FD1238Tの分解方法


ゴムベルト交換の下準備としてのFD1238Tの分解の手順です.FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法 の記事も参考にして下さい.作業はそれほど難しくないと思いますが,それでもFDDは精密機器であるということを念頭に置いて作業に取り組んで下さい.

FD1238Tの故障では,ゴムベルトの劣化と並んでヘッドの位置ズレもまた多いと言われています[筆者のところにもヘッドが位置ズレを起こしていると思われるFD1238Tが何台かあります.またこれはゴムベルトが使用されていない互換品であるTEAC製FD-05HGの方でより発生しやすいとも考えられています(筆者所有のFD-05HGもヘッドがズレてしまっているようです)].しかし,ヘッドの位置がずれてしまったFD1238T(に限らずFDD一般)をユーザーが修理することは不可能と考えた方がよいでしょう.FDDのヘッドの位置調整は極めて精密な作業であり,また専用の特殊な機材を必要としますので,我々素人の手に負えるものではありません.根気よく作業しているうちにたまたまうまくいくということはあるかもしれませんが,ヘッド位置のキャリブレーションの原理[高橋昇司 (1989). フロッピ・ディスク装置のすべて ――FDD全タイプの基礎から応用まで―― CQ出版 などを参照]を考えると,その確率は低いでしょう.ヘッドの位置がずれてしまったFD1238Tの修理は,FDDの修理を専門(の一つ)とする業者に依頼するしかないでしょう.


■天板を外す
天板は4本のネジで固定されています.前方の2本のネジは短く,後方の2本には長いネジが使用されています.



■フラップ(シャッター)を外す
フラップのばねはメディア格納部上部の金属板(正式名称はカセットホルダ)に引っかかっています.フラップは少したわめるようにして外します.このFDDのフラップは弾性が高く,筆者はこれまでこの外し方をして折ってしまったことはありません.ただ,紫外線等によりプラスチックが劣化している場合は折れることもあるかもしれませんので,フラップのはまっているシャーシの開口部を左右に拡げるようにして外した方がより安全かもしれません.この時ばねを飛ばしてしまわないよう気を付けて下さい.なお,ばねは短い側(下図の上に伸びている側)がフラップの裏側にかかるようにセットされています.外す前にかかり方をよく確認しておいて下さい.


■メディア格納部上部の金属板を外す
メディア格納部上部の金属板は4本のネジで固定されています.このネジは天板の前方を固定している短いネジと若干異なっています.なお下の画像ではイジェクトボタンが外されていますが,これは外す必要はありません.


この金属板を外す場合には,FD1138TやFD1231Tとは異なり,イジェクトボタンのはまる突起をFDDの内側に押し込む必要はありません.ヘッドの両脇の突起に指をかけ,ヘッドを持ち上げながらこの金属板を外します.ヘッド自体に指を接触させないように注意して下さい.この金属板を外すとヘッドが上下で接触しますので,ヘッドにはあまり良くないのかもしれません(これまで壊したことはありませんが).ティッシュペーパーを折り畳んだものでも挟んでおくとよいかもしれません.

ゴムベルトの交換(注1,注2)を目的とする場合には,これ以上の分解は行わない方が無難でしょう.組み立て直してもほぼ確実に正常動作しなくなってしまいます[各社FDD修理いたします/FD1238T/FD-235GF というブログ(閉鎖されました)の2012年2月13日の記事,PC-98のFD1238Tでお困りの方は多いですね などを参照(注3)].

■内部の様子
右後ろ隅(画像右下)にモーターがあり,それがゴムベルトによってターンテーブルを回転させるようになっています(このような構造のFDDはベルトドライブと呼ばれます).
 ヘッド右の面実装型電解コンデンサは16V-22μFのものでした.


ゴムベルト交換はこのモーター部分のネジ(2個)を外して行います.交換用ゴムベルトについては,試運転の資料館 --> 電算機部 --> FDD のゴムベルト一覧 等をご覧下さい(この記事は是非全体を読んで下さい).なおゴムベルトは未使用でも様々な原因により時間とともに劣化が進行するため,長期間保管しておいたものを使用することはよくありません(まどちん●さんの2019年4月15日のツイート を参照).

このゴムベルトの交換にはコツが要ります.輪ゴムほど伸縮性は大きくなく,厚みがあるため必ずしも扱いやすいものではありませんので,交換作業は慎重に行って下さい.またターンテーブルの縁も欠けやすいので,作業時には気をつけて下さい.
 ※最近は,交換用ベルトとして日清紡テキスタイル株式会社の開発した "モビロンバンド" を使用するケースも増えているようです.これを使用したベルト交換作業の様子を撮影した動画も公開されています.筆者は使用したことがありませんが,ポリウレタン製のベルトであり,通常のゴムベルトと若干特性が異なるようです(BlueSkyLaundry2さんの2019年6月1日のツイート などを参照).

注1:tshさんより,動作不良のFD1238Tでゴムベルトを交換しても改善が見られないのは,初期型のものに目立つとの情報をいただきました.HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 によれば,PC-98用のFD1238TにはP/Nの異なるものが3種類確認されています.
   (1) P/N 134-506792-007-0 …… PC-9821Lt2・Ne3・Nb7・Nb10・Na12・La10などで使用
   (2) P/N 134-506792-008-0 …… PC-9821Nr13・Nr15・Nr150・Nw133・La13などで使用
   (3) P/N 134-506792-108-0 …… PC-9821Ls12/13/150のファイルベースで使用
 このうち初期型とは,PC-9821Lt2・Ne3・Nb7・Nb10・Na12・La10などで使用されている,P/N 134-506792-007-0 のものが該当すると思われます.実際,Nb7などのFD1238Tでは,(交換前の状態は不明ながらも)ヘッドの清掃とゴムベルトを交換後に動作に不具合が観察される(1.44MBメディアが読めない,1.25MBメディアへの書き込み時に修復不可能なスキップセクタが発生する等)ケースが報告されています.今のところデータは十分ではありませんが,初期型のFD1238Tでは,ディスクの回転制御システム等が不調になりやすい可能性があります.


