MD5501Sのメンテナンス


エプソン98互換デスクトップ機のPC-386GSE/GSやPC-486GF/GRなどの内蔵5インチFDDであるキヤノン電子製MD5501S(K-61435-92)の簡単なメンテナンスの仕方です.


■メディアの出が悪い/イジェクトボタンの戻りが遅い
FDDのトップカバーを外し,画像の白楕円のところの可動部に機械油の類を少量垂らしてしばらく放っておきます.垂らしすぎは禁物です.次にFDDにメディアを挿入してイジェクトボタンを押し,すぐにイジェクトさせます.これを何度か繰り返すと,次第に動きが滑らかになります.この時,黒い汚れ(劣化したグリス等)が油に溶け出して来ますので拭き取ります.状況にもよりますが,この汚れを完全に取り去るには時間がかかりますので,適当なところで切り上げて再度グリスを塗布します.グリスはタミヤ製の "セラグリスHG" などの評判がよいようです(かおる@ヤドンさんの2019年11月24日のツイート などを参照).シリコングリス(セラミックグリスより粘度が高い.呉工業のシリコングリースメイトはチューブ入りのペーストタイプと缶入りのスプレータイプあり)を奨める方もいます[kobefs@パソコンの人☆彡さんの2020年7月19日のツイート(12)などを参照].自転車用のSHIMANO製プレミアムグリスという選択肢もあります(かおるさんの2021年9月26日のツイート を参照).古いグリスを徹底的に除去したい場合には,ブレーキクリーナー[ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8 など]を使用するとよいかもしれません[はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照].ブレーキクリーナーによっては,洗浄液が気化熱を奪うために噴射された部品が急激に冷却され結露する(水浸しになる)場合がありますので,使用には注意して下さい.なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤 を参照).

■メディアが読み込めない(目立った異音なし)
トップカバーを外して綿棒と無水エタノール等でヘッドを清掃します.無水エタノールはヘッドの接着剤を多少なりとも侵しますので注意して下さい(注).上下のヘッドの間のスペースが狭いので,綿棒の先をペンチなどで潰して平たくします.
 注:ヘッドは接着剤で固定されているため,強い衝撃が加わるとズレる恐れがあります(Flyingharuka@Genshin中国鯖さんの2022年4月8日のツイート を参照).このヘッドは,磁性体円盤にカビの生えたメディアを読み込ませた際の損傷の程度がFD1155Dなど他のFDDのヘッドの場合よりも大きいとの見解もあります(Flyingharuka@Genshin中国鯖さんの同日の別なツイート を参照)

ヘッドの動きが悪いようでしたら,上の画像の青色の楕円のところのシャフトに薄く油を塗ります.

なお上の画像右上の黒いプラスチック部品は,書き込み許可/禁止判別用ノッチ検出用のセンサのようですが,単に金属板にはまっているだけであり,樹脂等での固定は行われていません(注).メンテナンス作業時にはちょっとしたことで外れてしまうことがありますので注意して下さい.
 注:接着剤で固定されているというのですが,簡単に外れる部品のため筆者は気付いたことがありません.しかし改めて手元のものを三台確認してみたところ,確かに透明な接着剤が付着していました.なお製造時期が後のものでは,この部品はネジで固定されているといいます(Flyingharuka@Genshin中国鯖さんの2022年4月8日のツイート を参照).

■メディアが読み込めない(ガッとかガーーといった大きな異音あり)
ヘッド移動用ステッピングモーター(SST-20C120L)の軸(二つ上の画像のオレンジ色の楕円のところ)に螺旋状に刻まれた溝内のグリスが劣化して粘性が高くなると,メディア読み込み時にガッとかガーーといった大きな異音が発生します.この症状は,周囲の温度が高い時には出ず,温度が低くなると出てくる場合もありますが,原因を考えればこの現象には納得できるでしょう.この場合,古いグリスを丁寧に取り除いて新しくグリスを塗ります.古いグリスを徹底的に除去するには,マイナスの精密ドライバーや爪楊枝等での除去後に,ブレーキクリーナー[ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8 など]を使用するとよいかもしれません.グリスについては,上の "メディアの出が悪い/イジェクトボタンの戻りが遅い" の項も参照して下さい.


MD5501Sや,同じくエプソン98互換機で使用されている3.5インチFDDであるキヤノン電子製MD3541Gのステッピングモーターは,X68000用の一部のFDDのものと共通とのことです[レトロなPCとか --> 「X680x0 用 FDD 型番いろいろ メモ」(2018年7月22日の記事),X680x0 用 FDD 修理 (ステッピングモーター)(2018年7月22日の記事)].またMD3541・MD3541P・MD3541Gは,X68000 CompactのFDDのヘッドの修理用部品として利用されています[佐藤さんの2021年11月2日(12345678)のツイートを参照.なおX68000 030compactのFDDに関する話題ですが,上下のヘッドのズレについては,佐藤さんの2021年12月1日(1234)・2日(12)のツイートも参照].

X68000用のFDDのステッピングモーターでは,モーターの軸のグリスが固着して軸が回転しにくくなる,あるいは回転しなくなるという故障がいくつか報告されていますが,このステッピングモーターは上述のようにMD5501S等で使用されているものと同じ部品ですので,同様の故障はMD5501S等でも起こり得ます(注).このような状態となってしまってからでは軸への注油程度では改善しないらしく,ステッピングモーター自体の交換によって対処されているようです.
  注:MD5501Sが故障したという話をいくつか耳にしてきましたが,単に故障したという報告だけで,具体的な症状は明らかでないケースが殆どでした.筆者は自らの経験から,MD5501Sを故障しやすいドライブとは考えていなかったため,どこが故障するのだろうかと思っていましたが,今になって考えると,それらの少なくとも一部はステッピングモーター部分の故障であった可能性があります.

ところで,筆者は上記のレトロなPCとかの記事を見るまでX68000のFDDについては興味を持ったことがなく,オートイジェクト動作をすること以外全く知らなかったのですが,調べてみると,X68000に内蔵されている5インチFDDの内部構造の一部(特にヘッドまわり)は,なるほどMD5501Sのものに似ています."X68000 FDD 修理" などの検索語でウェブ検索すると,修理やメンテナンスに関する記事がいくつもヒットします.これらの記事もMD5501Sの修理やメンテナンスを行う上で非常に役立つでしょう.電解コンデンサの交換(筆者自身は行ったことがありませんが)のためにMD5501Sを分解する場合も,巨大スティッキーズ --> X68000 SUPER内蔵FDDの分解手順と電解コンデンサ交換(2020年12月7日の記事),mx5638's blog --> X68000 FDDメンテナンス方法(2021年10月10日の記事)などが参考になるでしょう.


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