FD1155Dのメンテナンス


タクさんとtshさんより情報をいただきました.

FD1155Dは製造から長い時間が経過しており,現在不調となっているものが少なくありません.不調の原因は多々あると思われますが,ここでは簡単に対処できるものについて述べます.FD1157Dも同様の手続きでメンテナンスが可能です.なおFD1155DのジャンパスイッチについてはFD1155Dの信号コネクタのピンアサインを,テストピンの意味についてはDiary on wind --> NEC FD1155Dのテストピンと健全性チェック(2022年2月15日の記事)をそれぞれ参照して下さい.

※メンテナンス作業後にかえって調子が悪くなったとの報告を見かけます.原因は明らかではありませんが,一部は作業中にドライブに衝撃が加わったり,ヘッド付近に強い力が加わるなどした結果,ヘッドずれを起こしてしまったのかもしれません.FD1155Dはフレーム部分が肉厚の鋳造品(ダイカスト)であることもあって,全体としては頑丈な印象を与えますが,可動部は繊細であり,また経年劣化で部品の固定強度などが低下している可能性があります.FDDはあくまでも精密機器ですので,注意深くかつ丁寧に扱う必要があります.このことはあまり軽く考えない方がよいでしょう.

■ヘッドカバーの脱落
これは金属製のカバーをヘッドに取り付けているスポンジの経年劣化によるもので,ほぼ必発の不具合です.メディアが途中までしか挿入できなくなって気付かれることが多いようです.FDDのカバーを開けて脱落したヘッドカバーを取り出す必要がありますが,劣化してベトベトになった黒いスポンジによる汚れがヘッドとその付近に付着していることがあります(注1・2).その場合にはその汚れを丁寧に除去する必要があります.なお他の5インチFDDでもヘッドカバーの脱落が発生することがあります(注3).
 注1:筆者は余所でこの問題を指摘しているところを知りませんが,これは,劣化したスポンジが乾燥してあまりベタつかなくなっている場合が多いことと,劣化したスポンジによる汚れが付いたとしても軽微なものであることが多く,そのため気にされることが少ないからでしょう.しかし,外れたヘッドカバーが何らかの拍子に下側のヘッド部分に覆い被さったために,ヘッドに黒い汚れがべっとりと付いてしまっている個体に遭遇したこともありますので(これは,以前の所有者がその状態のままFDDのイジェクトレバーを回したために,ベトベトになったスポンジがヘッドの面に強く押しつけられたためかもしれません),ヘッドカバーの除去時には,この汚れのチェックも行っておくことをお奨めします.またPC-8801FAのFD-55BRでの事例ですが,ヘッドシーク用のレールにこびりついたスポンジの一部がヘッドの動作障害の一因となることもあるようです[UME-3さんの2024年1月28日のツイート(123)を参照].
 注2:スポンジの経年劣化によりヘッドカバーが脱落せず,逆にヘッドに固く貼り付いてしまうことも稀にあるようです.この場合,あまりに固く貼り付いているために,ヘッドカバーを取り外すとヘッド上部の銅板(?)も剥がれてしまうといいます(noconaさんの2021年7月22日のツイート を参照).
 注3:FD-55GFシリーズやFD-55BRでの報告を何度か目にしています(セケロズンダロメさんの2022年4月10日のツイート,UME-3さんの2024年1月28日のツイート を参照).また3.5インチFDDでもヘッドカバーが付いているものがあります.例えばエプソン98互換機のPC-286Cで使用されているMD3541やPC-486Pの一部で使用されているMD3541Nにもヘッドカバーが付いており,しかも経年劣化により脱落します(りっくす手記 --> レトロPCのFDDトラブル(2016年8月6日の記事) や おふがおさんの2021年11月11日のツイート を参照).外付け3.5インチFDDユニット(エース電子製AF-5S)のドライブ(ジェーピーエヌ製DS-53A)でも報告があります(試運転の資料館 --> 電算機部 --> FDD や端子などに関する雑記を参照).

