FD1135Dの分解と修理


いっちゃんさんより,FD1135Dが内蔵されたPC-9831-VW2をご恵贈いただきました.またtshさんよりご教示をいただきました.

FD1135Dの代表的な故障はメディアがセットできないというものでしょう.これは,メディアを挿入しても奥まで入らず,メディアをセットした際のカチャッという音も鳴らず,イジェクトボタンも飛び出して来ないというものです.下はFD1135Dを横から見た画像です.


上段はメディアが挿入されていない状態です.FDDが正常であれば,メディアが挿入されると,カチャッという音とともに,下段の画像のように内部の金属板(カセットホルダー)のシャフトが下に降りた状態となりますが,故障していれば,メディアを押し込んでもシャフトが降りません.これは,本来シャフトの移動をスムーズに行わせるために塗布されていたはずのグリスが変質(硬化)したためです(松ヤニのような状態となり,シャフトをレール部分に貼り付けてしまいます).またイジェクト機構のスライド部分のグリスも同様に変質します.

変質したグリスを除去するためには,FD1135Dをかなりのところまで分解する必要があります.本記事ではその手順について説明します.なお本記事で分解対象としたFD1135Dは,NEC製外付けFDDであるPC-9831-VW2に内蔵されているものです(P/N 134-500182-008-0,制御基板はG9YZD).

■天板を外す
まず天板(シャーシの上蓋)のネジ(緑丸の部分)を外します.


次に天板左側面(背面から見た場合)後部を少し持ち上げます.


フロントベゼル(FDD前面のプラスチックのパネル)およびシャーシ側面後部と天板との噛み合わに注意しながら,天板を後ろに引き抜きます.スッと引き抜けるものでもないので,作業は慎重に行って下さい.天板を外すと制御基板が現れます.


■制御基板を外す
制御基板を外すためには矢印の先の5つのコネクタを外す必要があります.コネクタの隙間にマイナスの精密ドライバーの先を差し入れるなどして丁寧に外して下さい.また外す前にも外している最中にも,それぞれのコネククのケーブルの取り回し(制御基板のどの切り欠き部分を通っているかなど)をチェックしておいて下さい.フロントベゼルのそばのコネクタは白丸の位置に注意して下さい.


制御基板の下にはヘッドのシールドなどのために組み込まれていると思われる金属板があります.制御基板はこの金属板のフロントベゼル側の2本のツメ(緑丸の部分)にはまっており,また2本のネジ(黄丸の部分)でシャーシに固定されています.制御基板と金属板の間にはプラスチック製の絶縁板が挟まれています.


制御基板とその下の金属板を外した状態です.



■フロントベゼルを外す
フロントベゼルは上の両脇の小さなツメと下の2本のネジで固定されています(上の画像を参照).丁寧に取り外します.

■黒い金属板を外す
上の画像の黒い金属板(メディアが挿入される金具.正式名称はカセットホルダー)を外します.まずFDD両側面のばねの上側だけ(緑丸の部分)を外します.


次にヘッド後方の突起を持ち上げ,横のシャフトに注意しながら黒い金属板を慎重に取り外します.この部品の取扱いは,外す場合にも再組み立て時に戻す場合にも,非常に神経を使います.シャフトとその周辺にはグリス(完全に硬化しておらず,一部ベトベトしていることがあります)が付着していますので注意して下さい.

黒い金属板を外した状態です.緑丸の部分はグリスが塗られている箇所です.


■イジェクト機構を外す
イジェクト機構(イジェクトボタンのついている黒い金具で,FDDの底面をスライドする部品)と,左右の金具を外します.前者を外すためには,ばねの一方(上の画像の黄丸の部分)を外す必要があります.また後者は左右ともそれぞれ後方の1本のネジで固定されています.右側の金具のネジは,ドライバが他の部品と干渉して回しにくいと思います.太めの精密ドライバの軸をペンチで挟んで横から回すなどの工夫が必要でしょう.その際ネジ頭を舐めてしまわないよう十分ご注意下さい.

これらを外した状態です.変質したグリスを除去するためにはここまで分解する必要があります.緑丸の部分は,グリスが塗布,あるいは付着している箇所です.他より大きな緑丸の部分は,グリスの除去作業がとりわけ大変な部品です.


グリスは削り取ったり掬い取ったりすることで大部分除去できます.ただし黒い金属板の場合には,金属製の工具を使用すると塗装を剥いでしまうことがあります.細かい部分や取りにくい部分に残ったグリスは,ブレーキクリーナー[ワコーズ(WAKO'S)製 ブレーキ&パーツクリーナー BC-8 など]等の化学的な手段を併用して除去するとよいでしょう(はにはにのヴィンテージPC新品再生ブログ --> NEC PC-9821AP初代のドライブの修理と内臓HDDをCFカード化をしました(2016年3月25日の記事) を参照).

変質したグリスを除去した箇所には,良質のグリスを新しく塗ります.グリスはタミヤ製の "セラグリスHG" などの評判がよいようです(かおる@ヤドンさんの2019年11月24日のツイートめーちゃんさんの2019年11月25日のツイート などを参照).グリスの塗り過ぎと飛び散りに注意して下さい.なおFDDに使用される潤滑剤に要求される性能は,ベアリング用のグリスに要求されるものと同等といいます(ジュンツウネット21 --> Q&A 潤滑油そこが知りたいQ&A --> グリース --> フロッピーディスクドライブに使用される潤滑剤).

■再び組み立てる
分解時と逆の手順で組み立てます.黒い金属板(カセットホルダー)の取り付け作業が最も神経を使います.下の画像の緑丸の部分の2つの突起がこの金属板より上の位置になるように取り付けます.



※FD1135Dのジャンパスイッチの設定は,3.5インチ化計画(注) --> PC−8801FH NEC FD1135D編 および エマティなリサイクル --> 研究発表会 --> 98FDDドライブ設定表 --> FD1135D設定表 を参照して下さい.
 注:この資料でのDHGはDCGの誤記です.制御基板上のジャンパスイッチの位置を下に示します.なおTSTジャンパはメーカー等でのテスト用と思われますが,内容は不明です(出荷時設定はショート ).



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