61SIMM判別法


PC-9821Ap/As/Ae以前のPC-98の一部の機種,およびI・Oデータ製のPC-386M専用RAMベースボードであるEP-386MにSIMMを増設する場合,PC-9801-61(注),通称61(互換)SIMMと呼ばれる容量2MBの専用品が必要です.これはJEDEC仕様のSIMMなどとは端子の信号アサインが異なります(シエルさんの2020年8月10日のツイートを参照).
 注:末尾にUやRの文字が付いているものもありますが(多く見かけるのはむしろそれらの方でしょう),価格改定(値下げ)版であり,機能に差はありません.

61(互換)SIMMを一般的なJEDEC仕様のSIMM等から見分けるポイントは以下の通りです.画像は各段とも同じSIMMの裏表のものです.同一のタイプでもチップのメーカーと型番は様々であり,英数文字列の書かれた白いシールの有無や基板上の配線や基板の色の異なるものがあります.これらのポイントはあくまでも筆者が所有している実物に基づくものであり,特にチップの向きと基板上の文字列との対応の点は本記事と異なっているものもあるかもしれません.なおエマティなリサイクル --> 研究発表会 --> めずらSIMM写真館 にも,小さなものですが,61(互換)SIMMの画像が掲載されています.

■NEC製
チップの長辺が縦方向になるように配列されているものと,横方向になるように配列されているものとがあります.最上段のものは,基板左上にPC-9801-61Uと書かれた楕円形の白いシールが貼られているため容易に同定できます.しかし二段目のものにはこのシールはありません.この場合,最上段のものと同じく,基板上にMM341000-80の文字列があることから同定できます(注1).チップの長辺が縦方向のものにはこの文字列があるようです.三段目のものにはPC-9801-61Rと書かれた長方形の青いシールが貼られています.最下段のものは三段目のもののシールがないタイプです(注2).この場合,三段目のものと同じく,基板上にMM3461000-80の文字列があることから同定できます.チップの長辺が横方向のものにはこの文字列があるようです.


 注1:画像のSIMMでは基板上に014の数字列がありますが,他の文字列が印字されている場合もあります.例えばレジンスキーさんの2023年5月22日のツイート の画像でFC-9801F-01と思われる G8LUR(?) A1・ 基板に装着されている4枚のPC-9801-61Uには,それぞれ032,220,240,246の数字列があります.ロットなどを示すものでしょうか.なお画像のSIMMではメモリチップの一つにSofmapのシールが貼られていますが,これはこのSIMMが以前にSofmapで売られていたことを示すものでしょう.他の種類のSIMMでもこのシールが貼られているものが存在することを確認しています
 注2:PC-9801-61Rのシールが貼られたSIMMで,最下段右の画像と同じ裏面を持つものも確認しました.なお最下段右の画像には537の数字列がありますが,これも固定したものではなく,342など別のものが印字されている場合があります.

またPC-9801-54(通称 "54SIMM")の画像も示しておきます.チップは片面実装で,PC-9801-54Uと書かれた長方形の青いシールが貼られています(このシールのないものも確認しています).基板上にはG8CNTの文字列があります.61(互換)SIMMと異なりパリティ用のチップが載っていません.パリティ用のチップは装着先の基板にあるといいます.


これとは別な基板のPC-9801-54(相当品)も存在します[PC-9801LS-02(PC-9801LS用増設RAMボード)に装着されていたことからそう判断しました].型番を示すシールなどは貼られていません.ヤフーオークションで出品者が スノーマン8号,オークションIDが g1125298135(2024年2月19日終了予定)の出品物の説明に使用されているものを加工(元画像を40%に縮小したものと元画像を180゜回転後に40%に縮小したものとを併置しjpg形式に再変換)した画像を引用します.


チップのある面の左上にPC(?)72N3??-0(?),チップのない面の右上にMS SPU-0Pの文字列があります(?は判読困難あるいは判読不可能文字).チップのない面には,NEC MC-8291A/(三菱のマーク) MH51216AJ-8/JAPAN 9385G01/940 の文字列があります(使用されているメモリチップは三菱製M5M44256AJ-8).これらは2枚のSIMMで同じです.また2枚ともG8CNTの文字列は見当たりません.


■メルコ製
チップの長辺が縦方向になるように配列されているものでは,基板上に2000XMC-Aの文字列があり,また横方向になるように配列されているものでは,2004XMC-Bや2004XMC-Dの文字列があるので簡単に判別できます(文字列が2004XMC-Cのものもあるそうですが,筆者は見たことがありません).


