PC-9801NA/NC/NL/NS/E/NS/L/NS/T/USの3.5インチ2モードFDDであるFD1139C(注)と,PC-9801NX/C/NS/R/NS/A/P(外付けFDDユニットPC-9801P-03),PC-9821Ne/Ne2/Nd/Np/Nf/Nx/C7/Na7/H7・HC7/Na9/Es/PC-9821N-P04/PC-9821NA-C05のFDDユニット部分(PC-9821N-P04同等品)の3.5インチ3モードFDDであるFD1139Tに関する考察です. 注:HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 には P/N 134-505639-006-0 と P/N 134-505639-007-0 の二種類が掲載されています.他に N5200 model 03N/model 03NC で P/N 134-505639-108-0 が使用されていますが(katmaiさんの2021年5月20日のツイート,ETHYLE~1.SYSさんの2024年4月5日のツイート を参照),PC-98用のFD1139Cとの互換性については不明です. FD1139CとFD1139Tには以下の特徴があります. ・分解の仕方は基本的にFD1138Tなどと同じ. ・基板上に電解コンデンサが2個ある. (分解方法と制御基板上の電解コンデンサの交換については,FD1139C・FD1139Tの分解と修理 を参照) ・フィルムケーブルはともに26ピン(1.27mmピッチ)で,片面しかパタンが露出していないが,FDD側のメスコネクタが上下にピンを持っている(上下のピン間には導通がある)ため,上向き下向きどちらでも挿せるようになっており危険である(下に示すようにこのコネクタには電源ピンが含まれているため,ケーブルを逆刺しして通電すると,FDD・ケーブルともに焼損する).下はFDD側のメスコネクタのピン番号(FD1238Tのものと左右が逆なので注意).事前にケーブルの向きを控えずにケーブルを抜いて作業した場合には,テスターでピン間の導通を調べるなどして,コネクタとケーブルとでGNDピンの位置が一致することを十分に確認した上でケーブルの再接続を行うことを強く推奨). |
・両者は基板がよく似ている. [実際,FD1139TはFD1139C相当品に改造することが可能(2モードFDDの3モード化改造 を参照)] ・両者の+5VピンとGNDピンはそれぞれ下記の通り: FD1139C --> 1・3・5 = +5V/13・15・17・19・21・23・25 = GND FD1139T --> 1・3・5 = +5V/15・17・19・21・23・25 = GND ・両者ともにDX設定ピンがない.USでは1台目のFD1139Cと1台目のFD1139Cをそのまま交換してもFDDの動作に問題はない. --> USのFDDバックボードであるG8LRE上のFDDケーブルコネクタでは,2個のコネクタ間で4ピンと7ピンのみが導通がない(G8LREは2つのFDDケーブルコネクタを持ち,その各々が別々のFD1139Cと接続). --> 1台目のFD1139Cの信号コネクタの4ピンは,G8LREとマザーボードとの接続用100ピンコネクタのA04ピン,また2台目のFD1139Cの信号コネクタの4ピンは,同じくA05ピンと導通がある.一方両FDDとも,信号コネクタの7ピンは100ピンコネクタのどのピンとも導通がない. 以上の事実から次の推測を行いました. (1) FD1139CはFD1138Cを,FD1139Tは(FD1238Tと同じく)FD1138Tをそれぞれ小型化したFDDではないか.型番もそれを思わせる. (2) とすれば,+5VピンとGNDピンの位置からみて,FD1139CはFD1138Cと,またFD1139TはFD1138Tと,信号コネクタのピンアサインがDRIVE SELECT (DS) を除き同一ではないか. (FD1138Tの信号コネクタのピンアサインは,HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_6 2台接続用ケーブル回路図 26PIN_FDD用 PC-9801BX2/U2標準接続回路図 を参照.HEAD LOAD信号については,DISK CHANGE信号,HEAD LOAD信号,DRIVE SELECT 2信号について も参照.