ファイルスロットFDDユニット


ファイルスロットFDDユニット(ファイルスロットFDD)は,PC-9801FA/FS/FX,MATE-A(PC-9821Ap3/As3のファイルベイモデルあるいはファイルベイアダプタを装着したものを除きます),PC-H98 model105等のファイルスロットに増設するFDDユニットです.増設方法は簡単で,ファイルスロットに装着するだけでよく(注1・2),スイッチの設定を変更する必要はなく,またデバイスドライバを組み込む必要もありません.なおファイルスロットFDDユニットの種類については,HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_23 FILE_SLOT用FDD一覧表 を参照して下さい(注3).
 注1:3.5インチFDDを内蔵したファイルスロットFDDユニットには,2モード動作のものと3モード動作のものがありますが,3モード動作のものは,3モードFDD対応機種であるMATE-Aに装着した場合にのみ3モード動作します(注1.1).3モードFDDに対応していないFA/FS/FXおよびH98 model105に3モード動作のファイルスロットFDDを装着しても,2モードでしか動作しません.
  注1.1:MATE-Aでは,5インチFDDを内蔵したモデルでも,3モード対応のファイルスロットFDDはきちんと3モード動作します.
 注2:ランドコンピュータ製のLDK-3WFはファイルスロットに増設するFDDユニットですが,実際には "ファイルスロットFDDユニット" とは少し違う製品です(5インチFDD内部増設用ケーブル を参照).
 注3:この記事の元となる資料を提供したのは筆者ですが,そのデータは,殆どが同人サークル "笛を吹く男" の2003年刊行の同人誌,"PC-9821 A-MATEの本(資料編)" に拠ったものであり,それに若干のデータを追加したものです(注3.1).なお同誌は第3版まで刊行を確認していますが,筆者の拠ったものは初版であり,サークル主催者のH. Kawaguchiさんよりご恵贈いただいたものです(注3.2).
    注3.1:HAMLIN's PAGE宛に筆者がお伝えしてきた情報は,ある時期から先方の記事に反映されることがなくなりましたので,"FILE_SLOT用FDD一覧表" への筆者なりの補足事項をここに載せていきます.
 ・NEC製PC-9801-F04のドライブはFD1138D(P/N 134-505195-008-0)で,PC-9801FA/U2の内蔵ドライブと同一.カードエッジ基板はG8LMG(134-857886-2-3).ケース(フレーム金具)の底面には "3.5インチフロッピィディスクドライブ 品名 PC-9801-F04" の型番ラベルと並んで(下側)FD5138D P/N 134-505899-088-0のシールが貼られている(注3.1.1).
   注3.1.1:PC-286XとPC-386のマスメモリスロット用増設FDDユニットであるPCFDUでも,NEC製のドライブとNEC製のケースで品名が異なっている.ドライブはFD1137C(P/N 134-500519-007-0)で,ケースに貼られた型番ラベルはFD5137C(P/N 134-500585-608-0)である(エプソン98互換機本体-内蔵FDD対応表を参照).
 ・TEAC製FF-32のドライブはTEAC製FD-235GF 3451-U(P/N 19307334-51).組み込まれている状態でのジャンパスイッチの画像は,ex709さんの2020年11月22日のツイートにあり.
 ・IDOL JAPAN製ID-5FSのドライブはTEAC製FD-155GF[FD-155GF 609-U,P/N 19307506-09.IDOL JAPAN製AD-F50FA,LAND COMPUTER製LFID-5Sのものも同じ(注3.1.2)].ファイルスロットに収まる薄型の5インチFDDは種類が限られ,他のファイルスロット5インチFDDユニットで使用されているFDDもFD1158C/DやFD-155GFくらいしかないのではなかろうか.
   注3.1.2:外付けFDDユニットであるR&D製FDD-5WZのドライブも同じ.外付けFDDユニットであるELECOM製FDD-535M14(3.5インチ/5インチデュアルドライブ)の5インチドライブはFD-155GF 511(P/N 19307505-11).外付けFDDユニットのELECOM製FDD-5SN,Logitec製LFD-51・LFD-52のドライブもFD-155GF(枝番とP/Nは未確認).
 ・α DATA製AD-35TFのFD1138TのP/Nは 134-506026-012-0 でイジェクトボタンは角型.制御基板のシールの文字列は G8KSW 134-837781 で,一般的な P/N 134-506026-011-0 の小判型イジェクトボタンのものと同一[noconaさんの2021年7月14日のツイート(12)を参照].またドライブとしてFD1148Tを採用していたロットもあるという.なお関連事項として,NEC製PC-FD321FのFD1138TをFD1148Tに交換する際の注意点はFD1138Tと26ピンFD1148Tの違い を参照.
 ・α DATA製のAD-F35FAの(恐らくPC-9801FA/FS/FXの時代に発売された)前期ロットも640KB-1.2MBハードウェア切換ボードと同等の機能を持つ基板を備えている.これは後期ロットにはない.またAD-F35FAは同一型番ながら外観の異なる二つのタイプ(前期ロットと後期ロットと思われる)がある(640KB-1.2MBハードウェア切換ボードについてを参照).前期ロットと思われるものはMATE-Aにも装着自体は可能で動作もするが,全長が長すぎてフロントパネルがはめられない.
