マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換


PC-9801FAあたりからPC-9821Anあたり(実際にはAp3/As3あたり?)までのPC-98では,各種基板上の面実装型を中心とする四級塩電解コンデンサの液漏れによる動作不良や故障が頻発しています.この液漏れは必発であり,現在問題なく動作しているように見える個体であっても電解コンデンサのチェックが必要です(FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理 も参照).この液漏れは必ずしも目視で検出できるとは限らず,液漏れしていないように見えても,無水エタノールをしみ込ませたティッシュペーパーでコンデンサの付近の基板を拭いてみると,ティッシュペーパーに(一般的な埃の色とは明らかに異なる)くすんだ緑色の汚れが付着するためそれとわかるるケースもあります.またコンデンサが派手に液漏れしている場合には,アンモニアに似た独特のニオイがしていることもあります.

ここではPC-98のマザーボード上の四級塩電解コンデンサを交換した事例について報告します.

APさんから以下のコメントをいただいております(表現を改変しました).
・交換する電解コンデンサは,元々使用されていたものの仕様に合わせるか,同等品以上のものを用いる.例えば10V-22μFのものを35V-22μFのものに替える場合,許容リップルが同等以上でればOK(耐圧が50V以上ではインピーダンスが変わる).
・やむを得ず容量の大きな電解コンデンサに交換する場合(例 15μF --> 22μF),インピーダンスがほぼ同等あるいはより低いものを選択すればよい.


■PC-9821Ap
この機種の場合,ボリュームを最大に上げた場合にスピーカーの出力に弱いノイズが混入すること以外は,PC本体・FDDともに問題なく動作しているように見受けられたものの,基板上の電解コンデンサの多くは派手に液漏れしていました.

電解コンデンサは面実装型のものと基板貫通型(通常の形状の,リード線が基板の裏面にまで達するタイプ)とがあります.

まず面実装型のものだけを交換しました.
電解コンデンサを数個ずつ取り替えては仮組みして電源投入というのを繰り返して作業を進めました.このやり方だと,万が一起動しなくなった場合,どのコンデンサを交換したためであるかがわかりやすくなります.
元々の四角い電解コンデンサは胴体が基板に接着されていますので,予めラジオペンチで胴体部分を挟んで少し横にひねって基板から剥がしておきます(剥がれる時にパキッと音がします).
またハンダゴテを十分に熱しておいてから作業する必要がありますが,電解コンデンサのリード線が外れにくい場合にははんだを足してから外すようにします.焦って作業すると,不必要にパーツを焦がしたり基板上のパターンを剥がしてしまいやすくなります. 基板にこびりついた電解液等の汚れを基板や周囲のパーツを傷つけないようカッターの刃先等で慎重に削り落とし,その後その部分と周囲を無水エタノールをしみ込ませたティッシュペーパーで拭くなどして漏れ出した電解液をできる限り取り除いてから新しいコンデンサを取り付けます.コンデンサのリード線は極力短くします.



耐圧は元々使用されていたものと同じ,あるいは若干高いものを使用しました.50V-1.5μFのコンデンサは起動のタイミングを設定するためのものと推定されますが,これを2.2μFのものに交換したことによる起動障害は今のところ観察されていません.このコンデンサは他の機種でも同じ役目をしているものと思われます.

この作業によってはスピーカーからのノイズは消えませんでしたが,後日基板貫通型の電解コンデンサもすべて交換したところこのノイズは認められなくなりました.この基板貫通型コンデンサはCバススロットの下のG8MVTなるドータボード付近に多数実装されています(この付近は86互換音源領域です).

10数年間で2台に対してこの作業を行いましたが,これまでのところコンデンサ交換に起因すると思われる不具合は出ていません.


■PC-9801BX2
この機種も動作に問題は認められませんでしたが,ほとんどすべての面実装型電解コンデンサが液漏れしていましたので,交換を行いました.電解コンデンサの位置です(この画像はコンデンサを交換した後のものです).コンデンサの耐圧と容量等のメモは残っていません.



白丸が通常のタイプ,赤丸と緑丸が面実装型です(緑丸のものは50V-1.5μFのもの).15μFのものはすべて22μFにしました.

作業を行って10年以上になりますが,これまでのところこの作業によると思われる不具合は観察されていません.


■PC-9801FA
この機種も動作に障害は出ていませんでしたが,やはりほとんどすべての面実装型電解コンデンサが液漏れしており,電解液が周囲の基板を汚損していました.電解コンデンサの位置です.



1.5μFのものは2.2μFのものに,また15μFのものは22μFのものに交換しました.10年程の間に3台に対してこの作業を行いましたが,これまでのところコンデンサ交換に起因すると思われる不具合は出ておりません.


■PC-9801US
この機種は私が初めて電解コンデンサの交換を行った機種でした.以下の症状が出ていたにもかかわらず長くその原因が分からなかったのですが,メンテナンス時に電解コンデンサの足に電解液の漏出を疑わせる異様な汚れが付着していることに気づき,交換に踏み切ったものです.後日四級塩電解コンデンサの問題点は当時既に広く知られていた事項だったことを知りましたが,当時のPC-98に関するBBS等では私の知る限りこの話題は全く出ておらず,従って電解コンデンサを交換の効果に確証が持てないまま,おっかなびっくりの手探り状態での作業でした.
 (1) 普段からプツプツ音がしている.
 (2) テキストなどをスクロールするとプププ…という音がする.
 (3) dir命令などで高速表示させるとピーと鳴る.多分(2)のプププの間隔が短くなり,音が変わったように聞こえるのでしょう.
 (4) 画面が切り替わる時(例えばファイル管理ソフトFD上からテキストファイルの中身を表示させたりする場合)にプッという音がする.
 (5) ボリュームを大きくするとこれらの音は大きくなり,ボリュームを絞ると聞こえなくなる.



