FD1155Dのメンテナンス


タクさんとtshさんより情報をいただきました.

FD1155Dは製造から長い時間が経過しており,現在不調となっているものが少なくありません.不調の原因は多々あると思われますが,ここでは簡単に対処できるものについて述べます.FD1157Dも同様の手続きでメンテナンスが可能です.

■ヘッドカバーの脱落
これは金属製のカバーをヘッドに取り付けているスポンジの経年劣化によるもので,ほぼ必発の不具合です.メディアが途中までしか挿入できなくなって気付かれることが多いようです.FDDのカバーを開けて脱落したヘッドカバーを取り出す必要がありますが,劣化してベトベトになった黒いスポンジによる汚れがヘッドとその付近に付着していることがあります.その場合にはその汚れを丁寧に除去する必要があります.なお他の5インチFDDでも同種の不具合が発生することがあります.

筆者は通常の使用ではヘッドカバーを付け直す必要はないと考えます(注1,2).むしろ,ヘッドカバーが脱落していない個体であっても敢えてこれを撤去しておくべきであろうと思います.なおこのヘッドカバーは,VCCI等の規格を満たすために用意された電磁シールドとのことです(PC-9821/9801スレッド Part45 の687-695番の投稿).
 注1:ヘッドカバーが取り付けられているスポンジは導電製スポンジのような特殊なものではないようで,普通のスポンジをで代用できるとの報告があります.なおヘッドに直接ヘッドカバーを取り付けると,動作時にメディアを損傷してしまいますので,ヘッドカバーの付け直しを行う場合には,メディアをセットしてヘッドが降りた際にヘッドがメディアと接触しないように,ヘッドカバーとヘッドの間に必ずスポンジ等を取り付けて下さい.ヘッドへの負荷や振動の問題を考えると,重量のあるものや固いものはこの用途には適さないように思われますので,やはりスポンジなどを使用するのがよいのではないかと思います[ただしradioc.dat --> NEC PC-98 基本情報 書庫目録 --> NEC FD1155D(5.25インチFDD) では,銅箔テープが使用されています].
 注2:一方で,ヘッドカバーを外すと,それまで正常に読めていたFDでリードエラーが発生する頻度が高まるとの報告もあります(【NEC】PC-9821/9801今はサブ5【98】 の326−330番の投稿).筆者はこの事実を確認できていません.
 ヘッドカバーの有無が特定のメディアからのデータの読み取りに悪影響を与えるのであれば,ヘッドカバーを除去したFD1155Dで市販のFD版ソフトウェアのマスターディスク(ユーザーがバックアップFDを作製する際のバックアップ元となるFD)の読み取りを行えば,読み取りエラーが生じると予想できます.マスターディスクはヘッドカバーがついているFDDでの読み取りを想定して製造されているはずだからです.しかし,筆者がヘッドカバーを除去したFD1155Dを用いて,Windows3.1,一太郎ver3.0,MS-DOS 5.0Aのマスターディスクの何枚かをdiskcopyコマンドで複写してみたところ,読み取りエラーの発生は確認できませんでした.指摘されている読み取りエラーが,環境に依存するものなのか,環境と無関係に確率的に発生する現象なのかは,今のところ明らかではありません.なお天板のないドライブでは,使用環境によっては,ヘッドカバーがない状態だとヘッドが周囲からのノイズの影響を受けやすくなり,読み取りエラーが生じやすくなるということはあるかもしれません(外付けCD-ROMのスイッチング電源のノイズがFD1155Dの動作に及ぼす影響 を参照).
 ※sakohitiさんの2019年8月27日のツイートによれば,FD1155(これがP/N 134-100671-006-0の "FD1155" のみを指すものか,FD1155C/Dを含むものなのかは不明ですが,後者であるならば)の最初期ロットには天板がなく,ヘッドが露出した構造になっているため,ヘッドカバーを外してしまうとヘッドがノイズの影響を受けやすくなるとのことです.またダンプ目的での使用では,天板のあるFD1155Dでもスイッチング電源由来のノイズが悪影響を及ぼすことが報告されています(ちまちまさんの2019年4月16日のツイート を参照).

■ヘッドの清掃
市販されていたクリーニングディスクによらず,綿棒等を使用して行うヘッドの清掃方法です.

FDDの上側のカバーを外しただけではヘッドの清掃がしづらく,無理に作業を行うとヘッド付近を破壊あるいは変形させてしまう危険があるため,さらに下図の3箇所のネジを外してフライホイール(回転円盤)基板を取り外します.


綿棒に少量の無水エタノール[エタノール(99.5%)]をしみ込ませ,ヘッドを軽く拭きます.エタノールはヘッド部分に使用されている接着剤を多少なりとも侵しますので作業は十分に注意して行って下さい.またこの作業のついでに,FDD内部(メディアが格納される部分)の清掃を簡単にでも行っておくとよいでしょう.