筆者は通常の使用ではヘッドカバーを付け直す必要はないと考えます(注1・2).むしろ,ヘッドカバーが脱落していない個体であっても敢えてこれを撤去しておくべきであろうと思います.なおこのヘッドカバー(外側が鉄板で内側が銅板)は,VCCI等の規格を満たすために用意された電磁シールドではないかとのことです(PC-9821/9801スレッド Part45 の687-695番の投稿).
 注1:ヘッドカバーの取り付けに使用されているスポンジは,導電(製)スポンジのような特殊なものではなく,一般的なスポンジで代用可能との報告があります(注1.1).しかしヘッドカバーは電磁シールドを目的とする部品であり,電磁シールドにはアースが必要ですので(注1.2),ヘッドカバーの付け直し時に間に挟むものとしては,導電製を有する材料を使用した方がよいのかもしれません(注1.3).ヘッドへの負荷や振動の問題を考えると,重量のあるものや固いものはこの用途には適さないように思われますので,やはりスポンジ質の材料などを使用するのがよいのではないかと思います.
   注1.1:実際,ヘッドカバーはGNDを含むPC内部のどことも導通がないとの報告もあります[noconaさんの2021年7月22日のツイート(12)を参照].
   注1.2:村田製作所 --> 製品情報 --> ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ/ESD保護デバイス --> EMI除去フィルタ(EMC・ノイズ対策) --> ノイズ対策基礎講座 --> 第4章 空間伝導と対策,アスナロネット --> ▼Menu --> 電気、電器 --> 電磁シールド 等を参照.
   注1.3:ヘッドに直接ヘッドカバーを取り付けると,動作時にメディアを損傷してしまいますので,ヘッドカバーの付け直しを行う場合には,メディアをセットしてヘッドが降りた際にヘッドがメディアと接触しないように,ヘッドカバーとヘッドの間に必ず何かを挟む必要があります.挟み込むものは少なくとも5mm程度の厚さが必要なようです(CXさんの2023年11月24日のツイート を参照).挟み込むものとしては,わくわくWANILAND --> PC-98改造記録 --> 5インチFDDの修復 ではアルミテープが,またradioc.dat --> NEC PC-98 基本情報 書庫目録 --> NEC FD1155D(5.25インチFDD) では,銅箔テープがそれぞれ使用されています.筆者も名称・用途ともに不明な何かの切れ端を使用してこの工作を行ってみたことがあります.
 注2:一方で,ヘッドカバーを外すと,それまで正常に読めていたFDでリードエラーが発生する頻度が高まるとの報告もあります(【NEC】PC-9821/9801今はサブ5【98】 の326-330番の投稿,CXさんの2023年11月23日のツイート を参照).筆者自身はこの事実を確認できていません.
     ヘッドカバーの有無が特定のメディアからのデータの読み取りに悪影響を与えるのであれば,ヘッドカバーを除去したFD1155Dで市販のFD版ソフトウェアのマスターディスク(ユーザーがバックアップFDを作製する際のバックアップ元となるFD)の読み取りを行えば,読み取りエラーが生じると予想できます.マスターディスクはヘッドカバーがついているFDDでの読み取りを想定して製造されているはずだからです.しかし,筆者がヘッドカバーを除去したFD1155Dを用いて,Windows3.1,一太郎ver3.0,MS-DOS 5.0Aのマスターディスクの何枚かをdiskcopyコマンドで複写してみたところ,読み取りエラーの発生は確認できませんでした.指摘されている読み取りエラーが,環境に依存するものなのか,環境と無関係に確率的に発生する現象なのかは,今のところ明らかではありません.なお天板(トップカバー)のない古いタイプのドライブでは,使用環境によっては,ヘッドカバーがない状態だとヘッドが周囲からのノイズの影響を受けやすくなり,読み取りエラーが生じやすくなるということはあるかもしれません(外付けCD-ROMのスイッチング電源のノイズがFD1155Dの動作に及ぼす影響 を参照).
      ※sakohitiさんの2021年1月10日のツイートによれば,PC-9801VM21/VXのFD1155Dの初期ロット(およびPC-9801MのFD1155,PC-9801VM0/VM2/VM4のFD1155C)には天板がなく,ヘッドが露出した構造になっているため(注),ヘッドカバーを外してしまうとヘッドがノイズの影響を受けやすくなるとのことです.またダンプ目的での使用では,天板のあるFD1155Dでもスイッチング電源由来のノイズが悪影響を及ぼすことが報告されています(ちまちまさんの2019年4月16日のツイート を参照).
       注:これはヤフーオークションの出品物画像を調べることで確認しました.またVM時代のものとRA時代のもので天板の有無に違いがあることは,ヘキサ弟子丸のホームページ --> ★FD1155D(資料) でも早い時期から指摘されています.

