリザーブ穴. ・PC-9801NV,NS/E,NC(有効コンタクトピンは1-60,F) 日本航空電子 JC20EA-MN61P/JC20-E61S-F3-A4 ・PC-9801NS/T,NL,NS/L(有効コンタクトピンは1-60,A-L) 日本航空電子 JC20EA-E72PB-LT1-A4/JC20-E72S-F3-A4 ※増設RAMカードスロット・拡張カードスロットともに,コネクタのピンアサインの情報だけではユーザーが独自に利用することが難しいように思えたこと,これらのスロットに関する記事を作成した場合には記述量が膨大とならざるを得ないこと,また増設RAMカードスロットはアクセスが極端に遅いため,ユーザーがこのスロット用に何かを製作する可能性は低く,従って記事の需要もまずないと考えられたことから,当初は本記事を作成するつもりはありませんでした.しかしユーザー自身によるコネクタピンアサインの解析結果とそれに基づくCバス音源ボードの動作報告が現れ[CXさんの2024年3月28日のツイート(1・2・3)を参照],拡張カードスロットのコネクタのピンアサイン情報からだけでもこのスロットの独自利用がある程度可能であることが判明し,従って記事の需要は全くないわけではないと考え,本記事を作成して公開することにしました.なお上記の通り,本記事は元資料にある情報の相当部分を掲載していません. ■コネクタのピンアサイン コネクタ嵌合面から見た拡張カードスロットのコネクタのピン番号です. |
拡張カードスロットのコネクタのピンアサインです.Oは出力,Iは 入力,I/Oは入出力,またTTLは74LS相当の入出力レベル,CMOSは74HC相当の入出力レベルをそれぞれ意味します. |
■信号の意味 Cバスの信号も参照. VCC I/Oカード用+5V電源供給端子.本体の電源がオンの時のみVCCが供給される.最大消費電流120mA(変動率±5%以内).この値はカードの温度上昇と本体の電源容量から決められている.外部からの電源供給は絶対に行ってはならない(筆者注).低消費電力化のため,I/Oカードにはスタンバイ機能または電源のオン/オフ機能を必ず内蔵させること.増設RAMカード用電源(VBB)とI/Oカード用電源の間にリーク電流が発生しないようにすること(SCLK信号,REF信号を使用する場合に注意が必要). 筆者注:理由は元資料には書かれていませんが,恐らくカードの温度上昇を防止するための注意と思われます.周囲温度35゜Cでスロット内の温度が50゜Cを絶対に超えないようにせよとの注意書きがあります. AUDIO 本体内蔵のブザーを制御する信号.HでブザーON,LでブザーOFF. IORDY I/Oカードのレディ信号.CPUおよびDMAバスサイクルにおいて追加ウェイトを要求する場合に使用.I/Oカードは3ステート出力とする.未使用時はオープンにする必要がある. S18CLK 307.2KHzのクロック. PE Parity Error. メモリのパリティエラーが発生したことを本体に通知.アクティブH.RESET信号やメモリへの書き込みによりクリアされなければならない.未使用時はオープンにする必要がある. GND グランド端子. SCLK System Clock. システムクロック.電源オン時PC-9801Nでは9.83304MHz,NSでは12.288MHz,NCでは9.8304MHz,NV,NS/E,NS/T,NLでは7.9872MHz,NS/Lでは9.8304MHz.バックアップ時N/NSでは出力されず,他の機種では2.457MHz. CD カード属性/スイッチレジスタアクセス.カード・ディセィブル信号.Hレベルル時メモリ・I/Oアクセスのコマンドが無効となり,Lレベル時同コマンドが有効となる.カード属性の読み出しやカードスイッチレジスタへの書き込み時にHレベルとなる. MWE(CE) Memory Write Enable/Card Enable.CDピンがLレベル時にはメモリに書き込みタイミングを供給.アクティブH.CDピンがHレベル時にはバスがカード属性の読み出しやカードスイッチレジスタへの書き込みを行っていることを示す. MWC(WE) Memory Write Command/Write Enable.CDピンがL時にはメモリアクセスのライトストローブ信号.メモリにデータを書き込むサイクルでHレベルとなる.CDピンがH時にはカードスイッチレジスタへのライトストローブ信号. MRC(OE) Memory Read Command/Output Enable.CDピンがL時にはメモリアクセスのリードストローブ信号.