なおヘッドまわりの故障(というよりはイジェクト機構の故障)には 動体保存ノウハウ の83番の投稿 のようなものもあるといいます.筆者はこの故障には遭遇したことがありませんが,めーちゃんさんの2019年1月3日のツイート(12)で,まさにこれに該当すると思われる事例が報告されています.

■モーター回転時の異音
モーターが回転している時にFDDが発する異音にも何種類かありますが,ここでご紹介するのは,メディアの読み書きには問題がないものの,何かが擦れるようなシャカシャカという音がする場合の対処例です.


異音の原因は,図のEリング(欠けたリングのようなパーツ)が付近のパーツと接触することのようです.このEリングが動かないようにすれば音は止まります.手っ取り早いのは,Eリングの下にある程度の厚さのプラスチック板や厚紙を挟むことです.なおFD1158C/Dでも同様の症状が出ることがありますが,その場合も同じように対処することが可能です.

■モーターへの注油
フライホイールのシャフトのネジは時計回りに回せば緩みます.普通のネジと回す方向が逆ですので注意して下さい.モーターへの注油が必要なケースは少ないと思いますが,注油を行う場合には下の画像を参考にして下さい.なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).


■電解コンデンサの交換
FD1155Dにはフライホイール基板の異なるロットが幾つもあります.ここでは例として6種類の画像を載せますが,(右側下段の画像はtshさんにいただいたものを加工しました),ウェブページやブログ,ツイッター,またオークションサイトに掲載された画像を見ると,これら以外のものも存在することが確認できます.


上図の左側の一番下とその上のもののように,電解コンデンサを持たないフライホイール基板のFD1155Dもありますが,多くのロット,特に製造年の古いものではこの基板上に面実装型の電解コンデンサが取り付けられています.この電解コンデンサがしばしば液漏れを起こします.下図は電解液が漏れ出した様子です.このように電解液が漏れ出している場合には,付近の部品のハンダ部分の表面がくすんだ緑色あるいは白緑の粉を吹いたようになっているのが普通です(カビが生えたような感じと表現した方がわかりやすいかもしれません).


電解液は導電性の液体であり,また基板を腐食する性質を有しています.従って電解コンデンサが液漏れを起こしている場合には,早急に新しいものと交換し,また漏れ出した電解液を可能な限り除去する必要があります(前者にばかり気を取られ,後者の作業をおろそかにしてはいけません.予後が悪くなります).なおコンデンサの液漏れは目視で検出できるとは限りませんし,また液漏れしている場合でも,FDDの動作に不具合が認められない場合もあるので注意が必要です.電解コンデンサを交換に関しては,FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換などの記事も参照して下さい.

下図は電解コンデンサを交換した後の806-942443-GRP-0というロットのフライホイール基板の画像です.


フライホイール基板上の面実装型コンデンサは2個.元々実装されていたコンデンサは,下の大きなものが25V-22μFで,上の小さなものが25V-4.7μFでした.
 22μFの方は撤去しても47μFにしても動作に変化ないようでしたので,動作安定用(貧血防止用)と思われます.一方4.7μFの方は,撤去するとモーターが轟音を立てながら高速で回転し,メディアにアクセスできなくなりましたので,回転制御用かと思います.これは同じ容量のものに交換すべきでしょう.
 ※恐らく同じコンデンサと思いますが,これの劣化(容量減少?)により,書き込み時にデータ破壊が起きることがあるようです[asura.netPC-H98 Model90(2014年5月1日の記事) を参照].

経年劣化によりパターンの基板表面への接着が弱くなっており,思った以上にパターンが剥離しやすくなっています.また電解コンデンサ自体も,漏れ出した大量の電解液が固くこびりついているため,かなり外しにくくなっていることが少なくありません.

パターンを剥離してしまった場合,剥離部分と導通があるパターンを覆う絶縁皮膜をカッターの先端などで削って電解コンデンサを取り付けることになりますが,22μFの方は足の直下のパターンがその左右のパターンを繋いでいるため,剥離した場合にはジャンパする必要があります.

下図のケースでは,元々のコンデンサが取り付けられていたパターンが完全に剥離してしまったため,その箇所に抵抗の余分なリード線を利用したジャンパ線が取り付けられています.コンデンサの左の基板の穴の周辺の傷みが激しい(これは漏れ出した電解液の除去作業を行った後の画像です)ことからも,コンデンサの液漏れがかなりのものだったことがうかがえます.この状態でも正常に動作はしましたが,ジャンパ線などにより傷んだ部分の補修を行っておくことが望ましいでしょう.


FDDの上側の面にも基板(VFOを含む制御基板)があり,そこにもいくつか電解コンデンサが載っています.それらはすべてリード線が基板を貫通するタイプで,やはり液漏れしていることがあります.この基板にも何種類かあるようですが,型番はすべて等しく(G8ZKP,P/N 134-836020),筆者が下の3種類の基板についてテストした限りでは,相互に交換装着してもFDDの動作に変化は認められませんでした.なおG9(8ではありません)YZM,P/N 134-835941 という制御基板も存在しますが、筆者は所有していません.