 ・640KB-1.2MBハードウェア切換ボードがCバススロットに装着されたPC-9821Apと一部のPC-9821Ap2では,外付けFDDにセットされた2DDメディアからのシステム起動が可能であることを確認しているが,α DATA製のAD-F35FAと前期ロットのAD-F50FAは,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードに相当するRD-0087あるいは同等品の小基板(ファイルスロットバックボード上のフロント拡張用コネクタに接続される)を備えており,PC-9821Apと一部のPC-9821Ap2ではこれらのファイルスロットFDDユニットでも2DDメディアからのシステム起動が可能と予想される.
 ・α DATA製AD-35TF(3モードFDDユニット)では2DDメディアからのシステム起動が可能との記述がカタログにある(ぱんだねこさんの2021年11月17日のツイート を参照).カタログには2DDメディアからのシステム起動が可能なPC本体に関する記載がないが,すべてのMATE-Aが該当するのだろうか.
 ・R&D製SLT-501は,α DATA製AD-F50FAの後期ロットと実質的に同じものと言ってよさそうである.フロントパネルの文字列,底面の型番シール,ケースの封印シールの有無(SLT-501にはない),またVFO基板上のICの表面が削られてICの型番がわからないようにされているか否か(SLT-501では削られていない)といった細かな点だけが異なっており(従ってSLT-501でも使用されているFDDはFD-155GFである),R&D,α DATAとも恐らくは(PC-98とその互換機の?)FDD関連製品を中心に製造していたメーカーであることを考えると,両者は同じ工場で製造されたものと思われる.なお外付けFDDにも,異なるメーカーの製品で互いに酷似しているものが一部に存在するが(外付け3.5インチFDDユニット-フリー720KB/1.44MBドライバ動作試験結果 を参照),それらもやはり同じ工場で製造されたと推測される,
 ・α DATA製AD-35TFとIDOL JAPAN製ID-5FSのカードエッジ基板は共通(靖間 誠さんの2020年12月16日のツイートを参照).なおサードパーティー製のファイルスロットFDDユニットのカードエッジ基板をNECが設計していたのではないかとの説があるが,筆者は首肯しかねる.筆者が確認した限り,FA/FS/FXの頃に発売されていた製品で,VFOを内蔵したドライブを使用しているもの(NEC製PC-9801-F04・PC-FD511F,Logitec製LFD-31F)・VFOのないドライブを使用しているもの[α DATA製AD-F35FA(後期ロット),緑電子製HF-FFD350),またAp/As/Aeの発売後の製品と思われるもの(NEC製PC-FD321F,α DATA製AD-35TF)のいずれにおいても,製品間でカードエッジ基板は異なるものが使用されている.ただし,設計がNEC自身の手によるものかどうかは明らかではないものの,上記の例のように(またR&D製SLT-501とα DATA製AD-F50FAの後期ロットも恐らく同様であろう)異なるメーカーの製品でカードエッジ基板が(実質的に?)共通である場合があり,またフロントパネルやケース部分もメーカーの異なる製品間でほぼ同じ場合があるのは事実なので,一部のメーカーの(一部の)製品あるいはその部品の一部が,同じ設計図に基づいて,そして恐らくは同じ工場で製造されていたのは間違いなかろう.
 ・α DATA製AD-F35FA・AD-F50FA(ともに後期ロット)・AD-35TFやIDOL JAPAN製ID-5FSのカードエッジ基板には,3.5インチ・5インチ両FDD用のケーブルコネクタパターンが用意されており,同一メーカーの製品では,3.5インチFDDユニット/5インチFDDユニットとも共通のカードエッジ基板を使用しているものがある可能性がある.なおα DATA製AD-F35FAとAD-F50FA(ともに後期ロット)では,カードエッジ基板は共通ではない.
 ・LAND COMPUTER製LDK-3WFのドライブはNEC製FD1139C.このユニットについては上の注2のリンク先も参照のこと.
 ・A-MATEr's BBS 過去ログその1その2で,α DATA製AD-F50FAが装着されたPC-9821Aeでは,MS-DOSが1.44MBメディアに対応したバージョンのものであっても,内蔵3.5インチFDDにセットされた1.44MBメディアからのシステム起動ができないとの事例が報告されている.原因は不明.恐らくAD-F50FAが原因ではない.AD-F50FAには前期ロットと後期ロットの二つがあるが(640KB-1.2MBハードウェア切換ボードを参照),両者とも内蔵3モードFDDの動作に干渉する造りになってはいないはずである.筆者は,PC-9821Ap/Ap2/Ap3のいずれでも,AD-F50FA(後期ロット)がファイルスロットに装着されていた場合でも内蔵3.5インチFDDにセットされた1.44MBメディアからシステム(MS-DOS6.2/7.1)が起動できることを確認している.なお内蔵FDD(2台とも,あるいは2台目のみ)にセットされた1.44MBメディアからのシステム起動ができないとの報告は,3モードFDDを内蔵した他のPC-98(MATE-Aに限らない)でもいくつかある.筆者も経験がある(PC-9801BX4)が,その場合はFDDの故障が原因ではなかった.

