VFO ICについて


SED9421C0Bを使用したHxC(内蔵・外付け)用VFO回路図が,レトロゲーム漫遊記 : episode2HxCをPC-98x1シリーズで使う(その後の7) (2012年1月20日の記事)に掲載されています.これを元にすれば,PC-98用のVFOなしFDDに付加するVFO回路(2HD・2DD両対応)が作成できるでしょう(注1・2).
 注1:福田卓也さんの2019年12月1日のツイートによれば,クロック発生部分はHC04よりHCU04を使用した方がよく,またHxCでなくFDDに接続する場合には,HxC用は無視した部分を結線するだけでよいだろうとのことです(注1.1).
    注1.1:実際に未接続ピンを追加接続すれば,ほぼこの回路図の通りでPC-98用のVFO回路が作成できるといいます[sakuradai11さんの2020年10月18日のツイート画像)を参照].
 注2:PC-98用のVFO回路で使用される発振子は16.00MHz(2HD用)と19.20MHz(2DD用)ですが,EPSON98互換機の本体内蔵VFOではそれぞれ15.9MHzと19.6MHzといいます(FrontPage - pukiwiki for nue -->雑記 --> 雑記/2014-01-01 を参照).これは筆者もPC-286VFで確認しました.

また,
 高橋昇司 (1989). フロッピ・ディスク装置のすべて ――FDD全タイプの基礎から応用まで―― CQ出版 の "9 データ・セパレート回路" pp.283-307
では,いくつかのアナログVFO ICとディジタルVFO ICについて解説されています.回路例も記載されているICは以下の通りです(カッコ内は掲載ページ):
   富士通製 MB4107,MB4108(pp.288-294)
   セイコーエプソン製 SED9420C,SED9421C0B,SED9421CAA,SED9421CAC,SED9420MAC(注)(pp.294-298)
    注:SED9420MACについては,sakuradai11さんの2021年1月24日30日のツイートに拠ります.
   東芝製 TC8568M(pp.298-299)
   NEC製 (μP)D71065G,(μP)D71066CT(pp.300-302)
   SMC製 FDC9216,FDC9229(pp.304-306)
   SONY製 CXD1190P(pp.306-307)

SED9421Cを用いた回路の例は,
 神崎康宏 (1988). PC9801のフロッピ・ディスク・インターフェースの詳細 トランジスタ技術SPECIAL NO.11 特集 フロッピ・ディスク・インターフェースのすべて ――需要の急増するFDDシステムの基礎から応用―― CQ出版, pp.106-116.
にも掲載されています.

またSED9421C0Bを用いた回路の例は,
 松本好司 (1987). PC-9801UV2に5インチ2HD/2DDドライブを! 5インチのソフトがコンバートなしで使える I/O Vol.12, No.4(通巻126号/昭和62年4月号), 工学社, pp.219-223.
にも掲載されています.

またSED9420C,SED9421C,あるいはFDC9216Bを用いた回路の例は,
 井芹陽一 (1988). PC9801へのFDDの接続法と2DDから2HDへの改造 トランジスタ技術SPECIAL NO.11 特集 フロッピ・ディスク・インターフェースのすべて ――需要の急増するFDDシステムの基礎から応用―― CQ出版, pp.141-170.
にも掲載されています.

なおこれらの書籍に掲載されているVFO回路は2HD専用となっています(使用されている発振子は16MHzのもののみ).

また,Electrelic --> 工作 --> 自作のデータセパレータ基板 (回路図編-2)(2017年3月31日の記事) にもSED9420Cを使用したPC-98の外付けFDD用のVFO回路図が掲載されています.またKORG製DIGITAL SAMPLING SYNTHESIZER DSS-1 SERVICE MANUAL(PDFファイル,約40MB)の15ページ(元の冊子の13ページに当たります)のKLM-780基板の回路図にもSED9420Cを使用したVFO回路が含まれています.これらも使用されている発振子は16MHzのものだけで,2HD専用となっています.