メモリをリードするサイクルでHレベルとなる.CDピンがH時にはカード属性情報のリードストローブ信号. REF Refresh Request. バスがリフレッシュのために占有されていることを示す信号.アクティブH.本体の電源がオンでリフレッシュ周期はノーマル,オフ(バックアップ)でスローリフレッシュとなる.RESET信号がアクティブの場合でもリフレッシュを行うこと.本信号をVCCで動作するIC/LSIで使用する場合には電流の流れ込みに注意(74LS相当のTTL ICを使用するなど). RDY 増設RAMカードのレディ. 増設RAMカードのレディ信号.増設RAMカードのメモリがアクセスされた時Hを出力しなければならない.I/Oカードはオープンにしておく. UB/LB Upper Byte/Lower Byte. データバスの上位8ビット(D15-D8)にデータを出力することを許可,また上位8ビット側に接続されているデバイスをCPUがアクセスすることを示す.下位8ビット(D7-D0)側に対してはA0が同様の働きをする. VBB 増設RAMカード用+5V電源供給端子.I/OカードのIC/LSIをバックアップしてレジュームをサポートする場合にも使用される.VBBはVCCより先に電圧が確定する.本体の電源がオンの時にバックアップスイッチをオンにしておくと,本体の電源をオフにしてもVBBは供給される(=バックアップ).PC-9801N,NSは電源をオフにするとバックアップスイッチの状態に関わりなくVBBは供給されない(=バックアップされない).バックアップ時には,VBB,SCLK,REFの各信号が供給される.VBB電源を使用するカードは,本体の電源がオフ時(RESET=L)に拡張カードスロットにHを出力してはならない.VBBの最大消費電流は動作時120mA,スタンバイ時20mA,バックアップ時5mA(変動率±5%以内).増設RAMがアクセスされていない時およびI/Oカードの消費電流はスタンバイ時の値以下に抑えること(本体のメモリがアクセスされている場合は必ずスタンバイになること).拡張カードスロットで使用するカードには,外部からの電源供給を絶対に行ってはならない(筆者注). 筆者注:理由は元資料には書かれていませんが,恐らくカードの温度上昇を防止するための注意と思われます.周囲温度35゜Cでスロット内の温度が50゜Cを絶対に超えないようにせよとの注意書きがあります. VPP プログラマブルメモリの書き込み電圧を供給する端子.本体は1KΩまたは10KΩでプルアップされる.将来+5V/+12Vが供給されることも考えられるので注意(筆者注:とありますが,そのような機種があったかは不明です). D0-D15 Data 0 bit-Data 15 bit. 16ビットデータバス. IOW I/O Write Command. I/Oアクセスのライトストローブ信号.I/Oにデータを出力するサイクルでH. IOR I/O Read Command. I/Oアクセスのリードストローブ信号.I/Oからデータを読み出すサイクルでH. A0-A23 Address 0 bit-Address 23 bit. 24ビットアドレスバス.A20-A23信号は16ビット機ではL固定出力,32ビット機では本体内部のアドレスが1111の時0000が出力される. CPUENB CPU Enable. CPUバスを使用している時にアクティブになる.CPUがバスを使用している場合はH,それ以外はLを出力. RESET システムリセット. 電源オン時およびリセットスイッチ押下時に出力されるアクティブLのリセット信号.すべての動作に優先し,システム全体をリセット状態にする.但しバックアップのため本信号がアクティブの期間でもメモリのリフレッシュ動作を行うこと.電池が内蔵されバッテリバックアップを行うカードでは本信号をプルダウンすること.メモリのバックアップを行うカードやレジューム対応カードでは,ノイズマージン向上のため本信号をCMOSシュミット入力とすることを推奨. INT-A,INT-B 割り込み要求信号.INT-A,INT-B信号のポジティブエッジによりCPUにマスカブル割り込みを発生させることができる.INT-A,INT-Bはセットアッププログラムによりそれぞれ任意の割り込みチャネルに割り当てることが可能.未使用時にはオープンにしておくこと. DMARQ DMA要求信号.DMAチャネルはセットアッププログラムによりチャネル0またはチャネル3に割り当てることが可能.未使用時にはオープンにしておくこと.セットアッププログラムの設定内容はカレンダ時計用電池により約2ヶ月間バックアップされる. DMAAK DMAアクノリッジ信号. DMATC DMA転送の最終バイトの時Hレベルとなる. BC,NECリザーブ これらの端子にはすべての信号の接続を禁止する. ■DC特性 |
