FD1238Tの分解方法


ゴムベルト交換の下準備としてのFD1238Tの分解の手順です.FD1138T・FD1148T・FD1138C・FD1138Dの分解方法 の記事も参考にして下さい.互換FDD(注)であるTEAC製FD-05HG(ラベルにはFD1238Tの型番が併記されている場合もあります)の場合と異なり,分解作業はそれほど難しくないと思いますが,それでもFDDは精密機器であるということを念頭に置いて作業に取り組んで下さい.
 注:HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 を参照.このうちFD1238TとFD-05HGは長さが同じですが,CITIZEN製W1Dは長さが1cmほど短くなっています(bax01aさんの2021年5月23日のツイート を参照).W1DはD1238TやFD-05HGとコネクタの向き(ピンアサインではありません)も異なります.

FD1238Tの故障では,ゴムベルトの劣化と並んでヘッドの位置ズレもまた多いと言われています(注1).しかし,ヘッドの位置がずれてしまったFD1238T(に限らずFDD一般)をユーザーが修理することは無理と考えてしまった方がよいでしょう.FDDのヘッドの位置調整は極めて精密な作業であり,また専用の特殊な機材を必要としますので,我々素人の手に負えるものではないでしょう(注2・3).根気よく作業しているうちにたまたまうまくいくということはあるかもしれませんが,ヘッド位置のキャリブレーションの原理[高橋昇司 (1989). フロッピ・ディスク装置のすべて ――FDD全タイプの基礎から応用まで―― CQ出版 などを参照(注4)]を考えると,一般にその確率は低いでしょう.ユーザーが自らヘッドの位置調整を試み,"うまくいった" とする報告も稀にありますが,"ある程度はメディアの読み書きができるようにはなったものの,完全ではない" とする報告も多くあります.ヘッドの位置がずれてしまったFDDを修理したければ,FDDの修理を専門(の一つ)とする信頼できる業者に依頼するのが一番ということになるかと思います(注5・6).
 注1:ヘッドの位置ズレは,ゴムベルトが使用されていない互換品であるTEAC製FD-05HGの方でより発生しやすい(振動の影響を強く受けやすいため?)とも考えられています(注1.1・1.2・1.3・1.4).なおCITIZEN製W1Dでもゴムベルトが使用されています.
    注1.1:PC-9821/9801スレッド Part85の421番の投稿も参照.
    注1.2:ゴムベルトが使用されているFD1238Tでもヘッドの位置ズレはよく起きるとの報告もあります(てんまにちゃんさんの2021年5月8日のツイート を参照).ゴムベルトが切れたまま長期間通電したFD1238Tのヘッドは故障あるいは位置ズレを起こしていることが多いとの見解(推測と理解すべきかもしれません)もあります(つねごんさんの2021年5月8日のツイート を参照).
    注1.3:FD-05HGでは,ヘッドの位置ズレの他に,ヘッドを移動させる機構の経年劣化もあるといいます(sakohitiさんの2021年5月14日のツイート を参照).但し長期間の使用により正常なメディの読み書きができなくなる症状の原因は,十分に特定されていないとの見解もあります(試運転の資料館 --> 電算機部 --> FDD や端子などに関する雑記 を参照).
    注1.4:FD-05HGの故障としては,ヘッドを移動させるモーターの劣化(内部が錆びるなどして動きが悪くなる)に起因するものも報告されています[Flyingharuka@Genshin中国鯖さんの2021年11月1日のツイート(123)を参照].
 注2:岩崎浩文さんの2023年8月17日のツイート(12)も参照.
 注3:標準ディスク(基準ディスク,副標準FD)の保管の問題一つ取ってもこの通りです:産業技術史資料センター --> 嘉本秀年 (2021). フロッピーディスクとドライブの技術とビジネス発展の系統的調査 技術の系統化調査報告共同研究編第14集, 1-108. の93ページ(この箇所の執筆舎は高橋昇司氏).
 注4:実際の作業では,例えばSACシステムアート --> 製品案内 --> FDD AL TESTER F-1600-1 にあるような専用の装置と副標準FDという専用のFDを使用するようです.高橋直紀・佐々木博康・和田雄二 (1998). ねじ締めによる位置ずれの低減方法とFDDヘッド調整締結装置 精密工学会誌, 64(3), 389-393. なども参照して下さい.
 注5:FD1238Tにはステッピングモーターの位置ズレという故障もあるようです(糸屋大誤朗さんの2020年7月15日のツイートを参照).これの修理も素人の手に負えるものではないでしょう.
 注6:ダメで元々という覚悟で,かつ100kHzの信号が出力できる機器(ファンクションジェネレータなど)やオシロスコープが利用できる環境で復旧を試みる場合には,CXさんの2024年1月21日のツイート(123456)が参考になるかもしれません.また0トラック不良のFDDの復旧は,CXさんの2024年1月29日のツイート(123456)を参照.