また,sakuradai11さんの2021年1月30日のツイートに,SED9420MAC・SED9420CAC(・SED9420C?)を使用したVFO回路図[1画像)・2画像)・3],SED9421C0Bを使用したVFO回路図[1画像)・2画像)](注1),D71065G_を使用したVFO回路図画像)(以上はいずれも16MHzと19.2MHzの発振子を使用し,2HD・2DD両用),TC8568AMを使用したVFO回路図画像)(発振子は16MHzのものだけで2HD専用)(注2)がそれぞれ掲載されています.
 注1:未実作とのこと.
 注2:sakuradai11さんの2021年9月21日のツイート[1画像1画像2画像3画像4)・2]も参照.

 ※高橋昇司 (1984). 最新フロッピ・ディスク装置とその応用ノウハウ ――標準/ミニ/マイクロFDDシステムの基礎・設計・活用―― CQ出版 の "第8章 VFO回路"(pp.161-187) には,より古いVFO ICについての資料があります.回路例も記載されているICは以下の通りです(カッコ内は掲載ページ):
   Y-E DATA製 MB14323+MB14324+MB4393(pp.170-175)
   日立製 HA16632AP(pp.175-177)
   諏訪精工舎製 SED9420C,SED9421C(pp.177-178)
   Western Digital製 WD1691(pp.180-182)
 ※※また,PC-98中心レトロPCプログラミング本画像手動botさんの2020年7月30日のツイート によれば, 斎藤浩之 (1988). PC-9800,8800/8000,6000シリーズ対応 初心者からの実用ハードウェア製作 続・PC工作入門 日本ソフトバンク に,FDDを外付けで接続するためのVFO回路の作成方法の記事が掲載されているといいます.sakuradai11さんの2020年7月7日9月10日のツイートによれば,この本のVFO関連の記事は "第9章 ディスクドライブの増設"(pp.151-166)で,回路図等の実際に必要な情報はpp.159-161の3ページ,FDDはYD-380を対象とし,2HDモードのみで,VFOチップにはFDC9216Bが使用され,他に74LS04,74LS32,74LS132,7438が使用されているとのことです.

SED9420C0B・SED9421C0Bのデータシート(PDFファイル)は有限会社サンエレクトロのウェブページにあります(12).SED9420CACのデータシート(PDFファイル)はHxC2001のウェブページにあります.またμPD71065G・μPD71066CTの詳細な資料は,bitsavers.orgにあるNEC Electronics Inc. Intelligent Peripheral Devices (IPD) 1989-1990 DATA BOOK(PDFファイル,全570ページ,31.9MB)のpp.298-319にあります(Section 5がFloppy-Disk Controllersの節で,元の冊子では 5-21-5-42 がμPD71065/66の項).

 ※2019年12月の時点で,SED9420Cは,国内では樫木総業通信販売部若松通商などでの取扱いがあります(但し前者のウェブページの特別価格商品一覧では在庫限りの品となっています).2023年に確認したところ,Amazonでも扱っているところがあります.
 ※※SED9421C0Bの偽物が出回っているとの情報があります.海外から取り寄せる場合などには注意が必要でしょう(第三研究所@TRISSさんの2021年2月5日のツイートを参照).