■ヘッドの清掃
市販されていたクリーニングディスクによらず,綿棒等を使用して行うヘッドの清掃方法です.FD1155Dに限らず,古いFDDのヘッドは種々の原因により固定強度が低下している場合があり,慎重に作業しているつもりでも,クリーニング中にヘッドの位置をずらしたり破壊してしまう可能性がある(実際にはそう頻繁に起きるものでもないと思いますが)ことを覚悟しておく必要があります.

FDDの上側のカバーを外しただけではヘッドの清掃がしづらく,無理に作業を行うとヘッド付近を破壊あるいは変形させてしまう危険性があるため,さらに下図の3箇所のネジを外してフライホイール(スピンドル,回転円盤)基板を取り外します.


綿棒に少量の無水エタノール[エタノール(99.5%)]をしみ込ませ,ヘッドを軽く拭きます(注).エタノールはヘッド部分に使用されている接着剤を多少なりとも侵しますので,作業は十分に注意して行って下さい.またこの作業のついでに,FDD内部(メディアが格納される部分)の清掃を簡単にでも行っておくとよいでしょう.
 注:アルカリ電解水を用いてヘッドを清掃したところ,メディアを読まないFD1155Dが復活したの報告があります(kuran_kuranさんの2024年3月11日5月3日のツイートを参照).この場合,作業の仕上げとして純水を用いてヘッドを清掃した方がよいといいます(wildcatさんの2024年5月3日のツイート を参照).

なおヘッドまわりの故障(というよりはイジェクト機構の故障)には 動体保存ノウハウの83番の投稿のようなものもあるといいます.筆者はこの故障には遭遇したことがありませんが,めーちゃんさんの2019年1月3日のツイート(12)で,まさにこれに該当すると思われる事例が報告されています.

またこれも筆者は経験がありませんが,この周辺の可動部に塗布されているグリスが劣化して粘度が上がったり,可動部を固着させてしまう場合もあるといいます(sakohitiさんの2021年2月6日のツイートを参照).古いグリスは先端の平たいもので掬い取ったり拭き取ったりすることで大部分除去できますが,徹底的に除去したい場合にはブレーキクリーナー[ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8 など]を使用するとよいかもしれません[はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事)を参照].なおブレーキクリーナーによっては,洗浄液が気化熱を奪うために噴射された部品が急激に冷却され結露する(水浸しになる)場合がありますので,使用には注意して下さい.新たに塗布するグリスとしては,例えばタミヤ製の "セラグリスHG" などが評判がよいようです(かおる@ヤドンさんの2019年11月24日のツイート などを参照).シリコングリス(セラミックグリスより粘度が高い.呉工業のシリコングリースメイトはチューブ入りのペーストタイプと缶入りのスプレータイプあり)を奨める人もいます[kobefs@パソコンの人☆彡さんの2020年7月19日のツイート(12)などを参照].自転車用のSHIMANO製プレミアムグリスという選択肢もあります(かおるさんの2021年9月26日のツイート を参照).

■メディア内周部へのアクセスが悪い
メディアセット時に中央にある穴に上からはまる回転子のついたアーム状の金具に貼り付けられているスポンジが劣化すると,メディア内周部のアクセスが悪くなることがあるといます[ふぐのすけさんの2024年3月8日(12)・10日のツイートを参照].交換用スポンジには手芸用スポンジシートがよいといいます.PC-9821/9801スレッド Part99の54・84・85番の投稿も参照.

■メディアの排出が悪い
イジェクト時にメディアの出が悪い場合には,イジェクト機構のバネの力が弱っていることが考えられます.このバネは,和気産業(WAKI)製 ユニクロ 引きバネ SR-721(0.4×5×20mm)やTRUSCO(トラスコ)製 引張ばね ステンレス TESS77134(0.4×5.4×15.5mm)に交換できます[WIDENETさんの2021年6月23日のツイート(123)を参照].

■ヘッド動作時に特定の位置で出る異音
ヘッドに接続されているフレキシブルケーブルがメディアと接触している場合にこの症状が出るといいます(WIDENETさんの2021年6月23日のツイート を参照).しばしば遭遇する症状だそうで,筆者もこれに遭遇したことがあったのかもしれませんが,記憶にありません.

■モーター回転時の異音
モーターが回転している時にFDDが発する異音にも何種類かありますが,ここでご紹介するのは,メディアの読み書きには問題がないものの,何かが擦れるようなシャカシャカという音がする場合の対処例です.