■天板を外す
天板は4本のネジで固定されています.前方の2本のネジは短く,後方の2本には長いネジが使用されています.



■フラップ(シャッター)を外す
フラップのばねはメディア格納部上部の金属板(正式名称はカセットホルダ)に引っかかっています.フラップは少したわめるようにして外します.このFDDのフラップは弾性が高く,筆者はこれまでこの外し方をして折ってしまったことはありません.ただ,紫外線等によりプラスチックが劣化している場合(現在は多いと思われます)には折れることもあるかもしれませんので,フラップのはまっているシャーシの開口部を左右に拡げるようにして外した方がより安全でしょう.この時ばねを飛ばしてしまわないよう気を付けて下さい.なお,ばねは短い側(下図の上に伸びている側)がフラップの裏側にかかるようにセットされています.外す前にかかり方をよく確認しておいて下さい.


■メディア格納部上部の金属板を外す
メディア格納部上部の金属板は4本のネジで固定されています.このネジは天板の前方を固定している短いネジと若干異なっています.なお下の画像ではイジェクトボタンが外されていますが,これは外す必要はありません.


この金属板を外す場合には,FD1138TやFD1231Tとは異なり,イジェクトボタンのはまる突起をFDDの内側に押し込む必要はありません.ヘッドの両脇の突起に指をかけ,ヘッドを持ち上げながらこの金属板を外します.ヘッド自体に指を接触させないように注意して下さい.この金属板を外すとヘッドが上下で接触します(手が滑るとバチンと衝突させてしまいます)ので,ヘッドにはあまり良くないのかもしれません(これまで壊したことはありませんが).ティッシュペーパーを折り畳んだものでも挟んでおくとよいかもしれません(注).
 注:これに関して気になる見解があります.ヘッド付近の構造から見て,この金属板を外すことでヘッドズレが生じるのではないかというものです[び・びっと98さんの2020年11月30日のツイート(123) と のびっこさんの2022年10月2日5日・9日(12345)・10日 のツイートを参照].但し筆者個人としては,これを原因としたヘッドズレのケースはなかったように思います.てんまにちゃんさんの2020年11月30日のツイート(12)も参照.この金属板を外してゴムベルト交換を行っても動作に問題が認められなかったケースは実際に多く報告されていますが,この金属板を外すことでヘッドがズレる(あるいは有意なズレを生じる)個体では,外す前からヘッド付近に緩み(?)などがあったという可能性はないのでしょうか.また現在はヘッドまわりの状態の悪い個体が増えており,金属板を外した際にヘッドズレを起こしやすくなっているという可能性はないのでしょうか.

