PC-586RXのSMD-300(SMD340-302)を
FD1231Tで代替


PC-486SE/SR以降のエプソン98互換デスクトップ機では,内蔵3.5インチFDDとして,EPSON製SMD-300(SMD340-301-00,SMD340-302)あるいはMITSUMI製D353T3が使用されています.これらのFDDは,ドライブの厚さ,FDDケーブルのタイプ(フラットケーブルかフィルムケーブル)およびイジェクトボタンの位置が相互に異なります.SMD340-302とD353T3は,ともに信号コネクタが34ピンフラットケーブル接続用コネクタで,ピンアサインは共通と考えられ(注1),実際に一つの本体(PC-586RA)で混在使用されている例もあります[E-SaPa編集部 (2002). 活用それぞれ 現役ゑぷらーのマシン拝見 EPSON98互換機専門同人誌 E-SaPa EPSON98サービス機構, pp.44-46.].一方SMD340-301-00は,信号コネクタは26ピンフィルムケーブル接続用コネクタであり,SMD340-302とD353T3とピン数が異なりますが,信号自体は共通ではないかと考えています(注2).
 注1:SMD340-302とD353T3のいずれか一方のFDDが使用されている機種(エプソン98互換機本体-内蔵FDD対応表 を参照)では,マザーボードは共通な筈ですので,マザーボード上のFDDケーブル接続用コネクタのピンアサインもFDDの種類にかかわらず同じ筈というのがこのように考える理由です.[追記:しかし下で述べるように,D353T3ではSMD340-302で使用されている27ピンの信号を持たない可能性があります.]
 注2:26ピンフィルムケーブルコネクタを持つSMD-300であるSMD340-301-00のピンアサイン情報が,試運転の資料館 --> 営繕部 --> 国産電算機のピンアサイン で公開されました.但し一部のピンの信号は不明となっています.

これらのFDDは製造からかなりの時間が経過しており,また中古市場で見かけることも稀なため,現在では良好な状態のものを入手することは困難です.

ここでは,SMD-300 (SMD340-302) の代替FDDとしてPC-98用のFD1231Tおよびその互換品(MPF520-F,OSD,OSD-u,34ピン信号コネクタを持つFD1148T)を使用する方法について述べます.以下,SMD-300 (SMD340-302) をSMD-340と表記し,FD1231Tおよびその互換品をFD1231Tと総称します.

この方法を応用すれば,代替FDDとしてPC/AT互換機用のものを使用することもできます.わぴこのほーむぺーじ --> [日記兼掲示板] --> PC-486なFDDのキケン究所 に,MITSUMI製のD353M3とD353M3DをPC-486MU/MVで使用する方法に関する記事があります.PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(1)――FDDケーブル作製+偽READY信号生成スイッチ取り付け編――PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(2)――READY信号自動生成回路外付け編――PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(3)――制御基板改造編―― の記事も参照.

テストに使用した本体はPC-586RX1LWで,元々内蔵されていたFDD(故障したD353T3,イジェクトボタンは内寄り)を単体入手のSMD-340(イジェクトボタンは外寄り)に,フロントパネルをFDD部分の開口部が二つあるPC-586RV2のものにそれぞれ取り替えてあります.

■はじめに
SMD-340には一般的な34ピンコネクタの3.5インチFDDと同様な4ピンの電源コネクタがありません.テスタで調べたところ,7,9,11ピンと増設機器用の電源ケーブルのコネクタの+5Vピンとの間に導通がありました.通常GNDに割り当てられているピンの一部が電源ピンとして使用されていることになります.このため,FDDケーブルを逆刺しすると,ドライブならびにFDDケーブルを焼損します(注).内蔵FDDまわりに手を加えようとする場合には,予めFDDケーブル,ドライブともに,テスターで電源ピンとGNDピンの位置を確認しておくと安心でしょう.
 注:筆者は以前PC-586RAでこれをやりました.本体の分解時にコネクタの突起の向きを控えずにSMD-340からFDDケーブルを外してしまい,再組立時にPC-98のFD1231Tと同じようにコネクタの突起が上向きになるようにFDDケーブルを接続したために起こった事故でした.FDDケーブルはメラメラと炎を上げて燃えました.

SMD-340では,PC-98用のFD1231Tとは異なり,コネクタの突起が下向きになるようにFDDケーブルを接続します[SMD-340とFDDケーブルの34ピンコネクタは,順にコネクタの種類とピン番号 の "34ピンコネクタ②-(1)" と "34ピンコネクタ②-(2)" です].後述の工作を行って,SMD-340とFD1231Tとを混在使用する場合にはこの点に特にご注意下さい[この場合,元々使用されていたFDDケーブルを加工して使用するのであれば,コネクタの突起が上向きではなく下向きになるようにFD1231Tにケーブルを接続することになります.すなわち,FD1231Tの信号コネクタは本来 "34ピンコネクタ①" なのですが,この工作を行うのであれば,それを無理矢理 "34ピンコネクタ②-(1)" とみなします].