 ※2004XMC-Dの文字列があるSIMMで,メモリチップが2個(基板の表裏各1個)しかないものが存在します(パリティチップはありません).これはPC-9801-54のメルコ製互換品です[このSIMM(XMB-1000)単体の画像は九太郎さんの2023年8月1日のツイート(12)を参照].ヤフーオークションで出品者IDが gruovendo,オークションIDが k555021263(2021年6月13日終了予定)の出品物の説明に使用されているものを加工(元画像を1/3に縮小してガンマ補正値を上げjpg形式に再変換)した画像を引用します.PC-9801ES用の増設RAMボードであるMES-3000Lに3枚装着された状態のものです.なおぱそこん倶楽部の商品画像でも,MES-3000Lに3枚のSIMMが装着されていますが,これもPC-9801-54のメルコ製互換品ではないかと思われます.他にPC-9801LS-02(PC-9801LS用増設RAMボード)にもこれが装着されている例を確認しています.


   MES-3000Lはその型番が示すように,容量は3MBです[PC-9801RXやRA2の内蔵RAMボードも容量は3MBです(注)].基板上に OKI M51C256-80[262,144 word ×1 bit( = 256kB) DRAM]が4個あり,基板上に1MBのメモリが載っているようですが,メモリとして認識されるのはSIMMソケットに装着されたSIMMの分だけなのでしょう.
    注:OH!PC 1990年5月15日号のメルコの広告記事に,PC-9801-54/XMB-1000に対応した増設RAMベースボードの一覧があります(九太郎さんの20233年9月8日のツイート を参照).PC-9801-54とその互換SIMMは,PC-9801USのCバスライザボード上のSIMMソケットにも,61(互換)SIMMとともに増設可能との報告もあります.



■I・Oデータ製
チップの長辺が縦方向になるように配列されているもの(上段)と,横方向になるように配列されているもの(中段)とがあります.前者では基板上にPIO-SIM61-2M-4の文字列があり,後者ではPIO-SIM61-2MZ-1の文字列がありますので,これも判別は容易です.


また下段のものは,I・Oデータ製の一部の増設RAMベースボード(FA-34/FS-34/BA-34シリーズなど)の特定のSIMMソケットに製品の一部として予め取り付けられているSIMMです."CAUTION(注意)取り外さないでください" と書かれた細長いシールが貼られています.これは特殊なSIMMで,元々装着されていたソケットに装着してあると,8MBの容量のSIMMとして認識されますが,別なソケットに装着すると,2MBの61互換SIMMとして認識されるといいます(SENRI’s Homepage PC98周辺機器情報局 98Station> --> PC98の小技集&裏技集 --> [IO DATAメモリボードで61SIMM以外を使う] を参照).似た型番のPIO-HEX-4M[これにも "CAUTION(注意)取り外さないでください" と印字された細長いシールが貼られています]は,61互換SIMMとしては使用できないとのことです.PIO-HEX-8Mの信号については,おふがおさんの2023年4月25日のツイート(12)も参照.
 なおさんの2023年8月28日のツイートによれば,BA34-4MFのPIO-HEX-4M専用SIMMソケットにPIO-HEX-4Mを装着した場合,BA34-4MF上のジャンパスイッチの変更が必要な場合があるといいます.BA34シリーズなどの中古品で,PIO-HEX-4M/8Mが取り外された状態で売られているものの中には,ジャンパスイッチの設定が変更されているものがあるということなのでしょう.BA34-8MFに関しては,PIO-HEX-8Mが装着されているものでは,基板上に1個だけある3本("F" 中央ピン "M" の3本のジャンパポストあり)ジャンパスイッチはM側2本ショート,またSIMM 3枚装着済みの表記のあるもの(SIMMの一つはPIO-HEX-4Mと思われます)ではF側2本ショートの設定のようですが,基板自体が複数あるようで,基板名がBA34-8M-3のロット(詳細不明)やPIO-HEXの分のメモリが基板上に載っているロット(上記の98Stationの記事を参照)もあるようです.またBA34-4MFでも,基板上に3本ジャンパスイッチが3個あるものと,3本ジャンパスイッチのパターンだけが2個あるものを確認しています.


いずれのメーカーの61(互換)SIMMも,中古市場で最も多く見かけるのは,チップの長辺が横方向になるように配列されているものであろうと思います.


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