異音の原因は,図のEリング(欠けたリングのようなパーツ)が付近のパーツと接触することのようです.このEリングが動かないようにすれば音は止まります.手っ取り早いのは,Eリングの下にある程度の厚さのプラスチック板や厚紙を挟むことです.なおFD1158C/Dでも同様の症状が出ることがありますが,その場合も同じように対処することが可能です.Eリングを撤去してM2.6のワッシャーをはめるのもよいといいます[holo@(´Д`)さんの2023年11月11日のツイート を参照].

■モーターへの注油
フライホイールのシャフトのネジは時計回り(右回り)に回せば緩みます.普通のネジと回す方向が逆ですので注意して下さい(注1).モーターへの注油が必要なケースは稀と思いますが,注油を行う場合には下の画像を参考にして下さい(注2).なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤 を参照).


 注1:いわゆる逆ネジ(左ネジ)が使用されています.これは他のFDDでも同じですHAMLIN's PAGE --> してはならないことをするとどうなるか も参照).フライホイールはFDDの底面側から見た場合に反時計回り(左回り)に回転しますが,その回転方向とネジの締まる方向とを揃えることで,締まったネジが緩まないようにするためでしょう.普通のネジと同じく時計回りに回すことは,破損の原因となるため禁忌です.
 注2:このようにコイルの電線を露出させる事態は好ましくないとも聞きます.FDDは弄る必要のないところは無理に弄らないのが無難です.

■電解コンデンサの交換
FD1155Dにはフライホイール基板の異なるロットが幾つもあります.ここでは例として6種類の画像を載せますが,(右側下段の画像はtshさんにいただいたものを加工しました),ウェブページやブログ,ツイッター,またオークションサイトに掲載された画像を見ると,これら以外のものも存在することが確認できます.


上図の左側の一番下とその上のもののように,電解コンデンサを持たないフライホイール基板のFD1155Dもありますが[後期ロットのものが該当(PC-9821/9801スレッド Part97の226番の投稿を参照)],多くのロット,特に製造年の古いものではこの基板上に表面実装型の電解コンデンサが取り付けられています.この電解コンデンサがしばしば液漏れを起こします.下図は電解液が漏れ出した様子です.このように電解液が漏れ出している場合には,付近の部品のハンダ部分の表面がくすんだ緑色あるいは白緑の粉を吹いたようになっているのが普通です(カビが生えたような感じと表現した方がわかりやすいかもしれません).


電解液は導電性の液体であり,また基板を腐食する性質を有しています.従って電解コンデンサが液漏れを起こしている場合には,早急に新しいものと交換し,また漏れ出した電解液を徹底的に除去する必要があります.前者にばかり気を取られがちですが,予後を考えると,後者の作業を疎かにすべきではありません.場合によっては,基板上の部品をハンダゴテを使って一旦取り外し,部品の下の基板を清掃する必要もあります.なおコンデンサの液漏れは目視で検出できるとは限りませんし,また液漏れしている場合でも,FDDの動作に不具合が認められない場合もあるので注意が必要です.電解コンデンサを交換に関しては,FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの修理マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換などの記事も参照して下さい.

下図は電解コンデンサを交換した後の 806-942443-GRP-0 というフライホイール基板の画像です(注1・2).


フライホイール基板上の表面実装型コンデンサは2個.元々実装されていたコンデンサは,下側の大きなものが25V-22μFで,上側の小さなものが25V-4.7μFでした.
 22μFの方は撤去しても47μFにしても動作に変化がないようでしたので,動作安定用(貧血防止用)と思われます.一方4.7μFの方は,撤去するとモーターが轟音を立てながら高速で回転し,メディアにアクセスできなくなりましたので,回転制御用かと思います(注3).これは同じ容量のものに交換すべきでしょう.
 注1:画像左上の青く四角い部品の右下にある銅色の放熱板(モーター駆動用ICに貼られたもの)が錆びていれば,漏れ出した電解液(多くは25V-22μFのもの)がこの部分にまで達してしまっています.この放熱板の下の基板清掃作業は大変ですが,丁寧かつ念入りに行う必要があります.
 注2:画像のフライホイール基板[シナノケンシ製 NK-32V-0 DR-9324- SHINANOKENSHI 806-942443-GRP-0]は,モーター駆動用ICに貼られている銅色の放熱板の異常発熱とモーター駆動用ICの動作異常が多いといいます(WIDENETさんの2022年12月25日のツイート を参照).放熱板が基板に対して斜めに取り付けられている基板で起きるといいます.なお筆者がが20年以上各種テストで使用しているFD1155Dはこのタイプのものです.
 注3:恐らく同じコンデンサと思いますが,これの劣化(容量減少?)により,書き込み時にデータ破壊が起きることがあるようです.モーターが正しく回転しなくなるためでしょう[asura.netPC-H98 Model90 (2014年5月1日の記事) を参照].

