追記:本記事の公開から大分経ちましたが,そろそろPC-98用のFDDはDISK CHANGE信号を持たず,さらにHEAD LOAD機構を備えていないFD1138C,FD1138D(26ピンコネクタ),FD1138T,U1DB,FD1148T(26ピン/34ピンコネクタ),FD1231Tとその互換FDD,OSDE-15G-U,FD1139C,FD1139T,FD1238Tとその互換FDD,FD1158C,FD1158Dは,HEAD LOAD信号も持たないと断定してよいでしょう. ■DISK CHANGE信号 HAMLIN's PAGE --> FDD関係 の記事群では,FD1138Tの6番ピンとFD1231Tの33番ピンにDISK CHANGE信号が割り当てられています(注).恐らく電子回路上はそのようになっているのでしょう.しかし筆者は,PC-98のFDDではDISK CHANGE信号は使用されていない,すなわちマザーボードはDISK CHANGE信号が仮に入力されても処理しないと考えていますので,これらのFDDの "DISK CHANGE信号" ピンは信号を出さない(仮に信号を出しても意味がない)のであろうと推測しています[30ピン-34ピン変換ケーブル(ファイルベイアダプタ付属ケーブル同等品)も参照].PC/AT互換機用のNEC製FDDで,これらのFDDと設計の多くの部分が共通しているものがあり(例えばFD1231TにはP/Nが異なるPC/AT互換機用のものがあります),少しの変更でPC-98用のFDDもPC/AT互換機用のFDDも製造できるようにするため,READY信号とDISK CHANGE信号の両方の信号が出力できるようになっているのかもしれません.HAMLIN's PAGEのFD1138TとFD1231Tに関する記事にも,FDD内部でREADY信号ラインとDISK CHANGE信号ラインがFDCの別なピンに接続されていることを示す図があります.回路を実際に解析した結果にに基づくものでしょう. 注:"日本電気株式会社 (1990). FD1138D 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521267-0) REV.1.","日本電気株式会社 (1992). FD1138C 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521108-0) REV.5.","日本電気株式会社 (1991). FD1139C 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521429-0) REV.2." でも6番ピンにDISK CHANGE信号が割り当てられています. PC-9801B3-K01やPC-9821-K08では,FD1138TやFD1231TのDISK CHANGE信号ピンがFD1158DのGNDピンにわざわざ結線されています.このこともFD1138TやFD1231TのDISK CHANGE信号ピンが機能していないことを示すものでしょう.もっとも,なぜこのように結線されているのかは不明です.このラインを切断してもこれらのケーブルは問題なく使用できるからです(5インチFDD内部増設用ケーブル を参照). ■HEAD LOAD信号 上記の記事群では,FD1138Tの9番ピンとFD1231Tの4番ピンにHEAD LOAD信号が割り当てられています(注1)が,これらのFDDはヘッドロード機構を備えておりませんので,これについても筆者は電子回路上はそのようになっていることを示すものと考えています[実際にはこれらのピン(注2・3)がGNDに接続された状態でもそれぞれのFDDは動作します(注4)].本ウェブページの記事でもHEAD LOAD信号としてあり(注5),またFD1138C・FD1139C・FD1139Tでも,当該信号をHEAD LOAD信号と表記しています(注6).またFD1238Tでは,PC本体に接続された際に当該信号ピンがGNDに接続されるようになっていますが,このピンも(正しい表記ではないと思いますが,FD1238Tを他のFDDで代替する上ではこの表記でも実際上の支障はないため)HEAD LOAD信号としています.なおFD1138TやFD1231Tを内蔵した機種のマザーボードのFDDケーブル接続用コネクタのピンからはHEAD LOAD信号が出ていることは間違いありません.この信号は1MB FDD I/Fの外部コネクタのHEAD LOADピンと接続されています.この信号が供給されなければ,HEAD LOAD機構を備えた外付けFDDは動作しません. 注1:あるいはこれらの記事群の図は,単にマザーボードのFDDケーブル接続用コネクタのHEAD LOAD信号ピンがFD1138Tの9番ピンとFD1231Tの4番ピンと結線されるということだけを意味するのであり,FD1138Tの9番ピンとFD1231Tの4番ピンがHEAD LOAD信号ピンであるということを意味するものではないと読まれるべきなのかもしれません.もしそうならば,本項の記述の大部分は的外れということになります. 注2:これらのピン自体はGNDピンではありません.なお "日本電気株式会社 (1992). FD1138C 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521108-0) REV.5." と "日本電気株式会社 (1990). FD1138D 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521267-0) REV.1." では,FD1138C/Dの4ピンはNCとされています. 注3:FD1231Tの互換FDDであるOSDではFD1231Tの "HEAD LOADピン" にあたる4番ピンが内部接続されていません(HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_4 OSD E26Jとマザーボードとの接続回路図 を参照). 注4:実際,FD1155DのNEC公式資料である 日本電気株式会社 (1986). FD1155D 5 1/4" フロッピィディスク装置 概説書 806-520366-0 第2版(1986年9月4日発行) では,FDDがREADY状態にある時にHEAD LOAD信号がLOWレベルとなれば,磁気ヘッドが媒体面に接触すると説明されています.これは,HEAD LOAD機構というものが,回転する媒体面にヘッドが常時接触することによるヘッドの摩耗を軽減するための機械的メカニズムであることを考えれば当然でしょう. 注5:一方,マザーボードのFDDケーブル接続用コネクタからはHEAD LOAD信号が出力されていると考えられます.マザーボードのFDDケーブル接続用コネクタからの "HEAD LOAD信号" ピンとケーブルで接続される1MB FDD I/F上のコネクタのピンは,外付けFDD接続用のアンフェノールフルピッチメスコネクタのHEAD LOADピンと結線されているからです. 注6:"日本電気株式会社 (1991). FD1139C 3.5"フロッピィディスク装置仕様書(806-521429-0) REV.2." では,FD1139Cの9ピンはHEAD LOAD/IN USEでなくNCとなっています.FD1139Tでも同じと思われます. 追記:FD1231Tで "HEAD LOAD信号ピン" とされる4番ピンは,Hの場合アクセスランプが点かず,Lの場合ディスクアクセスに合わせてアクセスランプが点滅することから,このピンは実質的にはアクセスランプの制御に関係していると考えられます(おふがおさんの2020年11月11日のツイート を参照). ■DRIVE SELECT 2信号(DS2信号) 上記の記事群では,FD1231T内蔵機種におけるマザーボード上のFDDケーブル接続用コネクタの14ピンにDRIVE SELECT 2信号(DS2信号)が割り当てられていますが,筆者が確認した限り,少なくとも一部の機種ではこのピンにDRIVE SELECT 2信号は出力されていません.このピンには何らかの信号が出力されているのかもしれませんが,少なくともそれはDRIVE SELECT 2信号として機能するものではありません(5インチFDD内部増設用ケーブルにおけるVFOあり5インチFDDのDS0ピンの接続先 を参照). 追記:リサイクル掲示板2021年11月過去ログの FDD4台接続問題スレッド で,DS2信号ピンとされてきたマザーボード上のFDDケーブル接続用コネクタの14ピンは,実際にはNCピンであり,またDS3信号とされてきた同6ピンは実際にはDS2信号との知見が出ました.しかし,これらの事実は本ウェブページの記事の内容に事実上影響しないことから,本ウェブページの記事に対しては,当面これらの事項に関する訂正は行わず,この追記を関連する記事への注とします. |