エプソン98互換ノート/小型ラップトップ
/BOOKのACアダプタ


エプソン98互換ノート,小型ラップトップ,BOOKのACアダプタです.エビフライさん,ジャンキィチェンさん,試運転さん,upd以下略(仮)さん に情報をいただきました.

本体の定格電流値は本体底面の型番ラベルに記載されているものですが,一部の機種のものは 吉野敏也(監) 株式会社テクノメディア(編) (1993). EPSON PC システムガイド ――100万人EPSONユーザーのためのオフィシャル・データブック―― クリエイト・クルーズ に記載されている値を示しました.

他のACアダプタで代替する場合には,出力電圧(高すぎるものは特に危険です)と電流値(電源容量が不足する場合には,パワートランジスタ等が破壊され,ACアダプタ内部が焼損することがあります)とともに,本体のバッテリーの種類にも注意して下さい.なおMODEL H06FBJ(PC-286BOOK,PC-386BOOK L用),MODEL H07GAJ(PC-286L/LE/LF用),AD1030JA(PC-386NOTE A用),PCNTAC2(MODEL AC1321JA/AC1321JA1,PC-386NOTE W/WR/AE用)などで,主として電解コンデンサの液漏れに起因する故障が報告されています.エプソン98互換ノート/小型ラップトップ/BOOK用のACアダプタは,すべてが製造から相当な時間が経過しており,また酷使されてきたものも多いと考えられる上,(すべてのACアダプタでそうなのかは不明ですが)四級塩電解コンデンサが使用されているため,今後は修理もしくは他のACアダプタでの代替(注1・2)の必要性が増すものと思われます.
   注1:コネクタ部分には大電流が流れますので,コネクタを付け替える際には,ACアダプタの定格と交換先のコネクタの接点容量等を考慮する必要があります(GELのJUNK部屋 --> PC9821Nr15/S10ACアダプターは大切だ! などを参照).
   注2:具体的な型番などは不明ですが,最近のノートPC用のACアダプタには,コードの被覆が薄く,安全性に問題があるものもあるといいます(第三研究所@TRISSさんの2022年2月14日のツイート を参照).代替用のACアダプタの選定においてはこのような点にも注意が必要でしょう.


■PC-286NOTE executive
  MODEL H05DBJ
  コネクタ形状・極性不明,出力は +9V,1A(本体の定格電流も1A).

■PC-286NOTE F(PC-286NF)
  MODEL H06CAJ
  丸ピンコネクタ(センターマイナス),出力は +12V,1.3A(本体の定格電流も1.3A).
  センターマイナスという例外的なコネクタであることから,閲覧者が確認できるよう,ヤフーオークションで出品者IDがyugen2plus,オークションIDがh316599746(2018年5月16日落札)の商品説明画像からモノクロ化後に縮小して切り出したラベル部分の画像を下に引用します.


  PC-9801NS/L/NS/T/NS/A/NS/R/NL/R用のACアダプタであるPC-9801N-12L(別名PU710,出力は+14V,1.2A)を接続して使用していたというPC-286NOTE Fがヤフーオークションに出品されたことがあります.PC-9801N-12LはMODEL H06CAJより出力電圧が高いため,代替使用自体は危険ですが,このような使い方が曲がりなりにも可能であったということから,両者のプラグの形状は(ほぼ)等しい可能性があります.PC-9801N-12Lのプラグ部分は,全体の長さが10mm(金属筒部分8.5mm,先端のプラスチック部分1.5mm),外径が5.5mm(最外周のプラスチックリング部分の幅0.7mm),内径(穴の直径)が1.8mmです.
   追記:内径は2.1mmとのことです[8bit原理主義 > ヨシノローテック --> 今週のプチ活動報告(2022/02/26) — PC-286NFビネガー症候群の修理(2022年2月26日の記事) --> Vol.5.1(pdfファイル)の 会長(Kaicho)(2015). Spechial Topic レトロComputingのススメ 「PC-286NF(PC-98互換ノート)の復活」. 『8ビット 原理主義』 Yoshino Lowtech技報 78K マイコン工作 Vol.5.1, ヨシノローテック技術部, pp.3-9. を参照].

※PC-286NOTE executive,PC-286NOTE Fともに,他のノート機に比べACアダプタの出力電流値が著しく低くなっていますが,これは液晶ディスプレイモジュールにサイドライトを使用しない反射型モノクロ液晶パネルが採用されていることに加え,物理的な可動部を有するストレージ機器であるHDDやFDD(後者はPC-286NOTE executiveの場合)も持たないため(ストレージとしてICカードドライブは内蔵可能),消費電流が大きく抑えられていることによると思われます.