ゴムベルトの交換(注1・2)を目的とする場合には,これ以上の分解は行わないのが無難でしょう.組み立て直しても,ほぼ確実に正常動作しなくなってしまいます.特に底面にあるターンテーブルの3箇所の固定ネジは緩めるだけでも危険です[各社FDD修理いたします/FD1238T/FD-235GF(閉鎖されました)のPC-98のFD1238Tでお困りの方は多いですね(2012年2月13日の記事)を参照(注3)].メディアの読み書きができなくなった個体でこれらの固定ネジを緩め,ごくわずかターンテーブルの位置をずらすと,メディアの読み書きができるようになったとの報告がありますが[パペットさんの2021年10月10日のツイート,つねごんさんの2023年7月8日のツイート(12345),takahiroさんの同日のツイート を参照],運の良いケースなのでしょう(本記事冒頭を参照).

■内部の様子
右後ろ隅(画像右下)にモーターがあり,それがゴムベルトによってターンテーブルを回転させるようになっています(このような構造のFDDはベルトドライブと呼ばれます).
 ヘッド右の表面実装型電解コンデンサは16V-22μFのものでした.


ゴムベルト交換はこのモーター部分のネジ(2個)を外して行います.交換用ゴムベルトについては,試運転の資料館 --> 電算機部 --> FDD のゴムベルト一覧 等を参照して下さい(この記事は是非全体を読んで下さい).ターンテーブルの回転数が安定するように,緩すぎずキツ過ぎず,また伸縮性も大きすぎず小さ過ぎもしない,ターンテーブルの溝に密着するベルトを選択する必要があるようです(おふがおさんの2020年12月21日22日26日のツイートも参照).なおゴムベルトは未使用でも様々な原因により時間とともに劣化が進行するため,長期間保管しておいたものを使用することはよくありません(まどちん●さんの2019年4月15日のツイート を参照).
 2023年11月1日・23日追記:2023年現在流通しているφ70のゴムベルトは使用できないとの報告があります(PC-9821/9801スレッド Part96の955番の投稿を参照).それ以前でも(?)φ70×0.95tの角ゴムベルトは使用できなかったとの報告もあります(つねごんさんの2023年11月22日のツイート を参照).なお筆者が以前FD1238Tの修理に使用していたゴムベルトはこのサイズのものだった筈(このサイズを指定して代理購入して貰った筈)です.

このゴムベルトの交換にはコツが要ります.輪ゴムほど伸縮性は大きくなく,厚みがあるため必ずしも扱いやすいものではありませんので(※・※※),交換作業は慎重に行って下さい.またターンテーブルの縁も欠けやすいので(※※※),作業時には気をつけて下さい.
 ※最近は,交換用ベルトとして日清紡テキスタイル株式会社の開発した "モビロンバンド" を使用するケースも増えているようです.これを使用したベルト交換作業の様子を撮影した動画も公開されています.筆者は使用したことがありませんが,ポリウレタン製のベルトであり,通常のゴムベルトと若干特性が異なるようです(BlueSkyLaundry2さんの2019年6月1日のツイート などを参照).なにもしない研究所@牛乳は毒物か人体実験中モビロンバンド(2019年11月23日の記事) によれば,FD1238Tのゴムベルトをこれに交換したところ,7年後でも全く劣化が見られず,動作も問題なかったといいます.但し当該FD1238Tの使用状況(使用頻度など)は明らかではありません.一方で耐久性の点から,FDDの交換用ベルトとしてこれを選択することには否定的な見方もあります[Hirofumi Iwasaki / 岩崎浩文さんの2020年9月9日のツイート,redmax.arsさんの2022年10月27日のツイート(12),第三研究所@TRISSさんの2023年5月25日のツイート などを参照].FDDのベルトに関する話ではないようですが,モビロンバンドを使用したもの(ゲーム機のCD-ROMドライブ?)では回転ムラが多いとの報告もあります[かべきん (KbKz)さんの2022年4月23日のツイート を参照].上でも少し挙げましたが,2022年になってから,ツイッターでは,FDDの話題に限らずゴムベルトの代替品としてのモビロンバンドの使用に関して,自らの経験に基づいた否定的な見解が目に付くようになったと感じます.なお他にゴムベルトの代替品として熱収縮チューブを使用する試みも始まっています.長期の継続使用の可否に関しては今後の報告を待つことになります[おふがおさんの2020年8月28日・29日(123)・10月19日・12月26日(12)・2021年8月24日(12)のツイート,つねごんさんの2020年12月29日のツイート,てんまにちゃんさんの2020年12月30日のツイートを参照].交換用のゴムベルトの材料としては,ホームセンターで売られているゴム(筒状/ホースのものでしょうか)の報告もあります(つねごんさんの2021年9月22日のツイート を参照).
  ※※:ゴムベルトの厚さが異なれば,その分だけギア比が変わり,ターンテーブルの回転速度も変わってくるため,厚さの異なるゴムベルトに交換した場合には,データの書き込み時に不具合が出る可能性があるとの指摘があります(リサイクル掲示板2021年12月過去ログの 汎用スレッド2021年12月 パート1 スレッド を参照).
  ※※※このターンテーブルの材質はマグネットシート(ゴム磁石)のようです.ゴム製のため摩耗もしやすいといいます.[bax01aさんの2021年5月21日のツイート(12) を参照].

