80ピン拡張バスの信号


PC-286NOTE executive/F,PC-386NOTE A/W/WRの80ピン拡張バスの信号です.本記事は下記の資料の記述に基づいています.

吉野敏也(監) 株式会社テクノメディア(編) (1993). EPSON PC システムガイド ――100万人EPSONユーザーのためのオフィシャル・データブック―― クリエイト・クルーズ

※吉田 功 (1994). トランジスタ技術 Special No.45 特集 PC98シリーズのハードとソフト ――386&486マシンを使いこなす―― CQ出版 にも80ピン拡張バスに関する記事があります.この本では引用文献や参考文献が全く挙げられていませんが,この記事はその内容から上記の資料に拠ったものと判断されます.

■コネクタのピンアサイン
ピン番号の振り方はアンフェノール50ピンコネクタのものと同様です.本体側80ピンメスコネクタは日本AMP製SMマイクロコネクタ 1-175928-0,ケーブル側80ピンオスコネクタは1-175677-0,コネクタカバーは1-175753-0です(1993年5月時点).
 ※No.046の部屋 --> 懐パソのオモヒデ EPSON に掲載されているプロセッサ1990年9月号(技術評論社発行)の記事には,"拡張バスは80pのハーフ・ピッチ(1.27mm)のコネクタ" であり,"ヒロセムセン・パーツセンターで見つけたDX40-100Pというコネクタを加工して使用" したとあります.調べてみるとヒロセ電機製のDX40-100P(55)というコネクタは現行品であり,また80ピンのDX40-80P(55)というものも現行品の中にありました.80ピン拡張バスの本体側メスコネクタにはDX40-80P(55)も適合するかもしれませんが,筆者は80ピン拡張バスを持つ機種を所有していないため確認できません.なお,鴨川ネギさんの2020年2月28日3月2日のツイートで,80ピン拡張バスコネクタに接続するオスコネクタをカードエッジコネクタとして作成している同人ハードウェアが紹介されています.

本体内部のプルアップ抵抗は,PC-286NOTE executive/Fでは10kΩであり,他の機種については以下の通りです.


80ピン拡張バスの信号は110ピン拡張バスの信号と以下の点で異なります.
 ・システムアドレスバスSA20-SA23がない.
 ・1MB FDD信号,またSALE,POWER0,RFSH0,MWEN0,DACK30,DRQ30,INT4(未接続),INT5,INT6,MACS0,IOCK0,WORD0,NMI0,S18CLKの各信号がない.
  ※FM音源の割り込み信号としてINT5しか使用できないソフトウェアを使いたい場合には,PC内部のカスタムチップのピンからINT5信号を引き出す工作を行う必要があります(MOMO's Web Page --> PC9801 --> PC-386NoteW --> 改造情報 を参照).
 ・ディスプレイ信号がアナログRGB信号でなく4ビットごとのディジタルRGB信号である.
  ※80ピン拡張バスに外部アナログディスプレイを接続する方法については,98ノート用CRTパック,98ノート/エプソン98互換ノート用外部ディスプレイ接続ケーブル を参照.

+5Vの電源容量は200mA(MAX)です.+5V電源は本体内に短絡保護回路がついているため,規格容量を超えた電流が流れた場合には,本体の電源が切れるか,コネクタ電源ラインに入っているヒューズが切れる可能性があります.

以下,ピン番号 信号名 PC側から見た信号方向 の順です.


 ※54ピンはPC-386NOTE W/WRではNC.従ってPC-386NOTE W/WRではINT2は使用不可能.
 ※※EPSON PC システムガイドにはDC特性の項にHDLA00信号の記載がありますが,この信号のピンは80ピン拡張バスに含まれていません.この信号は8086/V30用の信号であり(CPUが80286であるデスクトップ機のPC-286シリーズの一部のCバスコネクタにも出ていますが),誤記と思われます.


■信号の意味
Cバスの信号の記事も参照して下さい.

 SA19-SA0
  システムアドレス信号.
 SD15-SD0
  システムデータ信号.16ビット.
 DTCK
  ドットクロック(21.052MHz).この信号はディジタルRGB信号をそのまま使用する拡張機器のために用意されている.アナログRGB信号はRED1-4,GRN1-4,BLE1-4,HSYNC,VSYNC,SYNCのみで作ることができる.PC-286NOTE executive/Fではパワーセーブモード(本体のシステムクロックが5MHz)時には半分(10.526MHz)になるため,アナログRGB信号をディジタルRGB信号からD/A変換して作った場合,パワーセーブモード時には外部ディスプレイに正常な映像は映らない.なおPC-386NOTE A/W/WRにはパワーセーブモードはない.
 HSYNC
  水平同期信号.
 VSYNC
  垂直同期信号.
 GRN1
  表示データ緑1.
 RED1
  表示データ赤1.
 GRN2
  表示データ緑2.
 RED2
  表示データ赤2.
 GRN3
  表示データ緑3.
 RED3
  表示データ赤3.
 GRN4
  表示データ緑4.
 RED4
  表示データ赤4.
 INT0
  8259割り込みコントローラ(マスタ)のIR3に接続される(外部割り込み要求信号).
 INT1
  8259割り込みコントローラ(マスタ)のIR5に接続される(外部割り込み要求信号).
 INT2
  8259割り込みコントローラ(マスタ)のIR6に接続される(外部割り込み要求信号).
 SIOR
  I/Oリードコマンド.内部CPU動作時には出力,外部CPU動作時には入力モード.アクティブ "L" 信号.
 INT3
  8259割り込みコントローラ(マスタ)のIR1に接続される(外部割り込み要求信号).
 SIOW
  I/Oライトコマンド.SIORと同様の入出力状態.
 SMRD
  メモリリードコマンド.SIORと同様の入出力状態.
 SMWR
  メモリライトコマンド.SIORと同様の入出力状態.
 DAK00
  DMAコントローラ8237のチャネル0(HDD)のDMAアクノリッジ信号.アクティブ "L" 信号.
 CPUE0
  CPUがバスを使用中であることを示す信号.
 DRQ00
  DMAコントローラ8237のチャネル0(HDD)のDMAリクエスト信号.アクティブ "L" 信号.
 IORDY
  ウェイト要求信号.
 SCLK
  システムクロック.SCLKは内部クロックが16MHzの時は8MHz,20MHzの時は10MHz.
 SBHE
  バスハイイネーブル信号.データバスのSD8-SD15のデータが有効である.
 DMATC0
  DMAコントローラ8237からのエンドオブプロセス信号で,DMAサイクルにおいて最後の転送であることを示す.
 SYNC
  VSYNCとHSYNCの排他的論理和.
 (NC)
  未使用.外部でもNCにしておくこと.
 BLE1
  表示データ青1.
 BLE2
  表示データ青2.
 BLE3
  表示データ青3.
 REST0
  システムリセット.
 BLE4
  表示データ青4.


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