■PC-286L/LE/LF
  MODEL H07GAJ
  丸ピンコネクタ(センタープラス),出力は +15V,2.0A.(本体の定格電流は,286L-STD-S・L-STD-Nで1.6A,L-H10Nで1A/286LE-STDで1.3A,LE-H20・LE-H40で1.6A/PC-286LF-STDで1.4A,LF-H20・LF-H40で1.7A).
  コネクタはセンタープラスですが,今となっては殆ど見かけることのないACアダプタですので,出力に関する事項を閲覧者が確認できるよう,ヤフーオークションで出品者IDがcarpet2004,オークションIDがv480350857(2016年12月25日落札)の商品説明画像からモノクロ化後に縮小して切り出したラベル部分の画像を下に引用します.


■PC-286BOOK-STD(PC-286BSTD),PC-386BOOK L(PC-386BLST)
  MODEL H06FBJ
  丸形3ピンオスコネクタ[本体のACアダプタ接続用メスコネクタ脇に本体側コネクタのピンアサイン表示あり.ACアダプタのオスコネクタのピンアサインはそれの鏡映像(下図参照)],出力は +15V,2.2A(本体の定格電流は,286BSTD・286BH20で1.3A/386BLSで1.7A).
  98ノート/ラップトップのACアダプタのPC-9801LV-12(PU462)のP1出力(+16V,2.5A)やPC-9801NS-12(PU492)のコネクタとピンの極性が逆になっています.実際にPC-9801LV-12のケーブル結線を変更して代用したとの報告があります[令和に始めるX68000 --> PC-386BOOK LのヘンテコACアダプタを何とか調達する!(2022年7月24日の記事)を参照].
  本体のACアダプタ接続用メスコネクタ付近の画像は,試運転さんにいただいたものを加工しました.
   追記1:ラベルの画像が見つかりましたので図中に追加しました.ヤフーオークションで出品者IDがniltusyoubokitac111,オークションIDがq416725864(2020年12月20日に落札)の商品説明画像から切り出してモノクロ化した画像を下図中央に引用します.


多数の四級塩電解コンデンサが使用されています.UME-3さんのファイル置き場(?)のPC-286BOOKのACアダプタ/電源の電解コンデンサ一覧 に電解コンデンサの一覧があります.

■PC-386BOOK LC,PC-386BOOK LX
  MODEL AD1528JA
  コネクタ形状・極性不明,上と同じ丸形3ピンオスコネクタではないかと思いますが,資料がありません,出力は +15V,電流値不明[本体の定格電流は,"EPSON PC システムガイド" では386BOOK LC・LXとも2.3Aとありますが,386BLX2の実物では2.5Aとなっています].
  ※本体の最大消費電力が50Wということですので,少なくとも3.4A程度までの電流供給能力を有すると考えられます.

■PC-386NOTE A
  AD1030JA
  丸形コネクタでピンが5本の専用品,出力は +10V,3A および +6V,1.8A(後者はバッテリー充電用).充電制御端子とリレー動作コイルON端子もあり(本体の定格電流は,NASTで+10V,1.7A).
  これらの端子名はAD1030JAのラベルには書かれておらず,PC-386NOTE Aユーザーズマニュアルの方に記載があります.AD1030JAのラベルに描かれたコネクタの図では,バッテリー(NiCd電池)充電端子は丸の中にC,充電制御端子は丸の中にS,リレー動作コイルON端子は丸の中にRの記号でそれぞれ示されています.この図を下(画像右)に示します.ヤフーオークションで出品者IDがz80vs6809,オークションIDがw1093997036(2023年6月3日落札)の商品説明画像からモノクロ化後に切り出した画像を引用します.