    注3.2:カラーインクジェットプリンタで両面印刷されたページを綴じたもので,発行部数は多くないと思われます(第3版より後の版の刊行形態は不明).なお同サークルは現在でも活動を継続しており,2023年12月に開催されたコミックマーケット103への参加を確認しています.

ファイルスロットFDDユニットでは2DDメディアの読み書きが行えないとの誤解が一部にあるようですが(注),PC-FD511Fの内部結線ファイルスロットFDD接続用コネクタのピンアサインファイルスロットバックパネルのFDDケーブルコネクタ-ファイルスロットFDDコネクタ間結線 に示されているように,内蔵されているFDDにはDensity信号ラインが接続されており,実際には2DDメディアを読み書きすることが可能です.
 注:ファイルスロット5インチFDDユニットはPC-9801FS/FXでは使用できるがPC-9801FAでは使用できないと取れる情報もあるそうですが,そのようなことはありません.筆者のPC-9801FA/U2でもLAND COMPUTER製LFID-5Sが実際に動作していました.

また,内蔵FDDが1台の本体にファイルスロットFDDユニットを増設した場合には,ファイルスロットFDDユニットは完全に内蔵2台目のFDDと等価となるため,2DDメディアからシステムを起動させることもできます.内蔵FDDが2台の本体の場合には,ファイルスロットFDDユニットにセットされた2DDメディアからのシステム起動はできません.内蔵FDDが2台の本体のファイルスロットFDDユニットにセットされた2DDメディアからのシステム起動を可能にする方法については,640KB-1.2MBハードウェア切換ボードについて の ※2 と ※13 などを参照して下さい(注).
 注:内蔵FDDが2台の本体でも2DDメディアからのシステム起動が可能なファイルスロットFDDユニットも存在します.但し対応機種は限られます.これについては640KB-1.2MBハードウェア切換ボードについて の ※2 を参照.


