外付けCD-ROMのスイッチング電源のノイズが
FD1155Dの動作に及ぼす影響


電源ユニットを内蔵している外付けCD-ROM等のケースにFD1155Dを入れた場合,スイッチング電源ユニットから発生する高周波ノイズのためにFD1155Dのデータの読み書きが阻害されるとの報告が シエルさんの2018年4月2日のツイート にあります(実際には,スイッチング電源ユニットからの高周波ノイズではなく,周囲の別なノイズ源からの低周波ノイズが原因なのかもしれません).バッファローあるいはLogitecの外付けUSB接続の製品(製品名は不明)でこの不具合がみられたといいます.当該ツイートの画像を見ると,それらは剥き出しのスイッチング電源ユニットが実装面を上に向けた状態で組み込まれている製品のようです.

筆者はICM製のSCSI接続の外付けCDチェンジャであるCD-605CのケースにFD1155D(天板あり・ヘッドカバー撤去済)を組み込んで10年ほど常用していますが,そのような不具合に遭遇した記憶がありません.以前加賀電子(TAXAN)かI・Oデータ製のSCSI接続の外付けCD-ROMのケースにFD1155Dを組み込んで使用した場合にも同様でした.CD-605Cでは,電源ユニットがドライブの横にあり,鉄板で覆われた配線面がドライブ側に向いており,また大きな放熱板が電源ユニットの側面を覆うように取り付けられています.加賀電子かI・Oデータ製の外付けCD-ROMも,横幅のあるケースで,電源ユニットは,形状等の詳細を覚えていませんがやはりFDDの横に位置していたと思います.


非常に古い製品でしかテストできていませんが,外付けCD-ROM/CD-R/DVDドライブのスイッチング電源ユニットの中に,FD1155Dの読み書き動作を阻害するものがあるかどうか調べてみました.

筆者はツイッターに参加しておらず,シエルさんのテスト内容の詳細を知ることができません.今回のテストでは,以下の6項目がクリアできた場合に,スイッチング電源ユニットからのノイズによる読み書きの阻害はないとみなしました.

 (1) 外付けのFD1155DからMS-DOS6.2のシステムを起動させる.
 (2) (1)に引き続いてファイル管理ソフトFD(出射厚氏作)を起動させる.
 (3) 内蔵FDD#1からMS-DOS6.2のシステムを起動させ,外付けFD1155Dにセットした2HDメディアを無条件フォーマットする.
 (4) 内蔵FDD#1からMS-DOS6.2のシステムを起動させ,内蔵FDD#2にセットした一太郎ver.3のシステムディスクの内容を,外付けFD1155Dにセットした2HDメディア[(3)でフォーマットしたもの]にディスクコピーする.
 (5) (4)でディスクコピーされたFDを外付けFD1155Dにセットし,スキャンディスクを実施する.
 (6) (4)でディスクコピーされたFDを外付けFD1155Dにセットし,そこから一太郎ver.3を起動させる.

PC本体はPC-9821As3/C8Wで,1MB FDD I/Fは自作したものです.テストに使用した外付けCD-ROM/CD-R/DVDドライブは下に示す通りです.ケースの外付けコネクタ部分の開口部の形状と,ドライブを底ネジで固定するための上げ底の存在のため,I・Oデータ製のCDRW-164/USBとCyQ've Technology製のCRW-DVDhsではケースの蓋を閉じた状態でテストできませんでしたが,他の製品ではケースの蓋を閉じた状態でテストしました.
 ここでいう「鉄板」とは,電源基板の実装面または配線面を覆い,電源ユニットとドライブを隔てる金属板を指しますが,これに電源ユニットが発するノイズの悪影響を減らす機能があるかどうかは筆者にはわかりません.

■I・Oデータ製CDRW-164/USB(i・CONNECT接続)
 電源ユニットはドライブの後.配線面(鉄板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■CyQ've Technology製CRW-DVDhs[ATAPI接続(ATAPIインターフェイスカードATA-003:PCMCIA/Card Bus両用 が付属)]
 電源ユニットはドライブの横.実装面(鉄板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方が透明プラスチック板のカバーで覆われている.ドライブを底ネジで固定するための上げ底部分がケースの底面にあるため,フロントカバーを外すとともに割り箸をこの上げ底部分に置いてこれとFD1155Dのフライホイールの干渉を避けてテスト.

■メルコ製CDS-4E(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの後.配線面(鉄板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■I・Oデータ製CDR-TX824(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの横.配線面(鉄板でなく透明プラスチック板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■I・Oデータ製CDV-PX12(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの横.配線面(鉄板でなく透明プラスチック板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■I・Oデータ製CDRW-SX124BG(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの後.配線面(鉄板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■加賀電子(TAXAN)製TS-CD400(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの横.配線面(鉄板でなく透明プラスチック板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

■Logitec製LCW-748S(SCSI接続)
 電源ユニットはドライブの横.配線面(鉄板でなく透明プラスチック板あり)をドライブに向けた状態で横倒しで設置.側方のカバー等なし.

いずれの製品の電源ユニットも,FD1155Dの読み書き動作を阻害しませんでした.テストしたすべての製品で電源ユニットは横向きに設置されていましたが,上記の結果が電源ユニットの設置方向の効果によるものかどうかは不明です.

上記のツイートの画像の5インチFDDには天板がなく,制御基板やヘッド部分が剥き出しになっています.PC-9801VM2(の一部?)などに内蔵されているFD1155Dがこのタイプです."スイッチング電源のノイズによりメディの読み書きが阻害されるFD1155D" とは,多くこの天板のないタイプ(で,特にヘッドカバーが脱落した状態のもの)なのかもしれません.事実,sakohitiさんの2021年1月10日のツイートによれば,PC-9801VM21/VXのFD1155Dの初期ロット(およびPC-9801MのFD1155,PC-9801VM0/VM2/VM4のFD1155C)には天板がなく,ヘッドが露出した構造になっているため,ヘッドカバーを外してしまうとヘッドがノイズの影響を受けやすくなるとのことです(注1・2).[このヘッドカバーは,VCCI等の規格を満たすために用意された電磁シールドとのことです(PC-9821/9801スレッド Part45の687-695を参照)].なお筆者は天板を外した状態での試験は行っていません.
 注1:FD1055やFD1155といったNEC製の古い5インチFDDも天板がなく,ヘッド部分が剥き出しになっています.
 注2:ダンプ目的での使用では,天板のあるFD1155Dでもスイッチング電源由来のノイズが悪影響を及ぼすことが報告されています(ちまちまさんの2019年4月16日のツイート を参照).スイッチング電源の種類も関係しているのかもしれません.


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