注2:注1の問題との関連は不明ですが,潤滑の低下によるモーターの負荷の増大が動作不良の原因となっている場合があるようです.この場合はゴムベルトの交換に加えて,軸受け部分への注油の必要もあります(PC-9821/9801スレッド Part84の157番の投稿 を参照.


注3:これはあるFDD修理業者の方の宣伝用ブログの記事ですが,同じブログの La用 FD1238Tの修理(2013年4月18日の記事)FD1238Tのゴムベルト交換(2013年6月15日の記事) とともに,多く素人であるユーザー自身が,FD1238Tの修理,特にゴムベルトの交換作業を行うことに対する修理業者サイドの見解の一つの例が示されていると見ることができます.

素人であるユーザー自身がFD1238Tを入手し,ゴムベルトの交換などの修理を試みることに関して,不快感を露わにしながら,ある種の態度で繰り返しコメントされています(一種の牽制も含んでいると見ます).素人の営みなど,その道の専門家からすれば所詮児戯に等しいでしょうから,なぜプロの修理業者の方が,法に触れるわけでもなく,また社会的な倫理に悖るわけでもないはずの素人によるFD1238Tの修理の真似事などをこれほど気にされるのか,随分と不思議な感じがします.とは言え,FD1238Tは生産が疾うに終了し,今後メーカーから新たに供給されることはありませんので,素人に購入されてしまうとご自身の入手機会が減る,素人自身に "修理" を行われてしまえば修理依頼が増えない,といった業務上の事情や,素人の活動のレベルの低さを指弾することによりプロの仕事のレベルの高さが一層強調されるといった宣伝上の戦略があることは考えられなくもなく,また何より,理想的な "純正同等の平ベルト" よりも入手は比較的容易であるものの,用途を考えるとグレードは大きく落ちると言わざるを得ない汎用角ベルト(注3.1)を用いた素人 "修理" が,それなりの[と申しておきましょう(注3.2)]成果を上げているという忌々しい事実なども考えてみれば,お気持ちはある程度理解できるようです.しかしそうであっても,やはり素人が自分のために行う修理,およびそれに付随する活動を,一部の(でしょう)修理業者の方々が目の敵にされるのは全くお門違いです.
  注3.1:素人の行うFD1238Tの修理において現在広く利用されているであろう汎用角ベルトの規格は,有志の方々による試行錯誤の末に割り出されたものです(その際には,以前より蓄積されていたMSX用FDDのゴムベルト交換に関する知見も活用されたものと思います).絞り込みの過程の中で相当数の不適合事例も報告されています.手元にあるものを試しに取り付けてみたら取り敢えず使えたなどといった,いい加減なレベルで選定されたものではありません.また交換用の汎用角ベルトが持ついくつかの問題点も,実際の使用経験を通じて炙り出されています.ところで,FD1238Tの交換用ベルトとして角ベルトと思われるゴムベルト(細かな規格は不明)を使用されている修理業者(PCの修理以外にも多角的な営業を行われている業者)もいらっしゃるようです[ベルトの拡大図(右上のものが交換用のゴムベルト)].修理件数などは明らかではありませんが,興味深く思います.このような例を見ると,FD1238Tの修理をされている他の業者の方々がどのようなゴムベルトを使用されているのかも気になります.
  注3.2:経験上,ゴムベルト交換によるFD1238Tの再生の成功率を三割程度としている方もいらっしゃいます[wildcatさんの2019年8月14日のツイート(12)などを参照].筆者の経験では成功率はもう少し高いようにも思いますが,これは筆者がたまたま状態の良いFD1238Tに当たることが多かったためかもしれません.ツイッターでも修理成功事例と並んで失敗事例も少なからず報告されており,現在では,ジャンクのFD1238T,あるいはジャンク扱い等の本体に内蔵されているFD1238Tの中には,ベルト交換程度では直らないほど状態の悪いものがかなり含まれているものと思われます.また上で指摘した "初期型" の問題にも注意すべきでしょう.

素人である我々ユーザー自身が修理を試み,幾分なりとも成果を上げているということに対して,修理業者(もしくはその周辺の人々)の中には強い不満を感じておられる方もいらっしゃるようですが,それに対して我々には何の責任もありません.この件に関して,我々が修理業者の方々に忖度した活動を求められる理由など何もありません.そもそも我々素人サイドにおけるFD1238Tの修理の試みは,筆者の知る限り,修理業者の方々のお仕事とは全く独立に始められ,かつ進められたものです.例えばゴムベルト交換に関して言えば,その手法が有志の方々の努力により確立され(筆者自身はこれに全く寄与していませんが),いくつかのウェブページに具体的な詳しい記事が掲載され,その内容がユーザーの間で知られるようになってからある程度経った後に,多くの修理業者の方々のウェブページやブログに,業務内容の一つとしてFD1238Tのベルト交換サービスの項目が追加されるようになったと記憶しています.これは勿論プロの方々が素人の活動を後追いしたなどという意味で言っているのではありません.この時間的な前後関係は単なる偶然によるものでしょう.ここでは,我々素人サイドは早い時期から自主的・自発的に動いていたという事実を指摘するとともに,それを強調しておきたいと思います.


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