FD1138Tと26ピンFD1148Tの違い


本記事におけるFD1138Tは,PC-9821Ap/U2などで採用されている一般的なFD1138T(P/N 134-506026-011-0)を指します(注).
 注:PC-9801BX2やPC-9821Ap2等用の内蔵3.5インチFDD増設キットであるLogitec製LFD-F331K(の一部のロット?)で, P/N 134-506026-012-0 のFD1138Tが使用されていることを確認していますが,これは P/N 134-506026-011-0 のものと互換性があると考えてよいでしょう(このFD1138Tは,HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 には掲載されていません).
 NEC製の外付け3.5インチFDDユニットであるPC-FD322で使用されている,P/Nが134-506026-009-0で制御基板がG8MXEのFD1138Tは,外見は一般的なFD1138Tとよく似てはいるものの,信号は互換性がありません.この "特殊FD1138T" には2HD/2DDの判別孔を検出するマイクロスイッチがついており,また一般的なFD1138Tと一部の信号が異なっているようです.また一般的なFD1138TをPC-FD322のVFO基板に接続して通電するとFDDが焼損します(これらの情報はなおPさんからいただきました)(注1).
 この "特殊FD1138T" は,アイドルジャパン製3.5インチ外付けFDDであるID-35WEで使用されているFD1138Tと同等あるいは同種のものかもしれません(注2).後者では,基板裏の紙シールには G8MXE 134-838113 950411G とあり,基板表のシルク印刷は 134-838113-1-2 となっており,またトップカバーのシールには P/N 134-506026-013-0 1995. 5 とあります.イジェクトボタンは小判型ですが,縁が丸くなっていて,下(または上)から見た形も一般的なFD1138Tのものと異なっています.
 注1:HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 では,PC-FD321/PC-FD322で使用されているFD1138T(P/Nは134-506026-009-0 または 134-506026-109-0,前者の制御基板はG8MXE)を一般的なFD1138Tに含めていますが,少なくともP/Nが134-506026-009-0のFD1138Tは,上記の通り一般的なFD1138Tとは互換性がないようです.またこの表によれば,P/Nが134-506026-107-0のFD1138Tでは,制御基板がG8MXEである上,信号コネクタのピン配列表示が通常のものと逆になっているといいます[これは 大久保システムズのホームページへようこそ! --> 2.PC98用FDDコレクション --> NEC FD1138T (2) でも指摘されています].HAMLIN's PAGEではこのFD1138Tは他の(ということは "一般的な" の意でしょう)とハードウェア自体は同じとされていますが,Logitec製の外付け3.5インチFDDユニットであるSTANDY LFD-332で使用されているP/N 134-506026-107-0のFD1138T(イジェクトボタンは角型)には2HD/2DDの判別孔検出用のマイクロスイッチがあり,またVFO回路の載った基板(LFD331332 51130039-1)には複雑な信号処理を行っていることを思わせる多数のICがあることなどから(おふがおさんの2022年8月21日のツイート を参照),このFD1138Tも通常のFD1138Tと互換性がない可能性があります.筆者自身はこれらの "特殊FD1138T" に関する解析を全く行ってはいませんが,少なくとも以上のことを考える限り,G8MXE制御基板を持つFD1138Tを一般的なFD1138Tと互換性のあるものと安易に考えることは危険です.G8MXE制御基板を持つFD1138Tは,外付け3モードFDDユニット専用に開発されたFDDではないかと考えられ,従って通常のFD1138Tとは,ピン配列が逆になっている以外にも違い(専用デバイスドライバにより有効となる何らかの特殊信号のピンを持つなど)がある可能性があります.
 注2:ぽてぽてさんの2022年5月28日のツイート(12)によれば,PC-FD321で使用されているFD1138Tは,P/Nが134-506026-009-0で制御基板裏の紙シールに印字された文字列は G8XME 134-838113 971113G であり,イジェクトボタンの形状を含めて,ID-35WEで使用されているFD1138Tと同じものではないかと思われます.


またFD1148TにはFD1231Tと互換性のある34ピンコネクタのものもありますが(P/N 134-506326-901-0,ここを参照),本記事におけるFD1148Tは,一般的なFD1138Tと互換性のある26ピンコネクタのもの(P/N 134-506326-011-0)を指します.


■互換性
FD1138TとFD1148Tは互換性があり,相互に入れ替えおよび混在使用が可能です.
ただし両者の中身の部品は,互いにサイズがわずかに異なるため,両者間で部品の交換はできないといいます(Naopy Hobby Land --> enter --> PC --> PC-9801US の おまけその5 水没機・ヤニ漬けAnを磨こう! ~PC-9821Anのレストア~ の項を参照).制御基板にも互換性がないことが判明しています[おふがおさんの2023年8月8日のツイート(12)を参照].

■長さ
FD1138TよりもFD1148Tの方がやや長いですが,側面のネジ穴の位置を合わせると前面が揃いますので,使用上問題とはなりません.


どちらのFDDもネジ穴に若干の遊びがありますが,これを利用してできるだけ前の方に取り付けるようにします.

■天板のツメと留めネジの有無
FD1138Tは天板の側面にツメがあり,これがFDD本体の穴にわずかにはまって固定されています.天板を外す際にこのツメがFDDの内側に折れて穴に引っかかってしまった場合,FDDの前後の隙間から精密ドライバなどを差し入れて爪を押し出します.押し出しすぎると爪がFDDの外側に大きく飛び出すように曲がりますが,これを下手に曲げ直すと(特に何度も曲げ直すと)金属疲労でツメが折れる場合があります.
FD1148Tは逆に天板側に穴があり,これがFDD本体の出っ張りにはまって固定されています.また天板上面に固定用のネジがあります.