経年劣化(?)と恐らくは電解液の浸潤により,パターンの基板表面への接着が弱くなっており,想像以上にパターンが剥離しやすくなっています.また電解コンデンサ自体も,漏れ出した大量の電解液が固くこびりついているため,かなり外しにくくなっていることが少なくありません.このような状態の電解コンデンサを取り外す際には無理は禁物であり,注意深く慎重かつ丁寧に作業するようにして下さい.この種の作業は雑にやると大抵碌な結果になりません.

パターンを剥離してしまった場合,剥離部分と導通があるパターンを覆う絶縁皮膜をカッターの先端などで削って電解コンデンサを取り付けることになりますが,22μFの方は足の直下のパターンがその左右のパターンを繋いでいるため,剥離した場合にはジャンパする必要があります.

下の画像のケースでは,元々のコンデンサが取り付けられていたパターンが完全に剥離してしまったため,その箇所に抵抗の余分なリード線を利用したジャンパ線が取り付けられています.コンデンサの左の基板の穴の周辺の傷みが激しい(これは漏れ出した電解液の除去作業を行った後の画像です)ことからも,コンデンサの液漏れがかなりのものだったことが窺えます(注).この状態でも正常に動作はしましたが,ボロボロなパターンのかろうじて繋がっている部分を電流が流れるという心許ない状態ですので,ジャンパ線などにより傷んだ部分の補修を行っておくことが望ましいでしょう.
 注:この位置のコンデンサと思われますが,漏れ出した電解液により+12Vラインがショートし,制御基板がが焼損したという事例があります(WIDENETさんの2021年6月23日のツイート を参照).もっとも,漏出した電解液が原因で起きるこの種の事故はFD1155Dに限ったものでもないでしょう.


修理時の参考に,P/N 134-500207-808-0,フライホイール基板名 806-942443-GRP-0 のFD1155Dのフライホイール回転時(信号ケーブル不接続,通電しメディアを挿入しただけの事態)におけるフライホイール基板各部の電圧値を示します.電圧が安定しないポイントは,恐らくパルス信号が流れるためテスターでは正確に測定できないだろうということで,測定が省略されています.まりもさんがリサイクル掲示板2020年9月分過去ログの "NEC FD1155D スピンドルが回転しません" スレッドに投稿された画像を半分に縮小して線を一部上書きした後にjpg形式に再変換した画像を引用します.


※天板のない古いタイプのFD1155Dの基板名 806-942434-GRP-0 のフライホール基板では,ラジアルリード型(基板貫通型)のコンデンサが使用されており,コンデンサを交換するためにはこの基板を取り外す必要があるようです.取り外し方(上の"■ヘッドの清掃" の項に記載したのと同じ方法でできるようです)と使用されているコンデンサについては,きょろサンチームさんの2022年2月23(12345)・24日 のツイートを参照して下さい.

FDDの上側の面にも基板(VFOを含む制御基板)があり,そこにもいくつか電解コンデンサが載っています.それらはすべてリード線が基板を貫通するタイプで,やはり液漏れしていることがあります(注1).この基板にも何種類かあるようですが,型番はすべて等しく(G8ZKP,P/N 134-836020),筆者が下の三種類の基板についてテストした限りでは,相互に交換装着してもFDDの動作に変化は認められませんでした.なおG9(8ではありません)YZM,P/N 134-835941 や G9VLY,P/N 134-835279(注2) という制御基板も存在しますが、筆者は所有していません.
 注1:WIDENETさんの2020年7月4日のツイートによれば,1980年代に製造されたFD1155Dの制御基板の電解コンデンサのパターンは,+とGNDの位置を誤解しやすくなっているといいます.確かにツイートの画像を見るとそうなっています(きょろサンチームさんの2021年11月14日のツイートも参照).しかしわかりやすい位置に+の文字も印刷されており,少し気を付けて作業すれば,事故は十分に防げると思われます.筆者は結構な数の制御基板の電解コンデンサを交換してきましたが,この事実に気付いた記憶がありません.よほど注意していなかったのでしょう.
 注2:G9VLY制御基板で使用されているコンデンサに関する資料が,きょろサンチームさんの2022年2月2324日 のツイート に掲載されています.


