MILコネクタ(FDDケーブルやHDDケーブルなどで使用されているタイプのコネクタ)をフラットケーブルに圧着(圧接)する作業のための専用工具が市販されています.Amazonなどでも扱いがあり,"圧着 工具 フラットケーブル コネクタ" などの語で検索すると,多種類の商品がヒットします.安価なものは2,000円程度で買えるようで,専用工具だけあって使い勝手も上々と聞きます.筆者は使用したことがありませんが,MILコネクタの圧着作業にはこれらを用いるのが一番でしょう. しかし圧着作業には,クランプで机の端などに固定して使用する小型万力(ミニバイス)を用いるのも楽でしょう(注).これはホームセンターなどで1,500-2,000円程度から買えます.圧着時にはコネクタをかなり強く締め付ける必要がありますので,100円ショップで売られている小型万力はこの用途には向きません(作業の途中までなら使用できるかもしれません).なおこの種の工具を購入する際には,それを使った具体的な作業の様子を頭に浮かべながら製品を選定するとよいでしょう. 注:卓上ボール盤をお持ちの方は,付属のバイスを使用してもよいでしょう.これはサイズが大きい分,小型万力だと圧着作業に手間取る50ピンコネクタなども圧着しやすいでしょう.なお小型万力は,端子にケーブルを直接ハンダづけしたり,導通調査の際にコネクタを固定したり,金属板の小片などを加工(切断や折り曲げ,ヤスリがけなど)したりするのにも重宝します.特にこれが2つあると,両端のコネクタを固定した状態でケーブルの端子間の導通状態を調べることなどもできて非常に便利です. 筆者がコネクタの圧着作業に使用している小型万力である,松尾製作所製 "ラッキーペンチバイス 50mm" です.ホームセンターで1,480円でしたが,特にこれを選んで買ったというわけでもなく,来店時にたまたま店頭にあったものを購入しました.コネクタの圧着を直接の目的として購入したわけでもありませんが,十分使用できています.なお筆者は小型万力として,これの他に,若干形状が異なるエンジニア(ENGINEER)製 "アンヴィルバイス TV-11" も使用していますが,これも特に積極的な理由があって選定したものではありません. |
この小型万力で実際にフラットケーブルにコネクタを圧着している様子です.万力は作業台にしている古い木製机(注1)の引き出しを引き抜いて固定しています.左がメスコネクタ,右がオスコネクタの場合です(メスコネクタは34ピンのものを切断して26ピンにしてあり,オスコネクタは34ピンのもののピンを抜いて26ピンにした上,圧着作業の邪魔になるロック(両脇から内側に折り込むレバーのような部品)を折り取ってあるため,ともに歪な形状となっています).オスコネクタの場合,ピンにメスコネクタをはめた状態で締め付けを行っています[はめてあるメスコネクタのハウジング(プラスチックの部分)には黒マジックで "突起側" を示す印が描かれています](注2).なおこの時に作成したケーブルは,PC-9801BX2/U2などのFD1138T内蔵機種のファイルベイに装着する5インチFDDユニットであるIDOL JAPANのID-5FBに付属しているケーブルの同等品です. 注1:古道具屋で300円で購入しました.値段相応の品でガタつきも酷かったので,同じ古道具屋の無料廃材と釘で修繕と補強を行いました. 注2:メスコネクタの背(ピンのある面と反対側の面)に適当な厚さと大きさの木片等を貼り付けたものを用いれば,オスコネクタのロックを除去することなくケーブルの圧着作業ができるでしょう.同じ機能のものを3Dプリンタで作成している例もあります[sakuradai11さんの2020年12月8日のツイート{1(画像1・画像2)・2(画像)}を参照]. |
C型クランプを使う方法も報告されています(ちまちまさんの2020年6月21日のツイート と Zilfhumさんの2021年3月23日のツイートを参照).またF型クランプ(F型のハンドクランプ)の使用報告もあります(これには100円ショップの製品もあるようですが,筆者は実物を知らないため,コネクタの圧着作業に使用できるようなものかはわかりません).プライヤーや金槌を使った圧着作業も勿論不可能ではありません(注1).プライヤーを用いての圧着作業は筆者にも経験がありますし,専用工具を購入する前にはゴムハンマーを使用していたという方もいます.しかし,これらの工具を用いた作業では,万力等を用いた場合に比べ,作業途中でケーブルの位置がずれたり,コネクタ,特にその嵌合面を変形・破壊する危険性が比較的高いように思います.これらの工具を使用して圧着を行う場合には,材料の固定の仕方を十分工夫し,より慎重かつより丁寧に作業を行う必要があるでしょう.もっとも,作業で一番大事なのは完成への執念でしょう(注2).なおこの種の作業に不慣れな方は,使用する個々の部品と工具類を眺めてその構造を把握した上で,作業前に簡単にでもイメージトレーニング程度のことはしておくとよいかと思います.不慣れなうちは,経験のない細かい作業は,全くの下準備なしに着手しても思ったほどうまくいかない(途中で困る等)ことが多いように思います.
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