なおPC-9821Neの内蔵FDDユニットではFD1139TのHEAD LOADピンはNCであり,またFD1238TもHEAD LOAD信号ピンを持たないと考えられる.) (3) FD1139C・FD1139TともDX設定ピンがないこと,また4ピンへの結線の状況から,4ピンに入力されるDRIVE SELECT信号の種類により当該FDDのドライブ番号が決まるのではないか. これらの推測の妥当性を検証するため,26極フィルムケーブルを26ピンフラットケーブルに変換し,上記の2種類のFDDのそれぞれを1台目のFDDとしてPC-9801BX2/U2に接続し(2台目のFDDは接続しませんでした),FDD動作テストを行いました.この実験に使用したケーブルが残っていましたので,下に画像を載せておきます.何かの機器から取り外した26極フィルムケーブルの一端のピンと,廃棄されたPCI SCSI I/Fから取り外した50ピンMILオスコネクタのピンを結線したケーブルに,内蔵FD1138Tが1台の機種のFDDケーブルを継ぎ足したものです.フィルムケーブル部分はボール紙の台紙にガムテープで固定され,そこから延びるケーブルも固定のため同じ台紙にホチキスで留められています. |
結果,FD1139Cは2モードで,FD1139Tは3モードで問題なく動作しましたので,上記の推測は妥当と判断しました.なおこのテストでは,FD1139Cでは13ピンへのラインを切断してもしなくても挙動に変化はありませんでした(注).FD1238Tのピンアサインの記事も参照して下さい. 注:これは,元々3モードFDD(FD1138T)内蔵機種であるBX2/U2に2モードFDDであるFD1139Cが接続されたため,360/300信号がGNDに接続され,PC本体が接続されているFDDを2モードFDDと認識したためでしょう.FD1231TをFD1137Dで代替,5インチFDD内部増設用ケーブル,MATE-AのI/Oポート04BEh も参照.この状態でFD1138Tが2台目の内蔵FDDとして接続されていれば,FD1138Tは正常動作しなかった(2モード動作)筈です. なお,PC/AT互換機用のFD1139H(nec :: floppy :: brochures :: FD1139H --> PDFを参照)では,9ピンと11ピンがNC(FD1139TではそれぞれHEAD LOADとDENSITY),13ピンがGND(同360/300)となっています(サイトウサイト --> ピンアサインとか を参照). 追記:一次資料である "日本電気株式会社 (1991). FD1139C 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521429-0) REV.2." を入手したところ,FD1139Cの7ピン(FD1138C/TではDRIVE SELECT 1)・9ピン(同HEAD LOAD)がともにNCとなっていました.これらはFD1139Tでも同じと思われます.下にこの仕様書に基づくFD1139Cの信号コネクタのピンアサインを示します.DISK CCHANGEを括弧に入れたのは筆者の考えによります(DISK CHANGE信号,HEAD LOAD信号,DRIVE SELECT 2信号について を参照).FD1139Tでは13ピンが360/300信号な筈です. |
同仕様書によるFD1139Cの消費電流・信号レベル・接続用フィルムケーブルの推奨品(当時)は下の通りです. ・消費電流 起動時 800mA(peak) シーク時 430mA(typ) リード時 300mA(typ) 待機時 8mA(typ) ・信号レベル:TTLレベル・CMOSレベル両対応 入力 HIGH 2.5V-5.0V(=VCC) LOW 0V-0.4V 入力インピーダンス VCCへ10kΩでプルアップ 出力 HIGH(ドライブセレクト時) VOH=3.7VーVCC,IOH=-6mA LOW(ドライブセレクト時) VOL=0.4V(max),IOL=6mA ハイインピーダンス(ドライブ非セレクト時) リーク電流 ±5μA(max) ・接続用フィルムケーブル(FCCケーブル) ピッチ(ピン間隔)1.25±0.10mmの26ピンのもので,全体の幅は38.75±0.20mm,厚さ0.3±0.05mm. 推奨品は藤倉電線製TW-VFか住友電線製スミカード(SMCD). |