エプソン98互換機の自動チェック機能による
エラーメッセージ


本記事の内容は,PC-286VFユーザーズマニュアル,PC-486SR PC-486SEユーザーズマニュアル,PC-386GSユーザーズマニュアルとPC-386NOTE ARシリーズユーザーズマニュアルとPC-486NOTE ASユーザーズマニュアルの一部のコピー,吉野敏也(監) 株式会社テクノメディア(編) (1993). EPSON PC システムガイド ――100万人EPSONユーザーのためのオフィシャル・データブック―― クリエイト・クルーズ,およびEPSON98サービス機構の2004年8月15日発行の同人誌,"E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説" の EPSON PCの拡張小ネタ集(pp.47-63)の記事(注)に拠っています.
 注:"E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説" には,"はじめに" のページに,掲載されている内容を,電子掲示板上での質問に対する "回答のガイド" 以外の目的で無断転載することを禁じる旨の記述があります.そして転載許可の申請先としてE-SaPa編集部が指定されています.しかし2019年の時点では,E-SaPa編集部と連絡を取ることができず,発行元のEPSON98サービス機構の活動も確認できず,また記事の著者に直接連絡することもできない状態です.関係者と思われる方々のSNSのアカウントもいくつか確認していますが,いずれも随分前から更新がありません.筆者は,エラーメッセージやスイッチ設定等,一般のユーザーが利用できた一次資料に掲載されているデータに基づいている(と推測される)一部の記事については,E-SaPa編集部による用途の制限の要求を妥当とする考えに全面的な賛同は致しかねますが,多くの貴重な記事を執筆された著者の方々と,当時のあの困難な状況の中で,それを収録した媒体を世に出していただいた(筆者のような地方在住者のために,通信販売にも応じていただけました)E-SaPa編集部の方々ならびに関係者の方々の多大な労に感謝し,またそれに敬意を表する意味でも,この要求をできる限り尊重したいと考えてきました.しかし一方では,この同人誌が刊行されてから,2019年の時点で15年もの歳月が経過しており,現在はこの同人誌自体の入手も困難であり[再構成された記事をこの同人誌に再録された4冊の同人誌(注1・2),およびそれらの一部の記事の元となった一次情報源(記事の末尾に簡単なリストの形で示されています)の入手についても同様です],かつこの同人誌に掲載されている情報の多くがWWW上に(少なくとも完全な形では)存在しないという現状があります.このため本ウェブページでは,筆者(単なる一読者に過ぎず,E-SaPa編集部とは全く無関係な立場です)の独断により,本記事を含む本ページのいくつかの記事の中で,情報源がこの同人誌であることを明記した上で,この同人誌に掲載された内容を紹介することにしました.
  注1:EPSON PC-686RZ user's manual(1999年8月),Oh! EPSON PC(2000年12月)(注1.1),できる!?EPSON PC(2001年8月,以上すべてEPSON98開発公団発行),E-SaPa(2002年12月,EPSON98サービス機構発行)の4冊.最後のものはCD-R版(E-SaPa CD)もあり,また2003年8月にE-SaPa plusの誌名で再発行もされました.筆者はOh! EPSON PCとE-SaPaの二冊を架蔵しています.
     注1.1:この同人誌に挟まれているクリーム色のB4版二つ折りの "Oh! EPSON PC DATABOOK出張版 2020年冬号"(正誤表もこれに掲載されています)によれば,これ以前(1999年夏のコミックマーケット開催時と思われます)に "EPSON PCシリーズオールガイドブック" が刊行されていましたが,その記事はすべてこれに再録されているとのことです.
  注2:特にモノクロコピー誌である "できる!?EPSON PC" は,コミックマーケット会場で初回発行分がごく少部数("E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説" の "第五章 関連資料" の "この同人誌について" の節の記述によれば,わずか数部といいます)販売されただけで,増刷分を対象とした通信販売も,EPSON98開発公団は当初かなりの数の予約を受け付けはしたものの,いかなる理由からかその後全く動きを見せず,また筆者を含む予約者からの状況に関する問い合わせに応じることもなく,長期間の沈黙を続けた後に予約を一方的に破棄したという経緯もあり(注2.1),非常に貴重な記事が多く掲載されていたにもかかわらず幻の本であり続けていました."E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説" に再録された内容(注2.2)を見て驚いたものです.そこにはWWW上では手に入らない情報が満載されていたからです.
     注2.1:正確には予約破棄のコメントが出されることさえありませんでした.不特定多数の人間からの閲覧が可能な予約ページが,予約者の電子メールアドレス(連絡用に予約者自らが記入するようになっていました)を掲載したまま放置され続け,いつの間にかページそのものが消えていました.
     注2.2:"できる!?EPSON PC" の記事がすべて "E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説" に再録されたわけではありません.再録されなかった記事はその後に出る同人誌に再録する予定とあります.筆者はEPSON98サービス機構からその後に出た同人誌を入手できておらず,内容を確認できていません.