■AC特性(拡張バススロット特性) 値が2つある場合は 最小/最大 の順です. (1) システムクロック 動作時 ・全機種共通 クロック周期(S18CLK) 307.20KHz ・PC-9801NV,NL,NS/E,NS/T(システムバスクロック8MHz) クロック周期 125.2ns クロックパルス幅(H) 56ns/69ns クロックパルス幅(L) 56ns/69ns ・PC-9801NV,NC,NS/L(システムバスクロック10MHz) クロック周期 101.37ns クロックパルス幅(H) 45ns/56ns クロックパルス幅(L) 45ns/56ns ・PC-9801NS(システムバスクロック12MHz) クロック周期 81.38ns クロックパルス幅(H) 36ns/45ns クロックパルス幅(L) 36ns/45ns バックアップ時(レジューム対応機種のみ) クロック周期 408ns クロックパルス幅(H) 183ns/223ns クロックパルス幅(L) 183ns/223ns (2) メモリサイクル(100000h以上) CPUが386SX以上の機種 コマンド-アドレス設定時間 最小22ns コマンド-アドレス遅延時間 最小18ns コマンド-リードデータ設定時間(アクセスタイム) 最大200ns コマンド-リードデータ保持時間 最小5ns WE-ライトデータ設定時間 最小110ns コマンド-ライトデータアクティブ遅延時間 最大50ns コマンド-ライトデータインアクティブ遅延時間 最小10ns コマンド-パリティアクティブ遅延時間 最大30ns コマンド-パリティインアクティブ遅延時間 最小30ns (3) メモリサイクル(0C0000h-0CFFFFh) ・全機種共通 コマンド-アドレス設定時間 最小22ns コマンド-アドレス遅延時間 最小18ns コマンド-リードデータ設定時間(アクセスタイム) 最大295ns コマンド-リードデータ保持時間 最小5ns WE-ライトデータ設定時間 最小180ns コマンド-ライトデータアクティブ遅延時間 最大50ns コマンド-ライトデータインアクティブ遅延時間 最小10ns コマンド-パリティアクティブ遅延時間 最大30ns コマンド-パリティインアクティブ遅延時間 最小30ns (4) I/Oサイクル ・全機種共通 コマンド-アドレス設定時間 最小115ns コマンド-アドレス遅延時間 最小18ns コマンド-リードデータ設定時間(アクセスタイム) 最大239ns コマンド-リードデータ保持時間 最小5ns コマンド-ライトデータアクティブ遅延時間 最小-67ns(筆者注) コマンド-ライトデータインアクティブ遅延時間 最小10ns 筆者注:元資料にはマイナス付きの値が記載されています.元資料のタイミングチャート図(本記事には記載していません)を見ると,例え上のば(3) メモリサイクル(0C0000h-0CFFFFh)のものなどと同様のタイミングが示されており,マイナスの符号は誤記ではないかとも考えましたが,ここでは元記事にある値を示しました. (5) DMAサイクル ・全機種共通 コマンド-アドレス設定時間 最小12ns コマンド-アドレス遅延時間 最小16ns コマンド-MWEアクティブ遅延時間 最大160ns ・拡張カード対応機種 DMAAK-DMARQ遅延時間 最小10ns (6) リフレッシュサイクル 動作時 MRC-アドレスアクティブ遅延時間 最小63ns MRC-REFアクティブ遅延時間 最小12ns リフレッシュパルス幅 最小356ns リフレッシュ期間 15.6μs-16.2μs(注) 注:リフレッシュ周期は複数回のリフレッシュサイクルの平均値を示したものであり,二つのリフレッシュサイクルの時間間隔を保証するものではない. バックアップ時 リフレッシュパルス幅 最小5μs リフレッシュ期間 100μs-128μs (7) IORDYタイミング コマンド-IORDY設定時間 最大80ns (8) カード属性読み出し CD-アドレス設定時間 最大20ns CD-アドレス遅延時間 最小0ns CD-リードデータ設定時間 最大150ns CD-リードデータ保持時間 最小5ns OE-リードデータ設定時間 最大100ns OE-リードデータ保持時間 最小5ns (9) カードスイッチ書き込み CD-アドレス設定時間 最大20ns CD-アドレス遅延時間 最小0ns CD-ライトデータ設定時間 最大0ns CD-ライトデータ保持時間 最小20ns WE-ライトデータ設定時間 最大0ns WE-ライトデータ保持時間 最小20ns |