  +10V端子(+)とGND端子(-)だけに電源を接続しても本体が起動しなかったとの報告があります.本体が故障していた可能性もありますが,リレー動作コイルON端子にも何らかの電圧[本体マニュアルには記載がないようです(注)]を印加する必要があるのかもしれません.
 注:yqkさんより,PC本体の内部回路を調べたところ,+端子とリレー動作コイルON端子には同じ電圧を印加するようになっていたとの情報をいただきました.
   追記1:ヤフーオークションに+15V(電圧が高すぎて危険です)単一電源ACアダプタのコードを切断して接続し,常用ではなく起動確認(動作画面を含む商品説明画像がありました)を行ったPC-396NOTE Aが出品されたことがありますが,肝心の接続部分に(絶縁のためでしょう)ガムテープが貼られていたため,残念ながらどのように接続されていたのかは不明です.
   追記2:鴨川ネギさんの2020年1月24日のツイート(12)によれば,バッテリーの充電が不要ならば,+端子に+12V(注),-端子にGNDを接続するだけでよいとのことです.鴨川ネギさんの2022年1月31日のツイート(12)も参照.
        注:電圧が+10Vより少し高いのですが,これで大丈夫とのことです.ACアダプタの中には公称電圧よりも高い値の出力電圧を持つものがあり,AD1030JAもそうなのかもしれませんが(確認していません),電圧が少し高い点に一応留意しておく必要はあるでしょう.
   追記3:yqkさんより,+端子に+12Vを印加しただけでは起動せず,リレー動作コイルON端子にも+12Vを印加する必要があるとの情報をいただきました.

■PC-486PORTABLE(PC-486PT1)
  MODEL PCAC11(別名はAD1315JA)
  丸ピンコネクタ(センターマイナス),出力は +12.7V,1.5A(本体の定格電流は1.2A).
  センターマイナスという例外的なコネクタであることから,閲覧者が確認できるよう,ヤフーオークションで出品者IDがff2002_0220,オークションIDがk409621663(2019年9月15日落札)の商品説明画像からモノクロ化後に切り出したラベル部分の画像(左)と,出品者IDがtopnasjp,オークションIDがn367547575(2019年9月10日落札)の商品説明画像からモノクロ化後に切り出した本体のACアダプタケーブル接続用コネクタ付近の画像(右)を下に引用します.


  おふがおさんの2022年8月29日のツイート試運転の資料館 --> 電算機部 --> PC-486PORTABLE などの AC アダプタのお話 に,使用されている電解コンデンサに関する資料があります.

■PC-386NOTE W/WR/AE
  PCNTAC2[別名はMODEL AC1321JA または AC1321JA1(注)].
  丸ピンコネクタ(センタープラス),出力は +12.7V,2.1A[本体の定格電流は,NW2で1.2A,NW1A・NW1Bで1.3A/NWR2で1.3A,NW1B・NW1Dで1.4A/NAE1で1.8A].
  注:筆者が入手したPC-386NOTE W用となっている未開封品(WRとAEの発売前に出荷されたものでしょう)では,箱に印刷されている型番はPCNTAC2で,中身はAC1321JAでした.エプソンの方でも実際にはこれらを区別していなかったのでしょう.下の "AD1331Jシリーズ" でも同様でしょう.
  古くは東芝製J3100シリーズ付属の MODEL UA0308P02 や同社製DynaBookシリーズ付属の MODEL UA0371P01 や MODEL UA0308P02(いずれも+12V,1.7A)等の+12V出力のACアダプタでの代用報告がいくつかありました(2020年以降でも,ヤフーオークションの出品物では,+12V,2.0A程度のACアダプタのコネクタを付け替えたものを時々見かけます).これらはプラグがやや短く,エプソン98互換ノートに挿した場合に抜けやすいため,プラグの根元の部分を少し削るなどした方がよいといいます.なおこれらには下のPCNTAC3の代替品としての使用例もありますが,その場合電流値の点でやや不安があります.またPC-386NOTE Wで,任天堂製Wii用のRVL-002(+12V,3.7A,ビーケーエム製)のコネクタを付け替えたものの使用報告があります.2ピンコネクタ(角が欠けている側のピンが-端子)を交換する必要がありますが,このRVL-002は大変な数が出たものでしょうから,入手性もよいでしょう.

  マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換のPC-386NOTE Wの項に,試運転さんよりいただいた電解コンデンサの資料があります.

■PC-386NOTE AR,PC-486NOTE AS/AU/AV
  PCNTAC3(別名として AD1331JA・AD1331JB・AD1331JC を確認しています.両者が(ラベルの上下に分かれて)併記されているロットもあります.これらは "AD1331Jシリーズ" と一括されています).
  コネクタはPCNTAC2のものと同じ丸ピンコネクタ(センタープラス),出力は +12.7V,3.1A(本体の定格電流は,NAR1で1.4A,NAR2で1.5A,NARX2・NARC2で1.9A/NAS2・NASD1で1.9A,NASC2で2.2A,NASD2・NASX2で2.3A/NAU2・NAU2HT・NAU2HWで2.0A,NAUX2・NAUX2HWで2.2A,NAUC2で2.4A,/NAV2で2.0A,NAVX1JW・NAVX2・NAVY1JWで2.3A,NAVC2で2.4A).

