PowerWindow 6410VAの増設VRAM


Canopusの Power Window 6410VA は,Alliance Semiconductor社製ProMotion-6410を搭載したCバスグラフィックアクセラレータボードです(注1).オンボードのVRAMは1MBで物足りませんが,増設用VRAM("専用DRAM拡張キット",型番6410-1M,チップは OKI M514265B-60J,オンボードVRAMと同じ)によりVRAMを2MBまで増設すれば,800×600ドット・フルカラー表示,1152×864ドット・ハイカラー表示(NiFF時水平同期周波数63.2kHz/垂直同期周波数70Hz),1280×1024ドット・256色表示(NiFF時水平同期周波数77.0kHz/垂直同期周波数72Hz),1600×1200ドット・256色表示(i時水平同期周波数52.5kHz/垂直同期周波数80Hz)などが可能となります(注2).またVRAMを2MBにすることで,同一条件でもVRAMが1MBの場合より描画成績が大きく上がります(これは,描画チップであるProMotion-6410のメモリバス64bitであるため,VRAMが1MBのままではメモリアクセスが32bitとなってしまい,描画チップの性能が十分に発揮できないためといいます).しかしこの専用の増設用VRAMを単体で入手することは容易ではないでしょう(注3).
 注1:I/Oポートアドレス:06D8h~06DFh[出荷時設定,4連ディップスイッチにより変更可能(注1.1)].メモリ空間:F00000hまたはE00000hからの256KBを使用.最大消費電流:+5V-0.85A(6410-1M装着時+5V-1.05A).ノーマルモードのみ対応.PC-H98model 60/70/80/90/100/105,PC-H98S model8,PC-486GF/GR/GR+/GR Super/P/SE/SR/HG/HX/HAでは本体のメモリが14.6MBを超える場合本ボードは使用不可(注1.2).
   注1.1:エマティなリサイクル --> 研究発表会 --> 98用拡張ボード設定表 などを参照.
   注1.2:16MBシステム空間の問題との関係とも考えましたが,本ボードのサポートソフトに f.exe が含まれていなかったとは考えにくく,理由は不明です.しかし実際には,recmem.sysやその同等ドライバを組み込めば,メモリを64MBまで増設したPC-486PでもWindows95で本ボードが使用できました.本ボード(PC-486Pも)の性能に関するデータは今となっては少し珍しいかもしれませんので,下にHDBENCH Ver 2.610の実行結果を示しておきます(注1.2.1).DDの値が滅茶苦茶なのは,DirectXがインストールされていなかったためです.
       注1.2.1:1024×768 256色条件のものですが,PC-9821An/C9T(Cyrix MII-210MHz)での本ボードと他のグラフィックアクセラレータボードの描画成績の比較データが,A-MATEr's BBS 過去ログ その29 にありました.
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★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-486P
Processor PK-586x4 (Cx5x86-100MHz,キャッシュコントローラの設定は DEVICE=PK586.COM /WB /B /DTE-)
解像度 1024x768 65536色 (16Bit)
Display Power Window 6410VA (2MB)
Memory 63,892Kbyte (ERF上に32MB FP SIMMを2枚増設)
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
SCSI = I-O DATA SC-98ⅢP (非PnPモード,SMIT転送)
ABC = QUANTUM LPS540S Rev 5906 (540MB)
D = GENERIC NEC FLOPPY DISK
E = GENERIC NEC FLOPPY DISK
ALL 浮 整 矩 円 Text Scroll DD Read Write Memory Drive
2031 3393 4619 2654 1375 1070 17 -1073741819 1640 1484 2545 A:10MB
解像度 1024x768 256色 (8Bit)
ALL 浮 整 矩 円 Text Scroll DD Read Write Memory Drive
2239 3597 4622 3594 1417 1517 54 -1073741819 1639 1477 2550 A:10MB
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 注2:Windows3.1での場合で,本ボードの一枚物のカタログの記載によります.より詳しくは下を参照(このカタログを紛失しましたので,製品外箱に記載されたデータに拠ります.これもWindows3.1での場合).カッコ内の色数は6410-1MによりVRAMを2MBに増設してある場合です.また実際に表示される解像度より大きな解像度を仮想画面サイズとして指定し,マウスによる高速スクロールを行うことが可能です.なお本記事とは関係ありませんが,PowerWindow 968(VRAM 2MB)の同様のデータ(製品外箱に記載)も見つかりましたので,本記事の末尾に載せておきます.
    ・640×400ドット,256・32768・65536・1677万色
      98ノーマル:水平24.8kHz/垂直56Hz
      Ni:31.5kHz/60Hz
      NiFF:37.9kHz/72Hz
    ・640×480ドット,256・32768・65536(・1677万)色
      Ni:31.5kHz/60Hz
      NiFF:37.9kHz/72Hz または 37.5kHz/75Hz
    ・800×600ドット,256・32768・65536(・1677万)色
      Ni:35.1kHz/56Hz または 37.9kHz/60Hz
      NiFF:48.1kHz/72Hz
    ・1024×768ドット,256(・32768・65536)色
      i:35.5kHz/86Hz
      Ni:48.4kHz/60Hz
      NiFF:56.5kHz/70Hz
    ・1152×864ドット,256(・32768・65536)色
      Ni:54.5kHz/60Hz
      NiFF:63.2kHz/70Hz
    ・1280×1024ドット,256色
      i:46.9kHz/88Hz
      Ni:64.0kHz/60Hz
      NiFF:77.0kHz/72Hz
    ・1600×1200ドット,256色
      i:52.5kHz/80Hz
 注3:ヤフーオークションに出品されている本ボードでは,6410-1Mが増設されているものを割に見ますので,6410-1M自体はある程度数が出たものと思われますが,これはDRAMチップそのものですので,一旦ソケットに装着されたものが取り外されることはまずないでしょう.このチップが使用されていた他の製品に関する情報もありません.