この制御基板について,tshさんより以下の情報をいただいています(文章を改変してあります).

TSTジャンパスイッチのある長い基板のものはPC/ATAT互換機ではアクセスランプが点灯せず,TSTジャンパスイッチのない短い基板のものPC/AT互換機でもアクセスランプが点くようです.前者は1988年や1989年の個体が,また後者は1990年6月の個体が手元にあります.時期的にはRL21/51やDXが登場する少し前なので,このあたりの時期を境に基板が変更されたのかもしれません.
 追記:制御基板は二種類に大別でき,USEジャンパスイッチの設定によってアクセスランプの挙動が異なり,またRDジャンパスイッチ設定によって,FDX68を使用したディスクイメージのダンプ・リストアの可否に違いがあるとの報告があります[きょろサンチームさんの2022年1月19日のツイート(12345678910),redmax.arsさんの同日のツイート(12),ちま??ちまさんの同日のツイート を参照].これもこの件と関連する情報かもしれません[きょろサンチームさんのツイートでは,TSTジャンパスイッチのある制御基板を(2)と表記しています].


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■フロントベゼルの製作
以下はメンテナンスとは全く関係のない内容ですが,今のところ他に適当な場所もないのでここに載せておきます.

FD1155Dのフロントベゼルの製作方法が,試運転の資料館 --> 電算機部 --> 5.25 型 FDD のフロントベゼルを製作してみる で紹介されています.フロントベゼルの実物をシリコンで型取りしてレジンで複製した例もあります[南極 獅子さんの2022年3月11日のツイート(12)を参照].

また,ファイルベイに内蔵したフロントベゼルなしFD1155D用に製作された "フロントベゼル" の例を,ヤフーオークションの出品物に見ることができます.下はいずれも出品者IDがDesire_98の方の作品で,左がオークションIDがm51482863のPC-9821Xa7(2008年3月10日に落札)の商品説明画像から切り出して引用した画像です."フロントベゼル" はPC-9801RXなどのフロントパネルの下側のFDD開口部付近を切り出したものです.また右はオークションIDがf63334885のPC-9821Xe(2008年1月20日に落札)の商品説明画像から切り出したものですが,こちらはプラスチック板を加工したものです.この画像では少しはっきりしませんが,この出品者の方の他の同種の出品物の画像から推測すると,メディアの出し入れがしやすいように,真ん中あたりが左右より少し引っ込むように加工されているようです.


これらの "フロントベゼル" の固定方法については,FD1155Dの前面に貼り付けてあるといった説明がされていたと記憶していますが,具体的な方法は不明です.何らかの方法でフロントパネル側に固定することもできるかもしれませんが,試行錯誤的に位置の調整を行う必要があるように思えます.なお筆者もこれを真似てプラスチック板でフロントベゼルを何枚か作成しました.いずれもお世辞にも見映えが良いとは言えないものですが,2枚残っていましたので参考までに紹介します.1枚目の画像のものは多分最初に作成したもので,メディア挿入用のスリットとアクセスランプ用の穴を開けた不透明なプラスチック板の四隅にボルトとナットを取り付け,プラスチック板とナットとの間のボルトの軸の部分とFD1155Dのフレームに細い針金(被覆が緑色のもの)を絡めて固定するもので,FD1155Dに取り付けるためには天板の一部(フロントベゼルをネジ留めするための突起部分)を折り曲げる必要がありました.


2枚目の画像のものは,メディア挿入用のスリットを開けた半透明のアクリル板の上の両隅にFD1155Dのフロントベゼル固定用のネジ穴に固定するためのプラスチックアングルをネジ留めし,メディア挿入用のスリットの上下にメディアのガイド用のプラスチックアングルを貼り付けたものです(ガイド部分は奥行き7mm程度).アクセスランプに相当する位置のアクリル板は,裏から少し削って薄くしてあります(削らなければランプの光が十分透過しなかったのだろうと思います).画像右下に示すように,アクリル板は横から見た場合に少し斜めになるように(下側が奥に引っ込むように)固定用のプラスチックアングルの角度を調整して取り付けます.