PC-486NOTE AS/AUで,任天堂製Wii用のRVL-002(+12V,3.7A,ビーケーエム製)のコネクタを付け替えたものの使用報告があります.

■PC-486NOTE AT,PC-586NOTE AT
  PCNTAC4
  コネクタはPCNTAC2・PCNTAC3と同じ丸ピンコネクタ(センタープラス),出力は +12.7V,3.9A(本体の定格電流は,486NATX1J・486NATX1JRで3.2A).

PCNTAC2,PCNTAC3,PCNTAC4はコネクタの形状と極性,および出力電圧値は同一で,電流値だけが異なります.
AD1331JBの画像を下に示します.PCNTAC2・PCNTAC3の同等品,およびPCNTAC4では,ラベルの2行目(下の画像では "MODEL AD1331JB" となっている部分)にそれぞれの型番が示されています.



内蔵バッテリーは,BOOKとPC-486NOTE AV以前の機種ではニッカド電池[PC-286NOTE FではRB 1201(+7.2V,1700mAh),PC-386NOTE AではBC6028JA(+6.0V,2800mAh),PC-386NOTE W/WR(形状が若干異なるというのですが,ヤフーオークションの画像などから筆者にはそう判断できません)/AE/AR/AS/AU/AVではPCNTBP2(+7.2V,1700mAh)(注1・2・3・4),PC-486 PORTABLEではPCBP11(+4.8V?,1300mAh(1400mAh?))(注5)],PC-486NOTE AT,PC-586NOTE ATではニッケル水素電池(PCNTBP4,+7.2V,2400mAh)です.
 注1:筆者の知る限り,PCNTBP2にはBC7217JBとBC7217JCの二種類があり,両者とも,PC-386NOTE W/WRにもPC-386NOTE AR以降の機種にも取り付けられている例を確認しています.筆者の手元には前者しかありませんが,PCNTBP2が対応しているどの機種に装着しても,外観の面での違和感はないように感じます.
 注2:他機種で充電できなくなったPCNTBP2は,PC-386NOTE W(WRではこの現象はみられないといいます)に取り付けて充電すると復活する(充放電を何度か繰り返すと新品に近い状態まで復活)場合があるといいます.これは,この機種ではバッテリーチェッカーの閾値(過放電状態の認識?)の違いが他機種と異なっているため,この機種で充電することで他機種でも正常と判定される状態まで持ってこられるのだろうと推測されています.但し復活できたPCNTBP2は,インジケータが赤く光るする状態のものに限られます(インジケータが緑に灯ってバッテリーの装着すら認識されない状態となったものは不可能).なおこれはあくまで2000年前後に報告された内容です(どるこむの過去ログ,[1882] 鶴のバッテリ死亡原因 も参照).
 注3:他にPCNTBP3(大容量バッテリパック)も存在しました.
 注4:PC-286L・LE・LFのバッテリーパックはRB 801(+9.6V,2000mAh)(注4.1).PC-286BOOKのバッテリーはPCBBP(RB 1301の文字列もあり.+9.6V,1700mAh).またPC-386BOOK L・LC・LXのバッテリーも型番不明です(+7.2V,1700mAh).
    注4.1:PC-286LF-H20でRB 802(UGの文字もあるが型番の一部かは不明/+9.6V,2000mAh)を内蔵しているものも確認しています.
 注5:他にPCBP21(大容量バッテリパック/+4.8V?,2300mAh?)も存在しました.

なお大型ラップトップであるPC-286LF・LS・LST/PC-286LP(PC ONE)/PC-386LS・LSC・LSR・LSXは,電源ユニットを内蔵しているため,ACアダプタは必要ありません.これらの機種はサイズが大きいばかりでなく,消費電力が大きいため,設計時にACアダプタでの運用は不利との判断になったのでしょう.例えばPC-386LS-STD(PC-386LSST),PC-386LSR-STD(PC-386LSRS),PC-386LS-H20(PC-386LSH2),PC-386LS-H40(PC-386LSH4)の消費電力は順に30W,30W,40W,40Wで,いずれも最大70Wに達します.


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