SCSI籠とIDE籠の電源ケーブル


MATE-A等用のいわゆるSCSI籠およびIDE籠において,HDDへの給電はカードエッジ基板とHDDを繋ぐ4本ケーブルにより行われますが,この電源ケーブルのカードエッジ側のコネクタのピンアサインは,ICM製品と他社製品で異なっています(このコネクタの形状は各社共通.例外は注2を参照).この事実は筆者もまりもさんに指摘されて初めて気付きました.

下にICM製のSCSI籠であるINTER-120FE(左)とNEC製のSCSI籠であるPC-9801FA-37(右)の内部の画像を例として示します.両製品とも電源ケーブルのカードエッジ側のメスコネクタの固定用のツメはともにHDD側(=前方.画像では上側)を向いていますが(注1),このコネクタ部分で+5Vのライン(赤)と+12Vのライン(橙)が互いに逆になっています(HDD用電源コネクタは,ICMの電源ケーブルでは突起のある側,すなわち嵌合面の広い辺側の側面が,またNECの電源ケーブルでは突起のない側,すなわち嵌合面の狭い辺側の側面が写っていることにも注意して下さい).このため,これらの電源ケーブルを入れ替えて使用した場合にはHDDやPCが壊れます(注2).インターネットオークションやジャンク屋の店頭などでは,一つの製品が部品ごとにバラされて売られていることがありますが,そのような状態のSCSI籠/IDE籠を入手する場合には電源ケーブルに注意が必要です.なおNEC製のIDE籠の場合にはIDEケーブルにも注意が必要です(CanBe等の反転IDEケーブル を参照).


 注1:NEC製のSCSI籠(固定ディスク専用スロット用SCSI籠.本記事でのSCSI籠とはこれを指します)とファイルスロット用SCSI籠ではカードエッジ基板自体には互換性がありますが,電源ケーブル接続用オスコネクタの取り付け位置が違っています.これはSCSI籠ではIDE籠(NEC製品ではケースのカバーが最初からないものもありますが)と同じく,ケースのカバーを開けた際に見える位置(これをカードエッジ基板の表側とします)に取り付けられていますが,ファイルスロット用SCSI籠ではカードエッジ基板の裏側に取り付けられているため,基板に隠れて見えません(そのため電源ケーブル接続時には,メスコネクタの固定用ツメがHDD側でなくカードエッジ側を向きます.カードエッジ基板の4ピン電源端子のピンアサイン自体はこれら二種類のSCSI籠で同じであることに注意して下さい).
 注2:コニック(KONIC,ブランド名ARKWOOD)製のSCSI籠である VIP-FA 120R の電源ケーブルのカードエッジ基板(FA-60-IN)側メスコネクタの固定用のツメは,HDD側ではなくカードエッジコネクタ側を向いており,コネクタの形状も他社製SCSI/IDE籠の電源ケーブルのものと異なります(注2.1).この電源ケーブル自体のピン配置はNECやLogitecのものと同じになっています[雪下製作所【公式】さんの2021年5月2日6日24日のツイートを参照.なお同じFA-60-INカードエッジ基板でも,電源ケーブルの被覆の色が異なる場合があります(のびっこさんの2022年10月26日27日のツイートを参照)].また型番は不明ですが,キャラベル(Caravelle)製のSCSI籠の電源ケーブルも,カードエッジ基板側のメスコネクタの形状は他社製SCSI/IDE籠の電源ケーブルのものと異なっているものの,ピン配置はNECやLogitecのものと同じであるように見えます(あすもこいどさんの2022年7月13日のツイート を参照).ヤフーオークションの出品物画像を見ると,TEAC製のSCSI籠であるIH-1101N[制御基板名 FA H(以下判読できず) T-P TLC-551-K▲ 55?3086-00■]や日本アルトス製のSCSI籠であるBirth-100N(制御基板名不明)でも同様です.また日本テクサ製のIDE籠であるTX-HW340MとTRUST 420A(TR-420A)のカードエッジ基板[EZP-KIT1E(? F?)]側メスコネクタの固定用のツメはHDD側ではなくカードエッジコネクタ側を向いており(TRUST 420Aではコネクタが基板直付けかもしれません),コネクタの形状も他社製品の電源ケーブルのものと異なっており,ヤフーオークションの出品物画像では,通常+5Vラインである赤被覆のコードと通常+12Vラインである橙被覆のコードが,順にHDD接続用コネクタ側の通常+12V側のピンと通常+5V側のピンに接続されているように見えます.もしその通りであるならば,これらのIDE籠の電源ケーブル自体のピン配置はNECやLogitecのものと同じということになります(注2.2).
     注2.1:コンピュータリサーチ製のIDE籠であるCRC-IDE340A(カードエッジ基板 HD3308)のコネクタも同様です.また電源ケーブル自体のピン配置もNECやLogitecのものと同じになっています.
     注2.2:SCSI籠やIDE籠には多くのメーカーの製品があり,そのすべてについてこの問題の検討をする気にはとてもなれませんので,本注は筆者が偶然の機会に知り得た上記の諸製品に関する報告に止めます.

筆者が確認した限りでは,NEC,Logitec,ICM各社とも,メーカーが同じであればSCSI籠とIDE籠で電源ケーブルは共通ですが,カードエッジ基板側のコネクタのピンアサインはNECとLogitecの製品で同じなのに対し,ICM製品だけが+5Vと+12Vが逆になっています[NEC製品はPC-9801FA-37,PC-9821A-E05,および "固定ディスクドライブ 品名 HD540A"(型名なし),Logitec製品はLHD-S100NPとLHD-MA340PA,ICM製品はNTER-120FEとINTER AR-540で確認].

電源ケーブルが正しいものかどうかは,電源ケーブルをカードエッジ基板に接続した上で,HDD接続用コネクタの端子とカードエッジの特定の端子との導通を調べることで判断できます.


なお電源ケーブルはメーカー毎に長さが異なり(同じメーカー製品ならSCSI籠とIDE籠でケーブルの長さは同じ),確認した限りではNEC製品ではコネクタ間が約16cm(ただしファイルスロット籠のものは15cm),Logitec製品では14.5cm,またICM製品では10.5cmでした.NEC製品とLogitec製品ではカードエッジ基板とHDDとの距離に比べて電源ケーブルはかなり長く,折り曲げた上で信号ケーブルである50ピン/40ピンフラットケーブルの下をくぐらせるようしてにケース内に収納するようになっています.


トップページ