SMD-340にはPC/AT互換機用のものもあります.以前DELLのウェブページ上で公開されていた資料では,同様に7,9,11ピンが電源ピンとなっていました.ただしPC/AT互換機用のSMD-340には別に電源コネクタもついています.またEPSON98互換機用のSMD-340では背面のジャンパピンが8本なのに対して,PC/AT互換機用のSMD-340ではジャンパピンが16本との違いもあります.

27ピンはGNDと導通がありません.わぴこのほーむぺーじ --> [日記兼掲示板] --> PC-486なFDDのキケン研究所 の資料によれば,27ピンの信号は,メディアへのアクセスに同期する何らかの信号とのことですが,詳細は不明です(注).筆者の環境では,これまでのところ,FD1231Tの接続時に27ピンをNCとしても不具合は観察されていません.
 注:yuyuyukkuriさんの2021年1月5日のツイートによれば,メディアがセットされている時に,DS信号に同期して発生する信号といいます.この信号の正体はIn Use信号ではないかとのコメントをいただいていますが,In Use信号であれば信号の向きが逆ではないかとの指摘もあります(yukkurizのメモ帳 --> PC-98×1やEPSON互換機のメモ帳 を参照)(https://yukkuriz.dip.jp/ を https://ykz.f5.si/ で置換しました).

ジャンパスイッチはありますが,PC/AT互換機用のSMD-340と異なり,DXを設定するものではありません(FDDのドライブ番号の設定方法 を参照).またFDDケーブルは,マザーボード接続用のコネクタと1台目のFDDコネクタとの間はストレート結線であり,1台目のFDDコネクタと2台目のFDDコネクタの間で,1・3番ラインおよび10・12番ラインがクロスしています(PC-586RXの内蔵FDDケーブル を参照).このことから1番はNC,3番は 360/300(注),10番はDS0,12番はDS1と推定されます.
 注:NCと360/300信号のピン位置がFD1231Tなどとは逆です.これもわぴこのほーむぺーじ --> [日記兼掲示板] --> PC-486なFDDのキケン研究所 で指摘されています.

SMD340-302の信号コネクタの推定されたピンアサインは下の通りです.


※D353T3のピンアサインもこれと同じと思われますが,下で述べるように27ピンの信号の種類は異なっている可能性があります.NCかもしれません.

■FD1231Tの接続
FDDケーブルは586RXで元々使用されていたものを加工しました.内蔵FDDが1台のモデルでも,FDDケーブルはFDDを2台内蔵したモデルと同じものが使われています.ここでは1台目のFDDとしてSMD-340をそのまま接続し,2台目のFDDとしてFD1231Tを接続する場合の方法について述べます.
FDDケーブルは,1台目のFDDコネクタと2台目のFDDコネクタとの間の部分を加工します.

(1) 上記のわぴこさんの解析によれば,2HD/2DDモードでのDensity信号の極性がPC-486MUとPC-9821V166とでは逆になっています. Density信号ライン(FDDケーブルの2番ライン)を結線しない場合,1.44MB・1.25MBの2モード動作となります.2DDメディアの読み書きのためにはこのDensity信号を供給する必要があります.
  2番ラインを切断し,1台目のFDD側のラインをインバータICの入力ピンに,2台目のFDD側のラインを出力ピンに接続します.筆者はたまたま手元にあったCMOS ICである74HC04Dを使いましたが,オープンコレクタタイプのTTL ICである74(LS)05や,シュミットトリガタイプの74(LS)14などを使用する方がよいでしょう(FDDの信号レベルとターミネータの値 を参照)(注).
   注:インバータICでなく2SC1815(トランジスタ)を使って,FD1231T互換FDD(MPF520-F/D10)の基板の方を改造した例もあります[おふがおさんの2021年6月29日・30日(12)のツイートを参照].これはD353T3を1台内蔵したPC-586RXの2台目のFDDに関する工作の報告です.筆者はD353T3のピンアサインについて確認できてはいませんが,上で述べたようにSMD340-302のものと同じ(マザーボード上のFDDケーブル接続用コネクタのものも同じ)と予想しています.この報告では27ピンへのラインを切断していませんが[下の(3)を参照],FDDは動作したといいます.MPF520-F/D10(FD1231Tと他の互換FDDでも)の27ピンはGNDピンであり,これへのラインを切断しなければ,D353T3の27ピンも常時GNDに接続されることになるため,D353T3の動作に支障が出そうなものですが,そのような報告もありません.27ピンの信号はD353T3では実際は使用されていないのでしょうか?

