PC-386GSのNi-Cd電池の撤去


初期~中期のエプソン98互換デスクトップのマザーボード上に直付けされているNi-Cd電池は,経年劣化により陰極端子付近から液漏れを起こしてマザーボードを損傷する危険があるため(注1),速やかに撤去する必要があります.新しい電池をすぐに取り付けることができない場合でも(注2・3),毎回MS-DOSを起動してDATE・TIMEコマンドで日時の設定を行うようにすれば,運用自体はできますので(注4),とにかくこの種の電池の撤去だけはしておくことをお奨めします.
 注1:エプソン98互換機・PC-98ともに,起動障害を起こしている機体で,調べてみたところこの電池の液漏れによってマザーボード上のパターンが大きく損傷していたという報告が何例もあります.また損傷が酷く修理を断念せざるを得なかったというケースもあります.
 注2:同種のNi-Cd電池をエネループで代替して10年間問題が出なかったとの報告があります(PC-9821/9801スレッド Part87の74-77番の投稿 を参照).
 注3:入手の容易なNiMH(ニッケル水素)二次電池(3.6V-80mAh)で置き換えている例を見ます.トリクル充電事態なので問題はないといいます(エプソン98互換機の内蔵電池を参照.
 注4:PC-486GRでは電池が切れていると内蔵HDDからシステムが起動できないといいます(EPSON 98互換機 Part7の133・138・139・142・143番の投稿を参照).PC-386GSでは起動可能です.

uts --> EPSON PC-286VF を購入(2015年7月31日の記事)にPC-286VFのNi-Cd電池の撤去報告があります.筆者もこの記事を見てPC-286VFの電池を撤去しました.ここではPC-386GSの電池の撤去について述べます.
 追記:新かべきんブログ --> EPSON PC-386GS バッテリー交換と内部清掃^^(2018年8月17日の記事)に,Ni-Cd電池の撤去を含むPC-386GSのメンテナンスの記事があります.

PC-286VFでは増設RAMベースボードなどを装着する内部拡張スロット2の前方に電池がありますが,PC-386GSでは電源ユニットのケーブルを接続するコネクタのそばに電池があります.


取り付けられている電池は,PC-286VFで使用されているものと同じGS SAFT製のGB50H-3(3.6V-50mAh)という二次電池です.


電池は白い樹脂のようなものでマザーボードに固定されています.これは脆い(経年劣化により脆くなった?)ので,電池を取り外す前に,マザーボードを傷つけないよう注意しながらマイナスドライバなどで少し砕いておきます.

電池から漏れ出している青い液(多くは乾燥してこびりついています)をできるだけ除去してから電池の撤去を行います.(必要であれば追いハンダを行った後で)十分に加熱したハンダゴテを用い,マザーボード裏面からハンダ吸い取り機などを使って電池の端子部のハンダを除去します.ハンダの除去が十分でないうちにマザーボードから電池を無理に引き抜こうとすると,パターン剥離を起こしてしまうことがあります.

電池が取り付けられていた場所およびその周囲のマザーボードの両面を,無水アルコールなどで丁寧に清掃します.特に,電池の陰極端子が取り付けられていた箇所のそばにあるスルーホール(図の黄丸の部分)に注意して下さい.ここに縫針等の先端を挿して抜いた際に青い汚れが付着していれば,漏れ出した液がマザーボードの裏面に達している可能性があります.マザーボード裏面のR73とR75というチップ抵抗のスルーホール側の端子表面がくすんだ鉛色になっているならば,目視ではそう見えなくても,漏れ出した液は実際にはマザーボード裏面にも広がっていると判断できます.筆者のPC-286VF・PC-386GSとも,目視の段階では液漏れがそれほど起きているようには見えませんでしたが,このような観点から注意深く調べていくと,実際には漏れ出した液がかなりの範囲に広がっていたことが判明しゾッとしました.なお漏れ出した液がスルーホール(基板の小穴)に入り込んでしまっている場合には,スルーホールの内部も十分に清掃する必要があります.放っておくと腐蝕が進行します.


筆者のPC-386GSは,分解後に再度組み立てた際,一時的に動作が不安定になりました.FDDやHDDを認識しない,起動時の自動チェックでERR:VR(グラフィック用VRAMの異常)を表示し起動できない,画面にカラフルな模様が表示され起動できないなど,多彩な症状が次々と出ました.これらの症状は本体をリセットしても変わりませんでしたが,SWDEFスイッチの設定を変更したり,電源のオンオフを繰り返したりなどしているうちに,正常に動作するようになりました.電池を撤去したり,マザーボードやCバスバックボードを取り外したために,PC内部で保存されていた何らかの設定情報が破壊されたためではないかと考えています.メモリスイッチの内容が破壊されたために本体が起動できなくなったのであれば,SWDEFスイッチをONに設定すると起動できるようになるはずなのですが,筆者のPC-386GSでは,SWDEFスイッチをONに設定しただけでは起動できるようになりませんでした(起動できるようになるまである程度時間がかかるものなのかもしれませんが).
 また,筆者はPC-386GSにWindowsキーのついたPC-9821用のキーボードを接続していますが,この作業を行った後,起動時にキーボードのCAPSとカナのLEDが点灯するようになりました.これは手動でオフにすれば使用に問題はありません.これについては,キーボードのCAPSキーとカナキーの状態はNi-Cd電池から供給される電力を使用して本体に記憶されているので,電池を撤去した場合には当然の挙動との指摘を かかっくん さんよりいただきました.なおPC-286VFの電池を撤去した場合にはこのようなことはありませんでした.


トップページ