"内蔵FDDが1台の本体にファイルスロットFDDユニットを増設した場合に,ファイルスロットFDDユニットは完全に内蔵2台目のFDDと等価となる" 問題に対する筆者の検証結果を下に示します.なおこのこと自体は恐らく既知の事柄でしょう.ファイルスロットFDDユニットの取扱説明書にも記載があるのではないかと思われますが,筆者は所有しておらず確認できません."内蔵FDDが1台の機種ではファイルスロットFDDユニットから2DDメディアのブートが可能" という話をどこかで耳にしたような気もしています.報告が見つかり次第追記します.
 追記:まりもさんより,ざべ(THE BASIC,ザ・ベーシック)の1993年5月号の小高輝真氏(fslot2ddの作者)の記事,"98MATE解体新書 ~独白手記:PC-9821Apとの秘め事,または私を変えたあの一夜~" の "PC-FD321でアクセスできるフォーマット" の項(133ページ)に,
   FD1台モデル実装時 2DDフォーマット可能,1.44MBフォーマット可能
   FD2台モデル実装時 2DDフォーマット不可能,1.44MBフォーマット可能
との記述がある(フォーマット不可能はブート不可能とシステム上ほぼ同義)との情報をいただきました.

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FDDを1台しか内蔵していない状態のMATE-Aに装着されたファイルスロットFDDユニットの認識のされ方と,2DDメディアの読み書き動作について調べました.きっかけはYPさんの2019年8月9日のツイートです.文中に,ファイルスロットバックパネル上のジャンパスイッチの設定により,ファイルスロットFDDユニットが内蔵ドライブとして扱われるか,外付けドライブとして扱われるかが切り替わる・このジャンパスイッチは,MATE-Aの内蔵FDDが1台のモデル,いわゆるHDDモデルでは内蔵ドライブの設定となっているとの記載があります.これを見て,大熊猫のぺぇじ --> HDDモデルなA-MATE数機種の2FDD化 の記事が頭に浮かびました.この記事の中で,As/M7のファイルスロットバックパネルG8MYK(画像があまり鮮明ではありませんが,基板名は G8MYK■A3・ と読めます)上に,内蔵FDDの台数を切り替えるための2本×2連ジャンパスイッチSW1があり,内蔵5インチFDDが1台のモデルであるAs/M7では,下側の2本(03-04)ショートの状態を上側2本(01-02)ショートの状態に変更することで,増設した2台目のFDDが使用できるようになると記載されています(注).なお,まりもさんより内蔵3.5インチFDDが1台のモデルであるAe/U7でも同じとの情報をいただきました.
 注:この記事で言及されているどるこむの過去ログとは,恐らく9821As/U8の2FD化改9821As/U2 2FDD化顛末 のことでしょう.

このジャンパスイッチ(SW1)はAp2/M2のファイルスロットバックパネル(これもG8MYK■A3・)にも実装されています.またAp/U2とAs2/U2・An/U8Pのファイルスロットバックパネル(前者はG8MVW■A3・で後者はG8MVW■A4・)にもあります.


ただしAp2/As2では,内蔵FDDの台数に応じてこのSW1の設定を変更するのではなく(Ap/As/Aeのガイドブックもそうですが,Ap2/As2のガイドブックににもこのSW1に関する記載はありません),ファイルスロット開口部の左下にある2本×2連ジャンパスイッチであるSW2の設定を変更するようになっています(FD1138T 2台内蔵用ケーブル も参照).

SW1のジャンパポストと,FDDケーブル用30ピンコネクタ/マザーボードに接続される下端の二段コネクタとの間の結線状態は,G8MYK■A3・とG8MVW■A4・とで同じでした.すなわち,01の接続先はマザーボードに接続される下端の二段コネクタのA68端子で,02はGNDへ接続され,03・04はどこへも接続されていませんでした(G9MKY■A3・については,まりもさんによる調査を追試して確認しました).