この制御基板についてtshさんより下記の情報をいただいています(文章を改変してあります).

TSTジャンパのある長い基板のものはPC/ATAT互換機ではアクセスランプが点灯せず,TSTジャンパのない短い基板のものPC/AT互換機でもアクセスランプが点くようです.
 TSTジャンパのあるものは1988年や1989年の個体が,またTSTジャンパのないものは1990年6月の個体が手元にあります.時期的にはRL21/51やDXが登場する少し前なので,このあたりの時期を境に基板が変更されたのかもしれません.

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■フロントベゼルの製作
これはメンテナンスとは全く関係のない内容ですが,今のところ他に適当な場所もないのでここに載せておきます.

FD1155Dのフロントベゼルの製作方法が,
試運転の資料館 --> 電算機部 --> 5.25 型 FDD のフロントベゼルを製作してみる で紹介されています.

また,ファイルベイに内蔵したフロントベゼルなしFD1155D用に製作された "フロントベゼル" の例を,ヤフーオークションの出品物に見ることができます.下はいずれも出品者IDがDesire_98の方の作品で,左がオークションIDがm51482863のPC-9821Xa7(2008年3月10日に落札)の商品説明画像から切り出して引用した画像です."フロントベゼル" はPC-9801RXなどのフロントパネルの下側のFDD開口部付近を切り出したものです.また右はオークションIDがf63334885のPC-9821Xe(2008年1月20日に落札)の商品説明画像から切り出したものですが,こちらはプラスチック板を加工したものです.この画像では少しはっきりしませんが,この出品者の方の他の同種の出品物の画像から推測するとと,メディアの出し入れがしやすいように,真ん中あたりが左右より少し引っ込むように加工されているようです.


これらの "フロントベゼル" の固定方法については,FD1155Dの前面に貼り付けてあるといった説明がされていたと記憶していますが,具体的な方法は不明です.何らかの方法でフロントパネル側に固定することもできるかもしれませんが,試行錯誤的に位置の調整を行う必要があるように思えます.なお筆者もこれを真似てプラスチック板のフロントベゼルを数枚作成しました.固定にはネジと細い針金を使用していますが,FD1155Dの天板の一部を折り曲げる必要があり,また見映えもさほど良いものでもありませんので,紹介はしません.

なお上の画像では,2台目の3.5インチFDDのパネル部分にも工夫がみられます.左のXa7の方は,PCカードスロット増設アダプタであるPC-9821XA-E01のパネル部分を利用しており[増設3.5インチFDDのフロントパネルが前面に少し飛び出ていることから,PCカードスロット用に開けられている開口部を削って少し拡げてあると考えられます(注)],また右のXeの方は,元々の(3.5インチFDDが1台の場合の)FDDパネルの下の部分をくり抜き,そこにFD1138Tを内蔵した機種のフロントパネルのFDD開口部付近を切り出したものをはめ込んで,隙間をパテ等で埋めて(さらにその上から塗装して?)あるのでしょう.工作の難度は相当なものです.
 注:この開口部はPCカードスロットのフロントベゼルのサイズに合わせて開けられているため,3.5インチFDDのフロントベゼルより少し小さいのですが,3.5インチFDDをフレームの固定用ネジ穴の遊びを利用して幾分奥の方に取り付ければ,開口部を拡げなくてもメディアの出し入れやイジェクトボタンの操作は可能です.筆者はこの方法でデスクトップ型PC-9821Xc13に2台目の3.5インチFDDを増設しています.2台目の3.5インチFDDには,PC/AT互換機用FD1231Tからフロントベゼルとイジェクトボタン(通常のFD1231Tのものより小さいタイプ)を移植したFD1231Tを使用しています.



※FD1155CとFD1155Dのフロントベゼルは,正面から見るとそっくりですが,裏面の形状が全く異なるため,相互に交換装着できません.多数の箇所がフレームと干渉しますし,固定用のネジ穴の位置も全く合いません.筆者が故障したFD1155CのフロントベゼルをFD1155Dに取り付けた際には,縁の部分では,フロントベゼル下隅のネジ穴付近を大きく切り出した上で,ワイヤーでフレームに固定するための穴を開ける必要があり,また側面も大きく切り出したり削ったりする必要がありました.また内側も,フレームとの干渉のため,あちこち切ったり削ったりしなければなりませんでした.ここまでやってもフトントベゼルをフレームにきっちり固定することは難しく,結局ネジによる固定を諦め,(将来的にどうしても再分解する必要が生じたなら砕けばよいと考え)模型用のパテによる固定を行いました(FDDのフロントベゼルはABS樹脂のため,パテによる固定ができました).

なおフロントベゼルの同人ハードウェア作成を計画している方がいらっしゃるようです.またイジェクトレバーについては,既に3Dプリンタによる複製品が二箇所から販売されています(本ウェブページの方針により,直接の紹介はしません).


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