しかしこの増設用のVRAMは,実は汎用4Mbit DRAMで代替可能との情報があり,実際,三菱のFP DRAM(60ns),AllianceのEDO DRAM(35ns),TRIO64V2/DX搭載のPC/AT互換機用のノンブランドのPCIビデオボードの増設用DRAM(詳細不明)が使用できるとの報告があります(どるこむの過去ログ,[38942] PowerWindows6410 を参照).

筆者がPower Window 6410VAの増設VRAMとして使用できることを確認したDRAMは以下の通りです.

(1)I・Oデータ製GA-DR2/ISAのオンボードVRAM,三菱 M5M44260AJ(FP DRAM, 70ns)

(2)NEC製 "<注意>本ボードは抜かないでください。" グラフィックアクセラレータボード(GAWMP)オンボードVRAM,三菱 M5M44265CJ(EDO hyperpage mode DRAM, 60ns)

(3)NEC製 "<注意>本ボードは抜かないでください。" グラフィックアクセラレータボード(GAWMP)オンボードVRAM,Mosel Vitelic V53C16258HK45(EDO DRAM, 45ns)

(4)日立製486フローラ マザーボードオンボードVRAM(?),NEC 426260(FP DRAM, 60ns)
※4Mbit DRAMでも描画時にノイズが出る("ゴミが残る")ものがあるとの報告をいただいていますが,DRAMの名称などは不明です.

■VRAMチップの外し方・剥がし方
VRAMがソケットに入っている場合はICエクストラクター(PLCC用引き抜き工具)などを使ってチップをソケットから外すだけです.またVRAMがマザーボードやビデオボードの基板上に直付けされている場合は,それらの基板を破損してもよいのであれば,チップを剥がすのは簡単です.

まず小型マイナスドライバーなどの工具をチップと基板の隙間に挿入し,工具の先端を基板に押しつけ,手前を少し浮かせるようにしながら,さらに奥へと押し入れるようにします.この時工具に上向きに力が加わり,チップが手前側からバリバリと剥がれます.この時ハンダゴテでチップの脚と基板との接触部に熱を加えるとより剥がしやすくなりますが,下手に熱を加えるとかえってチップにダメージを与えてしまうので注意して下さい.

剥がされたチップの脚には,多くの場合基板のパターンの一部が付着したままになっています.この状態のままVRAMソケットにはめ込むとショートしてしまう危険性があるので,よく熱したハンダゴテを使って手早くチップの脚からパターンの残骸を取り除きます.この時静電気とはんだブリッジに注意して下さい.それが終わったら,チップの脚の曲がりや歪みを適宜修正し,方向に注意してVRAMソケットにはめ込みます.

基板を破損したくない場合には,ハンダを溶かして丁寧に作業する必要があります.部品の端子と基板の間にステンレス(通常のハンダはステンレスには付きません)製のカミソリの刃を滑り込ませながら作業するというやり方もあります(リサイクル掲示板の2021年9月過去ログの 買い物ヤフオクツイッターウォッチ2021年9月-1 スレッド を参照).カミソリの刃は少しぶつかっただけで深い傷口を作りますので,取扱いには十分に注意して下さい.


付:PowerWindow 968(VRAM 2MB)で設定可能な解像度等です.他に適当な場所もないため,ここに載せておきます.カッコ内の色数は968-2MによってVRAMを4MBに増設してある場合です.また実際に表示される解像度より大きな解像度を仮想画面サイズとして指定し,マウスによる高速スクロールを行うことが可能です.2048×1792ドット画面は仮想画面としてのみ設定可能です.
    ・640×400ドット,256・32768・65536・1677万色
      98ノーマル:水平24.8kHz/垂直56Hz
      Ni:31.5kHz/60Hz
      NiFF:37.9kHz/72Hz
    ・640×480ドット,256・32768・65536・1677万色
      Ni:31.5kHz/60Hz
      NiFF:37.9kHz/72Hz または 39.2kHz/75Hz
    ・800×600ドット,256・32768・65536・1677万色
      Ni:37.9kHz/60Hz
      NiFF:48.1kHz/72Hz または 50.0kHz/75Hz
    ・1024×768ドット,256・32768・65536(・1677万)色
      Ni:48.4kHz/60Hz
      NiFF:56.5kHz/70Hz または 60.3kHz/75Hz
    ・1152×864ドット,256・32768・65536(・1677万)色
      Ni:54.5kHz/60Hz
      NiFF:63.2kHz/70Hz または 68.2kHz/75Hz
    ・1280×1024ドット,256(・32768・65536)色
      Ni:65.0kHz/60Hz
      NiFF:77.5kHz/72Hz または 80.3kHz/75Hz
    ・1600×1200ドット,256(・32768・65536)色
      Ni:76.3kHz/60Hz
    ・2048×1792ドット,256色
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VRAMが4MBの状態で1024×768ドット・1677万(フルカラー)表示が可能なCバスグラフィックアクセラレータボードは,PowerWindow 968とメルコのWGN-DX4のみです.


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