注1:tshさんより,動作不良のFD1238Tでゴムベルトを交換しても改善が見られないのは,初期型のものに目立つとの情報をいただきました.HAMLIN's PAGE --> FDD関係 --> FDD_1 PC-9821・9801・PC98-NX・PC/AT互換機用3.5インチFDDの互換性一覧表 によれば,PC-98用のFD1238TにはP/Nの異なるものが3種類確認されています.
   (1) P/N 134-506792-007-0 …… PC-9821Lt2・Ne3・Nb7・Nb10・Na12・La10などで使用
   (2) P/N 134-506792-008-0 …… PC-9821Nr13・Nr15・Nr150・Nw133・La13などで使用
   (3) P/N 134-506792-108-0 …… PC-9821Ls12/13/150のファイルベースで使用
 このうち初期型とは,PC-9821Lt2・Ne3・Nb7・Nb10・Na12・La10などで使用されている,P/N 134-506792-007-0 のものが該当すると思われます.実際,Nb7などのFD1238Tでは,(交換前の状態は不明ながらも)ヘッドの清掃とゴムベルトを交換後に動作に不具合が観察される(1.44MBメディアが読めない,1.25MBメディアへの書き込み時に修復不可能なスキップセクタが発生する等)ケースが報告されています.今のところデータは十分ではありませんが,初期型のFD1238Tでは,ディスクの回転制御システム等が特に不調になりやすい可能性があります(注1.1・1.2).
  注1.1:2020年の時点で,初期型以外のFD1238Tでも調子の悪い個体が増えてきているようです.
  注1.2:製造時期の問題とは別に(?),長期間使用されていなかったFD1238Tでは,経年劣化のためにターンテーブルの軸が傾いているものが多く,結果的に軸の回転に対する抵抗が大きくなるために,ゴムベルトを交換しても動作に改善がみられないものが多いとの指摘もあります(つねごんさんの2020年12月31日のツイート,wildcatさんの2023年11月23日のツイート を参照).またゴムベルトが溶けて切れている個体(これは長期間使用されていなかったものと考えることもできそうです)はゴムベルトを交換するなどしても大抵は直らないといい[つねごんさんの2021年9月21日2023年11月23日のツイート,wildcatさんの2023年11月23日のツイート(12)を参照],逆に,使用可能なPC本体に装着され使い続けられていたと推測される個体は修理に成功しやすいといいます(つねごんさんの2021年9月22日のツイート を参照).