どちらのFDDも天板は薄いアルミ板でできており,変形しやすく,また傷が付きやすいので注意が必要です.

■フラップのバネのかけ方
FD1138TとFD1148Tではフラップのバネの形状が異なります. FD1138Tでは側面前方の小さな穴にバネの一端をからめます.フラップを外す際には,このバネのかかり方をよく確認しておいて下さい.またFD1148Tでは,FDD側面前方の,FDDの内側に向いた突起にバネの一方を引っかけます. いずれのFDDでも,フラップを外す際にはバネを飛ばしたり,バネの端を指に刺さないよう注意して下さい.


フラップ左端の,バネをはめる長い突起は元々折れやすく,経年劣化が進んでいる個体が多いであろう今日ではますます折れやすくなっているため,フラップを外す,あるいは再びはめる際には十分注意して下さい.また天板を戻す際にFDDの前の方に下手に力をかけると,この突起が折れることがありますので注意して下さい.


■3本ケーブル
FD1138Tの前期ロットではこのケーブルには被覆のあるケーブルが使用されていますが,FD1138Tの後期ロットおよびFD1148Tでは剥き出しのケーブルに替わっています.
 追記:PC-9801FA/U2で使用されているFD1138D(P/N 134-505195-008-0,制御基板 G8KSH)の一部(天板の型番シールの記載では1992年3月製造となっています)にも剥き出しのケーブルが使用されているものがあります(noconaさんの2021年5月21日のツイート を参照).


■高さと前面の突起
FD1148Tの方が高さがあり,またより厚い金属板が使用されています.これらの違いはわずかなもので,互換性について通常問題となることはありません.しかしファイルスロットFDDであるPC-FD321Fでは,フロントパネルがFD1138Tに合わせて形成されており,フロントパネル裏面の突起がFD1148Tの前面の突起とわずかに干渉するため,PC-FD321FのFD1138TをFD1148Tに交換する場合には,PC-FD321Fのフロントパネルを加工する必要があります.



その他,イジェクトボタンの穴の形状も両者で若干異なるようです(ex709さんの2021年5月29日のツイート を参照).


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FD1231Tと互換性のある34ピンコネクタのFD1148T(P/N 134-506326-901-0)は,一般的なFD1138Tと互換性のある26ピンコネクタのFD1148T(P/N 134-506326-011-0)と,以下のような外見上の違いがあります.

 (1)イジェクトボタンの形状は小判型(楕円型)ではなく,FD1231Tなどと同じく角形である(注1).
 (2)背面に電源ケーブル接続用のコネクタがある.
 (3)型番シールに記載されているP/Nが 134-506326-901-0 である.
 (4)底面に金属板がついている.これは薄型FDDであるFD1148Tの本体部分を底上げすることによって,横ネジ穴の位置をFD1231T等のものに合わせるためでしょう(注2).
  注1:イジェクトボタンのはまる金具の突起の形状とアクセスランプの色も異なりますが,フレームの他の部分の形状は,内部の金属板(カセットホルダ)を含め,両者で共通のようです.またフラップ(シャッター)とばねも共通です[noconaさんの2021年2月1日のツイート(12)を参照].
  注2:実際には,横ネジ穴の位置はFD1231Tなどのものより少し天板方向(上方向)に寄っています.このためBX4/Xe10や,Xa7やV7等の初期のPentium機(3.5インチFDDベイのネジ穴が縦方向に長い楕円形をしている機種)に取り付けることはできますが,後の機種ではネジ穴の位置が合わないため取り付けできないといいます[noconaさんの2021年2月1日のツイート(123)を参照].実際,34ピンンコネクタのFD1148Tが内蔵されていたのもこれらの機種だけだったと聞きます.MPF520-F(MPF520-F/D10),OSD,OSD-u(E26J)(これらのFDDの横ネジの位置はFD1231Tのものと同じ)が本体に内蔵,あるいは内蔵FDD増設用キットに含まれていた機種も,同じような時期に発売されたものが多かった[OSDが1996年5月発売のCt16になっても使用されていた例などもありますが]らしく,これらのFDDは,NECが自社製品であるFD1231Tの生産体制が整う前に(やむを得ず?)他社から供給を受けたものと推測することができそうです.またCe2/Cs2/Cx/Cf(/Cb?)ではFD1231Tとピンアサインがわずかに異なるOSDE-15G-Uが採用されていますが,その理由も同じように考えることができるかもしれません(これらについてはまりもさんとかかっくんさんより情報とコメントをいただきました).

下に34ピンコネクタのFD1148Tの画像を示します.ドライブ前面,型番シール,ドライブ底面の画像として,ヤフーオークションで出品者IDが reusegreen,オークションIDが l535421905 の出品物(2019年7月22日に落札)の説明に使用されていたものを加工(半分ないし1/3に縮小したものから切り出してjpg形式に再変換)した画像を,またドライブ背面の画像として,ヤフーオークションで出品者IDが kaisedream8888,オークションIDが l589846979 の出品物(2020年4月7日に落札)の説明に使用されていたものを加工(半分に縮小したものから切り出してjpg形式に再変換)した画像をそれぞれを引用します.


なお34ピンコネクタのFD1148Tの制御基板は,G8QMF-0-1 134-858439-0-1(表面のシルク印刷)/G8QMF 134-838439(裏面の紙のシール)です.


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