以下は検討の結果です.PC本体はAs2/U2で,MS-DOSはver.6.2を使用しました.SW1の "上" は上側2本(01-02)ショート(内蔵FDD 2台設定)で,"下" は下側2本(03-04)ショート(内蔵FDD 1台設定),またSW2の "左" は左側縦2本ショート(内蔵FDD 2台設定)で,"右" は右側縦2本ショート(内蔵FDD 1台設定)の意です.カッコ内の数字は内蔵FDDの接続台数を示し,drive云々は,PC-9821およびDOS/Vソフトウェアのページ --> システム状態表示ソフトウェア(解析・検証用ツール) --> DRVLST で公開されているフリーソフトであるdrvlst.exe(PC-98のドライブレター一覧表示プログラム)の実行結果を示します.またfslot2ddは小高輝真氏作成のフリーソフトfslot2dd.comです(詳細は付属のドキュメントファイルを参照して下さい).

ファイルスロットFDDユニットなし
  1.内蔵FDD 2台,ファイルスロットFDDユニットなし
   1-1.SW1=上(2),SW2=左(2)
      drive A:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      drive B:91 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
   1-2.SW1=下(1),SW2=左(2)
      同上
  2.内蔵FDD 1台,ファイルスロットFDDユニットなし
   2-1.SW1=上(2),SW2=右(1)
      drive A:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      drive B:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
   2-2.SW1=下(1),SW2=右(1)
      同上

ファイルスロットFDDユニットあり
  3.内蔵FDD 1台,ファイルスロットFDDユニットあり(α DATA製5インチユニット AD-F50FA)
   3-1.SW1=上(2),SW2=右(1)
      drive A:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      drive B:91 2HD/2DD 2モード対応
      ファイルスロットFDDユニットより2DD起動可能
      fslot2ddなしでファイルスロットFDDユニットでの2DDフォーマット可能
      fslot2dd組み込み不可能
   3-2.SW1=下(1),SW2=右(1)
      同上
  4.内蔵FDD 1台,ファイルスロットFDDユニットあり(NEC製3.5インチ3モードユニット PC-FD321F)
   SW1=下(1),SW2=右(1)
      drive A:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      drive B:91 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      これ以外は3-2と同じ
  5.内蔵FDD 1台,ファイルスロットFDDユニットあり(α DATA製 AD-F50FA)
   5-1.SW1=上(2),SW2=左(2)
      drive A:90 2HD/2DD 2モード対応 1.44MB対応
      drive B:92 2HD
      ファイルスロットFDDユニットにセットされた2DDメディアに対するdirコマンド実施可能
      ファイルスロットFDDユニットより2DD起動不可能
      fslot2ddなしでファイルスロットFDDユニットでの2DDフォーマット不可能
      fslot2dd組み込み可能.組み込み後は2DDフォーマットも可能
   5-2.SW1=下(1),SW2=右(2)
      同上

以上より次のことが考えられます.

(1) 3.5インチFDDモデル/5.25インチFDDモデルともに,Ap2/As2ではSW1の設定内容は2台目の内蔵FDDの動作に影響しません.Ap/As/Aeと異なり,Ap2/As2(/An/Ap3/As3)では,内蔵FDDの台数に関するSW1の機能はマザーボード内で無効にされているとみられます.これは,Ap2/As2(/An/Ap3/As3)では,内蔵FDDの接続台数を指定するジャンパスイッチSW2がユーザーがアクセスしやすい本体前面に用意されたため(ガイドブックにもSW2に関する記載があります),SW1は存在意義を失ったとともに,これが有効なままだと,ユーザーが不用意に設定を変更して不具合を発生させる危険性があるためと思われます.