注2:注1の問題との関連は不明ですが,潤滑の低下によるモーターの負荷の増大が動作不良の原因となっている場合があるようです(注2.1).この場合はゴムベルトの交換に加えて,軸受け部分への注油の必要もあります(PC-9821/9801スレッド Part84の157番の投稿 や げしょさんレトロ垢さんの2021年9月15日のツイート を参照.のびっこさんの2022年10月6日のツイート も関連する報告かもしれません).なお筆者は行ったことがありませんが,通常のメンテナンスの作業の一つに,ターンテーブルの軸部分とターンテーブル脇のローラー(直上の画像では,ターンテーブルの右下にある薄茶色の円形の部品)の軸部分への注油を加えてもよいでしょう[wildcatさんの2020年3月26日のツイート(12)を参照].
  注2.1:FD1238T自体の問題でなく,フィルムケーブル部分の劣化(?)が原因で動作不良が起きる場合もあるようです(つねんごんさんの2021年9月20日のツイート を参照).

注3:これはあるFDD修理業者の宣伝用ブログの記事ですが,同じブログの La用 FD1238Tの修理(2013年4月18日の記事)や FD1238Tのゴムベルト交換(2013年6月15日の記事) とともに,多く素人であるユーザー自身が,FD1238Tの修理,特にゴムベルトの交換作業を行うことに対する修理業者サイドの見解の一つの例が示されていると見ることができます.

