PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(1)
――FDDケーブル作製+偽READY信号生成スイッチ取り付け編――


aochanさん,かかっくんさん,試運転さんよりご指導ならびに情報をいただきました.

FD1231Tを内蔵したPC-98の代替FDDとして,READY信号を持たない3モード対応のPC/AT互換機用FDDで1.44MBおよび1.25MBのメディアの読み書きを行えるようにする最も簡単な方法です.この方法では,切り替えスイッチの付いたFDDケーブルを作製することになります.通常はDISK CHANGE信号しか持っていないPC/AT互換機用のFDDをPC-98で使用可能なREADY信号を持つものに改造する方法,あるいはREADY信号自動生成回路を付加して使用可能にする方法については,PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(2)――READY信号自動生成回路外付け編――PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(3)――制御基板改造編―― を参照して下さい.

筆者がこの問題についてテストを行っていた2009年頃には,MSXのFDDをPC/AT互換機のFDDで代替する方法(注)に関する知見が既にかなり蓄積されていました.筆者は主に下の三つの記事を参考にしました.
 注:この方法のポイントであるMSXのREADY信号の処理に関する詳細な考察が2019年に公表されました(にがHP --> MSXのページ --> MSXのFDD READY信号の考察と検証).

 ・et_levin's MSX HP --> サイトマップ --> MSX・FDD修理相談室
  ※画像が表示されないようですので,Internet Archiveに保存されているdion時代の記事ヘのリンクも示しておきます.
 ・幼年期の終わり --> Panasonic FS-A1F(MSX2)のFDDを丸ごと換装する
 ・シルゴンハーゲンのホームページ MSX編 --> AT機用FDDをMSXで使用するための34ピン-24ピン変換回路

この方法は次の通りです.PC/AT互換機用FDDの信号については,HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_27 PC/AT互換機のFDD接続,Diary on wind --> 古いPC関係 --> FDDインターフェイスのピン割り当て [PC/AT +2](2011年9月7日の記事) などを参照して下さい.

 (a) PC-98ではFDDの動作にREADY信号が必要であるため,メディアの読み書きを行う際にはPC-98側のDRIVE SELECT信号ピンをREADY信号ピンに接続して "偽READY信号" を発生させる.
 (b) PC/AT互換機用FDDには,DRIVE SELECT 0ピンがないものが存在するため,1台目のFDDとして使用するためには,PC-98側のDRIVE SELECT 0信号を,また2台目のFDDとして使用するためにはPC-98側のDRIVE SELECT 1信号をDRIVE SELECT 1ピンに入力させる.
 (c) 1.44MBモードと1.25MBモードの自動切り替えを行うためには,PC-98側の360/300信号をPC/AT互換機用FDDのMODE SELECT(またはDENSITY)ピンに入力させる.


FDDケーブルの実際の結線の仕方です.

(1)PC/AT互換機用FDDの信号コネクタの1(NC)・2(MODE SELECT)・3(NC)・4(NC)・6(NC)・10(NC)・12(DRIVE SELECT 1)・14(NC)・34(DISK CHANGE)以外のピンをPC-98側のFDDケーブルコネクタの各信号ピンと同番号どうし結線します.

(2)PC/AT互換機用FDDを1台目のFDDとして使用する場合には,12ピン(DRIVE SELECT 1)をPC-98側のFDDケーブルコネクタの10ピン(DRIVE SELECT 0)と結線します.
 また2台目のFDDとして使用する場合には,12ピン(DRIVE SELECT 1)をPC-98側のFDDケーブルコネクタの12ピン(DRIVE SELECT 1)と結線します.

(3)1台目のFDDとして使用する場合には,2ピン(MODE SELECT)にPC-98側のFDDケーブルコネクタの1ピン(360/300 0)からの信号が論理反転後入力するように,インバータ(74LS05)を挟んで両者間を結線します.
 また2台目のFDDとして使用する場合には,2ピン(MODE SELECT)とPC-98側のFDDケーブルコネクタの3ピン(360/300 1)とを同様に結線します.

(4)PC-98側のFDDケーブルコネクタの34ピン(READY)と10ピン(DRIVE SELECT 0,1台目のFDD用)または12ピン(DRIVE SELECT 1,2台目のFDD用)との間にトグルスイッチやスライドスイッチ(以下SW)を接続します.これが "偽READY信号"を発生させるスイッチになります.
なお,PC/AT互換機用FDDを1台のみ接続する場合には,PC-98側のFDDケーブルコネクタの34ピン(READY)とGNDの間にSWを接続することもできます.

SWをオンにしてからメディアへのアクセスを行うようにします.メディアへのアクセスが頻繁に行われる場合には,メディアがFDDに挿入されている間SWはオンにしたままがよいかもしれません.メディアの入れ替えを行う場合には,先のメディアのイジェクト時(前後)にSWをオフにして,後のメディアの挿入時(前後)にSWをオンにします.

このFDDケーブルを使用すれば,メディアのフォーマットが1.44MBでも1.25MBでも自動切り替えで読み書きできます.ただし640KB/720KBのメディアの読み書きはできません.

このSWの切り替えは非常に煩わしいですが,慣れるしかありません.筆者は以前,計測用のPC-9821V200に,この工作を行ったFDDケーブルとPC/AT互換機用のFDDを接続して2年ほど使用してみましたが,データの移動に使用するのみで,慌ててスイッチの操作を行う必要がなかったこともあり,トラブルは特にありませんでした.

READY信号を持たない2モード対応(1.25MB非対応)のPC/AT互換機用FDDでは,1.44MBメディアのみが扱えました(ALPS製DF354H011Aでテスト).この場合(3)の操作は無意味であり,行う必要はありません.

筆者の用途では1.25MBメディアか1.44MBメディアが扱えれば十分であり,かつこれらのごく簡単な工作によって,PC-98用のものよりも遥かに入手が容易でかつ安価なPC/AT互換機用のFDDを,PC-98の3モードFDD機の内蔵FDDとして使用できることが明らかとなり,計測用途で稼働するPC-98からのデータの取り出し手段に対する将来的な不安はほぼ解消されたと判断したため,この研究をもってFDDに関する筆者の実験的研究は実質的に終了しました.


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