手持ちの一部の機器を調べてみましたが,TC8568Mは加賀電子(TAXAN)製外付け5インチFDDユニットであるTF502Aで,SED9421C0Aは緑電子製外付け3.5インチFDDユニットであるNew Little Fで,SED9421C0Bはα DATA製ファイルスロット3.5インチFDDユニットであるAD-F35FAで,μPD71066CTはα DATA製ファイルスロット5インチFDDユニットであるAD-F50FAやLAND COMPUTER製ファイルスロット5インチFDDユニットのLFID-5S,IDOL JAPAN製ファイルベイ5インチFDDユニットのID-5FBで,またμPD71065GはMIQ製外付け3.5インチFDDユニットであるFD-331NSやOWLTECH製ファイルベイ3.5/5インチFDDユニットであるFB-532で使用されています(注1・2).FD1137DやFD1155DのVFO ICもμPD71065Gです(注3).NEC製ファイルスロット3.5インチFDDユニットのPC-FD321FではμPD6712GSが使用されています.VFOのないFDDが使用されている外付けFDDユニットやファイルスロットFDDユニットのI/F部分の基板の配線を追えば,使用されているVFOチップまわりの具体的な回路を明らかにすることができます.
 注1:単にVFO回路が載った基板を使用したいということであれば,これら,特に外付けFDDユニットのものを利用するのが最も手軽でしょう.外付けFDDユニットには,VFOを内蔵したFDD(FD1135D,FD1137D,FD1138D,FD1155D,FD1157D,FD1165A)が使用されているものがありますが(FD1158Dが使用されている製品の存在は確認していません),種類としてはそれほど多いわけではなく,またドライブのフロントベゼルやイジェクトレバー,イジェクトボタン等から,これらのFDDが使用されていることの見当が付くことも多いため,VFO回路目当てで外付けFDDユニットを新たに入手する場合に,この種の製品を避けることは容易でしょう.またジャンパスイッチの多いTEAC製FD-235GFなどが使用されている外付けFDDユニットのVFO基板には,単なるVFO回路以外の(FD-235GF等専用の?)特殊回路(?)を備えているものがあるようです[緑電子やコンピュータリサーチ(CRC)などの製品の一部に該当するものがあるようです].そのような製品も避けた方が無難でしょう.
 注2:加賀電子(TAXAN)製FDC511AのVFO ICはSED9421C0B(sakuradai11さんの2020年11月22日のツイート を参照).ELECOM製FDD-3.5WとFDD-3.5WAのVFO ICはSED9421C0B[赤貝パックリ事件さんの2021年8月21日のツイート(12),九太郎さんの2023年8月16日のツイート を参照].ACCEL製FDC358AUTOIIのVFO ICはSED9421C0B(赤貝パックリ事件さんの2021年8月21日のツイート を参照).コンピュータリサーチ(CRC)製CRC-FD3.5SS(sakuradai11さんの2020年12月29日のツイートを参照)・CRC-FD3.5SH(わんくんさんの2023年9月5日のツイートを参照)のVFO ICはSED9421C0B.Logitec製LFD-392のVFO ICはMB4107(赤貝パックリ事件さんの2021年8月21日のツイート を参照).Logitec製LFD-392RのVFO ICはMB4107A(赤貝パックリ事件さんの2021年8月21日のツイート を参照).EPSON製TF-50のVFO ICはSED9421C(0Bなし)(赤貝パックリ事件さんの2021年8月21日のツイート を参照).エース電子製AF-35WSのVFO ICはμPD71065G(わんくんさんの2023年11月8日のツイート を参照).LAND COMPUTER製LFID-5T(ファイルスロットFDDユニット)のVFO ICはμPD71066CT(Lynfieldさんの2023年9月29日のツイート を参照).
 注3:従って,VFO回路以外の部分の損傷により修理が不可能な状態のFD1137D,FD1138D,FD1155D,FD1157D,FD1158Dがあれば,そこからVFO ICや発振子など,VFO回路の作成に必要な部品を取ることができます.またVFOなしFDDを内蔵している機種の故障したもののマザーボードからも,同様に部品を取ることができます.個人的にはPC-9801NL/R/NL/A,PC-9821Ld/Lt(外付けFDDユニットPC-9801NL/R-02対応機種:これらの機種ではVFO回路はPC本体ではなく外付けFDDの方に内蔵されています)以外のノート機のジャンク品が狙い目と思いますが,電解コンデンサや内蔵電池/バッテリーの液漏れによる損傷に注意する必要があります.

VFOについてはKeir Fraserさんのgithub --> flashfloppy -->Issues --> Clock and data separation function. #351も参考になるかもしれません.

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上で挙げた書籍は古書としても流通していますが,公立図書館に所蔵されている場合もあります.国立国会図書館サーチや,最寄りの都道府県立図書館のウェブページに設けられている都道府県内図書館横断検索システム(こちらの方が細かく調べられると思います)で,所蔵している公立図書館を見つけることができます.確認していませんが,国立国会図書館のデジタル資料として公開されているものもあるかもしれません.有償コピー送付サービスを行っているところもあります(国立国会図書館でも遠隔複写サービスを実施しています).必要ならば直接確認して下さい.

また,高専や大学の附属図書館に所蔵されている場合もあります.CiNii Booksで所蔵館を確認することができます.これらの学術機関の附属図書館は,若干の制限付きながら,学外者にも蔵書の利用を認めているところが多いと思いますので(但し所蔵先が特定の研究室である場合には,学外者の利用はできないケースが殆どでしょう),これも必要ならば直接確認して下さい.


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