素人であるユーザー自身がFD1238Tを入手し,ゴムベルトの交換などの修理を試みることに関して,不快感を露わにしながら,ある種の態度で繰り返し発言されています(これには一種の牽制も含んでいると見ます).素人の営みなど,その道の専門家からすれば所詮児戯に等しいでしょうから,法に触れるわけでもなく,また社会的な倫理に悖るわけでもないはずの[NECは修理を含め "改造" に当たる行為をユーザーに禁じていましたが,PC-98は既にNECによるサポートも修理受付も終了しておりますので,この "縛り" は現在では無効です.修理業者の方々(の多く)もNECから認可を受けてPC-98とその関連品の修理を行っているのではない筈です],素人による自身の所有するFD1238Tの修理の真似事などを,修理のプロフェッショナルの方がなぜこれほどまで気にされるのか,随分と不思議な感じがします.とは言え,FD1238Tは生産が疾うに終了し,今後メーカーから新たに供給されることはありませんので,これらのコメントの背後には,素人などに購入されてしまうとご自身の入手機会が減る,素人自身に "修理" を行われてしまえば修理依頼が増えない,といった営業上の事情や,素人の活動のレベルは低いという分かり切った事柄をわざわざ指弾することによって,プロのお仕事のレベルの高さが一層強調されるという対比効果を狙った宣伝上の戦術があると考えられなくもなく,また何より,理想的な "純正同等の平ベルト" よりも入手は比較的容易であるものの,用途を考えるとグレードは大きく落ちると言わざるを得ない汎用角ベルト(注3.1)を用いた素人 "修理" が,それなりの[と申しておきましょう(注3.2・3.3・3.4)]成果を上げているという忌々しい事実があることなども考えてみれば,お気持ちはある程度理解できるようです.しかしそうであっても,やはり素人が自分のために行う修理,およびそれに付随する活動を,一部の(でしょう)修理業者の方々が目の敵にされるのは全くお門違いです.
  注3.1:素人の行うFD1238Tの修理において現在広く利用されているであろう汎用角ベルトの規格は,有志の方々による試行錯誤の末に割り出されたものです(その際には,以前より蓄積されていたMSX用FDDのゴムベルト交換に関する知見なども活用されたかもしれません).絞り込みの過程の中で相当数の不適合事例も報告されています.手元にあるものを試しに取り付けてみたら取り敢えず使えたなどといった,いい加減なレベルで選定されたものではありません.また交換用の汎用角ベルトが持ついくつかの問題点も,実際の使用経験を通じて炙り出されています.ところで,FD1238Tの交換用ベルトとして角ベルトと思われるゴムベルト(細かな規格は不明)を使用されている修理業者(PCの修理以外にも多角的な営業を行われている業者)もいらっしゃるようです[ベルトの拡大図(右上のものが交換用のゴムベルト)].修理件数などは明らかではありませんが,興味深く思います.このような例を見ると,FD1238Tの修理をされている他の業者の方々がどのようなゴムベルトを使用されているのかも気になります.なおゴムベルトの厚さがターンテーブルの回転速度に及ぼす影響については,上の※※を参照して下さい.
  注3.2:経験上,ゴムベルト交換によるFD1238Tの再生の成功率を二~三割程度としている方もいらっしゃいます[wildcatさんの2019年8月14日(12)・2023年11月23日のツイートなどを参照].ゼロとの報告(8台中0台)さえあります[てんまにちゃんさん の2020年5月27日のツイート(12)を参照(注3.2.1・3.2.2).またPC-9821/9801スレッド Part85の410・420・421番の投稿も参照].筆者の経験では成功率はもう少し高いようにも思いますが,これは筆者がたまたま状態の良いFD1238Tに当たることが多かったためかもしれません.ツイッターでも修理成功事例と並んで失敗事例も少なからず報告されており,現在では,ジャンクのFD1238T,あるいはジャンク扱い等の本体に内蔵されているFD1238Tの中には,ベルト交換程度では直らないほど状態の悪いもの(ヘッドの位置ズレやターンテーブルの破損を起こしているものも含む)がかなり含まれているものと思われます.また上で指摘した "初期型" の問題にも注意すべきでしょう.こういった報告が増えてきているのを見ると,ゴムベルトの交換によるFD1238Tの修理も,そろそろ有効期限が切れて来たかとも思えてきます(注3.2.3).
      注3.2.1:すべてのFD1238Tが,ディスクの回転が速くなったり遅くなったりを繰り返すようになるといいます(てんまにちゃんさんの2020年10月19日のツイート を参照).
      注3.2.2:その後13台中12台が復活せず,残り1台も1.25MBメディアが読み込めたのみという成績となったといいます(てんまにちゃんさんの2021年7月4日のツイート を参照).さらに別の5台も復活しなかったといいますので(てんまにちゃんさんの2021年9月19日のツイート を参照),ゴムベルト交換で直ったものはおよそ20台中1台もなしとの結果になっています.
      注3.2.3:一方で,2021年になっても,ゴムベルト交換等の措置により復活したとのツイートをいくつか確認しました.筆者のところでもゴムベルトの再交換を行ったものと新たに入手したもの計3台のうち2台が直りました【追記:うち一台は2023年に不調となりました.今となっては交換用のゴムベルトを新たに入手する気も起きず,また98ノート自体使用することも全くなくなったため,修理は断念しました】.3台中2台,次いで7台中7台,後にさらに2台中2台復活したとの報告さえ現れました(つねごんさんの2021年9月20日・21日26日 のツイートを参照).但し長期間安定動作が続くものかは今のところ不明です.