5Vまたは35V-6.8μFというコンデンサがいくつも使用されていました.本来同じ容量以上のものと交換しなければならないのですが,これらはすべて4.7μFのものに交換しました.また2個あった16V-100μFの電解コンデンサは470μFのもに交換しました.

コンデンサ交換により上記の(1)−(5)の症状はすべて消失しました.最初の機体でのコンデンサ交換作業は10年以上前であり,その後5,6台に対して同様の作業を行ったと思いますが,これまで不具合のようなものは出ておりません.


■PC-9821Ap2
交換対象となる電解コンデンサは64個あります.



1.5μFと15μFのものはそれぞれ2.2μFと22μFのに,また220μFのものは並列に接続した100μFのもの2個に交換しました.コンデンサの交換作業は10年程の間に5台に対して行いましたが,不具合は出ておりません.

なお画面への出力がなく,スピーカーからの音にノイズが混入するAp2の面実装型コンデンサをすべて交換したところ,これらの症状が消失したという報告を ぬけ さんからいただいています.


■PC-9821Xn
この機種では四級塩電解コンデンサが実際に使用されているかどうかは不明ですが,使用されているらしいという情報があったので交換に踏み切りました.型番の異なる三種のマザーボードでこの作業を行いましたが,その後10年近く不具合は発生していません.



1.5μFと15μFのものはそれぞれ2.2μFと22μFのものに交換しました.耐圧25V/50V品が多かったのですが,スペースに余裕を持って取り付けられました.スペースが最も窮屈なのは電源コネクタ付近でした.また右上の10μFのものは寝かせずに立てました.

G8RXN A11BとG8RXN B19ではコンデンサの内訳は共通ですが,G8RXN A10Cでは16V-33μFの電解コンデンサはなく,代わりに35V-6.3μFのタンタルコンデンサが取り付けられていました.
G8RXN A10Cでは電源ユニットコネクタ脇・10V-47μFのコンデンサ横の3W-30Ωの青い抵抗の位置も他の二種類のマザーボードと異なります.すなわちこの抵抗は他の二種類のマザーボードでは上の図のようにマザーボード上に取り付けられているのに対し, G8RXN A10Cでは電源ユニットコネクタの3・4ピンに直接ハンダづけされています.これは明らかに後付け抵抗です.G8RXN A10Cでは長いジャンパ線も非常に多く,特にマザーボード裏面では大変なことになっています(チップ抵抗の載った小基板も追加されています).
G8RXN A11Bにも若干のジャンパ線が認められますが,G8RXN B19にはジャンパ線はなく,面実装型電解コンデンサも黒パッケージでなく白パッケージのものが使用されています.三種類のマザーボードでは,A10Cが一番古く,次いでA11B,最も新しいものがB19ということになるのでしょう.マザーボードのリビジョンはアルファベット順・数字順のようです.
A10Cでは3W-30Ωの青抵抗が接着されていた47μFのコンデンサが液漏れしていました.恐らく抵抗の熱により劣化が早まったのでしょう.この47μF交換時には,オリジナルとは逆の向きに47μFを取り付け,空いた4.7μFと47μFの間のスペースに割り箸の切れ端を台にして30Ω抵抗を電源ユニットコネクタの長辺に対して直角になるように取り付けました.

右上の10μFのコンデンサの交換作業はミニジャック部の銅板を外すとやりやすくなります.またCバスバックボードそばの470μFのコンデンサを元々のものより太いものに交換する場合には,Cバスのボックスと干渉しないように若干斜めに取り付けるとよいでしょう.またセカンドキャッシュコントローラ(CPUソケットの横の大きなチップ)とセカンドキャッシュ(386SXのような8つのQFPチップ)は発熱が大きいので,コンデンサを取り付ける際にはこれらに接触しないように注意して下さい.これらのチップのそばのコンデンサはマザーボードに寝かせないでマザーボードから浮かせるようにするとよいかもしれません.


■PC-9801NS/A
プラスチックの筐体のツメの位置と形状です.



交換対象となる電解コンデンサの位置です.耐圧と容量のメモは残っていません.



■PC-586RX
この機種でも四級塩電解コンデンサが実際に使用されているかどうかは不明ですが,本体の音声出力へのディジタルノイズの混入が激しかったので10年ほど前にコンデンサの交換を行いました.しかし肝心のノイズ混入の問題はコンデンサ交換後も改善しませんでした.どうもそういう機種のようです.



マザーボードの右下隅から伸びでいるケーブルは,筆者が5インチFDDを内蔵させるために取り付けたもので(後期エプソン98互換機に5インチFDDを内蔵を参照),最初から付いていたたものではありません.

45個ある電解コンデンサはすべて基板貫通型であり,液漏れは認められませんでした. マザーボード中央右端の,二つある10V-220μFのものは並列接続されています.下側のものが上側のもののリード線に後付けで継ぎ足されています.マザーボード中央付近の10V-220μFのものも後付けされています.

この586RXは他にも筆者による様々な素人改造が施されており,異常動作が発生した場合の原因の切り分けが困難なのですが,幸いこれまでのところ不具合は発生していません.