(2) この場合,内蔵FDDが1台のPC本体に増設されたファイルスロットFDDユニットの動作は,2台目の内蔵FDDと完全に等価です.またAp/As/Aeでは,SW1に関してガイドブックに記載がなく,内蔵FDDが1台のモデルではファイルスロットFDDユニットを増設する以外に "2FDD化" の手段が正式に提供されなかったことから,内蔵FDDが1台のモデルでは "隠しスイッチ" であるSW1が03-04ショート設定(これをユーザーが変更することなど当然NECは想定していないはずです)のままで増設されたファイルスロットFDDユニットが,完全に2台目の内蔵FDDとして振る舞うようになっているのは当然とも言えます.内蔵FDDが1台のモデルに増設されたファイルスロットFDDユニットでは,2DDメディアのフォーマットにfslot2ddの組み込みを必要としないのもこのためでしょう.

(3) 上記の大熊猫さんの報告では,(Ap/As/Aeと同じくファイルスロットFDDユニット以外の "2FDD化" の手段が提供されていなかった)Afでは,SW1の01-02ショート設定は無効とのことですが,AfではAp2等のSW2に相当するスイッチがないようですので,ファイルスロットFDDユニットを増設した場合の挙動は,上の3あるいは4の場合と同じと思われます.すなわちAfに増設されたファイルスロットFDDユニットも,完全に2台目の内蔵FDDとして動作するはずです.

(4) 以上をまとめると次のようになります:
 SW1の設定が有効なのはAp/As/Aeだけで,Ap2/As2[An/Ap3/As3(注)]では,内蔵FDDを増設した際には,SW1の設定を変更するる必要はなく,代わりにSW2のジャンパプラグを左側に移動させます(FD1138T 2台内蔵用ケーブル も参照).但しファイルスロットFDDユニットを増設した場合には,Ap/As/Aeを含め,一切の設定を変更する必要はありません(すなわちどこも弄る必要はありません).ファイルスロットFDDユニットは,内蔵FDDが1台のファイルスロットに装着するだけで,2台目の内蔵FDDと全く同じに動作します.
 注:Ap3/As3のファイルスロットバックパネルはAp/As/Ae/Ap2/As2/Anのものとは別物であり,SW1はありません.

内蔵FDDが2台のPC本体に,ファイルスロットFDDユニットと外付けFDDユニットをともに増設した事態でのFDDの認識のされ方についても調べました.これも過去にいくつもの報告がありますが,知見に若干混乱がみられるようですので,drvlstを用いて改めて調査しました.PC本体はPC-9801FA/U2(注)で,ファイルスロットFDDユニットにはPC-FD321Fを,外付けFDDユニットにはTAXAN(加賀電子)製TF502(FDDは2台)を使用し,2HDメディアとMS-DOS6.2でテストしました.結果は下の通りです.
 注:内蔵FDD #1・#2,外付けFDD #3・#4(ソフトウェアディップスイッチSW1-4をOFFに設定).

   drive A:90 2HD/2DD 2モード対応
   drive B:91 2HD/2DD 2モード対応
   drive C:92 2HD
   drive D:93 2HD

drive C・Dが外付けFDDとして認識されています.ファイルスロットFDDユニットと外付けFDDユニットの1台目のFDDがかち合いますが,両者にメディアを入れてPC本体を起動させると,ファイルスロットFDDユニットの方からシステムが起動します.つまりファイルスロットFDDが優先(というよりも,外付けFDDユニットの1台目のFDDが無視)されます.従ってdrive Cの正体はファイルスロットFDDユニットで,drive Dの正体は外付けFDDユニットの2台目のFDDということになります.

この状態で,外付けFDDユニットの2台目のFDDからシステムを起動させることができます.従って,中身のFDDが1台しかない外付けFDDユニットでも,FDDのDXを1に変更できれば,ファイルスロットFDDユニットと合わせて "外付け2ドライブFDDユニット" として使うことができるはずです.もっともファイルスロットFDDユニットでは,2DDメディアの読み書きもできます(上記のようにファイルスロットFDDユニットでも,通常は2DDメディアからのシステム起動はできません).


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