  注3.3:FD1238Tの不調が改善せず,交換用のFD1238Tも入手できないという場合には,多少面倒な工作が必要になりますが,FD1238T以外のFDDを外付けにするという選択肢もあります[PC-9821Nb7・Nr13等の外付けFDDユニットの結線PC-9821Nb7・Nr13等にFD1238T以外のFDDを接続するケーブルPC-9821La10の外付けFDDケーブルPC-9821La13の外付けFDDケーブルとFDDユニット内部結線PC-9821La10/La13のFDDユニットのFD1238TをFD1138Tで代替試運転の資料館 --> 電算機部 --> PC-9821 に 5.25 型 FDD を接続する(注3.3.1),PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(1)――FDDケーブル作製+偽READY信号生成スイッチ取り付け編――PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(2)――READY信号自動生成回路外付け編――PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(3)――制御基板改造編――FDDの信号レベルとターミネータの値 などを参照(注3.3.2・3.3.3・3.3.4)].
      注3.3.1:この記事はPC-9821Ls12のファイルベースのFD1238Tを対象としています.
      注3.3.2:PC-98のデスクトップ機にPC/AT互換機用の26ピンFDDを接続するための基板ですが,ETHYLE~1.SYSさんの2020年12月3日のツイート(12)にある "eFDD adapter PCB for PC-9821 Notebook (CN26P)" も参考になるでしょう).筆者は本注の執筆時にgoogleドライブにアクセスできず,内容を直接確認できていないため,このような書き方をしていますが,eFDD.zipに,プリント基板作成のためのデータ(.gbr),回路図らしきデータ(.sch),部品表(.csv)などが含まれているそうです.ウェブ検索すると,拡張子が.gbrのファイルも.schのファイルも,開く方法を見つけることができます.同じ方の2020年12月8日のツイート(12)にプリント基板の画像と動作確認(PC/AT互換機用のFD-05HGを接続)の様子が掲載されています.
      注3.3.3:リサイクル掲示板の "[664] AT互換機用FDDをPC-98に" スレッド(2009年2月.SPAMが猛威を振るっていた時期のスレッドであり,このスレッドを収録した過去ログは公開されていません)に,PnnBeeさんによる,MateNXノート機で使用されていたFD"3"238TがPC-9821Nmでそのまま使用できた(メディアのフォーマットも読み書きも可能)との報告があります.スリムFDDにはDISK CHANGE信号でなくREADY信号を使用しているものが多いとの話を耳にしたことがありますので(注3.3.3.1),このようなことがあっても不思議ではありません(FDD接続用フレキシブルケーブルにそのまま接続しただけのようですので,動作は恐らく1.44MBモードのみと思われます).
           注3.3.3.1:Lost Technology --> MSXにノートPC用スリムFDDを接続する(2016/07/09改訂)(2016年5月7日の記事)を見つけました.この記事にはREADY信号が出力されているスリムFDDのリストも掲載されており,そこにFD3238Tの名前もあります.PC-9821/9801スレッド Part96の298番と300番の投稿も参照.
      注3.3.4:スリムFDDであるY-E DATA製YD-702J-6637Jを改造したもの[PC/AT互換機用FDDのPC-98での使用(3)――制御基板改造編―― などを参照]などでFD1238Tを代替する場合には,取り付け先によっては,周囲との干渉を避けるためにFDDのフロントベゼルを外したり,一部を削ったりする必要があるようです.
  注3.4:汎用角ベルトに交換した場合,使用環境にもよるでしょうが,5年程度を目処に新しいものに交換するのがよいでしょう.なにもしない研究所@牛乳は毒物か人体実験中千石ベルトが。。。。(2019年11月23日の記事)によれば,7年保たなかったということですが,筆者の経験でも10年保ったケースはありません.

素人である我々ユーザー自身が修理を試み,幾分なりとも成果を上げているということに対して,修理業者(もしくはその周辺の人々)の中には強い不満を感じておられる方もいらっしゃるようですが,それに対して我々には何の責任もありません.この件に関して,我々が修理業者の方々に忖度した活動を求められる理由など何もありません.そもそも我々素人サイドにおけるFD1238Tの修理の試みは,筆者の知る限り,修理業者の方々のお仕事とは全く独立に始められ,かつ進められたものです.例えばゴムベルト交換に関して言えば,その手法が有志の方々の努力により確立され(筆者自身はこれに全く寄与していませんが),いくつかのウェブページに具体的で詳しい記事が掲載され,その内容がユーザーの間で知られるようになってからある程度経った後に,いくつかの修理業者のウェブページやブログに,業務内容の一つとしてFD1238Tのベルト交換サービスの項目が追加されるようになったと記憶しています.これは勿論プロフェッショナルの方々が素人の活動を後追いしたなどという意味で言っているのではありません.この時間的な前後関係は単なる偶然によるものでしょう.ここでは,我々素人サイドは早い時期から自発的・自主的に動いていたという事実を指摘するとともに,それを強調しておきたいと思います.


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