同様の "フロントベゼル" を透明アクリル板で作成した例もあります.不透明な材料でなく透明な材料を使用したのは,アクセスランプ用の開口部を設けずにその点滅が確認できるようにするためでしょう.ヤフーオークションで出品者IDが yshnq423_0705,オークションIDが o374359451(2020年2月16日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを加工(元画像から切り出して2/3に縮小しjpg形式に再変換)した画像を引用します.本体はPC-9821Xa9です.


PC-98XAのFD1155CとFD1155Dのフロントベゼルは,正面から見るとそっくりですが,裏面の形状が全く異なるため,相互に交換装着できません(注).多数の箇所がフレームと干渉しますし,固定用のネジ穴の位置も全く合いません.筆者が故障したFD1155CのフロントベゼルをFD1155Dに取り付けた際には,縁の部分では,フロントベゼル下隅のネジ穴付近を大きく切り出した上で,ワイヤーでフレームに固定するための穴を開ける必要があり,また側面も大きく切り出したり削ったりする必要がありました.また内側も,フレームとの干渉のため,あちこち切ったり削ったりしなければなりませんでした.ここまでやってもフトントベゼルをフレームにきっちり固定することは難しく,結局ネジによる固定を諦め,(将来的にどうしても再分解する必要が生じたなら砕けばよいと考え)模型用のパテによる固定を行いました(FDDのフロントベゼルはABS樹脂のため,パテによる固定ができました).
 注:FD1155Dのフロントベゼルの形状は,天板の有無(VFOありFDDの外付け化を参照)によっても変わるようです(sakohitiさんの2020年12月29日2021年1月11日のツイートを参照).今思えば,PC-98XAのFD1155Cは古いタイプのもので,そのフロントベゼルもPC-9801DAなどのFD1155Dに適合するものとは異なる形状をしていたのかもしれません.

なお3Dプリンタによるフロントベゼルの同人ハードウェア作成を計画している方がおられましたが,しばらく続報がありません.現在は別なところから(これも一種の同人ハードウェアだろうと思うのですが)出ています.イジェクトレバーについては,筆者の知る限り,3Dプリンタによる複製品が同人ハードウェアとして何箇所からか出ています[使用上不可欠でかつ個人での作成が容易でない部品ですので,本ウェブページでも紹介します.ただ,FD1155Dのイジェクトレバーは,形状だけでなく,軸のはまる穴の部分の金属部品などの点で,異なる構造を持つものが複数あり(注),これらの複製品がどのFD1155Dにも適合するものなのか,購入していない筆者にはわかりません.またイジェクトレバーは使用時にかなり強い力の掛かる部品ですが,これらの複製品の強度や耐久性も,使用経験のない筆者にはわかりません].
 注:下の画像左がイモネジ(虫ネジ)でシャフトに固定するタイプのイジェクトレバーを持つFD1155Dの例(P/N 134-500207-808-0,DATE 1990.12)で,右が単にシャフトに差し込むタイプのイジェクトレバーを持つFD1155Dの例(P/N 134-500207-808-0,DATE 1988.7)です.手元のFD1157D(P/N 134-500391-001-0,DATE 1990.6)のイジェクトレバーも後者と同じタイプです.


    固定の仕方が異なるイジェクトレバーは形状もまた異なります.イジェクトレバーのタイプが異なれば,FDDの前面側の金具の形状も若干異なっており,適合するフロントベゼルの裏面の形状も異なります.これについてはnoconaさんの2021年7月24日のツイートを参照して下さい.

FD1155Dのレバーを自作した例があります.ヤフーオークションで出品者IDが softwaon,オークションIDが s1074638657(2022年12月07日に落札)の出品物の説明に使用されていたものを加工(元画像から切り出して2/3に縮小しjpg形式に再変換)した画像を引用します.


元々二つに分かれているプラスチック製の部品(具体的に何なのかは不明)をL字型に加工し,間に溝を掘ってそこにFD1155Dのイジェクトレバーのシャフトを挟み込んで部品同士をボルトで固定しているように見えます.耐久性などは不明ですが,かなり硬度のあるプラスチック部品を使用しているものと思われます.イジェクトレバーは,プラスチック部品の広い面同士を親指と人差し指で挟んで捻ることになるのだろうと思います.


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