(2) 7・9・11番ライン(+5V)を切断し,1台目のFDDコネクタ側のラインをインバータICの電源ピンと2台目のFDD用の電源ケーブルのコネクタに接続します.



(3)上記の通り 27番ラインの信号は不明ですが,これがFD1231Tに接続されていると正常動作しません.よって2台目のFDDではこのラインを切断します.

完成図です.今回はインバータICにCMOS ICを使用したので,ICの使用しないピンをプルダウンしてあり,またFDDケーブルのGNDラインを2台目のFDD用の電源コネクタのGNDピンに接続しています.なお緑のラインは5インチFDD内蔵時にDensity信号を分岐させるためのものです.


FD1231Tを1台目のFDDとして使用する場合には,(1)-(3)の作業を1台目のFDDコネクタとマザーボードとの接続用コネクタとの間の部分に対して行います.この場合,2台目用FDDコネクタにもFD1231Tを接続するためには,+5Vラインを2台目のFDDにも接続する必要があります.

FD1231Tは3モードFDDですが,VFOなしのPC-98用(あるいはPC-98で使用可能な)3.5インチ2モードFDDを2台目のFDDとして取り付けることも可能です.方法については,PC-586RXに5インチFDDを内蔵の "VFOなし5インチFDDの内蔵" の項を参照して下さい.

■本体フロントパネルの加工


上図左のように,SMD-340とFD1231T(図のものはOSD-u)とではイジェクトボタンの水平位置が異なります(MD353T3のイジェクトボタンの位置はFD1231Tと同じ.エプソン98互換機本体-内蔵FDD対応表 を参照).従って,FDDが2台のモデルでFD1231Tを内蔵させるためには,上図右のようにフロントパネルのFDDのイジェクトボタン用の開口部を加工する必要があります.なおフロントパネルの同様な加工には,PC-586RAにSMD340-302とD353T3を内蔵させた先例があります[E-SaPa編集部 (2002). 活用それぞれ 現役ゑぷらーのマシン拝見 EPSON98互換機専門同人誌 E-SaPa EPSON98サービス機構, pp.44-46.].また中身をPC/AT互換機化したPC-486SRにおいて,フロントパネルに同様の加工を行った例もあります(Pepperさんの2023年8月27日のツイート を参照).

FDDが1台のモデルでは,イジェクトボタンの位置が元々のFDDのものと合うため,フロントパネルの加工は不要です.ただし,フロントパネルのFD挿入口付近の凹みが深いので,FD1231TとOSD-uではFDD取り付け金具のFDD固定用ネジ穴を削り,電源ユニット側に少しずらしてに取り付けられるようにする必要があります.ただしMPF520-Fの場合はFDD取り付け金具の加工も不要でした.FDDが2台のモデルではFD挿入口付近の凹みが浅いため,FDD取り付け金具の加工は不要です.

5インチベイに3.5インチ機器を取り付けるためのマウンタを利用すれば,2台目のFDDをCD-ROMベイに設置することもできるでしょう.

追記:内蔵FDDが1台のモデルのPC-586MVのフロントパネルを矩形状に切り抜き,フロントベゼルの付いたFDD(D353T3の改造品)を2台目の内蔵FDDとして取り付けている例もあります.ヤフーオークションで出品者IDが offgao_65883,オークションIDが d1098864364(2023年7月17日に落札)の出品物の説明に使用されていたものから切り出して2/3に縮小したものをjpg形式に再変換した画像を引用します.


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不具合といえるのかどうかはわかりませんが,筆者の環境では以下の現象が認められました:
2DDメディアを書き込み禁止にしていると,NEC版MS-DOS6.2でのscandiskでのクラスタスキャン開始直後にOSD-uのアクセスランプが点滅して停止します.しかしその約1分50秒後にクラスタスキャンが開始されます。SMD-340と外付け扱いのFD1155Dではアクセスランプが消えて同様に停止し,約1~2分後にクラスタスキャンが開始されます.
しかしわぴこさんのテスト環境(PC-486MU+MPF520-F+EPSON版MS-DOS6.2)では,ライトプロテクトを施した640KBフォーマットのFDに対するscandiskにおいて,上記の現象は観察されなかった(720KB,2HDメディアでは未試験)ということでした.
 追記:これは元のものと異なるFDDを取り付けたことが原因ではなく,PC-486/586(の一部?)とscandisk.exeの組み合わせで発生する現象のようです.元々のFDDだけを内蔵しているPC-486MUとPC-586RVで,NEC版とエプソン版のMS-DOSのscandiskを実行させた際に同様の現象がみられたといいます[yuyuyukkuriさんの2021年1月28日のツイート(12)を参照].


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