エプソン98互換機では,本体起動時(または再起動時)に自動的にハードウェアの状態をチェックするプログラムが動作し,異常が検出されればエラー音とともにエラーメッセージが表示されます.

以下,エラーメッセージ,エラー音,エラーの原因の順です.エラー音(ブザーの音)は、"ピ" が約0.1秒で,"ピー" が約0.5秒です.
 (1)今のところ,デスクトップ機ではPC-486GF/GR,ノート機ではPC-386NOTE AR辺りまでの機種のエラーメッセージしか把握できていません.
 (2)"BIOSの異常" のエラー音の ピピピピピピピ は,E-SaPa別冊 蘇るEPSON PC伝説の記事では ピ が6回鳴るとされていますが,PC-386NOTE ARシリーズユーザーズマニュアルとPC-486NOTE ASユーザーズマニュアルでは7回鳴るとされています.本記事では一次資料である後者に従いました.
 (3)これらのエラーメッセージはすべての機種で表示されるとは限りません.例えばPC-286VFには,ERR:TV(エラー音は ピーピーピピピ)のエラーメッセージなどは表示されません.
 (4) PC-386GSでは,ERR:BR(エラー音は ピピピ)のエラーメッセージは,グラフィック用VRAMの異常時だけでなく,テキスト用VRAMの異常時にも表示されるといいます.また具体的には不明ですが,PC-386Mでも一部のエラーメッセージに違いがある可能性があります(asayanさんの2022年2月16日のツイート を参照).
 (5) PC-386NOTE Aで,画面に ERR:RD と表示され,エラー音が ピーピピピピ と鳴るというものが報告されていますが,これは上記の資料には記載されていません.またPC-386NOTE ARで,エラー音が ピーピーピーピーピーピー と鳴るというもの(画面表示が出ないためエラーメッセージは確認できず)が,またPC-486NOTE ASで,起動時に同じエラー音が鳴るがメッセージは表示されず,動作中も同じエラー音が間をおいて繰り返し鳴り, バッテリーランプが点滅するというものがそれぞれ報告されていますが,これらも上記の資料には記載がありません(故障でなくバッテリーの寿命による充電不可能の警告音?)またPC-386NOTE Aで,起動はするが [DC IN]ランプが緑 --> 赤 --> 赤の順に点灯するという動作が報告されていますが,エラーメッセージやエラー音に関するコメントはありませんので,これはバッテリーが充電できない場合の正常な動作なのかもしれません.
 (6) VRAM等に異常がある場合には,画面にエラーメッセージが表示できないため,結果的にエラー音のみとなる場合があります.
 (7) レジューム機能が有効となっている場合,電源投入時にピピという音が鳴りますが,これは異常ではありません.
 (8) 特定のエラーメッセージ/エラー音が表示されても,エラーの原因が別なところにある場合もあります.例えば各部の端子の接触不良でもBIOS ROMのチェックサムエラーメッセージが表示されたり,電源ユニットのコンデンサが弱っていた場合にグラフィック用RAMのエラーメッセージが表示されることがあるようです.PC-98の起動時に表示されるエラーメッセージも同様と思われます.
 (9) 実際問題として,エラーメッセージから特定の部品の故障や断線箇所を特定するのは容易ではないでしょう.局所的なハンダクラック(廃基板工作員さんの2022年3月23日27日のツイートを参照)や内蔵電池の液漏れによるパターンの断線箇所を修復して復活させたという報告はありますが,特定のエラーメッセージが故障箇所の特定に直接役立ったケースよりも,何らかのエラーメッセージが出たことである程度広い範囲で基板の精査を行った結果,故障箇所が特定できたというケースの方が多いのではないかと考えています.これらのエラーメッセージは,あくまでも製造時に予想されていた故障に対応するものであり,現在は製造時には予想できていなかった部品の経年劣化や熱による破壊,電解コンデンサ/内蔵電池の液漏れによる基板の損傷などを原因とする故障には必ずしも対応していないのが実状と考えるべきでしょう.製造時に想定されていた故障の原因の多くが恐らく局所的なものであったのに対して,熱や漏れ出した液体は,エラーメッセージから示唆される "責任病巣" を大きく超える範囲にわたって基板とそこに実装されている部品とを損傷することが多いからです.




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